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第131回:環境を問わずどこでも使えるIP電話
「TaRaBa」に対応したプラネックス「VTL-ST02H」


 プラネックスから、M2Xが提供するIP電話サービス「TaRaBa」に対応したIP電話機「VTL-ST02H」が発売された。インターネットに接続できる環境であれば、プロバイダーを問わず利用できるIP電話端末だ。手軽に利用できるIP電話環境として、どこまでの実力を備えているのかを検証してみよう。





無料通話を手軽に実現

VTL-T02H
 プロバイダーの標準サービスとして提供されることも多くなり、次第に認知度が上がってきたIP電話。しかし、現状のサービスでは物足りないと考えているユーザーも少なくないことだろう。

 050番号を使う上での制約が多い、電話としての付加サービスが充実していないなど、物足りない点はいくつかあるが、中でも特に残念なのは、無料通話できる相手が限られる点だ。現状のIP電話は、同一のIP電話網を利用している場合か、提携先のIP電話網を利用している相手としか無料通話をすることができない。確かにIP電話網の相互接続は、当初に比べて進んできてはいるが、最近では有料での相互接続となるケースの方が多い状況だ。

 当初は無料通話を武器に市場に登場したIP電話だが、冷静に考えれば無料でサービスを提供し続けるのは事業者にとって決して嬉しいことではない。もちろん、通話料に関しては、従来の一般加入電話に比べて安くなるため、ユーザーにとってのメリットは確実に存在するが、平成電電の「CHOKKA」や日本テレコムの「おとくライン」などのような低価格の直収サービスも登場してきた今、その魅力が薄れつつあるのも事実だ。

 そんな中、プラネックスから手軽にIP電話による無料通話環境を構築できる製品「VTL-ST02H」が登場した。見た目は何の変哲もないIP電話端末だが、M2Xが提供するIP電話サービス「TaRaBa」に対応しており、IP電話網やプロバイダーを問わず無料のIP電話環境を実現することができるのが特徴だ。以前、ライブドアから、「livedoor SIP フォン」という端末/サービスが提供され話題になったことがあったが、細かなサービス内容に違いはあるものの、使い方としては非常に近いものと言えるだろう。


VTL-ST02H。見た目は普通の電話機と変わらない LANケーブルや電源アダプタ、延長ケーブルなどが付属する




つなぐだけでスグに使える

背面のLANポートに接続するだけで設定が完了する
 使い方は非常に簡単だ。VTL-ST02Hに用意されているLANポートを利用して、インターネット接続環境に接続し、電源を入れれば、すぐに利用可能となる。通常、IP電話を利用するには、手動もしくはインターネット上からの設定ダウンロードなどでSIP関連の設定を端末に登録する必要があるが、本製品では、このような設定は一切不要だ。

 VTL-ST02Hにはオート・プロビジョニングと呼ばれる機能が搭載されており、電源がオンになった時に、自動的にサーバーに接続し、設定をダウンロードするようになっている。逆に言うと、ユーザーが設定を変更する余地が残されていない(設定画面のアカウントが公開されていない上、オート・プロビジョニングが有効のままだと変更したとしても再起動時に自動的に書き換えられる)ということでもあるのだが、普通にIP電話端末として利用するには、これほど便利なものはない。NATなどを利用している環境でも自動的にNATを越えられるのでルータの設定なども必要ない。

 もちろん、前述したようにプロバイダーも問わない。今回は、筆者が普段利用していBフレッツ・ニューファミリー+ぷららの環境でテストしたが、何の問題もなく利用できた。基本的にインターネットに接続できればいいので、外出先のホテルや海外などでも利用できる。実際に使うかどうかは別にして、その気にさえなれば、無線環境を用意してホットスポットなどで使うこともできるだろう。

 このように手軽に利用できるVTL-ST02Hだが、購入時の状態では、かけられる相手先が同じくTaRaBaを利用しているユーザーのみに限られる。VTL-ST02Hには、TaRaBaの30日間無償カウントが付属しているが、このアカウントの場合、一般加入電話や携帯電話への通話はできない。一般加入電話などへの通話には、加入料1,000円、月額基本料350円の料金がかかる「シンプルプラン」への加入が必要だ。TaRaBaのホームページから加入できるので、必要がある場合は加入しておこう。

 なお、一般加入電話への通話が必要ない場合でも、サービスへの加入は必要だ。標準で付属するアカウントは30日間しか利用できないため、期間経過後はサービスに加入しないと利用できない。一般加入電話の通話ができない「基本コース」であれば月額300円(加入料は同じく1,000円)で利用できるので、どちらかのプランに加入するといいだろう。





着信で使うには難しい

 実際に通話してみた印象だが、音質的には何の問題もなかった。電話のかけ方も受話器をあげてダイヤルするだけと、普通の電話とまったく同じで違和感もない。発信に関して言えば、かなり実用度は高そうだ。

 しかしながら、問題は着信だ。端末には8桁のTaRaBa番号が割り当てられ、これが着信用の電話番号となる。よって、同じくTaRaBaのサービスを利用しているユーザーからであれば、この番号で着信するのだが、一般加入電話などからは当然のことながら着信できない(アダプタタイプのVTL-TA02Xの場合は一般加入回線を接続することで一般加入電話での着信は可能)。IP電話という名称は使われているが、実質的にはソフトフォンなどと同じ範疇の、インターネット電話と言えるだろう。

 また、実際に使ってみて不便だと感じたのが、発信者番号の問題だ。端末に割り当てられる番号は8桁のTaRaBa番号だが、一般加入電話に電話をかけた場合に相手に通知されるのは、自宅の電話とはまったく関係のない「03-xxxx-xxxx」といった電話番号だ。おそらく電話を転送しているゲートウェイだと推測されるが、相手先に通知されるこの番号折り返し電話をかけても、電話はつながらないのだ。

 また、この番号にかけたときのメッセージも誤解を与える可能性がある。「お客様の契約内容ではダイヤルされた相手先に接続できません」とアナウンスされるのだ。TaRaBaを契約しているユーザーであれば、このメッセージを聞くことで即座に理由がわかるが、前述したように相手が折り返して電話をかけたような場合、このメッセージが流れてしまうと、ダイヤルした方、つまり折り返し電話した自分の契約内容に問題があると思ってしまうかもしれない。

 実際の利用シーンを想定すると、TaRaBaの利用者がこの番号に電話をかけることはほとんどないだろう。であれば、「TaRaBaのサービスを使って電話をかけたので、相手の通常の電話番号にかけ直してください」といったように、TaRaBaのサービスについてまったく知らない相手が電話をかけたとしても、その事情がわかるようなメッセージを流すべきだろう。このあたりは、もう少し配慮が必要だと感じた。





ホットライン的な使い方が適する

 このように、一般加入電話からの着信ができない点を考えると、おそらくホットライン的な使い方が適している製品/サービスと言えそうだ。本店と支店、自宅と実家、遠距離恋愛の恋人同士など、気心の知れ合った相手と無料で通話したいという場合に使うのが現実的と言える。欲を言えば、050番号が使えるようになって欲しいところではあるが、このようにホットラインとして割り切ったサービスとしてのみ利用するのも悪くはない選択だ。

 このほか、ビジネスホンのように回線を選択するためのラインキーが用意されていたり、短縮、ダイヤル機能を備えているなど端末の機能は豊富である上、TaRaBaのサービスでは同じアカウントでの同時ログインが実現されており、VTL-ST20HとPCにインストールしたソフトフォンに同じアカウントを設定することにより、着信時に両方を同時に呼び出すことなども可能と、ほかにはないサービスも提供されている。

 しかし、プロバイダーなどが提供している既存のIP電話との置き換えとなると、現実的には難しい。特定の環境でホットライン的に使いたい場合に検討すべき製品だろう。


関連情報

URL
  VTL-ST02H製品情報
  http://www.planex.co.jp/product/con_acce/vtl-st02h.shtml

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2005/01/18 11:13

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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