テレビ朝日とTBSがYouTubeに公式チャンネル開設
グーグルは29日、テレビ朝日およびTBSテレビ(TBS)との間で、コンテンツライセンス契約を締結したと発表した。これにより同日から、動画共有サイト「YouTube」で各局の一部番組が視聴できるようになる。
テレビ朝日のコンテンツは「ANN ニュースチャンネル」と「tvasahi チャンネル」で、TBSのコンテンツは「TBS News-i」で視聴できる。それぞれ、主にニュース番組が配信される。
「ANN ニュースチャンネル」 | TBS News-i |
■ドラマやバラエティの配信は未定
ドラマやバラエティなどニュース以外の番組配信については各局とも未定だ。TBSコンテンツ事業局長の氏家夏彦氏は、「ビジネスにならなければ意味が無い。今の日本のWeb広告のレベルでは難しい」とコメントする一方で、「可能性はある」と述べた。
「番組のプロモーションができればいいと割り切った場合は、さまざまなコンテンツを配信する可能性もある。TBSは非常に苦しい状況。なんとかしてお金を儲けようと思っているが、お金だけでないメリットがあればその都度考えていきたい。」(氏家氏)
テレビ朝日コンテンツビジネス局クロスメディア専任局長の古川柳子氏も「(TBSの考えと)同じ」とコメント。映像コミュニケーションの実験場という位置づけの「tvasahi チャンネル」についても、「まだまだ権利の問題があり、番組配信に至らない」とした。
TBSコンテンツ事業局長の氏家夏彦氏 | テレビ朝日コンテンツビジネス局クロスメディア専任局長の古川柳子氏 |
■課金システムの導入を要望
米Googleパートナー事業戦略担当副社長のデービッド・ユン氏 |
YouTubeを活用するメリットについてTBSは、「TBSコンテンツのブランドプロモーションとしても大きな意義がある」と説明する。TBSはこれまでもYahoo! JAPANやMSNなどでニュース番組を配信、ニコニコ動画では深夜番組「アナCAN」との共同企画も展開しているが、関係者の合意が得られればYouTubeでも番組の共同展開をしたいという。
一方、テレビ朝日はYouTubeを「海外からのアクセスポイント」として見ているという。「YouTubeはグローバルなサービス。多くの日本企業がグローバル化する中、広告自体もグローバルが求められているが、YouTubeは世界に目を向ける広告主の要望に応えることが可能だ」。
また、今後のYouTubeに求める点として氏家氏は、視聴者に課金するサービスの導入を挙げた。この点について米Googleパートナー事業戦略担当副社長のデービッド・ユン氏は、「広告の無料モデルに依存しないビジネスモデルの可能性を模索している」とコメントしたが、発表できることはないという。
なお、TBSはYouTubeの動画に対する広告やコメント機能を活用していない。その理由について氏家氏は、「広告を付けるにはまだ詰める部分がある。コメント投稿も魅力的だが、バラエティとは異なりニュースはふざけられないコンテンツ。そのあたりは慎重に考えていきたい」と説明。ただし、広告については早期に導入したいと述べた。
このほかGoogleでは、テレビ朝日とTBS以外の民放各局との連携について「これまでも会議の場を設けており、ディスカッションもしているとだけ申し上げる」(ユン氏)として、可能性があることを示唆した。一方、テレビ朝日とTBSも、YouTube以外のサービスとも引き続きビジネスモデルを模索する考えを示した。
■コンテンツライセンス契約に至った背景
(左から)グーグル代表取締役社長の辻野晃一郎氏、TBSの氏家氏、テレビ朝日の古川氏、米Googleのユン氏 |
なお、今回の提携に当たってはテレビ朝日とTBSが、YouTube側の著作権対策「コンテンツIDシステム」を評価。それぞれ実用できると判断したことから、グーグルとのコンテンツライセンス契約の締結につながったという。
「TBSでは今年2月から3月にかけて『ザ・イロモネア』と『ラブシャッフル』の見逃し視聴サービスを開始した。その際にYouTubeでも検証を行ったところ、ほとんどすべての違法動画を削除できた。YouTubeは全世界の動画視聴の4割を占めるが、そこから著作権侵害コンテンツが駆逐されるということは、コンテンツホルダーにとって大きなプラス。こういうわけでパートナーシップを結ぶことになった。」(氏家氏)
「テレビ朝日でも違法動画は大きな問題となっていて、ここからYouTubeとのやりとりが始まった。その後、YouTubeで違法動画を削除するシステムにさまざまな注文を付けてきたが、コンテンツIDシステムは実用にたり得ると判断した。今後もパートナーとして、技術開発にも意見していきたい。」(古川氏)