ホームAVサーバー製品として人気を集めたNECのAX10/20に後継機が登場した。発表時のニュースを興味深くご覧になった方も多いと思うが、一桁増えて「AX300」と名付けられた製品は、AX10/20が持っていたPCと連携した機能が強化されただけでなく、DVDドライブを内蔵したことでDVDレコーダ機能も装備。そのほかにも便利な機能が盛り込まれた本製品を、前後編の2回に分けてチェックしてみたい。
■外観・リモコンともに新しくなったAX300
今回紹介するNECの「AX300」は、ルータやネットワーク製品を中心に取り上げている本連載としては珍しく、どちらかというとAV機器寄りの製品である。基本的な機能としては、HDDとDVD-RAM/Rドライブ、ハードウェアMPEG-2エンコーダを搭載した、HDD&DVDレコーダと位置付けて差し支えない。
ただ、AX10/20のようにネットワークを介したPCとの連携機能がポイントでもある。AX300のHDD内にある録画データをPCで視聴したり、MPEG-2/WMV形式でPC側へコピーしたり、といったホームAVサーバーの機能を持っている点だ。
もちろんAX300では、DVDドライブを搭載した以外に、HDDレコーダとしても、ホームAVサーバーとしても、さまざまな機能拡張が行なわれている。そこで今回は、AX20からの機能拡張面を中心に製品を見ていくことにしたい。なお、AX20については、同製品を使った特集が組まれているので、そちらを参照されたい。
では、まず外観のチェックであるが、一目みてAX20との違いが分かるほど大きく変貌した(写真01)。DVDドライブが内蔵されたことが大きいが、中央の電源ボタンを中心に左右対称的なデザインになっている。ちなみに前面向かって右側がDVDドライブ、左側のカバー内にはAV入力を1系統装備している(写真02)。
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写真01 NECのホームAVサーバー「AX300」。AX10/20とは大きく異なる外観となった。本体サイズは430×360×77.5mm(幅×奥行×高)で、AX20と比較すると奥行きが80mm、高さ9.5mmづつ大きくなっている |
写真02 写真向かって左側のカバー内にはAV入力を1系統持つ。また本体の強制再起動を行なうリセットスイッチや、リモコンのIDを切り替えるスイッチも備える |
背面もAX20から大きく変化した(写真03)。AV入出力が各2系統(入力は前面と合計で3系統)、DVDのプログレッシブ再生用のD1/2端子、DVDのDolbyDigital/DTS出力用のビットストリーム出力端子、同じく光デジタル出力、といった端子を備える点が特徴といえる。もちろんLANポートも左端に装備する。
付属のリモコンも、AX20と比べて一回り大きいものが同梱されるようになった(写真04)。AX20のリモコンは下部がカバー状になっており、一部機能はカバーを開けないと利用できなかったのだが、AX300はすべての機能がオープンになり使い勝手が改善されている。もちろん、DVD関係の機能が追加されているのは言うまでもない。
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写真03 背面の入出力端子類。DVD搭載による端子類の追加のほか、一般的な入出力系統も増えている点は有り難い |
写真04 リモコンはDVD関連ボタンの追加や使い勝手の向上が図られている。予約画面や録画番組の一覧画面を瞬時に呼び出すボタンなどもある |
■おまかせ録画やカット編集機能などを搭載
では本製品の機能面を見ていきたいが、最初にPCとの連携に関係のない製品単体としての機能を紹介していこう。
まず基本的なスペックのおさらいだが、AX300に内蔵されるHDDはモデルごとに異なり、PK-AX300Hが300GB、PK-AX300Lが160GBとなる。搭載されたDVDドライブはDVD-R、DVD-RAMに対応するもので、DVD-Rの場合はDVD-Video、DVD-RAMの場合はDVD-VR形式で書き込みが可能だ。
また、ハードウェアMPEG-2エンコーダを搭載しているので、録画中にリアルタイムにMPEG-2に変換し、HDDに保存することができる。加えて3次元Y/C分離、ゴーストリデューサといった高画質化機能も備えており、これらはオン/オフを切り替えることもできる(画面01)。この3次元Y/C分離とゴーストリデューサの効果は大きく、チャンネルを切り替えたときなど一瞬だけ適用されない状態の画面が移るが、その直後に適用された画面に切り替わるときに違いを体感することができる。
さて、本製品でもっとも頻繁に利用することになると思われる録画機能に関して触れたい。録画時の画質はMPEG2/MPEG-1で規定されたプロファイルが3種類用意されているほか、ユーザー設定も可能(画面02)。設定可能な解像度やビットレートは、本製品のスペック表に記載されているが、DVD作成、PCへの取り込みなど、多彩な使い方が魅力の本製品なだけに、設定できる内容も多くのニーズを満たす柔軟性の高いものとなっている。
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画面01 テレビチューナーの入力に関しては3次元Y/C分離とゴーストリデューサの同時使用、ビデオ入力に対しては3次元Y/C分離のみがそれぞれ利用可能
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画面02 録画時のユーザー設定も可能で、MPEG-2の720×480ドットなら4~9Mbpsの範囲で設定可能 |
録画に関しては予約方法についても紹介しておきたい。リモコンの「予約」ボタンを押すと現在設定されている予約一覧が表示され、その画面で[新規作成]を選択するだけで予約設定画面になる、非常に簡便なオペレーションだ。
予約画面もAX20から追加された機能が目立つ(画面03、04)。特に注目したいのが「自動削除機能」だ。これは、それほど重要性の高くない番組について「自動削除する」というフラグを設定しておけば、HDDの容量不足が発生した場合に、その録画データを自動的に削除してくれる機能である。特にHDD容量が160GBのPK-AX300Lを利用するユーザーには、嬉しい機能ではないだろうか。
もう1つ要チェックのポイントとして、AX10/20にはなかった「フォルダ作成」ができるようになった点が挙げられる。録画データの数が増えてくると目的のデータを探すのも面倒だが、例えば連続ドラマなどであれば専用のフォルダを用意して管理することができるのだ。もちろん視聴時にはフォルダごとにデータを一覧表示することもできる(画面05)。
また、番組の予約に関しては電子番組表(EPG)機能を持っている(画面06)。AX10/20同様にテレビ朝日データビジョンのADAMS-EPGに対応するほか、ADAMS-EPG+にも対応する。なお、ADAMS-EPG+への対応については、PC上での作業が必須なのだが、詳しくは後述する。
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画面03 予約設定画面の1ページ目。保存フォルダの指定と、自動削除対象を指定する機能がAX300で追加された |
画面04 予約設定画面の2ページ目。音声をDolbyDigital形式で保存できる。DVDへの書き込みを前提とした録画に特に有効だ |
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画面05 AX300で追加されたフォルダ機能。番組ごとやジャンルごとなど、好みのフォルダを作成して録画データを整理できる |
画面06 電子番組表はADAMS-EPGとADAMS-EPG+に対応する |
本製品では予約録画に関する機能が豊富で、他にも便利な機能がある。1つは「おまかせ録画」機能だ。すでに同社のPCや「SmartVision HG2」シリーズなどで実現している機能だが、任意のキーワードを指定し、取得済みのEPGからキーワードに該当すると思われる番組をピックアップして録画してくれる機能だ(画面07、08)。この機能は多用しすぎるとHDDがすぐに満杯になってしまうのだが、先に紹介した自動削除機能があるおかげで、うまく使えば録り漏らしを防ぐ事ができる。
また外部からの予約機能も強化された。AX10/20ではBIGLOBEに加入することが条件となるが、BroadPassサービスを使ったiモードによる予約録画をサポートしていた。AX300でも当然、この機能はサポートしている。
加えて、AX300ではAX300自身が簡易メールクライアントとなる機能を備えている(画面09、10)。この機能を使って、例えば職場などから所定のフォーマットでメールを作成して送れば、それが予約情報として認識されるのである(画面11、12)。もちろん、一定間隔ごとにメールサーバーにチェックしにいき、外部から送った予約情報をもとに自動的に録画を開始することもできる。ISPに依存しない点で、多くのユーザーが享受できる便利な機能といえる。
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画面07 AX300で新たに追加された「おまかせ録画」機能。チェックしておきたい番組のキーワードやジャンルを指定できる |
画面08 指定したキーワード・ジャンルをもとに、取得した番組表からピックアップして自動的に録画しておいてくれる |
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画面09 簡単なメールクライアント機能も装備。メール送受信が可能で、受信メールは既読・未読に自動的に振り分けられる |
画面10 通常のテキストメールであれば、ご覧の通り違和感なく参照することが可能だ |
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画面11 画面のように日時・開始・終了時間・チャンネルなどを所定のフォーマットでメールを送る |
画面12 AX300でそのメールを受信すると、予約情報として認識される |
このほかAX300では、録画済みデータの活用、という面で注目の機能がある(画面13)。1つはファイルの再圧縮機能だ(画面14)。この機能を使えば、例えば8MbpsのMPEG-2形式で録画しておいたデータを、4Mbpsに再圧縮することでHDDの空き容量を増やすことができるわけだ。
もう1つの注目機能が「カット編集」機能である(画面15)。これは録画したデータの任意の部分、例えばCMなどを切り取ることができるものだ。HDD&DVDレコーダなら当たり前ともいえる機能だが、DVDドライブの搭載によりHDDに録画したデータをDVDに書き込む前に、こうした作業をAX300単体で行なえるようになったわけだ。
DVDへの書き込みも非常に簡単で、録画したデータからDVDへ書き込みたいデータを選択(画面16)、あとはメニューのバックグラウンドイメージを指定するだけでOKだ。
ちなみに、DVDに書き込む時点でフォーマットの再変換を行なうこともできる(画面17)。特に便利なのが「ジャスト」機能で、容量が大きな録画データも、DVDにピッタリ収まるビットレートを自動的に判断して、再変換してくれる。
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画面13 録画済みデータの加工に関しての機能が強化されており、画面のようなメニューから機能を利用できる |
画面14 ファイルの再圧縮機能。ビットレートを低くして再圧縮を行なうことでファイルサイズを小さくすることができる |
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画面15 カット編集機能。録画データからCMなどの不要な部分を削除することができる。削除できる単位は2秒から1分となっている |
画面16 内蔵のDVDドライブへの書き込み機能。録画データから書き込みたいデータを選択。DVDの空き容量もグラフで確認できる |
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画面17 DVDの空き容量が不足するほど大きなデータを書き込む場合は、自動的にビットレートを変更してくれる「ジャスト」機能が便利 |
以上、AX300単体で行なえる便利な機能をピックアップして紹介してきたが、本製品は非常に高機能であり、全機能をここでは書ききるのは無理がある。このほかの機能については、前述の本製品のスペックページなどを参照してほしい。
次回後編では、PCと連携させた場合の本製品の機能を中心に紹介していく。
■注意
・Broadband Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。
□NEC AX300 製品情報
http://121ware.com/nsserver/ax/
(2004/03/03)
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