フレッツ向けの映像配信サービス「オンデマンドTV」が、6月よりNTT東日本エリアでも開始された。従来の映像配信サービスと異なり、利用プロバイダーを問わないのが大きな特徴だ。実際に加入してみたので、その使用感をレポートしよう。
■ プロバイダーを問わない映像配信サービス
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オンデマンドTV
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オン・デマンド・ティービーが提供する「オンデマンドTV」は、FTTHを利用して配信された映像をSTBで受信、家庭用のテレビで手軽に楽しめるブロードバンド映像配信サービスだ。もともとはNTT西日本エリアで提供されていたサービスだが、今年の6月からNTT東日本エリアでも利用可能になった注目のサービスだ。
ブロードバンド映像配信サービスはすでにいくつかの事業者によって提供されているが、今回取り上げるオンデマンドTVの特徴は大きく分けて2つある。1つはプロバイダーを問わずに利用できる点。もう1つは既存のブロードバンド映像配信サービスに比べてSTBの完成度が高い点だ。
まずは、プロバイダーを問わない点について見ていこう。現状提供されているブロードバンド映像サービスには、4th MEDIAやOCNシアター、BBTV、KDDIの「光プラスTV」などが存在するが、いずれも利用環境が限られていた。4th MEDIAはいくつかのプロバイダー(@nifty、BIGLOBE、hi-ho、ぷらら、So-net)で提供されているが、そのほかのサービスについては、基本的には利用可能な回線とプロバイダーが限られていた(※編集部注:8月15日より、4th MEDIAでもプロバイダーを問わないプランが新設されます)。
オンデマンドTVもフレッツ向けのサービスである以上、回線環境はBフレッツに限られるが、プロバイダーに関しての制限はなく、プロバイダーごと料金の違いもない。オンデマンドTVは、フレッツのオプションサービスである「FLET'S.Net(IPv6サービス)」を利用して提供される仕組みのため、インターネット接続に利用するプロバイダーはサービスに影響しない。このため、BフレッツとFLET'S.Netさえ契約していれば、どのプロバイダーでも利用可能だ。
ブロードバンド映像配信サービスを利用してみたいが、利用中のプロバイダーでサービスが提供されていないためにあきらめていた、などというユーザーには、まさにうってつけのサービスと言えるだろう。
料金に関しては、一般的なブロードバンド映像配信サービスとほぼ同等だ。見放題対象のビデオ作品を月2本まで視聴できる「おてがるプラン」の場合、基本料が月額577円で、これにSTBのレンタル料金315円がプラスされ、合計892円となる。このほか、以下の表のように対象となるビデオ作品が見放題になる「みほうだいプラン」や、専門チャンネルの視聴ができる「多ちゃんねるプラン」なども用意される。ただし、現状、NTT東日本エリアでは専門チャンネルサービスが提供されていないため、「みほうだいプラン」と「おてがるプラン」しか契約できない。
配信される映像はMPEG-2形式で、ビットレートは約4Mbps。また、9月をめどにH.264方式にも対応、高画質化を図る予定もあるという。
プラン名 |
プラン詳細 |
初期費用 |
月額料金 |
STBレンタル |
月額費用合計 |
おてがるプラン |
見放題対象のビデオを毎月2作品まで視聴可能 |
5,250円 |
577円 |
315円 |
892円 |
みほうだいプラン |
見放題対象のビデオが見放題 |
2,100円 |
2,415円 |
多ちゃんねるプラン |
ベーシックチャンネルの専門チャネルの視聴が可能 |
2,100円 |
2,415円 |
よくばりプラン |
みほうだいプラン+多ちゃんねるプラン |
3,150円 |
3,465円 |
■ セットアップは手軽
申し込みやセットアップに関しては手軽な印象だ。同社のホームページから申し込みを行なうと(申し込み前にFLET'S.Netの契約が必須)、後日、必要な機器が送られてくる。
感心したのは、送られてくる機器にSTBだけでなく、スイッチングハブや10mのLANケーブルなども含まれていた点だ。ルータを利用せずにONUをPCへ直結しているような場合でも、スイッチングハブがあればPCとSTB両方の接続が可能になるし、IPv6ブリッジに未対応のルータでも、「ONU-ハブールータ-PC」という順番で接続することにより、問題なく接続できるようになっている。
また、10mのLANケーブルによって、ルータなどの通信機器とSTBの設置場所が離れている場合などでも問題なく接続できる。ユーザーの実際の利用環境を考慮して、細かな配慮がなされているのはうれしいところだ。
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申し込み後に送られてくる機器。STB本体とリモコンのほかに、5ポートのハブ、10mのLANケーブルも同梱されていた(レンタルの場合)
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また、STBの設定が不要であるのもうれしい点だ。あらかじめユーザー情報が設定済みで出荷されているのか、それとも機器固有のシリアル番号などで識別しているのか、詳細は不明だが、とにかく接続するだけですぐに利用できる手軽さは高く評価したいところだ。
STBはバッファロー製。ルータ程度の大きさと比較的小型でデザインも悪くない。背面には、LAN端子、ビデオ出力端子に加え、D1端子も用意される。フロントにUSBポートも搭載されているが、用途に関しては特に説明されていないため不明
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なお、STBはレンタル(315円)と購入(15,750円)が選べるが、個人的にはレンタルでの契約をおすすめしたい。確かに長期間利用する場合(4年以上)、結果的には購入の方が安くなるが、この手のサービスのSTBは、今後さらなる進化が期待できる製品分野だ。今後、改良版のSTBが登場したときに、新型に変更できる可能性があることを考えると、買取りではなくレンタルにしておいた方がいいだろう。
■ 高い操作性とわかりやすいインターフェイスが好印象
前述したように、オンデマンドTVのSTBはセットアップが楽だが、その操作性もかなり良好だ。直感的な操作が可能で、マニュアルなど見なくてもサクサクと操作できる。ちなみにマニュアルの完成度も高くわかりやすいと感じた。
このSTBのユーザーメニューインターフェイスは、スクウェア・エニックスが、同社子会社のUIE Evolution社のクロスプラットフォーム対応ユーザーインターフェイス開発ミドルウェア技術「UIE Engine」を使って、オンデマンドTV向けにメニュー開発を行なったものだ。詳しくは以下に述べるが、このメニューはわかりやすく、操作性も高いと感じた。
全体的な画面構成は至ってシンプルだが、ビデオサービスのトップメニューでは注目のタイトルが横スクロールで移動しながら表示されるなど、なかなか楽しいイメージを演出している。
オンデマンドTVのトップ画面(左)。STBの設定が不要なため、電源を入れるとすぐにこの画面が表示される。ビデオサービスのトップメニュー(右)では、注目のタイトルがスクロール表示されるようになっている
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また、見たいビデオの検索も手軽だ。ビデオを選ぶ際のメニューの構成は、以下の画面のように、一番上が「洋画」や「邦画」といった大きなジャンル、その下が「アクション」や「コメディー」といったサブジャンル、そしてその下に作品の一覧といった構成になっている。このため、リモコンの上下左右ボタンを押すだけで、ジャンルやサブジャンルを手軽に切り替え、ジャンルを絞り込みながら見たい作品を探すことができる。
リモコンでの操作も非常に明快と感じた。一覧からビデオタイトルを探すときも、ジャンルによっては1画面にビデオ作品のリストが収まらない場合があるが、この場合でもリモコンの左右ボタンでページの切り替えが可能だ。
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非常にわかりやすいインターフェイス。リストのページ送りも左右ボタンで前のページ、次のページと切替えられ、直感的な操作ができる
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筆者は個人的に利用している4th MEDIAと比較すると、このあたりの操作性の高さが特に際立つ。4th Mediaのチューナーの場合、1画面にビデオのリストが収まりきらない場合は、画面上の「次へ」「前へ」といったボタンにフォーカスを合わせ、決定ボタンを押してページを切り替える必要がある。こういった画面上のボタンによる操作は、いかにもマウスの利用を前提としたPC的なインターフェイスだ。これに対して、オンデマンドTVのインターフェイスはリモコンでの直感的に操作可能で、同じ操作でもボタンを押す回数が少なくて済む。
リモコンのボタンの配置もよく考えられており、中央に方向ボタンと決定ボタン、その周りによく利用する「戻る」ボタンや「メニューボタン」などが配置されている。DVDレコーダなどの家電製品ではもはや当たり前とも言える配置だが、前述した4th MEDIAのチューナーのようにSTBではサポートされていない場合もあり、オンデマンドTVではやるべきことをきちんとやっているという印象がある。
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基本的な操作は、上下左右の方向ボタン、決定ボタン、戻るボタンだけでほぼ可能。はじめて操作する場合でも、画面から視線をリモコンに移さずに、スムーズに操作できる
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このほか、家族で利用することを前提としたシークレットモードの工夫にも感心した。オンデマンドTVのSTBではシークレットモードを設定することで、視聴年齢制限が設けられている作品や成人向けの作品の表示方法を細かく設定できるようになっている。具体的には、リモコンの「SECRET」ボタンを押して暗証番号を入力しないと、成人向け作品のジャンルメニュー自体が画面に表示されないように設定できる(常に表示する設定にもできる)。
この設定は標準でオンになっており、普通に利用する限りでは、成人向けのコンテンツ自体が提供されていないように見える。子どもの年齢によっては、成人向けコンテンツのメニューが存在する時点で、それを見たいと思う可能性が高いが、オンデマンドTVではメニュー自体が表示されないため、そういった心配もない。
シークレットモードオフ(左:標準設定時)とシークレットモードオン(右)の画面。シークレットモードをオンにしたときだけ、「成人向け」というメニューが表示され、普段はそのようなジャンルがあること自体が表示されない
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また、購入したタイトルをきちんと確認できるのもありがたいところだ。「マイページ」というメニューが用意されており、ここから視聴可能な作品(購入後、視聴期限が残っている作品)や過去に購入した作品の履歴を一覧表示できる。たびたび比較して申し訳ないが、4th MEDIAのチューナーでは視聴期限が残っているタイトルを確認する手段が存在せず、購入履歴もPCからインターネット経由でホームページにアクセスしないと参照できない。当たり前と言えば当たり前なのだが、すべての操作がSTBで完結するオンデマンドTVの方がやはり使いやすい。
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購入履歴もきちんと管理可能。過去に購入した作品の履歴はもちろんのこと、まだ視聴期限が残っている作品もきちんとリスト表示できる
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■ 最終的な決断はコンテンツ次第
以上、オンデマンドTVのサービスを実際に利用してみたが、サービスとしての完成度はかなり高いと感じた。個人的には、STBの操作レスポンスがもう少し速くなれば完璧と言えるが、初期セットアップの手軽さ、ストレスを感じさせない操作性の良さ、そしてプロバイダーを問わずに加入できる点を考えると、かなりおすすめできるサービスだと言える。
ただし、この手のサービスの結論はやはりコンテンツの充実度だ。もちろん、オンデマンドTVのコンテンツは2005年8月現在で約2,000コンテンツを取り揃えており、「バイオハザードII アポカリプス」スパイダーマン2」といった映画に加えて、海外ドラマ「フレンズ」、「フジテレビ On Demand」などが視聴できる。また、コンテンツによっては48時間視聴可能なものがあるなど、他サービスに比べて視聴可能期間が長いのも特徴だが、最終的に見たいコンテンツがあるかどうかが加入の決め手となる点に違いはない。たとえば、OCNが提供しているOCNシアターでは現在「24」を配信しているが、そういった魅力的なタイトルが増えてくれば、文句のないサービスだと言える。
また、個人的には、もっと子ども向けのコンテンツを充実させて欲しいと思う。現在、NTT東日本のフレッツ・スクウェアでテレビ版「ポケットモンスター」が配信されているが、こういったコンテンツこそPCではなく、ブロードバンド映像配信サービス向けだと常々感じている。また、親の世代が子どものころに見た優良なテレビ番組(たとえば「まんが日本昔話」など)が再配信されると、教育目的での利用にも適したサービスになるのではないか。
コンテンツ保護の面で難しい面があるのかもしれないが、繰り返し視聴される可能性が高い子ども向けのコンテンツは提供する側にも大きなメリットがあるはずだ。家庭用のテレビで利用するサービスである以上、家族みんなが魅力を感じるようなコンテンツが増えてくれることを望みたいところだ。
■ URL
オンデマンドTV
http://www.ondemandtv.co.jp/
スクウェア・エニックスがオンデマンドTVに技術協力のリリース(PDF)
http://www.square-enix.com/jp/company/j/news/2005/download/0302-200503070000-01.pdf
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2005/08/02 11:02
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