東芝から、豊富なネットワーク機能を備えた液晶テレビ「face Z1000シリーズ」が発売された。以前に本コラムで取り上げたface LZ150シリーズと同様に、NASへの録画が可能な製品だが、Z1000シリーズでは地上デジタルチューナーが2機に増やされたほか、4th MEDIAの視聴やDLNA対応と、さらに便利な機能が追加されている。37インチモデルの「face 37Z1000」で、早速その機能を検証していこう。
■ 欠点を解消し、さらにネットワーク機能を強化
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東芝face Z1000シリーズ
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ちょうど1年くらい前になるが、本連載で東芝の液晶テレビ「face LZ150」を取り上げたことがあった。ネットワーク機能を備え、デジタル放送をNASに録画できるという製品だが、そのときLZ150シリーズの最大の欠点は、地上デジタルチューナーを1基しか搭載しない点だと指摘した。
それから1年、東芝から新たに発売されたのが今回の「face Z1000シリーズ」だ。地上デジタルチューナーが2基に増やされており、以前に指摘した欠点が見事に解消されているのにも感心したが、さらに4th MEDIAの視聴、DLNAガイドライン対応と、より一層ネットワーク機能が強化されている。現在、液晶やプラズマを採用した薄型テレビは各メーカーから数多く発売されているが、ことネットワーク機能に関して言えば、おそらく現在、最強のテレビと言って差し支えないだろう。
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37Z1000の背面。LAN HDD専用、汎用LAN、そして4th MEDIA専用と3つのLAN端子が搭載されている
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地上デジタルチューナーを2基搭載。2画面表示で別のチャネルを視聴できる
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■ 地上デジタルチューナー2基搭載で裏番組の録画が可能に
では、早速、ネットワーク経由での録画機能について見ていこう。基本的な使い方は、 LZ150シリーズとほぼ同じとなるため、詳しくは「第126回:ネットワーク経由で外付けHDDにデジタル放送を録画 東芝の液晶テレビ「face 37LZ150」が提案する新しい録画スタイル」を参照して頂きたいが、37Z1000で特筆すべきなのは裏番組の録画が可能な点だ。
前述の通り、37Z1000には2基の地上デジタルチューナーが搭載されている。このため、2基の地上デジタルチューナーのうち1基を視聴用として、もう1基を録画用として同時に利用できるようになっている。以前のLZ150シリーズでも視聴中の別番組録画が不可能ではなかったが、視聴や録画のどちらかをアナログで行なう必要があった。これに対して37Z1000では、視聴と録画の両方をデジタルで行なうことができるというわけだ。
実際の利用も実に快適だった。番組表から録画したい番組を指定しておけば、あとはバックグラウンドで自動的にその番組が録画されるため、録画を意識することなくほかのチャンネルを自由に視聴できる。まるでテレビとHDD&DVDレコーダを併用しているのと同じような感覚での利用が可能だ。
番組表から予約を実行すれば、バックラウンドで録画が行なわれる。このため、録画中に別のチャンネルを視聴することが可能だ
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もちろん、HDD&DVDレコーダと異なり、DVDへの書き出しはサポートされていないため(PCからNASを参照しデータとして保存することは不可能ではない)、基本的には見たら消すという使い方になる。ただし、、37Z1000には最大8台までのNAS(もしくはPC)を接続可能なので、容量が足りなくなったらNASを追加することが可能だ。
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NASは最大8台まで登録可能。使い方次第では、非常に多くの番組を録画できる
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試しに1時間のニュース番組を録画してみたところ、ファイルの容量は約7GBだった。これをもとに計算すると、一般的な250GBのNASを接続した場合に録画可能な番組の時間は、35時間程度となる。極端な話、1TBのNASを8台利用し合計8TBの記憶領域を用意すれば、合計1,000時間以上にも及ぶデジタル放送の録画が可能だ。
NASが消費する電源容量とHDDの振動、騒音を考えると現実的とは言えないが、3台程度のNASを用意して家族それぞれが自分専用のNASに番組を録画するといった使い方などは便利そうだ。もしくは、デジタル放送の録画に対応したHDD&DVDレコーダと併用して、残しておきたい番組はHDD&DVDレコーダで、見たら消す番組は37Z1000でと使い分けるのも良いだろう。
■ NASへの録画時の注意点
このように2基の地上デジタルチューナーによって飛躍的に利便性が向上した37Z1000だが、個人的には1点だけ気になった。NASへの録画の場合、「追っかけ再生」ができない点だ。
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NASへの録画の場合は、録画中の番組を追っかけ再生できない。また、録画中に4th MEDIAを視聴するなど、ほかの操作もかなり制限される
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100BASE-TXでは転送速度に限界があるのか、それともデジタル放送録画時の暗号化処理に負荷がかかるのか、その原因はわからないが、現在録画中の番組を再生することはできない仕様になっており、録画した番組を見るには録画が完了するまで待たなくてはならない。
このあたりはテレビの見方に個人差があるので何とも言えないが、個人的には、とりあえず見たい番組を録画しておき、時間差で途中から見るという使い方が非常に多い。HDD&DVDレコーダーをi.LINKで接続した場合には、追っかけ再生ができるので、NASへの録画時にもぜひこれと同じ機能を実現して欲しいところだ。
また、LZ150のレビューのときにも触れたが、無線LAN経由でのデジタル放送の録画はやはり厳しい。完全に伝送速度が追いつかず、とぎれとぎれでしか映像が再生できない。このあたりは、購入前の注意点として頭に入れておいて欲しいポイントだ。
■ 4th MEDIAの利便性は非常に高い
今回の37Z1000で、もう1つ感心したのは4th MEDIAの利便性が高い点だ。Z1000シリーズは、フレッツ・シリーズ向けの映像配信サービス「4th MEDIA」用チューナーが本体に内蔵されており、リモコンの「4th MEDIA」ボタンを押すだけで、4th MEDIAを手軽に使えるようになっている。これにより、4th MEDIAで提供されている放送サービス、およびVODサービスを手軽に利用可能だ。
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4th MEDIAに標準で対応しており、専用チューナーを使わずにテレビだけでサービスを利用できる
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こちらも以前、本連載でレビューしたことがあるが、4th MEDIAで提供されている専用チューナー、および付属のリモコンは、操作性が良いとは言えず、見たい映像を選ぶだけで相当なストレスを感じるものであった。
これに対して、37Z1000ではテレビのリモコンをそのまま4th MEDIAでも利用できるため、若干ながらも操作性が改善されている。中央の十字ボタンを使ってメニューを選ぶことが手軽にできるうえ、前の画面に戻るためのボタンも十字ボタンの左下に配置されており、直感的に操作することができるようになっている。Webベースの操作画面のため、ビデオリストの一覧表示時に「次へ」、「前へ」といった画面上のボタンにフォーカスを合わせて押さなくてはならない不便さは相変わらずだが、少なくとも4th MEDIA標準チューナー付属のリモコンでの操作よりは快適だ。
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37Z1000のリモコン。戻るボタンが十字ボタンの近くに配置されているだけで操作性は断然良い
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今回、久しぶりに4th MEDIAを実際に利用してみたが、画質も良く(DVDビデオとほぼ同等でアナログ放送よりきれいな印象)、スムーズに映像を再生できたため、十分に映画を堪能できた。今年の8月からプロバイダーにかかわらず利用できる新メニュー「ISPフリー.TV on 4th MEDIA」が開始され、今回の37Z1000のようなテレビに標準搭載されたことを考えると、一般ユーザーが手軽に使える環境が整い始めたと言えるだろう。
それでも、回線にフレッツ・シリーズが必要な点、サービス内容がわかりにくいFlet's.Netの利用が必要な点など、まだまだ障壁はあるが、今後は、4th MEDIAに限らず、ブロードバンド放送サービスがもう少し普及してくるのではないかと実感させられた。
■ DLNAガイドライン対応でPCのコンテンツも再生可能
37Z1000はDLNAガイドライン(Home Networked Device Interoperability Guidelines v1.0)にも対応し、ネットワーク経由でPCなどに保存されている音楽、画像、映像などのコンテンツの参照も可能だ。
基本的な操作方法は、次のようなイメージだ。37Z1000のリモコンで「機器操作」ボタンを押すと、LAN接続されたNASやi.LINK接続された機器に加えて、DLNAガイドライン対応のサーバーが一覧表示される。ここからサーバーをすると、音楽や画像、ビデオなどといったカテゴリ(利用するサーバーによって項目は異なる)が表示されるので、そこから再生したいコンテンツを選択すれば良い。
機器操作ボタンを押すことで、ネットワーク上のサーバーが一覧表示される。接続する機器を選ぶとコンテンツを参照できる
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ただし、DLNA対応と言っても、いわゆるネットワークメディアレシーバーと同じには考えない方が良さそうだ。
まず、再生可能なデータが非常に限られている。37Z1000で再生可能なデータは、映像に関してはVRフォーマットのMPEG-2(音声はリニアPCM、AC3、MPEG-1レイヤ2)のみ、画像に関しては4MB以下のJPEG(4MB以上はサーバー側でリサイズする必要あり)のみで、楽の再生に関してはまったくサポートされていない。このため、サーバー側の環境によっては、接続することはできても肝心のコンテンツを再生できない場合が多い。
今回のテストでは、バッファローのDLNA対応NAS「Linkstation HS-D250GL」と富士通製のノートPC FMV-BIBLO MG70LN(DiXiMベースのMyMediaサーバーを搭載)の2製品をサーバーとして利用してみたが、いずれもサーバーとして37Z1000から参照することはできたものの、いざフォルダを指定してコンテンツを参照しようとすると、フォルダ内に画像などのデータが存在するにもかかわらず、データが存在しないというエラーが表示された。また、特定のビデオ映像に関してはコンテンツとして認識されてもフォーマットの問題で再生できないというエラーが表示されてしまった。
※なお、画像に関しては、リモコンのfaceネットボタンから「写真を見たい」を選択、DLNA対応サーバーに接続することでサーバー(Linkstation HS-D250GL)の画像ファイルを参照できた。これは、Z1000シリーズの仕様が、faceネット画面で選択された目的に応じたファイルのみをリスト表示するようになっているためとのことだ。 |
筆者のテスト環境では、フォルダ内のデータを参照できなかったり、ビデオを再生できないケースが見られた。再生可能なフォーマットが限られている点には注意が必要だ
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サーバーの認識も時間がかかる。ネットワーク上に存在するDLNA対応サーバーが1台までなら即座に認識するが、2台目以降は15分程度待たないと認識されない。このあたりはマニュアルに注意書きとして記載されているのだが、文字が小さくて気がつかず、てっきりサーバー側の設定に問題があるのかと四苦八苦してしまった。
つまり、37Z1000でPCやDLNA対応NAS上のデータを再生できるようにするには、サーバー側にデータを保存するときの形式に非常に気を配らなければならない。個人的には音楽やWMVの映像などが再生できないのも残念だったが、バッファローのHS-D250GLとLink de 録の組み合わせで録画した映像がフォーマットの問題で再生できなかったのが非常に残念だ。ここまで再生できるフォーマットが限られているとなると、技術上は別にして、消費者に対してDLNA対応と謳って良いのかすら疑問に思う。
■ コンセプトは高く評価。細かな完成度に不満も
このように、東芝のface 37Z1000は、ネットワークを利用してさまざまなメディアを扱うことができる非常に画期的な商品と言える。特にNASへの裏番組録画、4th MEDIAを手軽に使える点は高く評価したいところだ。また、37Z1000を利用することで、テレビ、HDD&DVDレコーダー、4th MEDIAチューナー、DLNA用メディアレシーバーと、これまで4台必要だった機器が1台に統合され、リモコンも1つで済むようになるのはかなり便利だ。
しかし、前述したように、NASに録画した映像の追っかけ再生ができない、接続したDLNA対応機器上で再生できるコンテンツが限られるなど、細かな完成度という点では、さらに改善して欲しいポイントが多い。また、個人的には、これは東芝製品に共通して言えることだが、リモコンの開閉式のフタの内部に利用頻度が高いボタンが配置されている点についても改善をお願いしたい。
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東芝製品では開閉式のフタの中に利用頻度が高いボタンが納められていることが珍しくない。ぜひ改善してほしいポイントだ
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今回の37Z1000では、録画した映像や4th MEDIAの映像再生時に利用する早送りや巻戻しなどのボタン、さらにi.LINK経由でHDD&DVDレコーダを接続したときに放送中の番組を一時停止できる「ちょっとタイム」を利用するためのボタンがフタの内部に配置されている。
もちろん、映像の早送りなどは、「機器操作」ボタンを押したときに画面上に表示される操作パネルからも操作でき、リモコンの十字ボタンで利用できるスキップで代用することもできる。しかし、これらの方法はやはり直感的な操作がしづらいため、録画ができるテレビという製品の特徴を考えると、早送りなどのボタンはフタの内部ではなく、十字ボタンの近くに配置して欲しかった。
今すぐテレビを購入する必要があるというのであれば、他社製のテレビを購入するよりは絶対に面白い商品だと言えるが、上記の改善ポイントにも留意しておくと良いだろう。今後のアップデートなどで機能が充実する可能性もあるが、また来年、この時期に後継機種をレビューするときは、ぜひ「絶対に買いだ」と言い切れる製品になっていることを期待したい。
■ URL
東芝face Z1000シリーズ製品情報
http://www.toshiba.co.jp/product/tv/z1000/
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2005/11/08 10:58
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