ポータルサイトの大手として知られるエキサイトが、2002年夏からフレッツ・ADSL、Bフレッツユーザー向けに月額500円という低価格のインターネット接続サービスを開始した。現状、一般的なプロバイダーが1,000~2,000円程度の料金を設定していることを考えるとかなりの低価格だ。実際の使用感をまじえながら、今後のプロバイダーのあり方について考えていく。
■ 料金か? サービス内容か?
プロバイダーの世界に、驚異的な価格を持ち込んだ事業者がある。大手ポータルサイトとして知られるエキサイトだ。対象サービスは、NTT東日本、西日本のフレッツ・ADSL、Bフレッツのみに限られるが、月額500円という低価格でインターネット接続サービスを提供している。低価格傾向がついにプロバイダーの接続料金にも訪れたかという印象だ。
では、具体的に既存のプロバイダーとどれくらいの価格差があるのだろうか? 以下に国内の主なプロバイダーの月額料金をまとめてみた。
プロバイダー料金の比較(2003年9月30日現在) |
回線サービス名 |
料金内訳 |
BIGLOBE |
@nifty |
ぷらら |
WAKWAK |
ASAHIネット |
So-net |
OCN |
BB.excite(注1) |
フレッツ・ADSL モアII |
ISP料金 |
\1,780 |
\2,000 |
\850 |
\1,000 |
\700 |
\1,280 |
\1,950 |
\500 |
回線料金 |
\3,240 |
\3,240 |
\3,240 |
\3,240 |
\3,240 |
\3,240 |
\3,240 |
\3,240 |
合計 |
\5,020 |
\5,240 |
\4,090 |
\4,240 |
\3,940 |
\4,520 |
\5,190 |
\3,740 |
Bフレッツ・ニューファミリー |
ISP料金 |
\2,000(注2) |
\2,000 |
\1,500 |
\1,480 |
\1,400 |
\2,000 |
\1,980 |
\500 |
回線料金 |
\5,600 |
\5,600 |
\5,600 |
\5,600 |
\5,600 |
\5,600 |
\5,600 |
\5,600 |
合計 |
\7,600 |
\7,600 |
\7,100 |
\7,080 |
\7,000 |
\7,600 |
\7,580 |
\6,100 |
Bフレッツ・マンション(プラン1) |
ISP料金 |
\2,000(注2) |
\2,000 |
\850 |
\1,480 |
\700 |
\2,000 |
\1,980 |
\500 |
回線料金 |
\4,000 |
\4,000 |
\4,000 |
\4,000 |
\4,000 |
\4,000 |
\4,000 |
\4,000 |
合計 |
\6,000 |
\6,000 |
\4,850 |
\5,480 |
\4,700 |
\6,000 |
\5,980 |
\4,500 |
※注1:接続サービスのみの料金。メールアドレスの利用には別途280円が必要。
※注2: 10月1日からは「Bフレッツ」コースが1,980円で提供開始される
※回線料金はすべて東日本の場合で、機器レンタル料などを含む。 |
|
国内の主なプロバイダーの接続料金と回線料金の比較。Bフレッツ対応プランではBB.exciteが圧倒的に安い |
フレッツ・ADSLの場合であれば、最も高いケースで合計5,240円、Bフレッツの場合であれば合計7,600円の料金となる。これに対して、BB.exciteはフレッツ・ADSLで合計3,740円、Bフレッツでは合計6,100円となる。500円という接続料金だけを見ても安いと感じるが、こうして合計を比較してみると、その価格差が大きいことがよくわかる。これだけ安いと、さすがに他のプロバイダーからの乗り換えも検討したくなる。
もちろん、単純な料金だけでプロバイダーのサービスを比較することはできない。実際、BB.exciteの500円という接続サービスは、インターネットに接続できるだけの非常にシンプルなサービスだ。メールアドレス(280円)やホームページスペースの利用(500円)には別途、料金が必要になる。他のプロバイダーのサービスが、ADSLやFTTHを利用した常時接続に加え、メールアドレスやホームページ、外出先からのダイヤルアップ接続など、さまざまなサービスが併用できることを考えると、サービス内容には大きな開きがあるのも事実だ。
このため、実際にBB.exciteのサービスを利用するかどうかは、料金を優先するか、サービス内容を優先するかがポイントとなってくると考えられる。
■ 複数プロバイダーを組み合わせる手もある
しかし、割り切った使い方をすれば、BB.exciteのようなサービスを利用するのもひとつの手だろう。BB.exciteの最大の欠点は、標準サービスだけではメールアドレスとホームページ領域が利用できない点だ。それであれば、接続だけBB.exciteを利用して、メールアドレスやホームページに関しては他のサービスを利用するという手もある。
たとえば、ホスティングサービスを利用するのもひとつの方法だ。詳しくは、今後、本コラムで取り上げていく予定だが、実際、筆者はメールアドレスやホームページ領域はホスティングサービスで利用している。ホスティングサービスであれば、オリジナルのドメイン名を利用できるうえ、メールアドレスなども自由に設定できる。また、ホームページなどに関してもCGIなどの設置に制限が少ない。
このため、プロバイダーのサービスに関しては、極端な話、インターネットにつながりさえすれば十分とも考えている。こういった使い方をしているユーザー層にとっては、BB.exciteのようにシンプルだが、低価格なサービスの方が向いているとも言えるだろう。
とは言え、すべてのユーザーに、このような使い方が当てはまるとも考えにくい。また、ホスティングサービスを利用すれば、結果的にトータルの料金が高くなってしまうのも事実だ。
そこで考えられるのが、複数のプロバイダーをうまく組み合わせる方法だ。たとえば、現在、契約しているプロバイダーを最も安い料金のコースに変更する。その上で、接続だけBB.exciteを利用すれば、トータルの料金を抑えながら、メールなどの各種サービスも併用できることになる。現在のプロバイダーは解約しないので、現在使っているメールアドレスをそのまま利用できるというメリットもある。一般ユーザーにとっては、この点が最大のメリットになるだろう。
具体的には、現在契約しているプロバイダーのコースをダイヤルアップ接続向けに提供されている月額数百円のコースに変更すればいいだろう。このようなコースの場合、月間の接続時間が1~3時間程度を超えると、従量課金で料金が増えていくしくみになっているが、接続に関してはBB.exciteを利用するので、接続時間はゼロだ。しかも、多くのプロバイダーは、このような低価格のコースでも、メールのサービスに関しては通常のコースと同じ利用環境が提供され、場合によってはホームページ領域まで無料で提供される。
各プロバイダーの低価格コース
|
項目 |
BIGLOBE |
@nifty |
ぷらら |
WAKWAK |
ASAHIネット |
So-net |
OCN |
コース名 |
わいわい1コース |
お手軽1コース |
ぷらコミ0 |
プチ |
電話料込みコースK1 |
電話パック1 |
コミ・デ・400 |
料金 |
200円 |
250円 |
200円 |
200円 |
300円 |
300円 |
400円 |
ホームページ |
10MB(500円) |
開設不可 |
5MB(300円) |
50MB |
10MB |
10MB |
10MB |
メールボックス容量 |
20MB |
20MB |
無制限 |
20MB |
なし |
なし |
5MB |
受信通数制限 |
999通 |
なし |
5000通 |
なし |
なし |
なし |
なし |
1通あたりの送受信容量制限 |
10MB |
なし |
5MB(送信時) |
5MB |
なし |
5MB |
10MB |
保存期間 |
31日 |
30日(未読) |
1ヶ月 |
3ヶ月 |
180日 |
2ヶ月 |
2ヶ月 |
転送サービス |
無料 |
無料 |
無料 |
無料 |
無料(メールを保存しない場合) |
無料 |
最大3箇所まで無料 |
ウィルスチェックサービス |
300円 |
200円 |
200円 |
200円 |
200円 |
300円(送受信とも設定の場合) |
200円 |
※ぷららの場合、「ぷららライト」という月額0円の完全従量制コースが存在するが、外部からSMTPサーバーを利用できない。 |
|
|
主要プロバイダーの低料金コース。主にダイヤルアップ接続向けのコースとなるが、メールは通常のコースとほぼ同等のサービス内容で、場合によってはホームページ領域までもが利用可能だ
|
もちろん、現在のプロバイダーの契約を低価格のコースに変更することで、使えなくなってしまうサービスなども存在する。たとえば、電話代込みのコースに変更すると、外出先からダイヤルアップ接続ができなかったり、完全従量制の料金が課せられるケースもある。しかし、インターネットへの接続、メールやホームページの利用といった一般的な使い方であれば、この組み合わせでも十分代替えが可能だ。しかも、月額の料金は以下の表のように、場合によっては1,000円以上も節約することができる。
通常コースとBB.excite利用時の差額(ADSLの場合)
|
料金内訳 |
BIGLOBE |
@nifty |
ぷらら |
WAKWAK |
ASAHIネット |
So-net |
OCN |
通常コース料金 |
\1,780 |
\2,000 |
\850 |
\1,000 |
\700 |
\1,280 |
\1,950 |
BB.excite+低価格コース |
\700 |
\750 |
\700 |
\700 |
\800 |
\800 |
\900 |
差額 |
\1,080 |
\1,250 |
\150 |
\300 |
\-100 |
\480 |
\1,050 |
|
フレッツ・ADSLの場合の料金比較。ASAHIネットは変更することで逆に料金が高くなってしまうが、それ以外では確実に料金を節約できる
|
通常コースとBB.excite利用時の差額(Bフレッツの場合) |
料金内訳 |
BIGLOBE |
@nifty |
ぷらら |
WAKWAK |
ASAHIネット |
So-net |
OCN |
通常コース |
\2,000 |
\2,000 |
\1,500 |
\1,480 |
\1,400 |
\2,000 |
\1,980 |
BB.excite+低価格コース |
\700 |
\750 |
\700 |
\700 |
\800 |
\800 |
\900 |
差額 |
\1,300 |
\1,250 |
\800 |
\780 |
\600 |
\1,200 |
\1,080 |
|
Bフレッツの場合の料金比較。最高で1,300円も月額料金を節約することができる
|
ちなみに、無料メールアドレスや無料ホームページなどのサービスを利用すれば、さらに料金を節約することも不可能ではないが、これは素直におすすめすることはできない。インターネット上のサイトには会員登録の際などに無料メールアドレスを不可としてる場合などもあり、利用環境が制限される場合が多い。無料メールや無料ホームページなどに関しては、あくまでも現時点ではセカンドメールアドレス、セカンドホームページといった位置づけとなるため、これらのみとBB.exciteとの組み合わせは考えにくいだろう。
■ パフォーマンスも問題なし
安価なBB.exciteの利用に際して、パフォーマンスや安定性が低下するのではと心配するかもしれないが、筆者が利用した限りでは、この心配もなさそうだった。9月の中旬から2週間前後、BB.exciteでインターネット接続を利用してみたが(Bフレッツ・ニューファミリーで使用)、パフォーマンスが極端に遅くなるようなこともなく、回線が切断されるようなトラブルもなかった。
インターネット上の速度測定サイトで計測した結果も、下りで50Mbpsを超える速度を計測できた。このあたりは、IIJのバックボーンを利用しているおかげだろうか。
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RBBTODAYによる速度測定結果。Bフレッツ・ニューファミリーを利用し、平日の13:00前後に計測した
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もちろん、常に50Mbpsを超えるような速度が実現できるわけではなく、時には30Mbps前後になったり、それ以下の速度になることもある。しかし、これはアクセス先のサイトが混雑しているせいもあるだろう。混雑していると思われる同時間帯に他のプロバイダーで接続してみた時も、速度的にはほとんど変わらなかった。パフォーマンスに関しては、ほとんど心配する必要はなさそうだ。
■ プロバイダーのあり方が変わる可能性がある
このように、BB.exciteのサービスは、割り切った使い方をしたり、他のプロバイダーと組み合わせることで、既存のプロバイダーと同等のサービスを低価格で利用できる画期的なものと言えそうだ。
もちろん、今回のBB.exciteはフレッツユーザー向けのサービスとなるため、ホールセールタイプのADSLなどの場合はさらに安く利用できる場合もある。しかしながら、BB.exciteのような低価格のサービスの登場によって、ホールセールタイプのADSLを提供するプロバイダーの接続料金も変動してくる可能性がある。それはそれで歓迎すべき事だ。
ただし、ここで勘違いしてほしくないのは、単純に価格が安いからすばらしいと言っているわけでもなく、安いサービスに乗り換えるべきだと主張しているわけでもない点だ。
今回、本コラムでBB.exciteのサービスを取り上げたのは、「低価格」というひとつの特徴を持ったサービスを市場に投入したことで、プロバイダーという既成の概念に一石を投じたと感じたからだ。たとえば、今後、BB.exciteのように接続のみを提供する低価格サービスが多数登場してくるかもしれない。また、接続のみを提供するサービスが増えてくれば、ホスティングとはまた違った方法で、メールやホームページのみを低価格で提供するサービスが現れるかもしれない。
さらに、価格での競争を避け、サービス内容で勝負しようというプロバイダーも登場してくる可能性もある。既存のサービス内容をさらに向上させることも考えられるだろうし、新たなサービスを生み出す可能性もある。場合によっては、これまでプロバイダーのメインのビジネスとして考えられていた接続サービスに見切りをつけ、コンテンツの提供のみに注力するプロバイダーも現れるかもしれない。
いつまでもブロードバンドのキラーコンテンツがIP電話とストリーミングでは行く末は決して明るいとは言えない。BB.exciteのようなサービスの登場によって、既存のプロバイダーのあり方が変わり、さらにブロードバンド市場が発展するような画期的なサービスが生まれてくれば面白いことになりそうだ。というか、ぜひそうなってくれることを望みたいところだ。
■ URL
関連記事:エキサイト、インターネット接続とコンテンツ配信を行なう「BB.excite」
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/08/01/bbexcite.htm
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2003/09/30 11:13
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