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第106回:エニーミュージック徹底解剖 その2
オーディオ機能の使い勝手を検証する


 前回に引き続き、エニーミュージックと対応オーディオ機器「SD-AN1-S」のレビューをお届けする。今回は、音楽配信サービス以外の機能、つまりオーディオ機器としての使い勝手を中心に試してみる。





オーディオ機器としての機能は?

シャープ製エニーミュージック端末「SD-AN1-S」
 これまで筆者はエニーミュージックのサービスや対応機器に対して、「いまひとつ何ができるのかがわかりにくい」という印象を抱いていたのだが、今回、実際にシャープの「SD-AN1-S」を使ってみることで、ようやく理解できた。

 前回、紹介した通り、SD-AN1-Sとエニーミュージックのサービスを利用することで、音楽をダウンロードして楽しむことができるのだが、この部分の情報ばかりが強調されているため、オーディオ機器としてどんな機能が使えるのかという情報があまり伝わってこないのだ。

 もちろん、機器の紹介ページなどを見れば、CDの再生やFM/AMの受信、そしてCDからHDDへの音楽の取り込みなど、おおまかな機能については理解することができる。

 しかし、取り込んだ音楽がどのフォーマットで保存されるのか、その音楽をポータブルオーディオプレーヤーなどに転送できるのか、その際、コピーになるのか、移動になるのかなど、わからない点も多い。実際に使えばこれらの疑問はすぐに解決されるだろうが、事前にわからないと購入にまで至らないというのがユーザーの心情だろう。





ひと工夫欲しいCD機能

 というわけで、オーディオ機器としての機能をひと通りチェックしてみた。まずは、CDだが、再生に関しては、通常の音楽CDに加え、CD-R/RWに保存されたMP3の再生にも対応している。手持ちのCDをMP3形式でストックしているようなユーザーには便利だろう。ただし、MP3をHDDに取り込むことはできない。

※注:ISO9660レベル1/2、Joliet以外のCD-R/RW。CD-EXTRAのデータ部、Combined CDのデータ部などは再生不可。もちろんDVDも再生できない


CD再生機能の画面。CDを挿入しただけでは再生されず、必ずファンクションをCDに変更する必要がある

 一方、音楽の取り込みだが、これはCDのファンクション画面で「録音」ボタンを押すことで可能となる。インターネット経由でCDDBからCDの情報が自動的に取り込まれて表示されるので、HDDへと取り込みたい曲を選択して再び録音ボタンを押せば取り込みが開始される。フォーマットはATRAC3で、ビットレートは標準で132kbps(66kbps/105kbpsも設定可能)となっている。

 ただし、この録音機能はもうひと工夫ほしいところだ。まずは、音楽を再生しながらの取り込みができない。正確には、音楽取り込みのオプション設定で「モニタ音」を「ON」にしておけば、音楽の取り込み中にその曲を再生することはできるのだが、これはあくまでも現在取り込み中の音楽しか再生してくれない。

 要するに、取り込みが開始されると、その曲の再生が開始され、取り込みが完了して次の曲へと移動すると、再生までも途中で終了させられてしまうのだ。音楽の取り込みは6倍速(モニタ音ON時)で行なわれるため、各曲のイントロだけしか聴くことができない。モニタ音をOFFなら8倍速での取り込みが可能なので、静寂に耐えながら、ただひたすら音楽を取り込んだ方がいいのかもしれない。


取り込み中に音楽を再生することもできるが、その曲を取り込んでいる間しか再生されない仕様となっている。バックグラウンドで取り込みを行なうなどの工夫が欲しいところだ

 なぜ、このような仕様なのかというと、これは個人的にこの機種の最大の欠点だと思うのだが、基本的に各機能がシングルタスクでしか動作しないからだ。たとえば、エニーミュージック対応機器ではCDやメモリースティックに保存されたデジタルカメラの画像なども表示できるのだが、普通ならばお気に入りの音楽をBGMとして楽しみながら画像を表示したいと思うのが人情だろう。しかし、シングルタスクのためにこれができない。音楽の再生、画像の表示、そして音楽の取り込みといった各機能は完全に個別のものとして扱われており、各機能の横の連携が実現されていないからだ。

 しかも、録音機能の仕様自体も賢さに欠ける印象がある。たとえば、CDから気に入った曲を数曲だけを選んで取り込んだとしよう。後日、同じCDから残りの曲も取り込みたいとする。この場合、普通に考えると、以前に取り込んだ曲は「取り込み済み」と表示されて欲しいところだ。しかし、残念ながらそうはならない。それどころか、同じCDであっても取り込み操作をするたびに、新しいフォルダに音楽が保存されてしまう。つまり、以前に取り込んだときと、新しく取り込んだときで、別々のフォルダに同じ曲がダブって取り込まれるという事態も起こりうるのだ。


取込先のフォルダを手動で指定しないと、同じアルバムでも複数のフォルダに新規に保存されてしまう。取り込んだ情報を利用してもう少しうまく管理できるようにしてほしいところだ

 もちろん、オプションで取り込むフォルダを選択すれば、以前に取り込んだときと同じフォルダに音楽を追加することもできるのだが、そのつどオプションで選ばなければならないという操作性は少々面倒だった。





オンエアリストを活用できるFM

 続いて、AM/FMだが、これは比較的よく出来ていると感じられた。普通にAM/FMラジオを聴くことはもちろんのこと、あ放送中の番組をHDDに録音することもできる。

 また、FM TOKYOなどで提供されているオンエア情報を取得することが可能で、現在、オンエアされている曲のアーティストやタイトルなども画面に表示される。この情報は、「ツール」ボタンを押すことでクリップ(データを保存)することも可能で、後からクリップした情報を参照して、エニーミュージックで曲を検索、ダウンロード購入するというような使い方もできる。


FM TOKYOなど、特定の放送局ではオンエア情報を表示することが可能。情報をクリップして、後から参照することもできる

 ただ、一旦、情報をクリップするというスタイルも若干違和感があるところだ。前述したようにシングルタスクの操作体系でなければ、FM再生画面に表示されたオンエア情報を選択することで、直接、エニーミュージックから音楽をダウンロードするということも可能だろう(もしくはバックグラウンドでダウンロードという手もある)。このあたりも、何とも惜しい仕様だ。





メモリースティックやMDにチェックアウト可能

 さて、最後は外部機器や外部メディアとの連携だ。エニーミュージックからのダウンロードやCDから取り込んだ音楽は機器本体で再生することはもちろんのこと、NetMDなどの外部機器(USB接続)やMagicGate対応メモリースティックなどの外部メディア(スロットを標準搭載)に転送することも可能となっている。


HDDに保存された音楽は、メモリースティックやMDへと転送することができる

 ただし、著作権保護対策がなされているため、自由に転送するというわけにはいかない。まず、転送の方式だが、CDからHDDに取り込んだ音楽に関しては3回までの転送制限が設定されており、この制限を超える回数のコピーはできないようになっている。

 HDDからメモリースティックやMDにチェックアウトした曲は、再びチェックインでHDDに戻すと回数のカウントが元に戻るようになっている。手持ちのMDやメモリースティック対応オーディオプレーヤーなどで音楽を楽しみたいという場合に便利だろう。

 なお、エニーミュージックからダウンロードした音楽については、著作権保護機能によって再生できる機器が限られていることがあるので注意が必要だ。

 また、MDの場合は問題ないが、ポータブルオーディオプレーヤーなどを利用する場合も注意が必要だ。前回も触れたとおり、エニーミュージック対応機器で扱える音楽フォーマットはATRAC3のため、これに対応したプレーヤーでないと再生できない。最近では、HDDを搭載した携帯音楽プレーヤーが主流になっていることを考えると、これらも接続可能にし、フォーマットも汎用的なものを利用してほしいと感じた。





普通に使うには十分だが、更なる機能や値下げに期待

 このように、CDやFM/AM、外部メディアなどの機能は、普通に使う分には問題ないものの、もう少し、便利に使うための工夫があっても良いのではないかと感じさられる部分がいくつかあった。

 もちろん価格が安ければ、それでも納得できるのだが、エニーミュージック対応機器は、決して安いとは言い難い価格設定だ。今回紹介したシャープの「SD-AN1-S」で参考価格が9万円前後、他社の製品もほぼ同等か、液晶ディスプレイが付属するものでは11万円前後もする。MDを搭載したミニコンポが3~5万円前後ということを考えれば、倍以上の価格だ。ハードディスクを搭載し、ネットワーク機能を備えているとしても高い価格だ。この値段ならば、せめてMDくらいは内蔵して欲しいと感じた。今後、機能が充実されていくか、価格が下がることを願いたいところだ。

 次回も同様にエニーミュージックと対応機器のレビューをお届けする予定だ。次回は、主にネットワーク機能について紹介していきたいと思う。


2004/06/22 11:01

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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