念願のFTTHをついに導入。筆者の住む地域ではNTT東日本の「Bフレッツ」と有線ブロードネットワークスの「BROAD-GATE 01」の両方が利用可能だが、今回はテストの意味も含めて両方の回線を導入してみた。両者のサービスで何か違いは見られるのだろうか? さっそく比較をしてみた。
■ それぞれがやっかいな問題を抱えている日本のブロードバンド
次世代のブロードバンドインフラの本命と言われながら、なかなか普及が進まないFTTH。ADSLの高速化、低価格化が劇的に進んでしまったこともあり、その陰もすっかり薄くなってしまった感さえある。現状、FTTHには導入の難しさ、料金の高さといった問題がある以上、まだまだ普及に時間がかかるのも確かだ。
しかし、速度や安定性といった技術的な面で見れば、やはりFTTHに軍配が上がる部分も多い。実際の用途は? という問題もあるものの、100Mbpsという圧倒的な伝送速度は魅力的である上、ADSLのように伝送距離によって速度が低下するということがない特徴を備えている。
もちろん、ADSLも次世代の24Mbpsの姿がすでに見え始めてはいるが、これは主に近距離ユーザー向けの技術となることを考えると、誰もが分け隔てなく利用できるサービスとしては現状の12Mbps以上の技術が登場することは考えにくい。しかも、現状、ADSLは干渉騒動、NTTの接続約款の変更など、技術的なこと以外にさまざまな問題を抱えている。現段階でもっとも手軽でコストパフォーマンスの高いサービスは間違いなくADSLだが、その将来が明るいかと言われると決してそうとも言えないだろう。このような状況を考えて、FTTHに期待しているユーザーも少なくないはずだ。
■ Bフレッツ・ニューファミリーとBROAD-GATE 01を導入
筆者もこのような理由からFTTHの導入を決意したひとりだ。筆者宅は、幸運なことに、複数の事業者がサービスを提供する地域にある。もちろん、サービスが提供されている地域であっても実際にFTTHを導入できるとは限らない。集合住宅や賃貸物件などの場合、管理組合や大家さんの承諾を得なければ、実際にFTTHを導入することはできない。しかし、筆者のケースでは、こういった障害がまったくなく、FTTHを導入しやすかったという経緯もある。
今回、実際に導入したのはNTT東日本のBフレッツ ニューファミリータイプと有線ブロードネットワークスのBROAD-GATE 01 TypeEの2つの回線だ。FTTHの場合、ADSLほど事業者による技術的な違いは存在しないが、サービス内容にはそれぞれ違いが見られる。主な違いは以下の表の通りだ。
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Bフレッツ ニューファミリー |
BROAD-GATE 01 TypeE |
事業者 |
NTT東日本/西日本 |
有線ブロードネットワークス |
工事費用 |
27,100円 |
33,000円 |
月額料金 |
5,800円(別途ISP費用が必要) |
5,700円 |
認証方式 |
PPPoE |
- |
IPアドレス |
ISPに依存(基本的にDHCP) |
グローバルIPアドレス固定(5個) |
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もっとも大きいのは認証方式とIPアドレスの部分だろう。Bフレッツは他のフレッツ・シリーズと同様にPPPoEによる認証方式を採用しており、IPアドレスの付与の方法はISPに依存する。これに対して、BROAD-GATE 01ではPPPoEは採用しておらず、IPアドレスは必ずグローバルIPアドレスが付与される(利用可能なのは5個)。また、BROAD-GATE 01の場合、ISPサービスも含まれるため、別途ISPとの契約が必要ないという特徴もある。
このように、サービス面だけで比較した場合、個人的にサービス内容が充実していると感じるのはやはりBROAD-GATE 01の方だ。何と言っても固定IPアドレスが付与されるのは大きな魅力だし、価格的なアドバンテージも大きい。もちろん、ユーザーによっては固定IPアドレスなどは必要なく、むしろフレッツ・シリーズのようにISPを自由に選択できるメリットの方が大きいと感じるケースも考えられる。しかし、やはり価格的なメリットはやはりBROAD-GATE 01の方が大きいと言えるだろう。
また、今回は価格帯のレベルを合わせるという意味もあり、Bフレッツはニューファミリータイプを選択したが、このサービスは基本的に100Mbpsの回線を分岐させ、複数のユーザーで共有する方式となる。このため、場合によっては100Mbpsの帯域をフルに利用できないことも考えられる。これに対して、BROAD-GATE 01は、複数のユーザーで共有するような形態とはなっていない。つまり、BROAD-GATE 01のサービス内容は、Bフレッツで言うところのベーシックタイプとほぼ同等だと言える。Bフレッツのベーシックタイプが月額9,000円であることを考えると、やはりコストパフォーマンスは高いと言えそうだ。
■ 工事はどちらもスムーズ
実際の工事に関しては、どちらもスムーズで特に大きな差はなかった。筆者宅の場合、家の直前にある電柱から2本先のところまで、すでに光ファイバーが敷設されていたため、そこから自宅まで新たに光ファイバーを敷設し、自宅へと引き込むだけという簡単な工事となった。時間としては2~3時間といったところだ。
なお、電柱から自宅への引き込みには、エアコンの室外機用の穴を利用することにした。この穴は電話回線を引き込むためにも利用しているのだが、電話工事の際、担当者に光ファイバーの導入を検討していることを伝えたところ、あらかじめエアコンの穴に9mmの塩化ビニール製の配管を通しておいてくれたようで、その配管を使ってスムーズに光ファイバーを室内に敷設することができた。
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エアコンの穴に9mmの配管を通し、そこから光ファイバーを敷設。工事は、噂通り、道路を通行止めにして行なう大がかりなものであった
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光ファイバーは、必要以上に曲げたり、強い負荷がかかると折れてしまうこともあるので、実際にFTTHを導入する際には、筆者宅のように何らかの方法で配管を通しておいてもらうといいだろう。
なお、メディアコンバーターに関しては、Bフレッツは一般的なタイプだが、BROAD-GATE 01の場合は特殊な製品となった。筆者宅は、NTTの収容ビルからは1.5km前後と近いものの、有線ブロードネットワークスの基地局からは3kmと距離が遠くなる。このため、通常のタイプのメディアコンバーターでは出力が足りず、エラーが発生する可能性があるのだそうだ。このため、筆者宅では、アライドテレシス製の「CentreCOM MMC103」が設置されることとなった。後から、同社のWebサイトでスペックを確認してみたところ、確かに受信感度、送信パワーともに高いレベルの製品であるようだ。
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無事に設置されたメディアコンバーター。左側がBフレッツで、右側がBROAD-GATE 01。BROAD-GATE 01は一般的なメディアコンバーターでないため、見た目があまり良くない黒いケースに収められている
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BROAD-GATE 01ではケース内にアライドテレシス製のメディアコンバーターを収納。距離によっては出力の大きいタイプが必要になる
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■ 速度は互角、安定性は…
では、実際のパフォーマンスはどうなのだろうか? これはほぼ互角と言えそうだ。実際にインターネット上の速度測定サイトを使って計測してみたところ、以下のような結果となった。
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Bフレッツ ニューファミリー |
BROAD-GATE 01 TypeE |
直結 |
フレッツ・スクウェア |
35.02Mbps |
- |
ブロードバンドスピードテスト |
44.4Mbps |
72Mbps |
RBB Today |
36.1/7.32Mbps |
77.48/30.52Mbps |
BA8000 Pro経由 |
フレッツ・スクウェア |
69.28Mbps |
- |
ブロードバンドスピードテスト |
63Mbps |
61Mbps |
RBB Today |
66.94/13.47Mbps |
78.75/23.16Mbps |
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※Bフレッツではプロバイダーに「ぷらら」を利用。パソコンはPentium4 1.8GHz、メモリ512MBを使用 |
どちらの回線もほぼ60~70Mbps程度の速度を実現している。若干、BROAD-GATE 01の方が高速だが、PPPoEによるボトルネックやプロバイダーの違いなど考慮すると、ほぼ同等の速度と言って差し支えないだろう。なお、PCとメディアコンバーターを直結した場合、Bフレッツの速度が極端に遅いが、これは回線自体の問題というよりは、PCのOS側の問題となる。今回、測定にはWindows XPを利用したが、Windows XPのPPPoEはあまりパフォーマンスがあまり良くない。実際、ルーター(NTT-ME BA8000PRO)を利用して計測したところ、どちらの回線もほぼ60~70Mbpsほどの速度を計測することができた。もちろん、MTUなどの値をチューニングするなどすれば、直結の状態でも多少パフォーマンスを改善することも可能だが、今回はチューニングをさけて、あくまでも標準の状態で計測することにした。
今回の結果で、興味深かったのは、Bフレッツのニューファミリータイプでもかなりのパフォーマンスが実現できる点だろう。ニューファミリーの場合、1本の光ファイバーを敷設し、そこから各戸へと光ファイバーを分岐させる方式となっている。つまり、基本的には複数のユーザーで100Mbpsの帯域を共有する格好だ。このため、多数のユーザーが存在し、アクセスが集中すれば、パフォーマンスは低下する傾向にある。
しかし、筆者宅ではこのようなパフォーマンスの低下はほとんど見られなかった。もちろん、環境にもよるのだろうが、現状、FTTHユーザーが少ないことを考えると、ニューファミリーでもパフォーマンス面の不満はあまりないと考えられる。
また、ここで計測した値はあくまでも最高速度であり、実際にインターネットに接続する際には、ここまでのパフォーマンスが必要となるケースが滅多にないのが現状だ。実質的には20Mbpsもあれば十分すぎるほどで、最近増えてきたWindows Media Player9向けの6Mbpsのストリーミング(この品質は一見の価値はある)、サイズの大きなファイルのダウンロードなどもまったく苦にしない。このような実質的な速度域でかまわないのであれば、月々の料金が安いニューファミリーを選択する方が効率的と言えるだろう。
一方、安定性に関しては、Bフレッツはかなり良好だ。導入から1カ月以上経過したが、回線が切れるなどのトラブルはまったく発生していない。一方、BROAD-GATE01に関しては、導入から2回ほど使えなくなるトラブルが発生した。1回目はメディアコンバーターの不調で、2回目はウィルスによる被害だ。
前述したように筆者宅では有線ブロードネットワークスの基地局から遠いため、出力の高いメディアコンバーターを利用している。この機器は、たまにさわってみるとかなり熱く、発熱量が多いことがわかる。しかも、筆者宅ではメディアコンバーターをエアコンの真下に設置しているため、エアコンの暖かい風が直に当たるようになっている。トラブルとしては、Ethernetが認識しなくなったのだが、しばらくの間、電源を抜いておいたら復旧したので、おそらく発熱によって誤動作したのではないかと推測できる。
2回目のトラブルは、1月末に世界中で猛威をふるった「Slammer」の影響だ。BROAD-GATE 01は固定IPが利用できるためか、サーバーを設置して利用しているユーザーが多いと聞く。その中に感染被害にあったユーザーもいたようで、この影響で回線がつながらない状態になってしまったことが1度あった。
まあ、これらのトラブルは原因もはっきりしているため、対処するのは容易だったが、FTTHと言えどもトラブルとはまったく無縁というわけではないのだということを認識するよい機会になった。
■ 今後はコンテンツ勝負の時代に
このように、今回、2つのFTTHを比較してみたが、トータルで見た場合の満足度は互角と言えそうだ。BROAD-GATE 01は固定IPがもらえる点や速度面にアドバンテージがあるが、何と言ってもサービスエリアが狭い。ほぼ全国で使えるようなサービスにならないかぎり、ユーザーが比較対象として考えるのは厳しいだろう。一方、Bフレッツは、ニューファミリータイプであるため、現状はパフォーマンス面に影響がなくても、将来的にパフォーマンスが低下する可能性も秘めている。だからといってコスト的にベーシックタイプにするわけにはいかない。安定性などはかなり良好だが、どうしてもコストパフォーマンスで考えるとBROAD-GATE 01ほど有利とは言えない。
ただし、これはあくまでも回線自体の比較であり、今後の展開次第では有利、不利がはっきりしてくる可能性がある。今後の展開とは、コンテンツの整備だ。ユーザーが求めているのは、回線自体ではなく、あくまでも回線を利用したサービスだ。FTTHの速度を活かせるようなコンテンツを整備できなければ、今後の回線の主流とはなりえないだろう。
もちろん、BフレッツもBROAD-GATE 01も、現状、ある程度のコンテンツを用意してはいる。しかしながら、BROAD-GATE 01はコンテンツ数はそこそこ多いものの2Mbps程度のストリーミングとなるため、FTTHではなくても良いのでは? と疑問に思ってしまう。一方、Bフレッツ側は前述したように6Mbpsのストリーミングなども用意されているが、サンプル的な映像が多く、一度見れば十分というレベルにすぎない。
コンテンツを整備するのは、回線事業者なのかプロバイダーなのか、それともコンテンツ事業者なのかという議論があるのも確かだが、ここをうまく整備できなければ、事業者ごとの差別化も難しいし、そもそもADSLとの差別化さえできない。このあたりの工夫で、ぜひともADSLではなく、FTTHでなければならないのだという説得力のある回答を示してもらいたいところだ。
■ URL
有線 BROAD-GATE 01
http://ftth.gate01.com/
フレッツ・シリーズ(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/flets/
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