どれを選ぶ? どう始める!? これから楽しむモバイルWiMAX


 モバイルブロードバンドの本命とも言われているモバイルWiMAXの商用サービスが7月1日から開始された。UQコミュニケーションズを始め、主要ISP、家電量販店など、さまざまなサービスの中からどれを選び、どのように利用を開始すれば良いのか? そのポイントに迫ってみよう。

モバイルWiMAXを選ぶ理由

UQが提供するモバイルWiMAX「UQ WiMAX」対応端末

 訪問先への移動時や出張先など、いつでも、どこでも、速度や料金を気にせず快適にインターネットを楽しめるモバイルブロードバンド。そんなモバイルブロードバンドに新たな選択肢「モバイルWiMAX」が追加された。

 いわゆるモバイルブロードバンドと呼ばれるサービスは、すでにいくつかの通信事業者によって提供が開始されている。NTTドコモ、au、ソフトバンクなどの携帯電話事業者がデータ通信サービスとしてサービスを提供しているうえ、家電量販店などでおなじみのイー・モバイルのサービスも存在する。PC購入時にイー・モバイルのサービスに加入して、現在利用しているという人も少なくないだろう。

 このような中、7月1日から新たに商用サービスが開始されたのがUQコミュニケーションズが提供するモバイルWiMAXだ。サービス自体はすでに2009年2月末から開始されていたが、エリアの拡大と共に、数カ月に及ぶお試し期間が終了し、晴れて有料サービスとしてスタートしたことになる。

 では、モバイルWiMAXは、既存のモバイルブロードバンドとどのような違いがあるのだろうか?

 簡単にまとめたのが以下の表だ。携帯電話系のサービスについては事業者ごとに速度(特にau)や料金に違いがあるのだが、ここでは代表としてNTTドコモのサービスを記載している。また、イー・モバイルの最大21MbpsのHSPA+サービスは8月よりの開始となる。

主要なモバイルブロードバンドサービス

モバイルWiMAXイー・モバイル*1携帯電話*2
速度下り40Mbps21Mbps7.2Mbps
上り10Mbps5.8Mbps5.8Mbps
エリア主要都市中心ほぼ全国全国
料金下限4480円1000円1735円
上限5980円6720円
*1スーパーライトデータプラン21(新にねん)の場合
*2NTTドコモで定額データプランスタンダードの場合(7/1開始予定)

 表を見れば一目瞭然だが、モバイルWiMAXの特徴は、その速度と料金にある。通信速度は既存のサービスを大きく上回る下り最大40Mbps、上り10Mbpsとなっており、光ファイバーとまではいかないがADSL並の通信速度を実現している。

 もちろん、この速度は規格上のものであり、実質的な通信速度は下り8~10Mbps、上り1~2Mbpsといったところにとどまるものの、それでも他のモバイルブロードバンドサービスを上回る速度での通信が可能というわけだ。

 一方、料金についても固定の定額料金というシンプルな構成となる。他のサービスの段階制の固定料金と異なり、使わない月も同じ料金を支払う必要があるが、逆に日常的に利用する場合は上限を低く押さえることができる。また、端末費用の負担方法によって違いはあるものの、基本的に、いわゆる「縛り」がなく、解約もしやすい。

 つまり、モバイルでのPCの利用頻度が高い人ほど、高速で、しかも低価格なモバイルWiMAXのメリットが生きてくるというわけだ。

モバイルWiMAXのデメリット

 このように、高速で、コストメリットも高いモバイルWiMAXだが、実際に利用する際には、メリットだけでなく、デメリットもきちんと把握しておく必要がある。

 最大の問題となるのは、やはりエリアだろう。2009年2月に東京23区と神奈川県横浜市、川崎市の一部でサービスを開始後、今回の有料サービスで名古屋、大阪、京都、神戸の主要都市もエリアに含まれたが、まだ全国どこでも使えるという状況にはなっていない。

 詳細なエリアについては、UQコミュニケーションズのサイトで参照していただきたいが、対応エリアの首都圏においても、2009年9月末までに対応予定など、サービス開始時には使えない場所があるため注意が必要だ。

 つまり、モバイルWiMAXは、高速かつ、コストパフォーマンスの高い通信サービスではあるものの、現状はまだ開始されたばかりのサービスであり、他のモバイルブロードバンドサービスのように「どこでも」使えるという状態にはないことになる。

 このため、UQコミュニケーションズでは、契約前にユーザーが利用したいエリアで通信可能かどうか確認できるよう、モバイルWiMAX搭載機器の貸出しサービス「Try WiMAX」を7月1日から開始した。

 「Try WiMAX」の貸出期間は貸出日・返却日を含め15日間で、20歳以上の国内在住者が対象となる。申し込みには本人名義のクレジットカードが必要だ。UQコミュニケーションズのWebサイトから申し込み可能なほか、ビックカメラとヤマダ電機の一部店舗において、店頭申し込みも受け付けている。店頭では原則即時貸し出しとなる。

 こうしたエリアの問題なども含め、モバイルWiMAXのメリット・デメリットを以下にまとめておいたので、加入時の参考にすると良いだろう。

モバイルWiMAXのメリットとデメリット
メリット
・高速
・固定料金
・縛りなし
・MVNOの選択肢が広い
・PC内蔵予定
・将来的にグローバル対応が望める
デメリット
・現状ではエリアが限られる
・従量制課金プランがないため、安価に契約を維持できない


MVNOによりさまざまな事業者がサービスを提供

 それでは実際にモバイルWiMAXを利用する方法について見ていこう。モバイルWiMAXは、冒頭でも紹介したように、基本的にはUQコミュニケーションズが提供するサービスとなっている。

 しかしながら、UQコミュニケーションズは、自社で直接ユーザーにサービスを提供するだけでなく、MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)へのサービス提供も積極的に行っている。また、モバイルWiMAXの技術はグローバルな規格となっているため、通信機器メーカーやさまざまな事業者が、さまざまな形態でサービスに関係している。

 現状、通信サービスを提供する事業者は以下の表のようになる。本家UQコミュニケーションズに加え、ISPのニフティ、BIGLOBE、ワイコムなどがサービスを提供していたり、家電量販店のビックカメラ、ヤマダ電機、ヨドバシカメラと提携するトリプレットゲートなどのサービスが存在する。また、法人向けとしてダイワボウやKDDIもサービスを提供している。

WiMAXサービス1-ISP系
事業者UQコミュニケーションズニフティBIGLOBEワイコム
サービス名UQ FlatUQ 1 Day@nifty WiMAXBIGLOBE
高速モバイルWiMAX*3
WICOM WiMAX
サービス形態月額固定1日利用月額固定月額固定月額固定
登録料2835円-2835円2835円3150円*4
料金(税込)4480円/月600円/1日既存会員:4200円既存会員:4263円/月3990円/月
新規会員:4462.5円新規会員:4473円/月
支払い方法カード/口座振替カードカード/口座振替*5カード*6カード
加入方法Web未定Web,電話窓口WebWeb
*3キャッシュバック(1万円)キャンペーンあり(8/31まで)
*4初期費用無料キャンペーン中(6/30~7/31まで)
*5新規加入で端末購入者のみ口座振替を選択できる。また、既存ユーザーは現在の支払い方法と同じ
*6既存ユーザーは現在の支払い方法と同じ

WiMAXサービス2-家電量販店系
事業者ビックカメラヤマダ電機トリプレットゲート
サービス名BIC定額YAMADA Air Mobile WiMAXワイヤレスゲート Wi-Fi+WiMAX*7
サービス形態月額固定月額固定月額固定
登録料2835円2835円2835円
料金(税込)4480円4480円スタンダード:4480円
にねん:4680円*8
支払い方法カードカードカード
加入方法店頭*9店頭店頭/Web
*7端末は専用端末となる。Aterm WM3200Uの購入が必要
*8にねんプラン:2年単位の継続利用を条件に通常12800円の端末を7800円で購入可能。
途中解約5250円。
*9有楽町店本館・新宿西口店・池袋本店・パソコン館池袋本店・渋谷東口店・渋谷ハチ公
口店・ なんば店・名古屋駅西店(8店舗予定) ソフマップ秋葉本店

WiMAXサービス3-法人向け
事業者ダイワボウ情報システムKDDI
サービス名DiS mobile WiMAXWiMAX接続インターネット
サービス形態月額/年額固定月額固定
登録料2835円3150円
料金(税込)月額4480円4480円
年額49800円

 サービス開始直後ということもあり、まだ詳細が不明な部分もあるが、速度やエリアなどの基本的なサービス内容はUQコミュニケーションズと同じとなるうえ、料金などはほぼ横並びとなっている。

 ただし、条件によって料金がお得になるキャンペーンなども展開されている。たとえばBIGLOBEの場合、既存会員は月額料金が4263円と若干安く設定されている。加えて、7月1日~8月31日までに申し込んだユーザーには、12カ月の継続利用を条件に1万円がキャッシュバックされるサービスも行われている。

 同様の会員向け料金や継続利用によるキャッシュバックキャンペーンはニフティでも実施されているので、うまく活用すればさらにお得にモバイルWiMAXを利用できるだろう。

 サービス内容で特徴があるのはトリプレットゲートだ。もともと公衆無線LANのサービスを提供していたこともあり、モバイルWiMAXのサービスに加えて、同社が提携している公衆無線LANサービス(BBモバイルポイントやlivedoor Wirelessなど6000カ所以上)も月額料金内で利用できるようになっている。

 一方、家電量販店系は、現時点では特にキャンペーンなどは展開されていないが、将来的にPC購入時の割引なども期待できる。今年はWindows 7の登場なども控えているため、PCの購入予定がある場合は、これらの事業者のキャンペーン情報などをこまめにチェックしておくのも手だ。

 UQ WiMAXでも、同様にエリアを補完する公衆無線LANサービス(UQ Wi-Fi)を無償で利用可能だが、サービス開始は10月以降となっているうえ、提供エリアも東海道新幹線(N700系や待合室)、都営地下鉄、空港などの一部に限られる。現状のモバイルWiMAXの欠点はエリアであることを考えると、これを無線LANでカバーできるメリットは高いだろう。

モバイルWiMAXに加入しよう

 このように、複数のMVNOから利用したいサービスを選んだら、実際の申し込みをするわけだが、その前に通信に利用する端末を用意する必要がある。現状、モバイルWiMAXで利用可能な端末は以下のような製品がある。

対応端末
タイプ製品名接続価格XP/Vista*10
対応
Mac OS X*11
対応
メーカー
UQ WiMAX用
市販タイプ
UD01SSUSB12800円シンセイ
UD01NAUSB12800円×NECアクセステクニカ
UD02NAPCカード13800円×NECアクセステクニカ
UD02SSExpressCard/3413800円シンセイ
UG01OK
+UD01OK
USB+GW19800円×OKIネットワークス
WMX-U02USB14800円×アイ・オー・データ機器
Wi-Fi RouterGW16485円×アイ・オー・データ機器
Aterm
WM3200U
USB12800円×NECアクセステクニカ
Aterm
WM3200C
PCカード13800円×NECアクセステクニカ
OEM系BDSS01USB12800円ビックカメラ(シンセイ)
MW-U2510USB12800円DIS(シンセイ)
*10XPはSP2/SP3対応。XP/Vistaとも32bit版のみ対応
*11Mac OS X 10.4/10.5対応

USB接続型端末「WMX-U03」(アイ・オー・データ機器)モバイルWiMAX対応の無線LANルータ「WMX-GW02A」(アイ・オー・データ機器)4種類のUQ WiMAX専用端末

 ポイントは、市販の製品が存在する点だ。一般的なモバイルブロードバンドサービスの場合、通信サービスへの加入の際に、PCに装着するアダプタなどの通信機器を同時に購入するのが一般的となる。これに対して、モバイルWiMAXの場合、サービス加入時に一緒に購入することに加えて、市販のアダプタを自分で購入して利用することも可能となっている。

 また、現在はまだ発売されていないが、インテル製など、モバイルWiMAXの通信モジュールを内蔵したPCも発売予定となっている。つまり、端末の購入とサービス申し込みという2つのステップが個別に必要なケースもあるというわけだ。このパターンをまとめたのが以下の図となる。


モバイルWiMAX利用の流れ

 まず1のパターンは、家電量販店系のサービスを利用する場合だ。店頭で家電量販店が推奨するアダプタ、もしくは市販のアダプタや内蔵PCを購入し、その場で書類などを記入し、家電量販店が提供するモバイルWiMAXのサービスに加入する。

 もちろん、利用するサービスを選ぶこともできる。この場合に相当するのが2のパターンだ。店頭で汎用の端末を購入し、自分のPCに装着。サービス未加入の状態でも、統合ポータルと呼ばれる専用サイトにはアクセス可能となるため、ここで利用するサービスを選んでオンラインサインアップを行い、端末への設定情報の書き込みを行うことになる。3のパターンは、端末の購入もオンラインの通販で済ませるだけで、基本は同じだ。


WiMAX統合ポータル機能の画面イメージ

 最後の4は、すべてオンラインで済ませるパターンだ。UQコミュニケーションズのサービスやISPのサービスなどもそうだが、インターネットに接続可能なPCから申し込みサイトにアクセスし、選択可能な場合は利用する端末、支払い方法、加入するサービスなどを選択して申し込みをする。

 この場合、申込先から送られて来る端末は、通信可能なセットアップ済みの状態となるため、届いた端末をPCに接続すればすぐにモバイルWiMAXの利用が可能だ。

 まとめると、よくわからないので相談しながら申し込みたい人は「1」の店頭で申し込める家電量販店系のパターンで、利用する端末やサービスを自由に選びたい人は「2」や「3」のパターンで、家と同じISPで使いたいなど利用するサービスがあらかじめ決まっている人は「4」のパターンでの申し込みを検討すると良いだろう。

 なお、端末に関しての注意点をいくつか追記しておく。まず、トリプレットゲートのサービスでは、現状、専用の端末(Aterm WM3200U)を利用する必要があり、市販の端末の利用は今後対応予定となっている。また、ニフティのサービスでは、市販の端末での利用に加えて、専用の端末となる「WMX-U03」を購入して利用可能となっているが、この端末は「@nifty WiMAX」専用となるため、他のMVNOとの契約に利用することはできない。これらの制限には注意が必要だ。

自分に合ったサービスを選ぼう

 以上、有料サービスが開始されたモバイルWiMAXを整理してみたが、本文でも触れたように、エリアの拡大や内蔵PCの登場など、現状はまだ物足りない部分もあり、むしろこれからの発展が期待されるサービスとなっている。MVNOに関しても、今後、さらに増える可能性が高い。

 中でも注目されるのは、UQコミュニケーションズが10月からの提供を予定している「UQ 1 Day」と呼ばれる料金プランの提供だろう。このサービスを利用すれば、その場でのサインナップから24時間、600円でモバイルWiMAXを利用することが可能となる。これなら、週1回使ったとしも月額2400~3000円で済むため、外出先などでPCを使う機会が少ない人でも、手軽にモバイルWiMAXを利用できるようになるはずだ。

 このように、モバイルWiMAXは、速度などの技術的な部分だけでなく、端末の形態やサービスの形態などの自由度が高く、今後、さらに多様なサービスが登場することが期待できる。特に、MVNOに関しては、キャッシュバックキャンペーンを展開するBIGLOBEや無線LANとの組み合わせたトリプレットゲートなどのように、独自のキャンペーンや付加価値を提供するサービスがすでに存在する。

 せっかくMVNOでいろいろな事業者がサービスを提供しているのだから、価格や付加価値などを比較して、なるべくお得で、しかも自分に合ったサービスを選びたいところだ。

 [お詫びと訂正]
 初出時、BIGLOBEのキャッシュバックキャンペーンの金額に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。


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(清水 理史)
2009/7/1 12:17