A.F.データから発売されているバックアップソフト「ふっかつのじゅもん for HDD」は、ハードディスクに記録されているデータを「ふっかつのじゅもん」に変換して書き出すことができるソフトウェアだ。電子データをアナログの文字データとして紙にバックアップし、バックアップ済みのファイルは、米海軍準拠方式やグートマン方式等を用いて完全消去する。このため、ウィニーP2Pネットワーク上にファイルを放流するキンタマウイルスや、マシンをWebサーバーに仕立てて全ファイルを公開する山田オルタナティブなどに感染した場合も、「ネット上への情報流出を完璧にブロックできる(A.F.データ)」のが最大の特徴だ。
ただし、バックアップが完了するまでは、ファイルが存在するため、通常のウイルス対策や個人情報漏えい対策を必要とする。このため、開発元のA.F.データでは、「紙へのバックアップを早めるため、別途料金で速記者養成ソフトをご案内しています」という。
■ハードディスク内のデータを「ふっかつのじゅもん」に変換して表示
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「ふっかつのじゅもん for HDD」の製品パッケージ。メーカーのAFソフトでは、初回出荷分100本に大学ノート300万冊をバンドルするキャンペーンを実施中
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本製品は、ハードディスクに記録されているデータを、計64文字のひらがなから成る「ふっかつのじゅもん」に変換し、紙に転記して保存するという、どこかで聞いたような発想のバックアップソフトだ。対象となるハードディスクは内蔵か外付けかを問わない上、USBメモリやDVDなどのバックアップも可能とされているなど、汎用性が高いのが特徴だ。
ではさっそく試用してみよう。インストール後本製品を起動させ、バックアップ元のドライブを選択して「セーブ」をクリック。すると、ハードディスク内部のデータが64文字のひらがなから成る「ふっかつのじゅもん」に変換され、画面上に表示される。この文字列を一字一句ノートに書き写すことにより、データのバックアップが行えるという仕組みだ。
気になる文字数だが、160GBのハードディスクいっぱいにデータが保管されていたとして、64文字のひらがなから構成された「ふっかつのじゅもん」に置き換えると、およそ2,000億文字。バックアップ先に大学ノートを選択した場合、1ページが40字×20行、計100ページあったとして、単純計算で270万冊程度の大学ノートが必要になる。1秒間に2文字ずつ書き写したとして、不眠不休で約3,000万時間後、年に換算するとおよそ3000年後にはバックアップが完了する計算だ。
バックアップが完了する頃には、西暦5000年問題が大きな社会問題となっているほか、21エモンならぬ51エモンがマンガ誌に登場、また中国三千年の歴史は中国六千年の歴史にグレードアップしていると考えられる。おそらくその頃にはWinnyなるソフトは世の中から絶滅していると推測されるが、この際あまり細かいことは気にせず、スローライフの精神で臨みたい。
■データの復旧はキーボードから一文字ずつ入力。もちろんミスは厳禁
バックアップからデータを復旧させる際は、書き写した「ふっかつのじゅもん」を、キーボードから再度入力する。当然ながら一文字でも間違えると無効になり、何千年という単位で時間をロスすることになるので、作業は慎重に行う必要がある。データの復旧が無事終了する頃には、タカヤノリコが宇宙から帰還すると推測されるので、オカエリナサイのイの字を左右逆にして快く出迎えたい。
ちなみに、開発元のA.F.ソフトでは、テストのために3000人の臨時スタッフを雇用し、1人で行うと3000年かかるバックアップテストを分担して約1年で完了させたとしているが、そのうち数十人はテストの途中で旅に出てしまったとのことで、バックアップ担当者の精神的なケアが最大の課題であると考えられる。
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Windows XPの画面上で「ふっかつのじゅもん」を起動したところ。どこか懐かしい黒バックの画面が印象的だ。ちなみにこれは復号化の画面
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400字詰め原稿用紙へバックアップ中の図。160GBを全てバックアップするためには、400字詰め原稿用紙はおよそ5億枚が必要だ。なお、バックアップ完了予定日は西暦5006年(平成3018年)頃が有力
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■ネットへの情報漏えい防止に絶対的な強み。個人情報を扱う大手法人に最適
本製品はデジタルデータをアナログで保管するという革新的な手法により、ネットへの情報漏えいに対して絶対的な強みを持つのが特徴だ。いま社会問題となっているWinnyによるデータ流出にも無縁であり、個人情報を数多く扱う官公庁や大手企業のセキュリティ対策ソフトウェアとして強く導入をお勧めしたい。
敢えて問題点を挙げるとすれば、ノートの消費しすぎによる森林伐採などの非エコロジー性だろう。また、バックアップに約3000年かかるため、強靭な精神力のほか、子孫を絶やさぬ繁殖能力が必要となる。作業開始前には山に数ヶ月こもって滝に打たれるなど、鍛錬を怠らぬようにしたい。また、書き取りの字が汚いのは命取りになるので、筆者のように手書き文字の「ぬ」と「ゆ」の見分けがつきにくい人間には、間違っても書き取りを担当させないほうがよいだろう。
■ URL
A.F.ソフト
http://www.artificial_fool_software.orz/
(山口真弘)
2006/04/01 00:05
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