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第271回:有線LAN、無線LAN、PLCに続く第4の家庭内LAN配線方式 有線LAN並みの安定感を持つ同軸ケーブル採用のc.LINK方式を試す
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有線LAN、無線LAN、PLCに続く第4の家庭内LAN配線方式が登場した。NTT-MEが提供するc.LINKアダプタ「PN-200-C2E4」だ。最大200Mbps(実効100Mbps)を実現するc.LINKの実力を筆者宅で検証した。
■ 同軸ケーブルを利用するc.LINK
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PN-200-C2E4
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以前からケーブルテレビ関連のイベントなどで注目を集めていたc.LINKが、ようやく実用段階に入ってきた。
c.LINKは、米Entropic Communicationsが開発した通信技術で、同軸ケーブルを利用して高速なネットワーク通信が可能な技術だ。同軸ケーブルを利用した通信方式としては、ケーブルテレビのDOCSISが存在するが、ケーブルテレビでは10~770MHz帯を利用するのに対し、c.LINKでは900MHz帯という、放送サービスを含めてケーブルテレビが利用していない帯域を通信に利用している。
今回NTT-MEから発売されたPN-200-C2E4では、標準では850MHzを中心として50MHz幅、つまり825~875MHzを通信に利用する仕様となっており(950MHzに切り替えも可能)、前述したようにケーブルテレビが利用する10~770MHzまでの帯域(通信の下り用含む)より高い周波数を利用している。このため、すでにケーブルテレビを利用している場合でも共存することが可能だ。
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c.LINKが利用する周波数帯。ケーブルテレビが利用していない隙間の帯域を利用する。PN-200-C2E4の場合は、825~875MHzを標準で利用し、925~975MHzへの切り替えも可能
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気になる速度は物理速度で最大200Mbps、実効で100Mbpsの通信が可能となっており(上下時分割)、通信距離は最大で180mとなっている。実効速度で通信できれば、100BASE-TXの有線LANとほぼ同等の環境が手に入れられることになる。これは大いに期待できるところだ。
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本体前面
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背面
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同梱品。本体と電源は2セット、フィルタは1個のみ
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松下のPLCアダプタ「BL-PA100」と大きさ比較
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■ フィルタの装着が必須
というわけで、実機を利用して早速テストを行なった。
まずは配線だが、アダプタ自体を接続する前に漏洩防止フィルタの設置が必要となる。漏洩防止フィルタとは、c.LINKで利用する周波数帯のレベルを減衰させるためのフィルタだ。フィルタを利用する目的は大きく分けて2つある。1つはc.LINKの信号が屋外アンテナから空中に漏洩したり、ケーブルテレビ側のネットワークに漏洩することを防止するためだ。
そしてもう1つが、c.LINKが利用する周波数帯への外部からのノイズの混入を防ぐことだ。この周波数帯では外部からノイズが混入すると速度が低下したり、接続自体ができないケースがある。これを防ぐためにフィルタを利用するというわけだ。実際、筆者宅で試してみたところ、漏洩防止フィルタを装着しないと、家庭内のアンテナコネクタにモデムを接続してもリンクしなかった。フィルタの装着は必須と言えるだろう。
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付属の漏洩防止フィルタ。「825-975/R」や「Band Reject Filter」という文字からもわかるとおり、c.LINKで利用する周波数帯をカットするためのフィルタだ
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肝心のフィルタの装着だが、筆者宅の場合はケーブルテレビを利用しており、外部からのケーブルが浴室の天井裏に引き込まれ、そこからブースターと分配器を介して各部屋へと分岐されている。取扱説明書によると、分配器のIN側にフィルタを装着することが推奨されているが、分配器が奧に設置されていて装着が困難だったこともあり、今回はブースターのOUT側の端子に漏洩防止フィルタを装着しだ。
なお、このフィルタ取り付けは、工事を依頼することも可能なので(工事費は参考価格15,750円)、取り付け方法などに不安がある場合は依頼するのもよいだろう。
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フィルタ取り付けの様子。手前のケーブルテレビのブースターのOUT端子にフィルタを装着。ここから奧に見える分配器に接続され、各部屋へと配線されている
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■ 家庭内のアンテナコネクタにつなぐだけ
フィルタの取り付けが完了したら、続いて家庭内の配線を行なう。と言っても同軸ケーブルはすでに各部屋へと配線されているので、単純にモデムを接続するだけだ。
PN-200-C2E4の背面には、通信用の同軸ケーブルを接続するための「CABLE」端子とテレビ映像をスルーするための「TV OUT」端子が1つずつ、さらに4つの10BASE-T/100BASE-TXポート、電源端子、設定用のスイッチが用意されている。
このうちの「CABLE」端子を壁のアンテナコネクタに接続して電源を投入し、2台1セットになっているもう片方を同様に壁のアンテナコネクタに同軸ケーブルで接続後、電源を入れると、自動的に通信が行なわれてリンクが確立する。設定などは一切必要なく、単純につなぐだけでいい。
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モデムにPCを接続したところ。壁のアンテナコンセントからモデムに同軸ケーブルがつながり、そこからLANケーブルでPCと接続される
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接続が確立されると前面の「CABLE」ランプが点灯する。STATUSの点灯状況によって速度が表わされるようになっており、両方消灯だと60Mbps以下、2のみ点灯だと60~120Mbps、1と2の両方点灯だと120Mbps以上となる
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あとは背面のLANポートを利用して、片方をルーターなどの家庭内LANへ、もう片方にPCを接続すれば、同軸ケーブルを利用したネットワークの完成だ。
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c.LINKによるネットワーク構築図
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■ 抜群の安定性とパフォーマンス
使ってみて驚いたのは、その安定性とパフォーマンスの高さだ。
まずは、アダプタ同士を1mほどの同軸ケーブルで直結し、FTPによる速度を計測してみたのが以下のグラフだ。さすがに最大1Gbpsの1000BASE-Tとは比べものにならないが、実効速度でGETが82.2Mbps、PUTが84.5Mbpsとかなり高い値を計測できた。100BASE-TXの94Mbps前後に若干及ばなかったものの、かなり高い数値で通信できていることがわかる。
回線 |
GET |
PUT |
c.LINK |
84.5Mbps |
82.2Mbps |
100BASE-TX |
94.5Mbps |
94.4Mbps |
1000BASE-T |
729.2Mbps |
461.4Mbps |
※サーバー:AMD Sempron 2600+/RAM 2GB/HDD400GB(Windows Home Server)
※クライアント:Intel Core Duo T2400/RAM 2GB/HDD160GB(Windows Vista Ultimate)
※コマンドプロンプトのFTPを利用して5回計測した平均を計算 |
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FTPによるアダプタ間の測定結果
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圧巻は実際の家庭内でのテストだ。筆者宅の1階のアンテナコネクタにアダプタを1台固定し、2階、3階の各部屋にあるアンテナコネクタでテストしてみたところ、若干のばらつきはあるものの、ほぼ80Mbps前後の速度で通信できた。
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各フロアごとの測定
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PLCなどの場合、相の違いや利用するコンセントの場所、さらには繋がっている家電製品などの影響によってパフォーマンスが左右されるが、筆者宅でテストした限り、このような接続場所による違いはまったく見られず、どこに接続しても非常に安定して高い通信を実現できた。
取扱説明書によると、配線状況などによって速度に違いが出るという注意がなされているが、使ってみた限りはパフォーマンスだけでなく、安定性という点でも有線LANと互角ではないかと考えられるほど、速度の低下は見られなかった。
実際、数日間、仕事用のPCをc.LINKを利用してインターネットに接続してみたが、普段の有線LANの環境とまったく違和感なく利用でき、同軸ケーブルでつながっていることなど一切意識する必要なく利用できた。
また、c.LINK経由でオンデマンドTVのハイビジョン映像(H.264 7~10Mbps)も再生してみたが、こちらもコマ落ちなど一切なく、極めて快適に再生できた。映像配信サービスの利用には非常に適している配線形態だと考えられる。
■ 増設も容易で最大8台まで接続可能
「PN-200-C2E4」は、2台で1組となっているセット製品だが、さらに本体を購入すればネットワークを拡張することも可能だ。
増設も手軽で、単に追加したいモデムをアンテナコネクタに接続するだけでいい。PN-200-C2E4では通信の内容が暗号化される仕様だが(DIPスイッチに無効にすることも可能)、このような設定も一切必要なく、単純につなぐだけとなっている。
ただし、2台以上のモデムを接続した場合は、当然のことながらパフォーマンスは低下する。どれくらい速度が低下するかは通信内容によっても異なるが、試しに3台のモデムを分配器を利用して直結した状態にし、1台でWebサイトからのファイルダウンロード中に、もう1台でFTPによる速度計測をしてみたところ、48Mbps前後にまでFTPの速度が低下した。有線LANでも同じだが、端末が増えれば増えるほど帯域を共有することから速度が低下するのは当然で、これは致し方ないところだ。
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分配器を利用して3台のモデムを直結。つなぐだけでランプが点灯し、接続が自動的に確立された。ただし、同時に通信すればパフォーマンスは低下する
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なお、つなぐだけで自動的にリンクすることから、集合住宅などでは同軸ケーブルを経由して別の住居のモデムとつながってしまうのでは、という懸念があるかもしれないが、きちんと運用しさえすれば恐らく問題にならない。そもそも戸建て住宅向けの製品ということもあるが、実質的には前述した漏洩防止フィルタによって通信が遮断されるからだ。
テストとして分配器を利用し、フィルタ有りの場合とフィルタ無しの場合でリンクするかどうかをテストしてみた。具体的には、以下の写真のようにすでにリンクしている2台のモデムに対して、フィルタ有り(左写真)で新しくモデムを追加した場合、フィルタ無し(写真右)で新しくモデムを追加した場合を比較した。
フィルタ有りと無しの場合での接続をテスト。フィルタ有りの場合、帯域がカットされるためモデムを追加しても既存の環境には接続されない
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モデムの「CABLE」ランプに注目していただけるとわかると思うが、フィルタ有りの場合はランプが消灯してリンクが確立されておらず、フィルタ無しの場合はランプが点灯してリンクが確立していることがわかる。フィルタさえきちんと装着すれば、集合住宅などでの利用も不可能ではなさそうだ。
■ ケーブルテレビとの併用も問題なし
冒頭でケーブルテレビとの併用について若干触れたが、筆者宅では現在、J:COMのケーブルテレビサービスを利用している。加入しているサービスはテレビサービスのみだが、利用しているSTBは「J:COMオンデマンド」と呼ばれる映像配信サービスに対応しており、「インタラクTV」と呼ばれるブラウザを利用した情報サービスにも対応しているため、実質的に通信の帯域も利用していると考えられる。
つまり、ケーブルテレビとc.LINKを併用していることになるが、結論から言えば、まったく影響はなかった。c.LINKのフィルタやモデムを接続後も、地上デジタル放送、BSデジタル放送、専門チャンネルだけでなく、前述したインタラクTVやJ:COMオンデマンドなどのサービスも問題なく利用できた。
また、ケーブルテレビ側のサービスがc.LINKに与える影響もほとんど無いようで、モデムのTV OUTにケーブルテレビのSTBを接続し、各種サービスを利用しながらFTPによる速度計測をしてみたところ、速度の落ち込みなどは一切見られなかった。別の周波数を利用しているのだから当然と言えば当然だが、どうやらケーブルテレビ利用者でも問題なく使えるようだ。
■ ネックは価格。低価格化に期待
以上、NTT-MEのc.LINKモデム「PN-200-C2E4」を実際に利用してみたが、既存の配線を利用する使いやすさを実現しながら、高い安定性とパフォーマンスを実現できる非常に完成度の高い製品であるという印象を受けた。家庭内のすべての部屋でインターネットを利用できるようにしたいという場合や、ネットワーク家電などで家庭内の映像コンテンツを共有したいなどという場合に非常におすすめしたい製品だ。
しかしながら、現状は基本的に戸建て住宅向けであり、何と言っても価格が高いのがネックだ。11月1日から、フィルタ設置工事を希望する先着100名に対して、10,500円のモニタ価格で製品が販売されていたが、通常価格は2台1組で36,750円とかなり高い。
関西のNTTネオメイトでは「c.LINKサービス」として、NTT西日本のフレッツ・アクセスサービス利用者向けに月額1,050円(他社回線の場合は1,575円)で利用できるレンタルサービスも提供される。これでもやや値段は高いが、こうしたレンタルサービスの提供も欲しいところだ。
無線LANやPLCに比べると、環境によってパフォーマンスが左右される可能性が低いため、安全性の高い選択肢だろう。まだ市場に登場したばかりの存在のために価格も高めだが、これが無線LANやPLCと同じくらいの価格になってくればおもしろくなりそうだ。
■ URL
ニュースリリース
http://www.ntt-neo.com/news/2007/071023.html
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2007/11/27 11:17
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