PCに音楽を取り込むだけでなく、ネットワーク経由で手軽に楽しむことができるソフトウェアがジャストシステムから登場した。「BeatJam 2005 Music Server Edition」の実際の機能を検証しつつ、ホームネットワーク全体のあり方について考えてみよう。
■ ネットワーク機能を強化
ジャストシステムのBeatJamは、音楽CDの取り込み、再生、管理、ポータブルプレーヤーへの転送などを実現するソフトウェアだ。比較的昔から存在するソフトで、一部のメーカー製PCにもプリインストールされているなど、幅広いユーザー向けに提供されている。
そんなBeatJamが、今回2005にバージョンアップし、ネットワーク機能を大幅に強化して5月27日に発売される。具体的には、レーベルゲートが運営する音楽配信サービス「Mora」の楽曲試聴や購入(決済にはジャストシステムの「@Lifeレジ」を利用)が可能となっており、さらに「Music Server Edition」ではホームサーバー機能も搭載しているのが特徴だ。
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ジャストシステムから新たに登場した「BeatJam 2005 Music Server Edition」。音楽配信サービスの利用やホームネットワーク機能などのネットワーク機能が強化されている
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ネットワーク経由での音楽再生は、本コラムでも取り上げたエニーミュージック端末やサン電子のBiBioなど、さまざまな形で取り組みが行なわれているが、今回のBeatJamもこのようなトレンドに合わせた進化と言えるだろう。
■ Moraで音楽の試聴、購入が可能
まずは「Mora」の利用だが、確かにBeatJamから直接音楽を試聴・購入できるのは手軽だ。BeatJamを起動し、「MUSIC STORE」というボタンをクリックすると、別ウィンドウが起動し、「Music@Life」のポータルに接続される。ここから、リンクをたどってMoraにアクセスすれば、そこで提供されている音楽の試聴や購入が可能となる。
実際に音楽を購入するには、あらかじめ「@Lifeレジ」にユーザー情報や決済用のクレジットカードなどを登録しておく必要があるが、この作業さえ済ませておけば、自動的にサイトにログインし、音楽の購入も楽曲の横にある「ダウンロード」ボタンをクリックするだけでよい。バックグラウンドで自動的に認証と決済が行なわれ、楽曲がダウンロードできる。楽曲ファイルは共有ドキュメントの共有ミュージックにOpenMG形式で保存され、BeatJamにも自動的に登録される。
BeatJamの画面内からシームレスにMoraを利用可能。@Lifeレジにあらかじめ登録しておくことで、決済を自動化し、ワンクリックで音楽をダウンロード購入できる
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購入時にメッセージは表示されるものの、購入の手続きは非常にシンプルだ。あまりに手軽に購入できるために「購入している」という感覚がほとんど感じられなかったほどだ。場合によっては金額を意識せずに次々に購入してしまいそうだが、手順としては非常にシンプルで、1曲買うごとに認証や決済の手続きをしなくて済むのはありがたいところだ。
もちろん、同様の機能は、ジャストシステムのショッピングサイト「Just MyShop」で無償ダウンロード可能なBeatJam 2005の機能限定版「BeatJam Music Download Edition」でも利用可能(このほかMoraで配布されているSonic Stageでも可能)だが、音楽CDの取り込みなど、ローカルの音楽を再生・管理するという目的も同時に行なえることを考えると、BeatJam 2005を利用した方が効率的だろう。
■ DLNAガイドラインに準拠した設計と考えられる
このように、インターネット上の音楽配信サービスをシームレスに利用できるBeatJam 2005だが、その上位バージョンである「Music Server Edition」では、さらにホームネットワーク機能の利用も可能だ。
楽曲ファイルが保存されたPCにBeatJam 2005 Music Server Editionをインストールし、サーバー管理ツールでサーバーを起動。次にクライアント側のMACアドレスを登録し、接続可能な機器を登録しておく。この状態で、ネットワークに接続されたクライアントにBeatJam NetworkPlayerをインストールして起動すれば、ネットワーク上のサーバーを自動的に発見してアクセス可能できる。あとは、アルバムやプレイリストなど、メニューをたどって聞きたい音楽を選択すれば、再生されるというイメージだ。
BeatJam 2005 MusicServer EditionがインストールされたPCで、管理ツールを利用してサーバーを起動。接続の許可をあらかじめ行なっておく
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ただし、再生できる音楽は限られており、基本的にはMP3、WAV、BeatJamで作成したOMA/OMGのみとなっており、WMAや前述したMoraからダウンロードしたOMAファイルの再生はできないなどの制限がある点には注意が必要だ。
クライアント側に「BeatJam NetworkPlayer」をインストールすれば、サーバーを自動的に検出し、音楽の再生が可能となる。アルバムごとに表示したり、プレイリストを再生することも可能
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画面を見てピンと来た読者もいるかもしれないが、この機能はどうやらDLNAガイドラインに準拠した設計になっているようだ。実際、筆者宅でBeatJam NetworkPlayerを起動してみたところ、ネットワークに接続されている他のDLNAガイドライン準拠サーバー(DIG「DMR-E500H」やDiXiM Media Server)も一覧にリストアップされた。
もちろん、BeatJam NetworkPlayer自体は音楽の再生にしか対応していないため、たとえばDIGAにアクセスしても映像などは再生できない。また、この逆も不可能で、BeatJam 2005 Music Server Editionをサーバーとしても、音楽以外のファイルを公開することもできない。あくまでも音楽専用のサーバー、クライアントソフトウェアだ。
ここで問題になるのは、DiXiM Media ServerやNECのMedia Garage、富士通のMyMedia、ソニーのVAIO Mediaなど、すでにDLNAガイドラインに準拠したソフトウェアを利用している場合だろう。今回、筆者は個人的に所有している富士通のノートPC「FMV-BIBLO MG(MG70L/T)」を利用して検証したが、このPCには前述したMyMediaとBeatJam MusicServer Editionの両方がプリインストールされている。MyMediaでも音楽ファイルをネットワーク経由で再生できることを考えると、どちらを使えばいいのかが悩ましいところだ。
結論から言えば、両方のサーバーを併用し、用途によって使い分ける必要がある。というのも、BeatJamで作成したプレイリストやOpenMG形式の音楽ファイルは、MyMediaやDiXiM Media Clientからは認識できず、BeatJamのサーバーを利用しないと再生できないからだ。
これはあまり効率的とは言えない。そもそもDLNAのメリットはコンテンツの場所を意識しなくて済むという点にあるが、今回のようなケースでは、音楽のときはBeatJam、映像や静止画のときはMyMedia(別のDLNAガイドライン準拠ソフトウェアでも同じ)と、接続するサーバーを切り替えなければならない。
とはいえBeatJamは音楽専用のソフトウェアであり、DLNA機器と実際に接続ができたものの、公式にDLNAに対応している製品ではないため、これは仕方のないところだろう。最近ではDLNA対応の家電製品も少しずつ登場しており、こういった機器やソフトウェアが実際にシームレスに接続できる環境を期待したいところだ。
■ サービスやハードウェアに依存しないソフトウェアとしての発展を望みたい
少々、話がずれたので、元に戻そう。このように、Moraへの対応やホームサーバー機能など、BeatJam 2005は強力なネットワーク機能を備えており、単体の製品としての完成度は悪くない製品と言える。
ただし、実質的な使い方を考えると、もうひと工夫欲しいところではある。個人的には、BeatJamでなければならないと感じられるような決定打が欲しいところだ。例えばMora以外の音楽配信サービスも利用できる、他のDLNAガイドライン準拠ソフトウェアとの併用を考慮するといった機能や、現状発売されているポータブルプレーヤーはすべて接続できるなど、サービスやハードウェアに依存しないソフトウェアベンダーらしい工夫が欲しい(PSPが接続可能なのは評価できるが……)。
また、そもそもPCで音楽を共有することが本当に効率的なのか? という考えもあるだろう。音楽に限らず、映像や静止画でも構わないが、これらのコンテンツをPCで共有する限り、サーバーとして利用するPCを常に起動させておくか、使うときにわざわざ起動させなければならない。
個人的には、NASのようにコンテンツを蓄えつつ、常に起動させておくことができるストレージをサーバーとして利用した方が効率的だと思える。今回、取り上げたBeatJamはソフトウェアなので、このような話をするのはお門違いではあるが、ユーザーの利便性を考えれば、ファイルを蓄えるNASがコンテンツを蓄えるメディアサーバー、それも高い汎用性を備えたメディアサーバーとして使えるようになってくれる方が望ましい。実際、音楽ファイルを共有するのであれば、NASにMP3を蓄えて、Windows Media Playerから参照した方が便利だ。以前、本コラムで取り上げたBiBio wGateのような発想の方が、今となっては潔い。
今後、音楽や映像、静止画をネットワークで共有するという方向性の製品がさらに増えてくると思われるが、技術先行ではなく、ユーザーの利便性を考えた製品が登場してくることを期待したいところだ。
■ URL
BeatJam
http://www.justsystem.co.jp/beatjam/
Music@Life
http://www.justsystem.co.jp/beatjam/musiclife/
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2005/05/10 11:05
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