■ USBメモリを介した無線LAN設定を行なえる「Windows Connect Now」
無線LANの普及に伴い、たびたび語られているのが、セキュリティに対する認識の甘さだ。物理的な接続がない無線LANでは、例えば隣家などからアクセスされ、家庭内ネットワークに侵入される恐れがあるという点を見逃しがちだ。設定しようにも、ESS-ID、WEP、WPAなど無線LANのセキュリティに関する用語がハードルとなって、面倒に思ってしまうせいかもしれない。
今回取り上げるアイ・オー・データ機器の「WN-APG/R-S」は、このセキュリティを含めた設定を簡単に行なえることをひとつの売りにしている。その目玉は、Windows XPのService Pack 2でサポートされた「Windows Connect Now」に対応している点だ。Windows Connect Nowでは、WEPやWPAなどのキーを含めた情報をUSBメモリなどに保管し、それを介してネットワーク内の無線LANアダプタの設定を自動的に行なえるものだ。
そのほかにも本製品は、無線LAN設定の切り替えや、無線LANやインターネットの機能をボタン1つで切断できるなど、セキュリティに配慮した機能が搭載されており、ここ最近で登場したルータ製品のなかでも、ユニークな機能を搭載した存在となっている。
では、まずは外観から見ていきたい。プラスチック製の筐体を持つ本製品には、縦置き台も付属しており、文字の向きからしても、縦置きを前提とした製品であることがわかる(写真01)。
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写真01:
縦置き利用を前提としたボディで、本体サイズは約143×33×150mm(幅×奥行×高)。ただし、このサイズにはスタンドが含まれないので、スタンド装着時は30mm弱ほど幅が増す
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写真02:
本体前面。無線LANのモードやWAN側接続のほかに、選択している無線LANセキュリティ設定を示すLEDやUSBポートを装備するのが特徴的。LAN側コネクションを示すLEDは備えない
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前面は、本製品独特のLED類が並ぶ(写真02)。最上段にIEEE 802.11a/b/gの無線LANモードを示すLED、続いて「Internet」と表現されたLEDはWAN側が接続状態にあるかを示すものである。側面には本製品の特徴の1つでもある、ショートカットボタンが並ぶ(写真3)。
最上段の「ワイヤレス」ボタンは無線LANの有効/無効の切り替え、「インターネット」ボタンはWAN側接続の有効/無効を切り替えるものだ。いずれも設定画面を呼び出さず、瞬時に切断できるのが大きなポイントといえる。「セキュリティ」と「USB」ボタンについては、設定画面を見ないことには機能の概要を知ることができないので、後述することにしたい。
背面はシンプルである(写真04)。WAN側ポートが「インターネット」と記されている以外に、目立ったところはない。ちなみに最上段にはアンテナの接続口が用意されているが、ここに取り付けるアンテナも製品に付属している。
ACアダプタは、ACケーブルとアダプタ部が分離するタイプが付属(写真05)。このほか、ドライバやオンラインマニュアルが収録されたCD-ROM、簡単セットアップガイドなどの初期導入マニュアル類が付属している。
ちなみに、本製品にはルータ単品の「WN-APG/R」と、無線LANカードが付属する「WN-APG/R-S」がラインナップされている。後者に付属するLANカードは、IEEE 802.11a/b/gに対応する「WN-AG/CB3」である(写真06)。
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写真03:
側面に装備するショートカットボタン。無線LANやWAN側の接続/切断、セキュリティ設定の切り替えなどが可能。USBボタンは後述のWindows Connect Nowの設定ファイルを呼び出すボタンである
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写真04:
本体背面はいたってシンプルで、WAN×1、LAN×4の構成。いずれもAuto-MDI/MDI-Xに対応
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写真05:
付属のACアダプタ。本体のカラーリングに合わせた白色が印象的。アダプタ部とACケーブルが分離するタイプだ
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写真06:
カードセットモデル「WN-APG/R-S」に添付される「WN-AG/CB3」
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■ プリセットされたセキュリティ設定が用意される
続いては、設定画面をチェックしていきたい。本製品の設定はWebブラウザからIPアドレスを打ち込んで画面を呼び出す一般的な手法だ(画面01)。初期パスワードは設定されていないので、できれば最初に登録しておきたい。
では、WAN側の設定から順に見ていこう。WAN側の対応接続方法は、固定IP/DHCP/PPPoE/IP Unnumberedと、ごく一般的である(画面02)。当然、PPPoEのマルチセッションにも対応しており、最大で4セッションまで可能である(画面03)。
また、フレッツ・スクウェアへの接続については、WAN側のPPPoE接続を指定したときのメインセッションの設定画面に用意される、「マルチセッションでフレッツスクウェアに接続する」にチェックを入れるだけで自動的に設定されるのは便利だ。このほか、WAN側の設定画面では、マルチセッション接続時のルーティングポリシーを設定することもできる。
一方のLAN側の設定だが、こちらはいたってシンプル(画面04)。加えて、DHCPサーバーの設定は別画面になっており、リース時間や静的なIPアドレスの割り当てが可能など、充実した設定項目が用意されている(画面05)。さらに細かいリース範囲などを設定できる機種もあるだろうが、個人ユーザー向けの製品としては十分だ。
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画面01:
Webブラウザによる一般的な設定画面。初心者向けのウィザード機能を装備しない点は対象ユーザーを考えると意外にも感じるが、全体としては標準的な作りである
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画面02:
WAN側の接続は固定IP、PPPoE(IP Unnumbered対応)、DHCPからの取得が選択可能
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画面03:
最大4セッションの接続に対応。フレッツ・スクウェアへのマルチセッション接続はチェックボックス1つで設定が完了する簡便さ
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画面04:
LAN側の設定画面は固定IPアドレスならIPアドレスとサブネットを指定、もしくはDHCPからの取得を指定するだけのシンプルなもの
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画面05:
DHCPサーバーの設定では、リース範囲・期間のほか、MACアドレスと対称して静的なアドレス割り振りも行なえる
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次に一般的なセキュリティ関連の項目を見ておこう。本製品では、プリセットされたセキュリティ設定が3種類用意されており、まずはここから選択する形になる(画面06)。ここで用意されるのは「標準」「中」「高」の3種類で、「中」に設定するとSPIが有効になり、「高」に設定するとSPIに加えてFTP/HTTP/SMTP/POP3以外のポートをすべて塞いでくれる。デフォルトでは「標準」に設定されているが、これはSPIが有効になっていない状態なので注意したい。
もちろん、カスタム設定も可能だ。「カスタム」を選択すると、左側に新たなメニューが表示される仕組みで、NATやIPフィルタの設定を手動で設定できることになる(画面07)。
まず、NATに関する設定だが、WAN側のポート、転送先のLAN側IPアドレス/ポート番号を指定するシンプルなもの(画面08)。加えて、全パケットを指定したアドレスに転送するシンプルなDMZ機能も装備し、こちらはWAN側に複数の固定IPアドレスを取得できる環境にも対応する(画面09)。
IPフィルタリングの設定は、受信/送信の各IPアドレスが指定できるなど、かなり細かい(画面10)。ただし、各IPアドレスやポートは通過の拒否・許可を個別に設定することができず、登録したルールに対してまとめて拒否・許可を設定することになる。この辺りの設定に手を出す人にとっては、物足りないと感じるかもしれない。
このほか、セキュリティに関する設定としては、WAN側からの管理画面の呼び出しなどを指定する画面が別途用意されている(画面11)。ここではWAN側のPing応答の可否なども設定できる。
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画面06:
この画面はルータ全般のセキュリティレベルを選択する画面。あらかじめプリセットされた標準・中・高の3段階を選択できるほか、カスタム設定を指定することもできる
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画面07:
画面06を比較するとわかるが、カスタムに設定すると、左側に新たなメニューが追加される
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画面08:
明示的なポートフォワーディングを指定できる「仮想サーバー」画面。WAN側ポートと、LAN側のIPアドレス・ポート番号を指定可能
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画面09:
DMZ機能はネットワークを分離する本格的なものではないが、WAN側に複数IPアドレスを取得できる場合、各IPアドレスに対してどのクライアントに転送するかを指定できる
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画面10:
IPフィルタの設定は、送受信のIPアドレス・ポートを細かく指定は可能だが、登録した設定すべてをまとめて許可・拒否しか指定できないのが惜しい
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画面11:
システム管理の画面からUniversal Plug&Playなどの設定が可能。syslog転送機能も備える
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写真07:
本体背面のラベルに、プリセットされたESS-ID、WEPキーなどが記されている。なお、ESS-IDは本製品すべて共通で、WEPキーは個体ごとに別々の値が割り当てられているようだ
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続いて、無線LANに関する設定を見ていくことにしたい。本製品はIEEE 802.11a/b/gの規格に準拠した無線LANを使用可能で、IEEE 802.11a、IEEE 802.11gは、それぞれSuper A/Gにも対応する。無線LANの設定画面では、これらを切り替えることができる(画面12)。
さらに、当然ESS-IDやWEP、WPAのキーなどを指定することもできるが、ここが本製品の1つのポイントになる。ここには、「プリセット」「カスタム」「無し(SSID固定)」の3種類の選択肢が用意されるが、先に紹介した本体側面の「セキュリティ」ボタンは、この設定を切り替えるものだ。
この中でわかりにくいのが「プリセット」だと思われるが、これは出荷される製品ごとに異なるWEPキーを割り当てられた設定である。このWEPキーは本体背面のラベルに貼られており、クライアントの設定をするときは、ここを参照すれば良いわけだ(写真07)。
ちなみに「プリセット」でもESS-IDの変更はできないが、さらに「無し(SSID固定)」というものが用意されている。「無し(SSID固定)」は、SSIDが「default」に設定される点と、WEPなどのセキュリティが施されない点が違いとなる。
ESS-IDやセキュリティ設定を自分で施したい場合は、「カスタム」を選べば可能である(画面13)。セキュリティ機能は、WEP 64/128/152bit、WPA-PSK(TKIP/AES)、WPA-EAP(TKIP/AES)に対応する。
さらに、無線LANに関しては非常に設定が豊富で、別途画面が用意されている(画面14)。ビーコン間隔や送出距離、周波数帯別に使用する規格を制限するなどが可能だ。このほか、本製品をアクセスポイント専用としたり、アクセスポイント間通信の設定を行なえる画面も用意される(画面15)。
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画面12:
無線LANの設定画面では、IEEE 802.11a/b/gの各動作モードや無線LANセキュリティの選択が可能
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画面13:
無線LANセキュリティ設定で任意の設定を施したい場合は、「カスタム」を選択することで設定項目が表われる
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画面14:
無線LAN詳細設定の画面では、ビーコン/DITMのインターバルや各種パケットサイズが指定できる。また、IEEE 802.11a/gの有効/無効の切り替えや速度制限などを指定可能
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画面15:
ルータの動作モードやWDSに関する設定が行なえる
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■ Windows Connect Nowに対応した無線LAN設定転送機能

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写真08:
Windows Connect NowではUSBメモリに設定を保持し、それを転送できる。本製品では前面のUSBポートにメモリを挿し、側面のUSBボタンを押すことで設定が施される。なお、本製品付属のUSBメモリは32MBの容量を持つ
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さて、設定画面のチェックの最後に、本製品の目玉といえるWindows Connect Nowへの対応について紹介しておこう。Windows Connect Now自体は前述したとおり、Windows XPのService Pack 2に実装されているものだ。
本製品に付属のクライアントユーティリティでは、Windows Connect Nowで作成されるWPAなどのキーを含めた設定ファイルと互換性のあるファイルをUSBメモリに保存できる。そして、ルータのUSBポートにそのUSBメモリを装着し「USB」ボタンを押せば、設定内容がルータに反映される仕組みになっている(写真08)。
クライアントユーティリティでは、そうした設定を作成することが可能だ(画面16)。クライアント側でESS-IDやWEP/WPAなどのキーを設定し、その設定内容を指定したUSBメモリに保存することができる(画面17~20)。そのUSBメモリを本製品や他の無線LANクライアントとなるPCへ設定が転送できるのである。
ちなみに、本製品を単品購入した場合などは、当然、アイ・オー・データのクライアントユーティリティは利用できず、Windows XP Service Pack 2の機能を使うことになるが、こちらも「ワイヤレスネットワークセットアップウィザード」から作業が進められるので、さほど難しいことはない(画面21)。
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画面16:
クライアント側のユーティリィ。設定ウィザードでは、Windows Connect Nowの情報を取得したり、手動で設定を施せる。また、WPAによるセキュリティを施した設定を自動的に作成することもできる
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画面17:
ウィザードの最後に表れる「WCN UFDを作成する」のチェックを付けると、USBメモリに設定が保存される(ただし152bit WEPを指定した場合は項目が表れないので利用不可)
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画面18:
設定を保存したUSBメモリ内のファイル。IOMSWCN.DLLはWindows標準機能を利用すると作成されないが中身の詳細は不明。このファイルが削除されても設定情報の転送に支障はなかった
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画面19:
SMRTNTKYフォルダ内のWSETTING.TXT内に、平文で情報が書かれる
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画面20:
ほかのクライアントPCへ設定を移行する場合は、USBメモリ内のsetupSNK.exeを実行すれば、優先ネットワークリストに組み込まれる
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画面21:
Windows XP SP2標準のワイヤレスネットワークセットアップウィザード。ウィザードの手順内に上記画面が組み込まれているので、USBメモリに情報を保存できる
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画面22:
本製品のクライアントユーティリティでは、Wireless Zero Configrationを有効にできる
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ただし、注意したいのはWireless Zero Configrationのサービスが有効になっていないと、ワイヤレスネットワークセットアップウィザードは実行できない点だ。クライアントユーティリティが用意されている製品だと、Wireles Zero Configrationが無効になってしまう場合があり、設定で有効にする機能があれば切り替える必要がある(画面22)。
クライアントユーティリティにこうした機能がない場合は、無線LANアダプタに付属のクライアントユーティリティを実行せず、かつコントロールパネルのサービスからWireless Zero Configrationを強制的に有効にしなければならない(画面23・24)。
もちろん、クライアント側に設定した内容をルータ側へ反映させるだけでなく、ルータ側の設定画面にもUSBメモリで設定を保存する機能がある(画面25)。この内容をクライアント側に反映させることも可能だ。
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画面23:
クライアントユーティリティによっては自身を無効化できない場合もある。その場合はユーティリティを終了し、Wireless Zero Configrationのサービスを強制的に開始する必要がある
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画面24:
もちろん、Windowsでワイヤレスネットワーク管理を行なうよう設定を行なう必要もある
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画面25:
ルータ側にも設定を保存する機能がある。こちらの内容をクライアント側へ転送することも可能だ
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■ 試用環境での有線スループットは公称値には及ばない結果に
それでは、スループットの測定を行ないたい。環境は図1、表1に示すとおりである。本製品の公称値は、FTP転送で92Mbps。最近では90Mbpsオーバーも珍しい数字ではなくなったが、100BASE-TXの限界に近い高速な製品といえる。
なお、レビューで試用した製品のファームウェアは「Ver.1.00」となるが、2月8日付けで「Ver.1.02ベータ」が公開されている。
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図1:テスト環境
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表1:テスト環境
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サーバー |
クライアント |
クライアント-ノートPC |
エプソンダイレクト
EDiCube F750 |
CPU |
Pentium4 550 |
Pentium 4 3.20E GHz |
Mobile Athlon 64 3000+ |
マザーボード |
Intel D925XCV |
ASUSTeK P4C800 |
N/A |
メモリ |
PC4300 DDR2 SDRAM 1GB |
PC3200 DDR SDRAM 1GB |
DDR SDRAM 768MB |
HDD |
Seagate Barracuda 7200.7(ST3120026AS) |
Seagate Barracuda 7200.7(ST3120026AS) |
60MB HDD(Ultra ATA/100) |
LANカード |
Marvell Yokun(88E8050) |
Intel 21143搭載LANカード |
- |
OS |
Windows XP Professional 日本語版+SP2(IIS 5.1) |
Windows XP Professional 日本語版+SP2(IIS 5.1) |
Windows XP Professional 日本語版+SP2(IIS 5.1) |
RAMディスク |
100MB |
100MB |
100MB |
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実際にスループットを測定してみると、いずれも30Mbps前半という数値となった。もちろん環境の影響はゼロではないと思うが、それでも直結状態で80Mbps後半の速度を計測しており、遅い印象を受ける。
また、PC側とルータのLANアダプタのネゴシエーションが正しく行なえていない可能性を考え、サーバー-ルータ間、ルータ-クライアント間にハブを挟む/外すなどをいくつか検証したが、筆者の環境では結果は大きく変わらなかった。
表2:計測結果(有線LAN)
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プロトコル |
転送条件 |
速度(Mbps) |
直結状態 |
ftp |
サーバー → クライアント |
88.27 |
クライアント → サーバー |
84.00 |
http |
サーバー → クライアント |
87.47 |
クライアント → サーバー |
85.07 |
iodata
WN-APG/R |
ftp |
サーバー →
クライアント |
パケットフィルタリングなし |
32.48 |
パケットフィルタリングあり |
32.08 |
パケットフィルタリング+NAT |
32.19 |
クライアント →
サーバー |
NATあり |
30.35 |
NAT+パケットフィルタリング |
30.29 |
http |
サーバー →
クライアント |
パケットフィルタリングなし |
32.80 |
パケットフィルタリングあり |
32.45 |
パケットフィルタリング+NAT |
32.27 |
クライアント →
サーバー |
NATあり |
30.13 |
NAT+パケットフィルタリング |
30.16 |
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続いて、NTT東日本のBフレッツ ニューファミリータイプの回線を使い、PPPoE接続の速度を見てみた。フレッツ・スクウェア接続のテストは先の有線LANテストの実効値とほぼ同様。回線やプロバイダー(BB.excite)の影響もあってか、プロバイダーを介したスピード測定サイトの結果は、22~23Mbps前後がピークという結果を見せた。
表3:計測結果(WAN)
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平均値(Mbps) |
最大値(Mbps) |
フレッツ・スクウェア |
32.19 |
33.42 |
Speed.RBBToday |
Download |
22.01 |
23.27 |
Upload |
2.06 |
2.92 |
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無線LANのスループットはIEEE 802.11aで15~16Mbps前後、IEEE 802.11gで11~12Mbps前後といったところ。Super Gは1~2Mbps程度の速度向上があり効果を見せているが、Super Aはそれほど大きく速度が変わらない傾向も見せている。全般に上り速度のほうが速めなのも特徴的といえる。
表4:計測結果(無線LAN)
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802.11a |
Super A |
802.11g |
Super G |
802.11b |
ftp |
サーバー →
クライアント |
パケットフィルタリングなし |
16.35 |
16.69 |
11.41 |
12.05 |
5.89 |
パケットフィルタリングあり |
16.24 |
16.67 |
11.39 |
12.03 |
5.88 |
パケットフィルタリング+NAT |
16.21 |
16.53 |
11.39 |
12.03 |
5.89 |
クライアント →
サーバー |
NATあり |
15.07 |
18.53 |
11.57 |
13.25 |
5.91 |
NAT+パケットフィルタリング |
14.91 |
18.37 |
11.52 |
13.09 |
5.91 |
http |
サーバー →
クライアント |
パケットフィルタリングなし |
16.40 |
16.75 |
11.33 |
12.37 |
5.91 |
パケットフィルタリングあり |
16.29 |
16.69 |
11.31 |
12.35 |
5.91 |
パケットフィルタリング+NAT |
16.24 |
16.69 |
11.25 |
12.37 |
5.90 |
クライアント →
サーバー |
NATあり |
15.09 |
18.51 |
11.60 |
13.31 |
6.00 |
NAT+パケットフィルタリング |
14.99 |
18.56 |
11.57 |
13.25 |
6.01 |
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写真09:
無線LANのテストに使用したエプソンダイレクトの「EDiCube F750」。このラインナップは、2月1日に「EDiCube F755」が発表された
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最後にもう1つ。無線LANの到達距離もテストしておきたい。図2に示した家屋に置いて、A~E地点を設定した(A地点は先の有線/無線LANテストを実施したポイント)。結果を見ると、IEEE 802.11aとIEEE 802.11gは速度低下の傾向が似通っているのが印象的だ。
アクセスポイントとABC地点、DE地点が同一フロアとなるが、フロアをまたぐDE地点を境に速度低下が見られる。電波の直進性が強いといわれるIEEE 802.11aとIEEE 802.11gの傾向が似通ってるのは面白い結果で、この結果から見ると、(IEEE 802.11bとの互換性を無視できるなら)本製品はIEEE 802.11aで使うのが得策のように思われる。
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図2:到達距離テスト環境
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表5:計測結果(到達距離テスト)
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802.11a |
Super A |
802.11g |
Super G |
802.11b |
A地点(約0.5m) |
16.35 |
16.69 |
11.41 |
12.05 |
5.89 |
B地点(約3m) |
15.92 |
15.97 |
11.76 |
11.81 |
6.03 |
C地点(約7m) |
15.87 |
15.95 |
11.73 |
11.89 |
5.99 |
D地点(約6m) |
11.52 |
14.21 |
8.80 |
10.77 |
5.96 |
E地点(約13m) |
11.41 |
13.25 |
8.59 |
10.35 |
5.96 |
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■ AtherosのSuper A/G対応チップセットを採用
最後に内部構造を見ていくことにする。本製品を分解すると、写真10にあるように、2枚の基板をケーブルで接続している特徴を持つ。ただし、写真10の右側にある基板は本体側面スイッチ用であり、ネットワークの機能に関する目立ったチップ類は実装されない。
ということで、写真左側のメイン基板のほうを重点的にチェックしたい(写真11)。基板表面は2つの周波数帯の無線LANレシーバが大きく占有してはいるが、全体に余裕のある配置になっている。ちなみに、中央やや上よりにヒートシンクが搭載されたチップがあるが、このヒートシンクは半田付けされており外すことができない。具体的なチップは不明であるが、LAN側ポート用の10BASE-T/100BASE-TX対応スイッチが搭載されていると想像できる。
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写真10:
筐体は3本のトルクスネジを外すと簡単に開く。2枚の基板で構成されているが、向かって右側の基板は側面のショートカットボタン用に用意されたもの
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写真11:
メイン基板。表面にほぼすべてのコンポーネントが実装されており、裏面にはSDRAMが1チップ載っているのみ
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さて、本製品の基幹となる部分は、Atheros Communicationsがリリースしている、「AR5002AP-2X」という3チップのトライバンドソリューションだ。メインコントローラは、Super A/G対応のIEEE 802.11a/b/g無線LAN MACと有線LAN MACを内蔵する「AR5312A」(写真12)。5GHzの無線レシーバとなる「AR5112A」と、2.4GHzの無線レシーバとなる「AR2112A」の3チップによって、IEEE 802.11a/b/gへ対応することになる(写真13・14)。
ちなみに、ちょっと面白いのは本製品では本体内蔵と外部の2系統のアンテナを備えているが、そのいずれもがAR5112A側のレシーバ部に取り付けられているのだ(写真15)。先の無線LAN到達距離テストでIEEE 802.11aがIEEE 802.11g並みの到達距離を見せたのは、この当たりが影響しているのかもしれない。
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写真12:
メインコントローラのAtheros「AR5312A」。IEEE 802.11a/b/g無線LAN、有線LANのMACを内蔵するMIPSプロセッサ
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写真13:
IEEE 802.11a対応のレシーバチップ「AR5112A」を搭載する5GHz帯のレシーバ部
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写真14:
IEEE 802.11b/g対応のレシーバチップ「AR2112A」を搭載する2.4GHz帯のレシーバチップ
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写真15:
基板外のアンテナは2系統が用意されているが、どちらも5GHz帯のレシーバに接続されており、2.4GHz帯はメイン基板をアンテナとする
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このほか、メモリには台湾Deutron Electronicsの256Mbit SDRAM「MIRA P2V56S40BTP」が表面、裏面に1枚ずつ搭載されている(写真16)。こちらにある製品資料と、型番のルールが微妙に異なるのだが、チップ上に記された末尾の「-6」から133MHz駆動のモデルではないかと想像される。
フラッシュは台湾Macronix社の64Mbitモデル「MX29LV640BBTC-90」を採用(写真17)。また、本製品前面のUSBポートの脇には、Cypress SemiconductorのUSBホストコントローラ「SL811HST」が実装されている(写真18)。
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写真16:
SDRAMはDeutron Electronicsの「MIRA P2V56S40BTP」。256Mbit(32MB)品が2枚で、64MBの構成である
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写真17:
フラッシュはMacronix社の「MX29LV640BBTC-90」を搭載。8MBのチップ
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写真18:
前面のUSBポートのために、Cypress Semiconductorの「SL811HST」をホストとして搭載
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■ 手軽なセキュリティ設定が魅力の製品
以上のとおり本製品を試用した結果、スループットの遅さが多少気になるところではあるが、機能面では他製品と大きく差別化されているのが大きな特徴といえる。この点は、もちろんメリットとして享受できるものだ。
特にWindows Connect Nowに対応した無線LANのセキュリティ設定の簡便さは秀逸である。無線LANの危険を認識していない層に向けては、128bitのWEPを設定したプリセット設定が用意されているし、普段からセキュリティに気をつかっている人にとっても数十文字に及ぶセキュリティキーをUSBメモリを使って転送できるのは手軽である。
本製品が対応したWindows Connect Nowは、OSの基本機能に対して互換性があるので、クライアント側アダプタのメーカーを問わないのも嬉しい点だ。こうしたことからも、ルータ製品としての魅力は高く、本製品は強くお勧めできる。また、今後本機能に対応したルータやアクセスポイント製品が増えることにも期待したい。
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■ URL
製品情報
http://www.iodata.jp/prod/network/wnlan/2004/wn-apgr/index.htm
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2005/02/10 11:17
槻ノ木 隆 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。 |
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