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第103回:Gigabit Ethernetに対応した新型Linkstation
速度と信頼性を検証する


 各メーカーから、ネットワークに接続して利用するタイプのストレージが数多く登場しはじめた。今回は、その中からGigabit Ethernetに対応したバッファローの「HD-HGLAN」を検証してみることにする。Gigabit Ethernetの実力やジャーナリングファイルシステムの信頼性を中心にテストしてみよう。





Gigabitの時代へ

 本コラムで、以前にも何度か取り上げたことがあるバッファローの「Linkstation」に、Gigabit Ethernetに対応したモデル「HD-HGLAN」が登場した。と言っても、HD-HGLAN自体が発表されたのは昨年末のこと。今回、300GBのハードディスクを搭載したモデルが新たに追加された格好になる。

 個人的にもLinkstationの初期モデル(HD-LAN)を使用しているが、これと比較するとかなり進化したという印象だ。まず大きな変更点としては、Gigabit Ethernetに対応したことがあげられる。同様にGigabit Ethernetに対応したLAN接続型ハードディスクは、アイ・オー・データ機器などからも発売されており、100Mbpsからの移行が徐々に進みつつある。Gigabit Ethernet対応のNICがPCに標準搭載されることも珍しくなくなり、ハブなどの機器も低価格化してきているので、そろそろ手を出してもいいかと思えるところだ。


Gigabit Ethernetに対応したHD-HGLAN。1000BASE-T接続時は前面のランプがブルーに点灯する

 もちろん、機能的にも充実している。Gigabit Ethernet対応以外は、基本的に100Mbps対応のHD-HLANシリーズと同等の機能となっており、本体のUSBポートを利用して外付けHDDを共有やバックアップに利用したり、プリンタを共有することが可能となっている。また、ユーザーやグループを設定して細かなアクセス制御をしたり、FTPによるファイル転送などもサポートしている。

 SOHOや企業の部門単位でのファイル共有であれば、サーバーを構築するよりもはるかに手軽で効率的だと思えるほどだ。





Gigabitの実力を検証

 機能的にHD-HLANと同等であることを考えると、やはり気になるのはGigabit Ethernetの実力だろう。そこで、速度面を一通りテストしてみることにした。

 Windows上でのファイルコピーに加え、FTPによるファイル転送を実施してみた際の結果が以下の表だ。ファイルの読み書きに加え、接続方式の違いによる速度を検証するため、いろいろな方式で速度を計測してみた。

表1:HD-HGLAN300 ファイル転送テスト
コピー方法 方向 接続方式 20MB
ZIP
200MB
PPT
50MB
JPEG
(43files)
Windowsコピー PC→PC 1000BASE-T 163.81Mbps 147.91Mbps 118.13Mbps
HD-HGLAN→PC 100BASE-TX 56.39Mbps 60.48Mbps 54.52Mbps
1000BASE-T 69.08Mbps 64.86Mbps 64.85Mbps
1000BASE-T(JumboFrame) 81.90Mbps 76.24Mbps 91.61Mbps
PC→HD-HGLAN 100BASE-TX 37.55Mbps 37.35Mbps 35.19Mbps
1000BASE-T 49.43Mbps 54.86Mbps 54.08Mbps
1000BASE-T(JumboFrame) 73.19Mbps 70.30Mbps 91.40Mbps
FTP GET 100BASE-TX 91.29Mbps 92.58Mbps -
1000BASE-T 115.29Mbps 103.52Mbps -
1000BASE-T(JumboFrame) 175.50Mbps 131.00Mbps -
PUT 100BASE-TX 65.13Mbps 58.10Mbps -
1000BASE-T 84.59Mbps 71.16Mbps -
1000BASE-T(JumboFrame) 138.04Mbps 102.93Mbps -
※PCには、Pentium4 3.06GHz、RAM1GB、オンボードGbE(Broadcomチップ)を搭載したWindows XP Professional機を使用
※Windowsコピーでは、ファイルをドラッグアンドドロップし、ストップウォッチにて時間を計測。ファイル容量から速度を計算した
※FTPクライアントにはWindows XPのコマンドを使用。計測値をMbpsに換算して掲載した


 この表だけでは、少々、わかりづらいかもしれないので、各値をピックアップして、個別に見ていくことにしよう。まずは、PCでファイル共有をした場合との比較だ。Windows XPのファイル共有機能を利用し、PC間でファイルをコピーした場合と、HD-HGLANをサーバーとして利用した場合の違いを検証してみた。

 なお、グラフの値には、すべてWindowsファイルコピーのものを使用している。ネットワークの速度を計測するのであれば、FTPを利用する方が好ましい(値も高い)が、実際の利用環境に近い検証をするため、あえてFTPではなく、Windowsファイルコピーの値をグラフ化している。



 いずれの場合もGigabit Ethernet環境でのテストだが、やはりPC間と比べると若干遅いようだ。テストによっては半分程度の速度しか出ない場合も見られる。LAN接続型ハードディスクの場合、CPUやメモリなどの処理能力に限界がある以上、純粋にPCと比較すると、やはり分が悪い。しかしながら、注目は複数ファイルの転送だ。グラフ中で「50MB JPEG 43files」と記載した項目では、大容量ファイルを転送したときほど速度差が大きくない。小さなファイルを多数転送するようなケースでは、さほど速度が気になることはなさそうだ。

 なお、Gigabitなのに、転送速度がそれほど速くないと感じるかもしれないが、これが妥当な値だと考えて欲しい。Gigabit Ethernetと言っても実質的な転送速度は200Mbps程度になる場合がほとんどだ。場合によっては400〜500Mbps、それ以上の速度が出ることもあるが、これは計測方法によって異なる。特にWindowsのファイルコピーの場合、プロトコルのボトルネックなどがあるため、速度が出にくい傾向にある。

 続いて、接続方式の違いによる速度差について見てみよう。HD-HGLANはGigabit Ethernet対応モデルだが、100BASE-TX環境でも利用できる。また、同じGigabit Ethernet環境でも、Junbo Frameの使用/未使用を選択可能となっている。Jumbo Frameとは、Ethernetのデータ送信単位を通常の1,500バイト以上に設定することで転送効率を向上させることができる機能だ。これらの接続方式の違いによって、どれほどの速度差があるのかを比較してみた。


Gigabit Ethernetの転送効率を向上させることができるJumbo Frameに対応。設定ページから「1518(標準)」、「4100」、「7418」のいずれかを選択して設定する


 やはり、Gigabit Ethernet環境、しかもJumbo Frameを使用すると転送効率は格段に高くなるようだ。ファイルによっては、2倍近くも速い結果が計測できた。どうせ使うのであれば、Gigabit Ethernetで、しかもJumbo FrameをONにして利用する方がいいだろう。

 もちろん、Jumbo Frameを利用するには、HD-HGLANに加え、NICやハブなどのネットワーク機器をすべてJumbo Frame対応で揃える必要があるが、これだけで転送速度は格段に向上する。今後、Gigabit Ethernet環境が一般化していくことを考えれば、HD-HGLANの導入を機にネットワークを再構築するというのもひとつの手だろう。

 最後に、読込みと書込みの速度を比較してみた。複数ファイルの場合はほとんど差が見られないが、その他の場合は若干、書込みの方が遅い。これは、後述するジャーナリングファイルシステムなどの影響があるためだと考えられる。と言っても、その差はわずかなので、あまり気にする必要はなさそうだ。






速度よりも信頼性を

 以上、さまざまな角度から速度を検証してみたが、この結果はあくまでも参考程度に考えて欲しい。確かに速度は製品の実力を数値で検証できるためわかりやすいのだが、極端に遅くない限り、実質的な利用シーンで意識させられることはほとんどないからだ。実際に利用していても、PC間でファイルをコピーするのと、感覚的な差はあまりないという印象だった。

 むしろ、この手の製品で気にしなければならないのは信頼性の方だろう。ストレージである以上、ここに保存したデータが失われてしまうのが一番怖い。ネットワークで複数のユーザーがファイルを保存する可能性があることを考えると、なおさら信頼性が重視される。

 では、HD-HGLANでは、どのように信頼性を確保しているのだろうか? これには「ジャーナリングファイルシステム」が利用されている(Linkstationシリーズではすべてに採用されている)。ジャーナリングファイルシステムとは、ジャーナルと呼ばれる管理データをファイル操作ごとに記録するファイルシステムのことだ。たとえばHD-HGLAN上に保存されたファイルを更新する場合、HD-HGLANは、まずジャーナルにその更新情報を記録してから、実際にデータを書き込むという方式を採る。

 この方式のメリットは、障害に強いという点だ。たとえば、HD-HGLANにデータを保存中に、何らかのトラブルによってネットワークが切断されたり、HD-HGLANの電源がOFFになってしまったとしよう。ジャーナリングファイルシステムが採用されていない場合、データの書込みが途中で中断してしまうことになるため、かなりの確率でファイルは破壊されてしまうことになる。

 しかし、ジャーナリングファイルシステムが採用されている場合、復帰時にジャーナルの内容とデータの内容を照合し、そこに不整合があれば、ファイルを以前の状態(書込み前)に復旧することができる。これにより、突発的な障害でも、高い確率でファイルを救うことができる。いわば、WindowsのFAT32とNTFSの違いのようなものだ。

 というわけで、実際にこの機能を検証してみた。HD-HGLAN上に200MBのパワーポイントのファイルを保存し、PCから直接内容を編集。データの保存中に意図的にネットワークケーブルを外したり、HD-HGLANの電源をOFFにしてみた。

 ネットワークの切断と電源OFFのそれぞれを合計5回ほど行なってみたが、確かにファイルが失われることはなかった。ネットワーク、もしくは電源の復旧後、同じファイルにアクセスしてみても、無事にファイルを開くことができ、その状態もデータ書込み前の状態に戻っていた。


データ書込み中に、HD-HGLANの電源をOFF。Windows側にはエラーメッセージが……。大抵の場合、ファイルが壊れているが、テストした限りでは無事に開くことができた

 もちろん、この機能とて万能ではない。物理的なハードディスクの故障などには対応できないうえ、ファイルの操作方法によってはファイルが失われてしまうこともある。たとえば、アプリケーションからの更新ではなく、Windowsからファイルを上書きコピーしている最中に電源をOFFにしたときは、残念ながらファイルが失われてしまった(上書きコピーなどの場合、元のファイルはPC上に存在するので、あまり問題にならないが……)。
 また、この方式の弱点として、転送速度が落ちるという点もある。ファイルの書込み時にジャーナルを作成するため、そのボトルネックがどうしてもあるからだ。前述した書込み速度が遅いのも、この影響が大きいといえる。

 しかし、ジャーナリングファイルシステム非搭載など、何の対策もなされていない場合に比べれば、はるかに信頼性が高いことは言うまでもない。このような高い耐障害性を持ったLAN接続型ハードディスクというのは、実はあまり多くはないので、そういった意味ではHD-HGLANは高く評価できる。現状のLAN接続型ハードディスクの中では、お買得な製品だと言って差し支えないだろう。


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2004/06/01 11:11

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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