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第百景:六本木で働いていた元社長の超軽量化シンプルデスクトップ
堀江貴文
[2009/03/27]

第九十九景:アルファギーク宮川達彦のデスクトップ
宮川達彦
[2009/03/19]

第九十八景:楽ばかり考えるのには、ちゃんと理由があるんです
増永 玲
[2009/03/13]

第九十七景:シンプルかランダムか。デスクトップの上は常に禅問答
林信行
[2009/03/06]

第九十六景:10年来のWindowsユーザーがMacに目覚めた場合
結城海
[2009/02/27]

第九十五景:自動処理三昧な“Watchの中の人”のデスクトップ
伊藤大地
[2009/02/20]

第九十四景:「はてな記法」+メモ帳でToDo管理
はてな 山田聖裕(id:kiyohero)
[2009/02/13]

第九十三景:ホームポジションを崩すな! マウスは不要のデスクトップ
drikin
[2009/02/06]

第九十二景(特別編):パソコン体験は小学校から。女子大生のデスクトップ
So-netキャンパスサポーターズ
[2009/01/30]

第九十一景:記事ネタ探し中の頭の中よりも遥かにすっきりしたデスクトップ
片山理沙
[2009/01/23]


2009年

2008年

2007年

2006年

第九十七景:シンプルかランダムか。デスクトップの上は常に禅問答
林信行


 ITジャーナリストの林信行と申します。デザインが好きで、家電Watchでは、無印良品三洋電機のインタビュー記事、日本人が大活躍する世界最大のデザインイベント「ミラノサローネ」のレポートが好評なようです。今年の4月も「ミラノサローネ」からのレポートをする予定ですので、家電Watchもよろしくお願いします。また、Impress Watchでは、以前にEnterprise Watchに登場したこともあります。

 IT関連では、アップルやGoogle関連の記事をさまざまな媒体で書いています。あのMicrosoft社のWebサイトで、10年以上にわたってMacの連載記事を書いているという変わった経歴も有名かもしれません。

 個人では、「nobilog2」というブログを持っています。


家電Watchのミラノサローネ特集 Microsoft Apple's Eye nobilog2




デスクトップはMac本体のようにシンプルに、そして美しく

 私のデスクトップはいたってシンプルかつビューティフルです。三洋電機と一緒に「Think GAIA」。いつも宇宙の視点で地球をみつめながら、禅の境地のようなシンプルで何も置かれていないデスクトップの上で悠然と、そして優雅に作業をしています。


何も置かれていないシンプルかつビューティフルなデスクトップ

 画面から少しでも余計なものを取払い、シンプルで美しい状態で作業をしたい。だから、ドックも隠しています。アプリケーションの起動にはMacのスポットライト検索機能を使っています。例えば「Safari」を起動したければ、control+スペースで「スポットライト」を呼び出して、「Sa」と打ち込みます。すると検索の筆頭候補としてSafariが表示されるので、その状態でreturnキーを押すと「Safari」が起動できる。そんな具合です。

 キーボードからの操作でアプリケーションを起動するなんて「MS-DOS的」と思う人もいるかもしれませんが、Mozilla Labsが開発中の「Ubiquity」という技術もあります。これはもしかしたらGUIの次に来る未来なのかもしれません。そういうわけで、ドックはアプリケーションを強制終了したいときくらいにしか使っておらず、こちらもシンプルかつエレガントです。


ドック

 画面の真ん中のあたりにあるAppleScriptのアイコンは、自分で書いたAppleScriptでメールの受信インターバルを変更するためのものです。仕事に集中しているときは、頻繁なメール受信音で邪魔をされたくない。だからメールの受信間隔を1時間あるいは3時間おきにするんです。逆に編集者からの連絡待ちのようなときには1~3分間隔にします。

 え? このQuickTime Playerの右の白い四角いアイコンですか? それは内緒にさせてください。企業秘密です。って、編集者さん、一体何をするんですか!F11キー押さないで下さいよ、Expose機能でデスクトップが表示されちゃうじゃないですかぁ……。


本物のデスクトップ

 見ちゃいましたね。そうです。これが私の本当のデスクトップです。実は先ほどのドックの白い四角いアイコンは、Katsura SharewareさんがつくっているMac系ライターさんの秘密兵器で「screenshot Helper」というフリーウェアです。これは指定したデスクトップピクチャーで、本物のデスクトップを覆い隠してくれるというものです。

 私は原稿に集中しなければいけないときは、これで本物のデスクトップを覆い隠して、シンプルなデスクトップと禅の気持ちで原稿に向かっています(このソフト、自分のMacの画面をプロジェクターに映し出す、講演の時にも便利です)。





バレたらしょうがない。ランダムこそ「美」だ!

 さぁ、バレてしまったんじゃ仕方がない。ここからは私の本物のデスクトップについて解説しましょう。

 常に「Think GAIA」そして「Think the Earth」しているのは本当ですが、実際のデスクトップの上は、「書類」置き放題、「フォルダ」つくり放題でかなり荒れています。だって、保存する時、いちいちどのフォルダに保存するなんて指定するの面倒くさいんだもん…。。ほとんどの書類は一過性のもので、書き終えて編集の人に送ったらこちら的には不要になってしまうし……。

 でも、あとで編集者から「うまく解凍できませんでした」とか「文字化けしていました」なんていうメールが来るときもあるから不用意に捨てられない。でもって、ぐちゃぐちゃいろいろなアイコンが増えていきます。

 「スミマセン。図をあと2~3点追加してもらえます」なんて言われるたび、そして「えっと、冒頭にあと2~3行追加してもらっていいですか? キャプション(図に加える解説)もお願いします」なんて言われるたびに、さらにテキストファイルが増えていき、デスクトップのエントロピーが無限大に向かって増大していきます。

 もっとも、先ほどは「シンプルは美しい」、と書きましたが、「乱雑さも、また『美』」です。 私が非常に美意識の高いITジャーナリストである、ということを知ってもらうためにも、以下で何点か、私の本物のデスクトップに広がる「乱雑の美」を、クローズアップでお見せしましょう。



 まずは右上に注目してください。デスクトップの右上隅は、一番アイコンが重なる場所です。デスクトップに新規項目を作成する場合、Finderはできるだけアイコンが重ならないように配慮しますが、「もう置き場がない!」という状況になると、右上隅に新規アイコンを作成します。なので右上隅は一番、アイコンが重なる場所ですよね。

 でも、時には上に重なったアイコンをよけて、その下に埋もれているアイコンを表示させる必要があります。右上隅からちょっとずれたところにある「林・松村対談」というファイルは、その下に埋もれている保険の書類があとから突然、必要になって、ちょっとだけ横によけたことにより、この定位置を与えられたわけです。

 ちなみに、このことからもわかるように、私のMacには、仕事の原稿も入っていれば、暮らしの情報も入っています。まさにデジタルライフですね。



 続いて真ん中に注目してみましょう。おやおや、「web20yesterday...」で始まるファイル、そして「sixapartlogo」というファイルが2つありますね。これはおそらく何かで使ったファイルを、何らかの理由で別のファイル形式で保存し直して送り直す必要があったんでしょう。

 このように変更前後のファイルを両方とっておけば、万が一どちらかのファイルが破損しても、元のデータを取り戻せますよね。私は常に「データの安全性」を心がける人間です。これもEnterprize Watchではお馴染み、企業コンピュータの世界の、ちょっと難しい言葉でいうと「冗長性」という概念で、私はこのようにしてデータの安全性を常に考えているわけです。





Life is random

 私のデスクトップは、Macを使い始めて22年近くまさにカオスの状態です。でも、8年前にMac OS Xが登場してよかったのは、このカオスの状態でも、新しいFinderウィンドウを開いて、「Command+Shift+D」のキーを押せばFinderウィンドウ上にデスクトップの項目がアルファベット順に表示されること。これでどんなに実際のデスクトップが散乱していても、ファイル探しに困ることはありません。

 また、「スポットライト」機能が優秀なので、万が一、どこかのフォルダにいれてしまったファイルでも、簡単に見つけ出すことができます。

 そう、私のカオス型デスクトップは、アップル社がこの優れた検索機能、「スポットライト」を開発してくれたことで完成をみた、といってもいいでしょう。

 ちなみに、今からもう15年以上も前ですが、私よりも先に未来を予見していた方を知っています。本人の許可を取らずに改訂しまっていますがいいでしょう。

 そう、あのMITメディア・ラボ極東代表のバーナード・クリッシャーさんです。私が頻繁にHDDのクラッシュを経験していることから、一度、クリッシャーさんのHDDがクラッシュした時、「どうしても困っている」と夜中に彼の家に呼び出されました。数時間の格闘の末、復旧した彼のMacに現れたデスクトップは、デスクトップに乱雑に置かれたアイコンが各5~6層くらいずつ重なっているひどい状態でした。しかし、彼はそれが「当たり前」といった涼しい顔で、「Find File」という当時のファイル検索機能を使ってファイルを見つけ出し、「あ、これだ、これだ」と印刷をしていました(ちなみに当時は余裕でSystem 7.xの時代でしたが、クリッシャーさんはSystem 6.xをお使いでした)。

 今の私のデスクトップは、乱雑とはいえ、アイコンが重なっているのは(一番右上を除いては)せいぜい2~3層くらいなので、かなりスッキリとしています。やはり、「シンプル」こそが美しいとする禅の精神を理解しているからでしょうか。

 いや、私も1年、2年とデスクトップにファイルを貯め続けていたら、おそらくクリッシャーさん超えができると思うのですが、実はデスクトップにファイルが貯まっていくことはマシンのパフォーマンスの低下にもつながってきます。パソコンはデスクトップに置いたアイコンを、まじめに、もうこっちは必要としていないファイルのアイコンまで丁寧にひとつひとつ画面描画しようとするので、そこに余計にプロセッシングパワーがかかってしまうわけです。

 私はこのようにパソコンに余計な負荷をかけることは、「エコの観点」からみてもよくないと思っているので、実は定期的に整理はしているんです。ほら、Windowsでも、しばらく使っていると出てくるでしょう?「デスクトップの項目を整理しますか?」って。

 私は几帳面なので、アレを自主的に手動で行っているわけです。

 先ほどのデスクトップのアイコンの右の方、ちょい上の当たりに「dti_Jan09」というアイコンがあるでしょう。あそこに秘密があります。 「dti」とは「desktop items」の略。つまり、あのフォルダの中には、2009年1月の時点でデスクトップ上に散乱していたファイルとフォルダを、まとめて放りこんだものです。ちなみに中はこんな感じです。


dtiフォルダの中身


 よく見てもらうと、「dti_Jan09」フォルダの中に「dti Xmas 2008」というフォルダがありますよね。このフォルダの中身は、2008年のクリスマスにデスクトップに散乱していたファイルがまとめて放り込んであります。おそらく、クリスマスの日くらいは、清らかな身で、清々しいデスクトップで過ごしたいと思ったんでしょうね。

 この整理方法の手順は簡単で、まずは新規フォルダを作り、それに「dti」+日付がなんとなくわかる名前をつけます。そしてFinderで「Command+shift+D」でデスクトップフォルダの中身を表示させて、「Command+A」で全項目を選択。さらにCommandキーを押しながら、作成したばかりの「dti」フォルダだけ選択を解除して、その中に選択中のファイル/フォルダをすべてまとめて放り込む。これだけです。いや、いたってシンプル。「シンプル is ベスト」ですね!

 例えフォルダの名前に「至急」と書いてあっても「消すな」と書いてあっても、「これはデスクトップに常駐!!」と書いてあっても、一切がっさい無視、そもそも見もしません。Command+Aとドロップ、これでおさらばで、1秒後には美しいデスクトップの世界へレッツ・ゴーです。

 ちなみに1個の「dti」フォルダの中にはだいたい80から150個くらいの項目が入っているようです。やっぱり、デスクトップには150項目くらい散乱している状態が、生理的な限界なようです。あるいはデスクトップに150個くらい項目がたまるくらいの周期で、大きい仕事が入ってきて心の整理をしているのかもしれません。本当のところは私にはわかりませんし、おそらく世の中の誰にもわからないでしょう。

 世界はミステリーです。だからこそ楽しいのです。

 以前、アップル社はiPod shuffleのテレビCMで「Life is random」というコピーを使っていましたが、まさにその通り、人生ランダムな方が、毎日が楽しいですよ。

 さあ、あなたもチマチマとデスクトップの整理なんていうことは忘れて、ランダムに生きましょう!Mac OS Xのスポットライトも、WindowsのVistaは逃したけれど、7では搭載されてくるだろう、強力なデスクトップサーチも、そのために発明されたんだから……。




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2009/03/06 11:07

林信行
新聞や経済誌、デザイン雑誌、IT雑誌、Webのニュース媒体などに記事を書くフリーランスのITジャーナリスト。米英仏韓などの雑誌にも記事を提供。またcastalia社、modiphi社そしてpopIn社のアドバイザーを務める他、メーカーや通信会社の経営、製品戦略及びメディア戦略のコンサルティングも行っている。最近、関心があるのは日本のメーカーやベンチャーが、日本企業ならではの良さを保ちながらグローバル経済の中で成功するお手伝いをすること。
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