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第五景:ネットブック3台目にして行き着いたのは「IdeaPad S10e」
正田拓也
[2009/03/26]

第四景:Gmailが使えれば他には何もいらない? 宅内専用で使うネットブック
森田秀一
[2009/03/12]

第三景:小さいPC大好きだけどMacBook Airユーザーの考えるネットブック
小林裕一郎
[2009/02/26]

第二景:「軽い」「打ちやすい」「長時間」の三拍子が揃ったtype P
甲斐祐樹
[2009/02/12]

第一景:カバンに入れっぱなしで使うホームサーバービューワー
清水理史
[2009/01/29]


2009年

第三景:小さいPC大好きだけどMacBook Airユーザーの考えるネットブック
小林裕一郎


 ライターの小林と申します。現在、いわゆるUMPC/ネットブックとしては「FMV-BIBLO LOOX U/B50」と「Eee PC 901-16G」を所有しています。またMacBook Airも所有しており、これが実質的なメインマシンとなっています。


LOOX U/B50には現在Windows 7ベータをインストール
超小型の無線LANマウス「MICRO GRAST」を利用。単4電池1本で動作するという軽さが魅力です。唯一のUSBポートがふさがってしまうのは痛いですが




小さいノートPCが好き

 私にとってパソコンは最も重要な仕事道具である――という方便のもとに、ミニノートPCが好きで何台も買っています。1990年前半には98ノートを3台ほど買い、その後Windows PCとして初代VAIOのA4サイズ版(PCG-707)を買ったところで「大きいのは辛い」ということに気づき、その後はCASSIOPEIA FIVA(カシオ)、InterLInk(ビクター)を2台(2世代)ずつ。しばらくモバイル空白期間があって、FMV BIBLO LOOX P、LOOX U(これも2世代)という遍歴です。

 上記機種は、いずれも重さ1kgを切ることに異常にこだわっていて、LOOX U以外はいずれも「990g」だったと思います。ネットブックはこの点「だいたい1kg前後」とアバウトで、こだわりの無さが個人的には残念です。別に1.1kgになったら急に腰に来るとか、そういうわけではないのですが……。

 主な用途はテキストの入力。そしてWebブラウズ、メールです。基本的にはネットブックのスペックでも問題のない作業ばかりです。ただ、Windowsの解説記事を作るときには現行のWindows(つまりVista)の画面ショットが欲しい場合が多く、XP環境では不便なことがあります。

 LOOX U/B50は現在Windows 7ベータ(クリーンインストール状態)で利用しています。Windows Vistaよりも起動もソフトの動作も高速で、安定感も増したように感じています。Windows XP用ドライバの提供も始まっているのでXPでの利用もできるのですが、7の方が表示がきれいだし、おそらく起動も速いのではないかと思います。液晶の回転や辞書など、LOOX U/B50特有の機能は使えていませんが。

 環境はごくノーマルです。ブラウザは「Firefox」でテキストエディタは「秀丸エディタ」。作業中のファイルは「Dropbox」で他のマシンと同期しています。その他では、仮想デスクトップの「Virtuan Win v4.0」で2枚のデスクトップを切り替えて利用しています。


VAIO type Pでうらやましい! と思った「x-Radar」を利用。しかし動作が不安定(そもそもWindows 7は動作環境としてサポートされていませんが)
ファイル同期サービス「Dropbox」で、全マシンの作業フォルダを同期。複数のマシンをとっかえひっかえ持ち歩いても常に最新のファイルが利用できます

仮想デスクトップソフト「Virtuan Win v4.0」で複数(ここでは2つ)のデスクトップを切り替えながら作業。画面の狭さを補うために必須です




「フタを開けたらすぐに使える」マシンであること重要

 初めにMacBook Airが実質的なメインマシンだと述べました。ネットブックではないですが、ここでMacBook Airを褒めたいと思います。

 持ち歩いて仕事をするマシンは、フタを開けたらすぐ使いたい。フタを開けてから起動を2、3分ほど待つのでは、不意に始まった会話に乗り遅れたり、せっかく思いついたアイデアを忘れてしまったりするおそれがあり、いまいち頼りになりません。

 スリープ状態で持ち歩けば良いのですが、これまでの感覚だとLOOX U/B50(Vista環境)では5~6回に1回、Eee PCも10回に1回ぐらいの割合でスリープからの復帰に失敗して変なところでフリーズしたり、再起動がかかったりします。そうすると以後5、6分~下手すると10分以上も、PCを利用したかった貴重な時間を再起動待ちや諸々の復旧作業に取られてしまい、いろいろ台無しになってしまうことがあります。

 Macはこの点において非常に優秀で、フタを開けた次の瞬間からもう使えます。過去に1回だけ復帰に失敗しましたが、これを単純にパーセントにすれば1%未満で、十分信頼できます。Macの細かな使用感やデザインの美しさなど褒めるべきポイントはいろいろあるのですが、最近はもうこの「フタを開けたらすぐ使える」に慣れてしまっていて、Windowsマシンではなんか不安、と感じる体になってしまいました。Macを使うようになる前は長時間持ち歩くとき確実にシャットダウンするとか、起動時はお茶を飲んで待つとか、紙のメモ帳を持ち歩くとか、それなりに適応していた気もするのですが。

 Windows 7でも、やはり「フタを開けたらすぐ使える」とはいきません。Windows Mobileは「電源入れたらすぐ使える」という点においては優秀なので、そこを取り入れたモバイル向けWindowsというのはできないものでしょうか。

 また、LOOX U/B50は、5.6インチで1280×800ピクセルと異常に細かすぎる画面なので、文字をかなり大きくするなど工夫しないと目が疲れます。キー配置も(先代ほどではないものの)かなり特殊で、しばらく使わないでいると手の感覚が戻るまでに少し時間を要します。ものすごく小さくて軽いかわりに、犠牲にしている部分もいろいろあるマシンですね。

 LOOX U/B50はMacBook Airよりもだんぜん小さく、軽く(大容量バッテリ搭載で約640g)、またバッテリの持ちも圧倒的です(SSD搭載でバッテリ駆動公称11.1時間。実質でも7時間前後でMacBook Airの倍程度)。長時間電源の取れないセミナーなどを取材するときや、荷物をできるだけ減らしたいときなど、MacBook Airじゃなくてこれだよな、という場面はあります。





ネットの可能性を広げるネットブックであって欲しい

 ネットブックとは「限定されたスペックの、割り切って使うマシン」だと思っていました。ですが、今年の始めに帰省して、ちょっと考えが変わりました。実家には5年ほど前のパソコンがあって父親が使っているのですが、そのマシンのスペックはネットブック以下なのです。CPUはAthlonでおそらくAtom N270と互角ぐらい。メモリはたったの256MB。ウイルスバスターから「メモリが足りないのでパフォーマンスが落ちます」と言われたときには驚きました。

 平均的なPC買い換え周期は3年ぐらいと聞いたことがありますが、それ以上の周期で買う人にとって、ネットブックは高性能だわ安いわの夢のようなマシンに映るのですね。しかも、小さくて持ち運びやすいからいつでもどこでもネットが使える、無線LANは速い、Webカメラも楽しめる、と、よくよく考えてみると(数年前のPCよりも)ネット活用の可能性を広げる要素を多数持っています。

 今後のネットブックは「ネットブック」という枠の中でじわじわ高機能化していくのかな、という気もするのですが、ネット活用の提案力を高めていく、という方向性もありますよね。Eee PCなどが標準搭載しているオンラインストレージやWindows Live、Google LatitudeやPlaceEngineのような位置情報関連サービスなど、ネットの新しい、でもまだ広く普及しているとは言いがたいサービスは数多くあります。これらを広げるきっかけとして、今後のネットブックが積極的に役割を果たしていったら面白いと思います。

 例えばGPSを搭載していくとか、Windows Liveの簡易ランチャーやハードウェア起動ボタンを付ける、なんてのもアリかもしれません。Windows 7にはネットブック向けエディションが設定されるそうで、それにはキツい機能制限が付くんじゃないか、という話もありますが、代わりにネット活用に目が向くような要素があれば面白いのではないかと思います。そんな中で「いつでもフタを開けたらすぐ使えるようにする」というのも、もっとチューンされるべきだと思うのですが……。


関連情報

URL
  製品情報
  http://www.fujitsu-webmart.com/pc/ui011?SERIES_CODE=776
  ネットブック/UMPC特集
  http://www.watch.impress.co.jp/headline/extra/2008/netbook-umpc/

2009/02/26 11:06

小林祐一郎
1972年新潟県生まれ。プログラマー、雑誌編集、Webディレクターなどを経て、現在は編集・執筆を中心に活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」。ユーザー視点から、パソコンの利用術やインターネットのコミュニティサービス利用法を研究している。近著に「できるポケット+ クラウドコンピューティング入門」(インプレスジャパン)など。
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