Broadband Watch logo

特別編:アッカ・ネットワークスインタビュー
~下り40M、上り3MサービスのADSLサービスについて聞く~


 イー・アクセスを皮切りに、T-com、NTT東日本でもサービスが開始された40MbpsのADSL。これ以外の事業者のサービス開始を待ちわびているユーザーも少なくないことだろう。そこで、今回は、アッカ・ネットワークスに下り40M/上り3Mサービスの展望について尋ねてみた。





下り40Mは予定通りのスケジュール

アッカ・ネットワークス 広報担当マネージャーの吉田朋子氏
 「下り40Mbpsに関しては、ほぼ予定通りのスケジュールで開発が進んでいます」と、その順調ぶりを語ってくれたアッカ・ネットワークス 広報担当マネージャーの吉田氏。40M超のADSLサービスに関しては、イー・アクセスが11月5日から全国で、NTT東日本が12月17日から一部地域ですでにスタート。同社は2004年1月下旬からのスタート予定と遅れを取ったものの、開発状況は順調なようだ。

 そもそも、今回の40Mサービスでサービス提供時期に差が出たのは、採用するDSLチップの違いがあるためだ。イー・アクセスやNTT東日本、T-comが採用するCentillium Communications製のチップは、すでに24Mサービスの段階で、チップレベルで40M(クアドスペクトラム)をサポートしていた。これに対してアッカ・ネットワークスなどが採用するGlobespanVirata製チップは、今回の40Mで新チップの投入が必要になる。チップの開発時期の差がサービス開始の差に表われた格好だ。

 ただし、同社によると、単にチップの開発状況だけがサービス開始の違いとなったわけではなさそうだ。同社は、すでにホームページ上などで40Mサービスの速度グラフを公表しているが、「現在は、フィールドに出したときの速度が、なるべくグラフの速度に近づくようチューニングしている最中(吉田氏)」と言う。

 同社では、今年の秋に26Mサービスを提供した際、サービス開始からまもなくADSLモデム用の新ファームを提供した経緯がある。これによって26Mサービスで大幅な速度向上を果たしたのも事実だが、このような手間をできるだけユーザーにかけることなく、ユーザーを裏切らない形でのサービス提供を目指しているため、その開発に十分な時間を割いているのだろう。

 1月下旬の正式サービス開始までは、まだ時間があり、しかも開発状況は順調とのことなので、下り40Mに関しては当初の予定通り、サービスが開始されると思っていいだろう。





技術面ではクアドとS=1/6を採用

クアドスペクトラムの仕組み
 なお、下り40Mで採用される技術は、すでに同社から発表があったように、クアドスペクトラムとS=1/6を基本としている。この辺りは、すでにサービスを開始しているイー・アクセスやNTT東日本とほぼ同様だが、アッカでは26Mサービスなどでも利用されていたオーバーラップ技術も併せて採用する。

 同じく1月下旬のサービス開始を予定しているYahoo! BBでは、これらに加えて「ATMヘッダ圧縮」の技術を採用と発表しているが、「現状は、リリースで公表している技術のみを採用(吉田氏)」とのことで、ATMヘッダ圧縮については採用されていない模様だ。

 ただし、これはあくまでも予想だが、同社が採用しているDSLチップは基本的にYahoo! BBと同じと考えられるため、ATMヘッダ圧縮についても将来的に採用することも可能だろう。ATMヘッダ圧縮の採用によって1割程度の速度向上も期待できるとも言われているので、今後は、このあたりにも注目したいところだ。


40Mサービスの線路距離と伝送損失による下りリンク速度のイメージ




上り3Mもほぼ予定通り

 このように、1月下旬の時点で下り40Mのサービスは確実に実施される見込みだが、やはり気になるのは上り3Mbpsのサービス開始時期だ。ニュース記事などでは、TTCでの協議が決裂し、開始が暗礁に乗り上げたといった意味合いの報道もなされており、ユーザーとしては本当にサービスが開始されるのかが、いささか不安でもある。

 しかし、この点についてもあまり心配はなさそうだ。吉田氏によると、「TTCの場から、事業者間協議に移ったのは、上り3Mbpsを実施する上での問題点を洗い出し、時間をかけて協議しましょうということになったためで、決して決裂したというほとのものではない」という。

 確かに、TTCの場で上り3Mの協議が進めば、それに越したことはないが、まだ検討すべき項目があるのであれば、開催時期のスケジュール調整が楽な事業者間協議で行なった方が効率的だし、早い時期での決着が見込める。考え方によっては、事業者間協議になったことで、当初の予定通りのスケジュールで上り3Mの開始が見込めるようになったと取ることもできそうだ。

 ただし、現在(12月24日)の時点で、事業者間協議が行なわれたという話は聞こえてこない。1月に入ってからの協議となれば、Yahoo! BBが目指すような1月下旬での上り3Mの開始は難しいとも考えられる。このあたりは、多少、スケジュールが流動的になる可能性もありそうだ。

 もちろん、同社はリリースなどで、「TTCや事業者間での協議終了後、準備が整い次第、上り最大3Mbpsの提供を開始します」と発表しており、この影響はあまり受けないと思われる。具体的な開始時期は、まだ未定とのことだが、仮に2月や3月といったタイミングでのサービス開始と考えれば、事業者間協議となった影響もないだろう。





上り3Mの実力は?

40Mサービスの上りリンク速度イメージ
 では、仮に上り3Mサービスが開始されたとして、その実力はどれほどのものなのだろうか? 同社では、すでにホームページ上で上り3Mbpsサービスのリンク速度のイメージ図を公表しているが、これを見る限り、その恩恵を受けられるのは2km前後の線路長までと見受けられる。低周波を利用する上りであれば、もっと遠い距離でも上りの速度向上が見られても良さそうなものだ。

 この点に関しては、「公表したグラフは、あくまでもイメージ(吉田氏)」だとのことだ。下り40Mのグラフは、ラボでのテストを基にイメージ化したものだそうだが、上り3Mに関してはラボでのテストも現在のところ行なわれていないという。このため、「実際にサービスを開始するまでに、チューニングを行なっていく必要がある(吉田氏)」とのことだ。

 個人的には、もう少し長距離でも恩恵を受けられ、1~2km前後でもう少し速度が向上するような、なだらかな曲線を描くグラフになって欲しいところだが、それほどカンタンな話ではないようだ。詳しい技術的な話は明らかにされなかったが、上りの高速化にもまだ技術的な課題があると思われる。





サービス開始が待ち望まれる

 このように、アッカ・ネットワークスのサービスに関しては、下り40M、上り3Mとも、サービス開始に大きな障害はなさそうだ。個人的にも、これまで12Mbps、26Mbpsと同社のサービスを利用してきたが、筆者宅の環境に限って言えば、常に他の回線に比べて速度的なアドバンテージを示してきたサービスだけに、今後もその品質に期待するところが大きい。

 特に、先行するイー・アクセスやNTT東日本の40Mサービスは、従来の24Mサービスからの速度向上が大きく、ユーザーの期待に応えるサービスとなっているだけに、これらに勝るとも劣らぬサービスを期待したい。来年1月下旬のサービス開始が待ち望まれるところだ。


関連情報

URL
  アッカ・ネットワークス
  http://www.acca.ne.jp/

関連記事
アッカ・ネットワークス、40MbpsADSLサービスの技術情報を開示
~速度向上が見込めるのは、線路距離が約1.4km以内の回線~

第80回:イー・アクセス「ADSLプラスQ」の実力は?
40Mbps ADSL速攻レポート


2003/12/25 11:03

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2003 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.