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第148回:HDDを搭載したインターネット対応液晶テレビ
東芝「ちょっとタイムface」が提案する新しいテレビの視聴スタイル


 東芝から、液晶テレビ「face」の新モデルが登場した。同社のテレビでは、以前にも「face 37LZ150」を本コラムで取り上げたが、今回のモデルは本体にHDDを搭載した点が特徴だ。どのような製品なのかを検証していこう。





ネットワーク機能は必要最低限

 以前、本コラムでレビューした「face LZ-150シリーズ」は、ネットワーク接続したHDDにテレビ番組を録画する機能を搭載しており、バージョンアップでDLNAにも対応予定と、ネットワーク機能の充実が特徴の1つだった。その東芝の新型液晶テレビということで、ネットワーク機能の強化を期待した読者もいるかもしれないが、今回の「face 26LH100」はインターネット接続には対応しているものの、LZ-150シリーズのようなネットワーク機能は搭載されていない。


東芝の新型液晶テレビ「face 26LH100」と付属のリモコン。本体にHDDを内蔵し、インターネットへの接続にも対応している


 具体的には、ブラウザとメーラー機能を利用してのホームページ閲覧とメール送受信が可能だ。リモコンの「faceネット」ボタンを押し、「インターネットをしたい」を選択すると、ブラウザが起動してホームページが閲覧できる。表示速度が遅く、FLASHなどの特殊なコンテンツも再生できないのは、26LH100に限らずテレビ系のブラウザに共通する弱点と言えるが、PCと違って起動に時間がかからない点は便利だ。


本体にブラウザを搭載。FLASHなどは表示できないが、お気に入りの利用、URLの入力などで、一般的なホームページの閲覧が可能


 表示できる情報量が少なく、リンクの選択やスクロールをリモコンで操作するのが大変なため、詳細な調べ物は難しいかもしれないが、出かける前に首都高速のホームページなどをさっと表示し、渋滞情報を調べるなど、使えると便利なシーンも少なくなさそうだ。

 メール機能そのものに関しては、携帯電話やPCを利用した方が便利なので、テレビで使えるメリットをあまり感じないが、本体のメール受信機能を利用することで、外出先からメールを利用して録画予約をすることが可能だ。また、ちょっとタイム向けに携帯電話から録画予約が可能なサービス「テレビサーフモバイル」も提供され、番組表などから録画したい番組を設定できる。





HDD内蔵でテレビシフトが画期的に

 このように本コラムの趣旨であるブロードバンドという観点から見ると、必要最低限の機能を備えたという印象のface 26LH100だが、AV機器的な観点から見るとなかなか個性的な製品と言える。

 最も特徴的なのは、本体に160GBのHDDを搭載している点だ。このHDDを利用することによって、アナログ放送(2系統搭載だが同時録画は不可で裏番組録画用)、地上デジタル放送、BSデジタル、110度CSデジタル放送を録画できるのだが、これ以外に、その名前の由来とも言える「ちょっとタイム」と「今すぐニュース」という機能が利用用意されている。


内蔵HDDがiLinkで接続されており、アナログ放送、デジタル放送の録画が可能。番組表から録画したい番組を選ぶだけと手順も簡単だ


録画した番組は、リモコンの「録画リスト」ボタン、もしくはfaceネットボタンから参照できる。160GBのHDDなので、特にデジタル放送に関してはさほど多くの番組を録画できない

 「ちょっとタイム」は、PC系のチューナーやHDD搭載レコーダなどでもおなじみの、いわゆるタイムシフトだ。face 26LH100でテレビ番組の視聴中にリモコンの「ちょっとタイム」ボタンを押すと、その時点からHDDに映像を録画を開始するモードへと切り替わる。これにより、席を外すときに一時停止しておき、戻ってきてから早送りや巻き戻し操作で続きを楽しむことが可能だ。


ちょっとタイムで地上デジタル放送をタイムシフトしたところ。画面右下にどれくらいの時間差で再生しているのかが表示される


 タイムシフトという考え方は決して新しいものではないが、これがテレビ自体に搭載されたというのは画期的だと感じた。もちろん、レコーダを利用すれば同じことができるが、そのためにはわざわざビデオ入力に切り替えてテレビを見なければならない。要するに、普段からレコーダ側でテレビを見るようにするか、あらかじめタイムシフトをすることを予想して、レコーダでテレビを見る必要があるわけだ。

 これに対して、face 26LH100の場合、普通にテレビを見ているときに何の準備もなく、すぐにタイムシフトを利用できる(デジタル放送も可能)。このため、何気なくテレビを見ているときに電話がかかってきたなどという場合でも、とっさに「ちょっとタイム」で一時停止することが可能だ。これは確かに便利な機能だと感じた。タイムシフトという機能を実際の生活シーンでどう使えば便利なのかを、開発者が真剣に考えたことが伺える製品だ。





いつでも最新のニュースが見られる「今すぐニュース」

 一方、「今すぐニュース」は新しい考え方の機能で、簡単に言えばニュース番組の自動録画機能だ。テレビの初期設定でチャンネルと時間を指定しておくと(標準ではNHKのニュース番組を朝、昼、夜、自動録画)、2系統あるアナログチューナーのうちの1つを使って、その番組を更新しながら自動的に録画しておいてくれる。このため、たとえば帰宅時などにニュース番組が放送されていなかったとしても、リモコンの「今すぐニュース」ボタンを押すだけで、直近のニュース番組をすぐに見ることができる。


今すぐニュースボタンを押すと、録画された直近のニュース番組が再生される。録画するニュース番組は初期設定で設定可能


 ちょうど本製品をテストしているときに、NHKの科学番組で未来のテレビというテーマの番組が放送されており、そこでHDDに番組を蓄積しながら再生する技術が紹介されていたが、イメージとしてはこれに近い。もちろん、NHKの番組で紹介されていたものは、ニュース番組の特定のニュースシーン、スポーツの得点シーンなど、番組内の特定シーンだけを検出してオンデマンド再生できるという高度なものだったが、同様にニュースという特定の番組をオンデマンドでいつでも見ることができる。

 この機能に関しても、レコーダでニュース番組を自動録画しておけば済むという意見もあるかもしれないが、それを面倒な設定なく、誰にでも使えるようにしてある点を評価したい。face 26LH100を利用している限り、気になるニュースがあっても、もはやほかの番組が終了するまで待つ必要はないわけだ。





新しいテレビのスタイル

 このように、東芝のface 26LH100は、HDDを搭載することで、新しいテレビの視聴スタイルを提案した製品となっている。テレビ番組をHDDやDVDに録画するのは、もはや当たり前とも言えるが、その先でテレビをどう使えば便利かというのを再認識させてくれる製品だ。このほか、本体のHDDユニットが交換可能(ドライブ単体の交換ではない)になっているのも面白い点だ。


本体の台座部分に内蔵されているHDDユニット。ネジを一本ゆるめるだけで簡単に取り外すことができる。あくまでもHDDが故障したときなどのメンテナンス用だ

 個人的には、以前に紹介した「face LZ-150」シリーズと今回の製品の機能が両方搭載されたような製品が欲しいところだが、幅広いユーザー層に訴求できるのは、むしろ今回の製品の方だろう。価格的に見ても、同サイズの他社製品とさほど変わらない戦略的な価格設定が行なわれている。もはや薄くてキレイなのは当たり前というテレビの世界を考えると、こういった付加価値も1つの戦略だろう。


関連情報

URL
  face LH100シリーズ
  http://www.toshiba.co.jp/product/tv/lh/index_j.htm

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2005/05/24 11:08

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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