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第91回:USB 2.0対応のIEEE 802.11g無線LANアダプタの実力は?
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昨年末から今年の頭にかけて、各社からUSB 2.0に対応したIEEE 802.11g準拠の無線LANアダプタが多数登場してきた。無線LANを内蔵していないノートPCやデスクトップPCでの利用を考えると、1つの選択肢として検討する価値のある製品だ。主要な5製品をそれぞれ比較してみた。
■ 再び脚光を浴びるか?
IEEE 802.11bが主流だった時代は数多く販売されていたが、最近ではめっきり店頭で見かけることがなくなってしまったUSB接続型の無線LANアダプタ。そんなUSB接続型無線LANアダプタが、再び市場に出回り始めてきた。
現在の主流となるIEEE 802.11g、およびIEEE 802.11aのような規格では、規格上の最高速度54Mbpsに対して、USB 1.1の12Mbpsという速度は明らかに物足りない。これを解消するため、新たにUSB 2.0に対応したIEEE 802.11g準拠の無線LANアダプタが登場した格好だ。クライアント用アダプタとして、新たな選択肢が登場したことは歓迎すべきことだろう。
とは言え、USB接続型の無線LANアダプタにそれほど需要があるかという点は気になるところだ。最近のPCには、デスクトップでもPCカードスロットが用意されていることが珍しくない上、場合によっては有線を無線に変換するEthernet接続型のアダプタを利用するという手もある。以前はデスクトップPCならUSBという図式もあり得たが、今は、必ずしもそうではない。
しかし、あえてUSB接続型の無線LANアダプタを選ぶ理由もいくつか考えられる。1つはPCカードスロットが占有されずに済むという点だ。モバイル向けのノートPCやデスクトップPCなどでは、1スロットしかPCカードスロットを装備しない機種も存在する。デジタルカメラの画像の取り込みなど別の用途でPCカードスロットを使いたいといったケースでは、USB接続型の無線LANアダプタを利用する価値がある。
また、前述したEthernet接続型のアダプタと比べて、有利な点もある。Ethernet接続型のアダプタは外部電源が必要になるが、USB接続型であれば、USBからの給電が可能だ。配線がシンプルで、手軽に使える点もUSB接続型のメリットと言えるだろう。
これらの点を考えると、主流になるとは言い難いものの、現状、何らかの理由で無線LANアダプタの接続方法に困っているユーザーの助けとなることは間違いなさそうだ。
■ 速度的には必要十分
では、USB接続で、どこまで高速無線LANの実力を発揮できるのだろうか? 確かに、USB 2.0の最大転送速度は480Mbpsだが、USB 1.1の時代の製品を体験しているユーザーにとっては、速度的に遅いのではないかという不安もある。
そこで、各製品の転送速度を実際に計測してみた。今回テストに利用したのは、アイ・オー・データ機器の「WN-G54/U2」、コレガの「CG-WLUSB2GT」、バッファローの「WLI-USB2-G54」、プラネックスの「GW-US54G」、リンクシスの「WUSB54G-JP」(出荷前のため試作品を利用)という5製品だ。どの製品もUSB 2.0接続型で、無線の規格はIEEE 802.11gのみに対応している。
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今回、テストした5製品。手前がプラネックスの「GW-US54G」、奥が左からバッファローの「WLI-USB2-G54」、コレガの「CG-WLUSB2GT」、リンクシスの「WUSB54G-JP」、アイ・オーの「WN-G54/U2」
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20MBのZIPファイルをFTPにて転送するという方式で行なったテストの結果は以下の通りだ。参考値として、手持ちのノートPC(富士通LOOX T60D/W)に内蔵の無線(IEEE 802.11g)とPCカードタイプのアダプタ(バッファロー製WLI-CB-AG54)での値も掲載したが、どの製品も内蔵タイプやPCカードタイプと遜色のない速度を実現できた。この結果を見る限りでは、USB接続型だからといって、極端に速度が遅いということはなさそうだ。
無線LANアダプタの速度比較 |
メーカー名 |
製品名 |
GET |
PUT |
PC内蔵 |
Broadcom BCM4306 |
17.71Mbps |
18.88Mbps |
PCカード(Cardbus) |
WLI-CB-AG54 |
17.31Mbps |
23.72Mbps |
リンクシス |
WUSB54G-JP |
18.48Mbps |
20.41Mbps |
コレガ |
CG-WLUSB2GT |
17.41Mbps |
18.63Mbps |
アイ・オー |
WN-G54/U2 |
17.67Mbps |
15.53Mbps |
バッファロー |
WLI-USB2-G54 |
17.23Mbps |
17.41Mbps |
プラネックス |
GW-US54G |
16.33Mbps |
19.24Mbps |
※20MBのZIPファイルを転送 |
※APはNEC製AtermWR7600Hを使用 |
※64bitのWEPを設定して計測 |
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中でも高速だったのは、リンクシスの「WUSB54G-JP」で、若干ながら、他製品を凌ぐ速度を実現できた。とは言え、どの製品も16~18Mbps前後と十分、実用的な速度を実現できているので、このあたりはあまり差がないと考えていいだろう。
■ アクセスポイントと同一メーカーを選ぶのが基本
ただし、この結果はあくまでも参考程度に考えて欲しい。というのは、利用するアクセスポイントによって、速度が大幅に変化するからだ。今回のテストでは、公平を期すため、取り上げた5製品とは異なるメーカーのアクセスポイント(NECアクセステクニカ製AtermWR7600H)を利用したが、USB接続型無線LANアダプタと同一メーカーのアクセスポイントを利用すると、速度は向上する傾向にある。
たとえば、以下がアクセスポイント、クライアントともにバッファローの製品で揃えた場合の速度だ。
APの種類による速度の違い |
無線LANアダプタ |
アクセスポイント |
GET |
PUT |
WLI-USB2-G54 |
WHR2-A54G54 |
20.46Mbps |
20.55Mbps |
WR7600H |
17.23Mbps |
17.41Mbps |
WLI-CB-AG54 |
WHR2-A54G54 |
23.54Mbps |
28.05Mbps |
WR7600H |
17.31Mbps |
23.72Mbps |
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USB接続型(WLI-USB2-G54)の場合で17Mbpsから20Mbpsへ、PCカード型(WLI-CB-AG54)で17Mbpsから23Mbpsへ(PUTなら最大28Mbps)と速度が向上していることがわかる。最近の無線LAN製品は、速度を向上させるためにフレームバーストなどの独自技術が多く採用されているが、これらは基本的に同一メーカーの製品でしか効果が期待できない(同一チップなら効果が出る場合もある)。この影響が出たと考えられる。
実際、アイ・オー・データ機器の「WN-G54/U2」などは、GlobespanVirataの「PRISM Nitro技術」に対応しているが(いわゆるフレームバースト技術)、この機能は、基本的に同社製の「WN-G54/AXP」というアクセスポイントと組み合わせて利用したときにしか有効にならない。
つまり、USB接続型無線LANアダプタを選ぶ際は、どのアクセスポイントと組み合わせて利用するかが重要なポイントとなってくる。もちろん、アイ・オー・データ機器製品のように、同一メーカーの製品でも採用されているチップに違いがあるケースもあるが、基本的にはアクセスポイントと同一メーカーの製品を選んでおくのが無難だろう。
さらに、このグラフからは、もうひとつ興味深い点もわかる。先のテストではPCカード型もUSB接続型もほぼ同等の速度を実現していたが、同一メーカーのアクセスポイントを利用したケースでは、多少、USB接続型の方が速度が遅い傾向が見られる。すべてのメーカーの製品で同じ傾向が出るかはテストしてみないとわからないが、少なくともバッファローの製品に関してはPCカード型の方が速度的には有利だと言えそうだ。
■ 機能的な差を考慮するなら
もちろん、速度はあまり気にしないというのであれば、純粋に使いやすさや機能面で製品を選べばいい。
今回、試用した5製品で、特に機能的な違いが見られたのはWPAへの対応状況だ。WPAに正式対応している製品は、コレガ、アイ・オー・データ機器、プラネックスの3製品のみで、しかもAESにまで対応しているのはプラネックスの製品のみだった。TKIPに関しては、現状、未対応の製品でもWindows XPのWireless Zero Configを利用することで、利用できる場合も多い。よって、セキュリティという観点では、プラネックスの製品を選ぶ価値が高そうだ(どの製品も設定にはWireless Zero Configが必要なためWindows XP以外のOSではWEPのみの利用となる)。
ただし、プラネックスの製品に関しては、その形状から設置場所を選ぶという欠点がある。一見、小型で持ち運びにも便利そうなのだが、実際にPCに装着するとPCの接地面に本体が干渉したり、他のUSBコネクタに干渉してしまうことがある。USBの延長ケーブルを同梱して、接続方法に柔軟性を持たせて欲しかったところだ。
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横方向の場合、接地面との干渉は問題にならないが、隣のコネクタ類と干渉してしまうことも考えられる
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その点、使いやすさで印象的だったのは、アイ・オー・データ機器の製品だ。パッケージには用途に応じて使い分けられるように、2本のUSBケーブル(50cmと2m)が同梱されており、しかも2mのケーブルはコネクタ部分が可動式のマルチアングルケーブルとなっていた。こういった配慮はユーザーにはうれしいところだ。
また、この製品はアンテナが可動式で、その角度もかなり自由に設定できるようになっている。他社製の製品のアンテナは内蔵か、可動式でも90度起きあがる程度となっているので、電波状況が悪い場所で利用したい場合などは、この製品を選ぶ価値がある。唯一の欠点は、本体前面のLEDが明るすぎることくらいだろうか? 直視すると、かなりまぶしい印象を受けた。
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写真では少しわかりにくいかもしれないが、LEDの明るさはまぶしいほど
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設置方法の工夫という点では、リンクスシスとコレガも印象的だ。リンクシスの製品には、マジックテープ式のアタッチメントが付属しており、これを利用することで、壁面などに貼り付けられる。
一方、コレガの製品は本体サイズが大きく、底面に滑り止めのゴム足が装着されていることから、設置した際の安定感が抜群によかった。他社製品にも滑り止めのゴム足が装着されているが、安定感はコレガの製品ほど高くはない。この手の製品は、ケーブル自体の重みで不安定になることが多いので、オフィスなどしっかりと設置しておきたい場所で利用する場合は、この製品を選ぶといいだろう。
このほか、アイ・オー・データ機器とコレガの製品はユーティリティで速度のグラフ表示が可能など、ソフトウェアの使いやすさも高かった。
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アイ・オー・データ機器のユーティリティ
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コレガのユーティリティ。アイ・オー、コレガに関しては、速度のグラフ表示が可能など、どちらもユーティリティの機能も豊富
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■ 単純には比較できない
以上、USB接続型無線LANアダプタ5製品をテストしてみたが、USB接続型無線LANアダプタ自体は、手軽に使える上、速度的にも悪くはない製品だと言えそうだ。しかし、5製品のうち、どれを選ぶかとなると、これは単純な比較で最終的な結論を出すことは難しい。
確かに、今回のテストに限って言えば、速度はリンクシス、使いやすさはアイ・オー・データ機器、セキュリティはプラネックスという結論だったが、これはあくまでも暫定的なもの。前述したように速度は利用するアクセスポイントに左右されるし、セキュリティ機能も今後、バージョンアップが進めば差はなくなってくる。
月並みな結論だが、やはり最終的にはアクセスポイントと同一メーカーの製品を選ぶのが無難だと言えそうだ。
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2004/03/02 11:02
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