PCのネットワーク化が進むにつれ、着実に普及しつつあるネットワーク対応周辺機器。今回は、このようなネットワーク対応周辺機器の中からプリントサーバーに注目してみた。プリントサーバーと言えば、ひと昔前までは使いにくい製品の代表のようなものだったが、最近では驚くほど手軽に、そして多機能に進化している。実際にアイ・オー・データ機器のET-FPS1Lと新潟キヤノテックのNetHawk Wireless-Print11を試してみた。
■ プリントサーバーは高いし、使いにくい?
PCのパラレルポートに接続したプリンタを共有し、ネットワークで使えるようにする。現在でも、このような方法でプリンタを共有しているユーザーが大多数だろう。プリントサーバーやネットワークインターフェイス内蔵プリンタなどを使えば、もっと効率的にプリンタを共有できるのはわかっていても、やはり数千円~数万円もかけてプリントサーバーを購入する気にはなれないというユーザーが多い。
しかも、これまでのプリントサーバーは設定が面倒だというイメージが定着していた。実際、ひと昔前のプリントサーバーは、初期設定をするためだけにIPX/SPXプロトコルをPCに追加しなければならなかったり、PCにプリンタを追加する際に新たに専用ツールをインストールしたり、ポートを追加しなければならないことがあり、決して使いやすくはなかった。ルータなどのネットワーク機器がどんどん初心者よりに使いやすく進化しているのに、プリンタという身近な機器をネットワークにつなぐことがこんなに面倒かと辟易したものだ。
しかし、この状況も次第に変化しつつある。最近ではより手軽に設定できるプリントサーバーが登場してきており、誰にでも簡単に扱えるようになってきた。
■ ソフトレス設計のアイ・オー「ET-FPS1L」
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「ET-FPS1L」
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たとえば、アイ・オー・データ機器から発売されているパラレルポート用のプリントサーバー「ET-FPS1L」だが、この製品はソフトレス設計をウリにした製品になっている。本体にはHTTPサーバー機能を内蔵しており、各種設定はブラウザから行なうことが可能。PC側にも特別なツールやドライバを追加インストールする必要はなく、Windows XPなどに標準で搭載される「Standard TCP/IP Port」を利用すればよい(Me/98などではSMBを使用)。
実際に設定してみたが、プリンタに接続するだけで、本体の設定をほとんど変更することなく利用できた。クライアント側の設定もStandard TCP/IP Portを追加し、プリントサーバーのIPアドレスを登録するだけと手軽だ。設定をブラウザからできるあたりなどは、ルータの設定と同じイメージなので、この手の製品に慣れているユーザーであれば違和感なく使えるだろう。
ただし、本体に設定されているIPアドレスが標準で「192.168.0.100」となっているので、構築済みのLANが「192.168.0」以外のサブネットとなっている場合や、すでに「192.168.0.100」のIPアドレスがPCや他の機器に割り当てられている場合は、多少設定が面倒になる。この場合は、一時的にPC側のサブネットやIPアドレスを変更して、プリントサーバー側のIPアドレスを変更しなければならない。この点にだけは注意が必要だろう。
ちなみに、この「ET-FPS1L」以外の大部分のプリントサーバーでは、ブラウザ設定にこそ対応していないものの、付属のユーティリティを利用することで、LAN側のネットワーク構成にかかわらずプリントサーバーを検索でき、各種設定をすることが可能となっているものが多い。
初心者が設定を行なう場合にはユーティリティ設定タイプの方が楽だが、添付CD-ROMを紛失した場合や、設定後のメンテナンスなどはブラウザから手軽に設定できるアイ・オー・データの製品に分がありそうだ。とはいえ、後から設定変更などが必要になることはめったにないが……。
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ET-FPS1Lの設定画面。各種設定をブラウザから行なうことが可能で、かなり手軽に設定できる
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■ 意外に少ないUSB対応プリントサーバー
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無線LAN対応、USB×2ポート装備、複合機対応とかなり多機能な新潟キヤノテックの「NetHawk Wireless-Print11」。キヤノンプリンタユーザーには最適
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このように、パラレルポート用のプリントサーバーに関しては、手軽に扱える製品が、しかも低価格で入手できるようになっているものの、USB用となると話は別だ。最近では、USBポートしか装備しないプリンタが増えているが、このようなプリンタをネットワークに接続しようとしても対応プリントサーバーを探すだけでひと苦労となる。USB用のプリントサーバーの製品数があまりにも少ないのだ。
しかもプリンタ側の進化も著しく、最近ではプリンタにメモリーカードスロットを装備した機種やスキャナと組み合わせた複合機も数多く登場している。単純にネットワークで印刷したいだけなら、市販のUSBプリントサーバーでも対応できるが、プリンタに装着したメモリカードをネットワーク経由で参照したり、スキャナ機能をネットワーク経由でも利用したいとなると、製品の選択肢がほとんどなくなってしまう。
プリントサーバー自体が手軽に扱えるようになったこと自体は歓迎すべきことだが、プリンタ側のトレンドにプリントサーバーの機能が追従しきれていないのは実に残念だ。
しかし、探せばあるもので、たとえば新潟キヤノテックの「NetHawk Wireless-Print11」などは、これらのニーズを満たせる数少ないプリントサーバーのひとつだと言える。対応プリンタがキヤノン製に限られるが、驚くほど多機能で、ほぼ最強のプリントサーバーと言うことができる。
どのあたりが最強なのかというと、まずは無線LANに対応している点だ。本体にPCカードスロットが用意されており、ここに付属の無線LANカードを装着すると、無線プリントサーバーとして機能するようになる。しかも、この無線機能にはいくつかのモードが備えられており、前述したようにすでに存在する無線アクセスポイントのクライアントとして動作させることができる以外に、自らをアクセスポイントとして動作させることや、離れた場所にある有線LAN同士を無線で接続するWDSとしても機能させることができる。対応する無線LAN規格はIEEE 802.11bに限られるが、無線LANアクセスポイントとしても使えるあたりは秀逸だ。
また、単純なUSB接続プリンタへの対応以外に、複合機への対応もきちんと果たしている。たとえば、キヤノンのPIXUS MP700というプリンタ/スキャナ複合機があるが、この複合機をNetHawkに接続した場合、ネットワーク経由でのプリントのほかに、プリンタに装着したメモリカードの参照、スキャナを利用したネットワーク経由でのスキャンなどにも対応する。
具体的には、ネットワーク上のPCからマイネットワークを参照するると、NetHawkがアイコンとして表示されるので、ここから「storage-1」という共有フォルダを開くとプリンタに装着したメモリーカードの内容を参照できる。一方、スキャンの場合はクライアント側で「MP Toolbox(キヤノンプリンタに付属のユーティリティ)」を起動し、スキャンボタンをクリックすると、スキャナにセットした原稿が読み取られ、画像がPCに表示される。正直、ここまでの機能がサポートされているとは思わなかった。もはやプリントサーバーというよりも小型のPCサーバーというイメージに近い。
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プリンタに接続したメモリカードをネットワーク経由で参照したり、ネットワーク上のPCからスキャナを利用して原稿を読み取ることも可能
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ただし、設定はかなり面倒だ。NetHawkを利用するためには、まずプリンタをPCに直結してドライバなどをインストールしておかなければならない。PC側にプリンタのアイコンが登録されていないと設定ユーティリティの設定が進められないからだ。このため、直接ネットワークプリンタとしてセットアップすることはできない仕様になっている。また、ネットワークプリンタとして利用するためには、クライアント側に「Nethawk BJ Port」という専用のポートの追加が必要となるうえ(ユーティリティで自動的にインストールされる)、当然と言えば当然だが、他社製のプリンタがNetHawkに接続されている場合にもユーティリティでの設定が中断されてしまうなどの注意点もある。機能が豊富に用意されているのは良いが、その反面、設定はかなり複雑と言えるだろう。
■ USBハードディスクとの組み合わせでNAS的にも使える
実は、マニュアルに説明がないため、Nethawk本体にある「STORAGE」というLEDや設定画面にある「ストレージ」という意味がよくわからなかった。てっきりNAS的な使い方ができるのかと勘違いしていため、試しにUSB接続のハードディスクをNetHawkに接続してみたところ、あっさりNASとして使えてしまった。本来はプリンタに内蔵されているメモリーカードスロットを参照するための機能なのだが、基本的なしくみはUSB接続のハードディスクでも変わらないので、サポート外でNAS的な使い方もできるようだ。
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USB接続の外付けハードディスクを接続。あっさり認識され、NAS的に利用できるようになった
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もちろん、NetHawkはUSB 1.1にしか対応していないので、ハードディスクへのアクセス速度に関しては推して知るべしだ。デジタルカメラのJPEGファイルなどを数十個ほどもコピーすれば、それだけでかなりの時間がかかってしまう。また、当然NASとしての用途が考慮されているわけではないので、詳細なアクセス権の設定などはできず、パスワードによるアクセス可否しか制御できない。しかも、USB接続のハードディスクのパーティションが分割されている場合は、最初のパーティションしか認識されない。実用的かと問われれば疑問だが、メーカー側でサポートしていないオマケ的な機能としてはそれなりに使える機能かもしれない。幸いNetHawkにはUSBポートが2ポート用意されているので、ひとつにプリンタを、もうひとつにハードディスクをつなぐいでテンポラリ的なストレージとして使うといった用途も面白いのではないだろうか。
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接続したUSBハードディスクはきちんと設定画面からも認識される。アクセス速度はかなり遅いが、テンポラリストレージとして考えれば手軽な共有が可能だ
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■ どちらの製品を買っても損はない
このように、今回、試用したプリントサーバーは、どちら製品も機能的に満足できるもので、買って損はない製品だと言える。
アイ・オーの「ET-FPS1L」はOSの搭載機能だけで使える点は、ユーティリティの入ったCD-ROMを紛失した場合や、OSのバージョンアップがあったとしてもユーティリティとの整合性を気にしなくて済む点など、メリットが大きい。
また、USB接続で、しかも複合機的な機能を持ったプリンタの場合、あまり機能的な面を考慮せずにプリントサーバーを購入してしまうと、前述したようなメモリーカードの参照やスキャナ機能が使えない可能性が高い。そういったことを考えると、キヤノン製プリンタに限られるが新潟キヤノテックの「NetHawk Wireless-Print11」はかなり完成度が高く、安心して使える製品だと言える。
個人的には、USBが2.0に対応していれば文句なしで、できれば無線LAN機能を省くことで価格をもう少し下げてくれるとありがたいという印象だ。さらに無理な注文だが、キヤノン以外のプリンタも接続可能になってくれれば、迷うことなしに買えるという感じだ。
■ URL
関連記事:アイ・オー・データ、OSの標準機能で使用できるプリントサーバー
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/05/20/ipprisv.htm
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2003/03/25 11:17
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