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第77回:床暖房が無線LANに与える影響は? 住環境の変化と無線LANの関係を探る
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自宅のリビングに床暖房を施工。その暖かさに感心しつつも、ふと、無線LANの電波がきちんと届いているのかが気になった。床暖房施工前と施工後で、電波状況に違いが出るのかを検証してみた。
■ 本格的な冬に向けて
以前は真冬でも窓を開けて素足で過ごすほど、暑い夏より寒い冬の方が断然体に合っていた。しかし、ここ数年はやけに寒さがこたえるようになった。引っ越しで住環境が変わったこともあるが、やはりそれなりに年を取ったのだろう。
というわけで、思い切って、自宅のリビングに床暖房を施工することにした。東京ガスの「はやわざ」だ。予算の関係で2階リビングのみの設置となったが、1日半で終了するほど工事が早く、ホットカーペットなどとは比べものにならないほど暖かさを感じる。トータルで60万円の価格が泣き所だが、あふれた家電製品とPCで、60Aに増強したブレーカーが落ちることも珍しくない筆者宅にとっては最良の選択だった。
■ 無線の電波に影響があるのか?
前置きはこれくらいにして本題に入ろう。後付床暖房の場合、その構造上どうしても床が厚くなってしまう。利用する業者や製品によっても違いはあるのだが、筆者宅の場合は「温水パイプ組み込みハードパネル」とフローリング材で、合計1.5cmほど床が底上げされた。
こうなると、気になるのが無線の電波に影響があるのかどうかだ。筆者宅では、サーバーや回線など、ほとんどの機器が1階の仕事部屋に集中しており、2階に存在するPCやネットワーク家電などはすべて無線で接続されている。もしも床暖房が無線の電波に影響するのであれば、何らかの対処を考えなければならない。
もちろん、1.5cm程度床が厚くなった程度では、無線への影響はそれほどないようにも思える。しかし、床暖房の場合はただの床ではない点が気がかりだ。「温水パイプ組み込みハードパネル」は、通常の床と材質が異なるうえに、その中にはパイプや水が通っている。これが電波に影響を与えるかどうかは多少なりとも気になるところだ。
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筆者宅に施工した床暖房の境目。手前が既存の床で、その奥が床暖房だ。床が若干高くなっていることがわかる
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■ 若干の影響はある
影響の有無を調べるために手っ取り早いのは、速度を計測してみることだろう。そこで、IEEE 802.11g、IEEE 802.11aの両環境で、施工前と後の速度を比較してみた。単純に無線クライアントと有線サーバーの間でファイル転送した値に加え、WDS(アクセスポイント間通信)での性能も計測してある。これは、ネットワーク対応のハードディスクレコーダーやソニーのルームリンクなどを無線で接続しているためだ。
利用機器 |
無線規格 |
接続方式 |
床暖房施工前 |
床暖房施工後 |
WHR-G54 |
802.11g |
インフラストラクチャ |
18.28Mbps |
15.55Mbps |
WHR-G54+WBR-G54 |
802.11g |
WDS |
16.80Mbps |
14.49Mbps |
Aterm WR7600H |
802.11a |
インフラストラクチャ |
16.86Mbps |
16.17Mbps |
※100MBのファイルを転送。コマンドプロンプトのFTPにて表示された速度をMbps換算
※サーバーにはPentium4 3.06GHz 1GBメモリ搭載機を使用し、IISのFTPサーバーを利用
※クライアントにはCeleron 600MHz(Baniasコア) 512MBメモリ搭載のノートPCを使用 |
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結果を見ると、若干の影響はやはりあるようだ。特に802.11gでは施工前に比べると、約15%速度が低下するという結果になった。ただし、802.11aの場合はほとんど速度の低下は見られない。本来、802.11aの方が規格としては遮蔽物に弱いはずなので、機器性能の違いが出ている可能性もある。また、施工前と施工後は計測した日時が異なるため、その誤差が発生している可能性も否定できない。
そこで、今度は床暖房が設置している部分と設置していない部分で、速度に違いがあるかを検証してみた。筆者宅の2階には、リビングと和室の2間があるのだが、このうち和室には床暖房を設置していない。1階から見て、リビングと和室の中間で、しかも遮蔽物となる壁が同じ数存在する場所で測定すれば、その違いもわかるはずだ。
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床暖房面と非床暖房面の中間にアクセスポイントを設置し、802.11gの速度を計測した
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結果を見ると、やはり非床暖房面の方が高速という結果になった。劇的な違いはないが、やはり床暖房によって床の厚みが増えた分、その影響を受けているようだ。
■ 実質的には気にならない程度
とは言え、この影響が実質的に気になる程かというと、個人的にはほとんど気にならない。1割や2割程度の速度低下であれば、筆者宅ではほとんど問題がないと言っていいだろう。なお、筆者宅ではソニーのルームリンクで1階に設置したVAIOに接続、8Mbpsのビットレートの映像を再生する場合が最も無線の帯域を使用する。この場合、実効速度で10Mbps以上の速度がないと映像がスムーズに再生できないのだが、床暖房設置後も問題なく再生できた。
もちろん、この結果は、あくまでも筆者宅の実測によるものなので、環境によってはさらに大きな影響を受けることがある可能性も否定できない。しかし、もしもさらに大きな影響があったとしても、アクセスポイントなどに外付けアンテナなどを付けるといった方法で対応できるレベルと思われる。
これから冬本番を迎えるにあたり、床暖房の設置を考えている読者もいると思うが、こと無線LANに関しては、あまり心配しなくても良さそうだ。
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