■有効なセキュリティ機能であるDMZポートを備える
オムロンから登場した「VIAGGIO MR104DV」は、公称92Mbpsという、昨今の高速ルータと比較しても遜色ないスループットを持つルータである。しかし、本製品の魅力は他にもある。外部公開サーバーを持つ環境のセキュリティに非常に有効なDMZポートを持つほか、最大で50トンネル利用可能なVPN接続など、SOHO環境を強く意識したルータとなっている。
外観はというと、金属製の黒いボディでとくに特徴的な点はない(写真1)。雰囲気はこれまでに紹介したプラネックスコミュニーションズの「BRL-04FB」やコレガの「corega BAR HGWL」と似ている。
違いといえば、前面パネルにDMZの状況を示すLEDが備えられていること(写真2)や、背面のDMZポート(写真3)ぐらいである。この背面のDMZポートだが、AUTO MDI/MDI-Xには対応していないので、PCと直結する場合にはクロスケーブルが必要になるので注意したい。
付属のACアダプタは非常に大型のものが付属するが、延長用のショートケーブルが付属するので安心だ(写真4)。そのほかの付属物としては、「取扱説明書[簡単設定編]」という紙マニュアルと、「取扱説明書[詳細設定編]」というマニュアルが収録されたCD-ROM程度だ。なお、この二つのマニュアルは同社のWebサイトからもPDF形式でダウンロードできる。購入前に確認してみるのもいいだろう。
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写真1
金属製でわりとずっしりした感じの本体。サイズは170×147×32mm(幅×奥行×高)となっている
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写真2
フロントパネルはWAN/LAN各ポートの状況のほか、DMZポートの状況を表わすLEDも搭載されている |
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写真3
左端に独立しているのがDMZポート。なおWAN/DMZはAUTO-MDI/MDI-Xに未対応だが、LAN×4ポートは対応している
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写真4
非常に大型のACアダプタだが、ショートケーブルが付属しているのでOAタップでの利用も実用的 |
■VPNに関する項目の豊富さが目立つ設定画面
では、本製品の設定画面を見ていこう。設定は一般的なWebブラウザで行なうものになっている(画面1)。
まずWAN側の設定である。WAN側設定はウィザード形式で設定できるようになっており、手順に従ってIPアドレスや、PPPoE接続であればユーザー名やパスワードなどを入力していくだけである(画面2)。対応する接続形態は固定IP、DHCP、PPPoE、PPPoAとなっている。なお、WAN側設定はウィザード形式での設定のみであり、部分的な修正が行なえないのは不便だ。
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画面1
フレーム分けされたオーソドックスな設定画面。初期のIPアドレスは<192.168.2.1>となっている
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画面2
WAN側の設定はウィザード形式になっており、これ以外の設定方法は用意されていない |
LAN側の設定はシンプルなもので、ルータのIPアドレスとDHCPで提供するIPアドレスの範囲を指定するだけだ(画面3)。
これら基本的な設定項目は、前述のBRL-04FBやcorega BAR HGWLに極めて似ており、やはり同じファームウェアをベースにしているようだ。しかし、当然ながら本製品独自の機能も盛り込まれている。
その一つが、パケットフィルタ機能である(画面4)。最近のルータではごく一般的な機能だが、前述の2製品にはDoS攻撃を自動的に判断してブロックする機能が搭載されているのみで、パケット毎に要求ポートを判別して遮断/通過させることができなかった。もちろんこうした機能は本製品にも実装されている(画面5)。加えて、WAN<->LANおよびWAN<->DMZの4方向の設定を個別に持っており、それぞれで細かい設定が行なえるのだ(画面6)。
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画面3
シンプルなLAN側設定。最低限の設定はできるが、他の部分が高機能なだけに物足りない印象を受ける
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画面4
非常に細かい設定ができるパケットフィルタ機能。ポート番号の範囲指定や数字入力での指定ができないのが不便ではある |
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画面5
SPI(ステートフル・パケット・インスペクション)によるファイアウォール機能も搭載している
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画面6
LAN/DMZ<->WANのそれぞれの方向に対し設定が施せる。表示は各データの流れ別に表示できセキュリティを管理しやすい |
外部とのやり取りは、「ネットワークアプリケーション設定」画面から行なえる(画面7)。ここに使用ポートがあらかじめ登録されているのは、ゲームやコミュニケーションソフトなどのみだが、[新規アプリケーション]を開くことで、追加することもできる(画面8)。
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画面7
NAT機能はネットワークアプリケーションへの対応という形でサポートされている。ここではDMZホストの選択も行なう
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画面8
画面7の使用アプリケーション欄にない設定は、新規に登録することができる |
さらにこの画面では、DMZの有効/無効を切り替えることができる。「指定接続先」からDMZホストとなるクライアントPCを選択することになる。このクライアントPCは「接続PCリスト」画面であらかじめ登録しておき、その中から選択する方式となる(画面9)。なお、DHCPでIPアドレスを提供しているクライアントPCは自動的に登録される。
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画面9
画面7で「Select a PC」と表示されているところは、この接続PCリストに登録してあるクライアントPCから選択することとなる
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画面10
VPNポリシーを定義する画面。このほか、ウィザード形式で設定できる画面も用意されている |
画面9のとおり、今回はDMZポートとLAN側ポートにそれぞれクライアントPCを接続し、IPアドレスを自動的に取得させてみたが、両方とも同じ192.168.2.***のアドレスが提供された。DMZの概念からすれば、別のクラスCのアドレスが提供されるのが普通とも思えるのだが、こうした仕様になっているようだ。もちろん、LAN<->DMZ間は繋がっておらず、直接のアクセスはできない。
ちなみに、DMZホストとなるのはDMZポートに繋いだPCである必要はない。LAN側ポートに接続したPCでも、全パケットをそちらに転送することができる。セキュリティは犠牲にしてもLAN内に接続されたPCを公開したいという人もいるからだろう。
もう1つ、本製品の設定画面で特徴的な部分として、VPN接続に関する設定が充実していることが挙げられる。画面5で紹介したセキュリティオプションを見て分かるとおり、本製品ではIPsec、PPTP、L2TPの3種類のVPNプロトコルに対応している。また、IPsecにおけるVPNポリシーを設定しておくこともできる(画面10)。そのほか、証明書キーを取得している場合に、キーを登録することもできるようになっている(画面11)。いわゆる「VPN対応ルータ」はIPsecやPPTPなどのパススルーのみをサポートしているだけ、という場合が多いが、本製品は本来クライアントソフトを用いる部分をハードウェア化しており、これぞ「VPN対応ルータ」という感じの作りになっている。
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画面11
証明機関から発行される証明書キーを登録する画面。信用証明を追加した後で、自己証明を取得する手順となる
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■スループットは公称92Mbpsに恥じない好結果をマーク
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写真5
左端に独立しているのがDMZポートで、その上部に論理層コントローラが実装されている(ポートの上部にある正方形のLSI)。ちなみにDMZポートのMAC層まではMSP2000に内蔵されているので、LANコントローラチップは不要である
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ここからは、実機を使ったスループットテストを行なう。本製品で使用されているプロセッサはBRESISのMSP2000であり、これまでに類似品として紹介してきたBRL-04FBやcorega BAR HGWLと同じプロセッサを使用している。ただ、基板のパターンもほとんど同じだが、DMZポート用の取り回しがなされているのが印象的だ(写真5)。
スループットは公称92Mbpsであり、前述の2製品とほぼ同程度である。今回も90Mbps前後の成績が期待できそうである。さっそくテストしてみよう。
図1:テスト環境 |
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表1:テスト環境 |
| サーバー | クライアント |
CPU | AMD Athlon MP 1.2GHz×2 | AMD Athlon XP 1700+ |
マザーボード | TYAN TigerMP(AMD760) | EPoX EP-8K3A+(Apollo KT333) |
メモリ | Registerd DDR SDRAM 512MB(256MB×2) | PC2700 DDR SDRAM 256MB |
HDD | Seagate Barracuda ATA IV 80GB (NTFS) | Seagate Barracuda ATA IV 40GB (NTFS) |
LANカード | プラネックスコミュニケーションズ GN-1000TE | Intel 21143搭載LANカード |
OS | Windows 2000 Professional 日本語版+Service Pack 3(IIS 5.0) | Windows XP Professional 日本語版(IIS 5.1) |
RAMディスク | 128MB | 128MB |
表2:テスト結果(有線) |
| プロト コル | 転送条件 | 速度(Mbps) |
LANポート | DMZポート |
直結状態 | ftp | サーバー → クライアント | 92.8 |
クライアント → サーバー | 80.0 |
http | サーバー → クライアント | 91.5 |
クライアント → サーバー | 85.7 |
オムロン
VIAGGIO MR104DV 利用 | ftp | サーバー → クライアント | パケットフィルタリングなし | 91.5 | 92.8 |
パケットフィルタリングあり | 92.5 | 88.8 |
パケットフィルタリング+NAT | 90.9 | 90.7 |
クライアント → サーバー | NATあり | 53.6 | 60.3 |
NAT+パケットフィルタリング | 53.4 | 60.2 |
http | サーバー → クライアント | パケットフィルタリングなし | 89.3 | 92.3 |
パケットフィルタリングあり | 90.4 | 90.1 |
パケットフィルタリング+NAT | 88.3 | 87.7 |
クライアント → サーバー | NATあり | 50.0 | 50.0 |
NAT+パケットフィルタリング | 50.0 | 50.0 |
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■機能・速度ともに申し分なくお勧めのルータ
以上のとおり、本製品を使用した率直な感想をいえば、非常によくできたルータだといいたい。BRL-04FBやcorega BAR HGWL同様、設定画面が多少こなれていない印象があるものの、この当たりは「慣れ」でカバーできる範囲だと思う。それよりも、DMZポートやハードウェアで処理できるVPN機能などの魅力が勝る。もちろんスループットにも文句の付けようがない。
ここまで高機能だと価格が気になるが、オムロンの通信販売サイトでは2万9800円。店頭売りでも、ほぼ同程度の価格で販売されているようだ。先の2製品に比べると、倍近い価格ということになる。本製品の機能にニーズがない人なら高価に思えるだろうが、逆に魅力的に思う人なら決して高いとは感じないと思う。本連載では過去にいくつかのルータ製品を紹介してきたが、それらの中でも、かなり強くお勧めしたいルータである。
■注意
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・この記事の情報は編集部が購入した個体のものであり、すべての製品に共通するものではありません。
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□VIAGGIO MR104DV 製品情報
http://www.omron.co.jp/ped-j/product/adsl/mr104dv/mr104dv.htm
(2002/12/13)
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