前編にて製品紹介も終わったところで、後編では実際に4台を接続して使ってみることにしたい。本当は外の猫シェルターに設置したかったのだが、ちょっと都合が悪く設置が難しかった。そこで、筆者の仕事場の専属モデルを使って、いくつかテストしてみることにした。
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今回試用したネットワークカメラ4製品。左からコレガの有線LANモデル「CG-NCMN」と無線LAN対応モデル「CG-WLNC11MN」 |
同じくプラネックスの有線モデル「CS-TX01F」と無線LAN対応モデル「CS-W01B」 |
■明るい部屋
まず最初に、30ワットの蛍光灯2本の真下にある筆者の椅子を独占するモデル(写真45)さんの様子を、カメラ(写真46)で一斉に撮影し、記録してみた。
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写真45 本当は外猫だったのだが、避妊手術の予後が悪く、再縫合した後に暫く静養が必要ということで手術後にカラーをつけて仕事場に入れていたら、すっかり居座ってしまった |
写真46 椅子の向かいにある作業用ワゴンに、エツミのツーウェイクリップとストレートブラケットを介して接続。カメラネジのサイズなので、カメラ用の道具が使えるのは非常に便利 |
・動画ファイル(AVI形式) |
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コレガ CG-NCMN 01_CG-NCMN.avi(2.57MB) |
コレガ CG-WLNC11MN 02_CG-WLNC11MN.avi(1.34MB) |
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プラネックス CS-TX01F 03_CS-TX01F.avi(2.69MB) |
プラネックス CS-W01B 04_CS-W01B.avi(2.50MB) |
部屋自体はかなり明るいはずなのだが、映像を見るとどれも彩度が落ちてしまっている。また、茶トラというよりもサバトラに見えてしまうのは、ホワイトバランスの自動調整がうまくいっていないためと思われる。彩度の調整をしても、色味の改善が出来なかったのは残念である。ただ、外部に広く公開するためならばともかく、自分が居ない時に何をやっているか確認したいという目的であれば、十分であるとは思う。ちなみに、フォーカスが多少甘いのも気になるが、これでもフォーカス調整後の映像であり、これ以上フォーカスを絞るのは難しい印象だ。ちなみに、カメラと椅子の距離は50cm程度。本来ならもう少し離すべきだったのかもしれない。
また、無線LANモデル2機種の映像では、コマ落ちが気になった。これは4つのカメラを同時に動かしているために、ネットワーク内でかなりのデータ転送が発生していることに起因する。一応、無線LANモデルは、アイ・オー・データ機器のIEEE 802.11a/b/gに準拠した無線LANルータ「WN-APG/BBR」経由で、8ポート搭載のギガビット対応スイッチングハブに、有線LANモデルは8ポートの10BASE-T/100BASE-TXのスイッチングハブ経由でギガビット対応スイッチングハブにそれぞれ接続し、やはりギガビットで接続したPCでデータの収集を行なっている。このため、ボトルネックとなるのは無線LANの帯域ということになる。これに関係するかどうかわからないが、画質自体もやや荒れ気味となっており、案外無線LANを使うのは難しそうな印象である。
■やや明るい部屋
次は、40ワットの蛍光灯1本で部屋全体の照明としている部屋でモデルさんが跳ね回る様子を、隣の部屋からコレガとプラネックスの有線LANモデルで記録してみた。
・動画ファイル(AVI形式) |
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コレガ CG-NCMN 05_CG-NCMN.avi(0.98MB) |
プラネックス CS-TX01F 06_CS-TX01F.avi(0.90MB) |
今度はカメラからモデルさんまでの距離が3メートル程度あり、距離的には手頃だと思うのだが、相変わらずフォーカスが甘い印象は拭えない。また、全体的に画質も低く、ざらついた印象もある。監視カメラとして使うのには、少し厳しいかもしれない。
■暗がり
モデルさんはよく筆者の机の下にもぐりこんで寝ている。そこで机にカメラを仕掛けて(写真47)の撮影も行なってみた。ただし、眠りこけている様子をムービーで撮っても意味がないので、今回は静止画で撮影した。40ワットの白熱灯を近くに置いた時(写真48)、白熱灯を遠くに離した時(写真49)、及び白熱灯を切った時(写真50)である。写真配置はいずれも、
左上:コレガ CG-NCMN |
右上:コレガ CG-WLNC11MN |
左下:プラネックス CS-TX01F |
右下:プラネックス CS-W01B |
となっている。さて、見ていただくとおわかりな通り、感度はかなり低い感じだ。特に、無線LANモデル2製品は、画質の劣化が著しい。カメラ設定はいずれもデフォルトのままなので、もしかすると無線LANモデルは(データ量を落とすために)圧縮が有線LANモデルよりキツイのではないか、と感じさせるレベルである。また写真50の結果を見る限り、これは現在のUSBカメラとほとんど大差がなく、感度の改善はほとんど無理といった印象だ。ちなみにカメラ調整で明るさを最大にしても、画質は変わりなかった。
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写真47 今はアングル調整用に40ワットの白熱灯を遠くから当てている。このライトを切ると、外のシェルターと同じ程度の明るさとなる。これで使えれば、外のシェルターでも何とかなる……という感じである |
写真48 これはやや明るめ。椅子の上ほどではないが、かなりハッキリ認識できる |
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写真49 外のシェルターよりはやや明るい感じ。この時点でかなりディテールは落ちている |
写真50 元の画像を知っていれば認識できるが、そうでないと何がなんだか……といった印象 |
■その他
ところで、ここまで敢えて触れてこなかったのだが、今回試用したコレガとプラネックスのネットワークカメラは相互運用が可能だった。例えば、コレガの監視ユーティリティでプラネックスのカメラまで一度に監視できる点(写真51)や、カメラの設定画面を呼び出せてしまう点(写真52)、あるいはプラネックスのユーティリティでコレガのカメラを検索できる点(写真53)など、両者の製品がシームレスに運用できるのはちょっと奇妙な体験だった。
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画面51 コレガのNC View Aを使ってマルチウィンドウ表示した状態。ちなみにNC View Sも見かけは一緒で、単に管理ユーティリティがないだけである。これならば、一本化してしまって構わない気もする |
画面52 ウィンドウ左上のアイコンに注目。コレガのNC View SからプラネックスのWeb管理画面が呼び出されている。ちなみに逆も可能である |
画面53 カメラ名称が全く違うので区別できるが、そうでなければ両社のカメラが混在していることは分からないだろう |
では完全に同じかというと、微妙に使い勝手が違うところが面白い。どちらのユーティリティも4台までカメラを管理できるし、カメラの画面を個別に表示することも、統合ウィンドウで表示することもできる。ただし、コレガのものは管理ユーティリティの画面自体がちょっと大きいため、統合ウィンドウ表示にしてもVGAサイズではややオーバーラップしてしまう(写真54)。また、統合ウィンドウからあれこれ操作をするよりも、統合ウィンドウでカメラを選び、操作はユーティリティ画面で行なった方が良さそうな印象だ。これに対して、プラネックスのものは統合ウィンドウから操作を直接選べる(写真55)ほか、ユーティリティ画面が小さくまとまっているのでVGAサイズでもぎりぎり画面がオーバーラップしないのは好感が持てる。
また、どちらのカメラも自前でWebサーバーを持っているわけだが、各カメラのトップページは直前に撮影した画像を静止画表示する。動画の表示を行なう場合、プラネックスの製品ではJavaを使うモードのほか、独自のActiveXコンポーネントを利用することができる(写真56~写真59)。前編で後述するとした「ActiveX読込先」というのはこれののことで、すべてのクライアントにActiveXをインストールしなくても、どこか1台のマシンに専用ActiveXをインストールしておき、そのアドレスをカメラに指定しておけば済むという仕組みである。ただ、個人的にはJavaがあれば十分という気もする。
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画面54 統合画面にしても、微妙に重なり合うのは多少気になる |
画面55 こちらはプラネックスの「CS Series Viewer」の統合画面。ファンクションの数がコレガのNC View Sよりやや多い |
画面56 分離しても、微妙にサイズが小さいためギリギリ重なり合わない。とはいえ、もう少し小さくしても良いんじゃないか? という気もする |
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画面57 仕事中に人の背中にもぐりこむのが大好きなモデルさん |
画面58 Javaモードでの表示。ステータスバーにはフレームレートが表示される |
画面59 ActiveXモードでの表示。使い勝手はJavaの場合と全く変わらない。強いていえば、非力なマシンではActiveXモードの方が軽いようだ |
一方、コレガの方はあまり細かい設定がなく(写真60)、ビデオの表示もJavaモードのみである(写真61)が、こにれは別に差し支えない気がする。むしろ、気になったのは(もちろん動作保証外ではあるが)筆者がメインに使っているOpera 6ではトップページが表示されないことである(写真62)。ただ、これもJavaのページを直接指定すれば表示される(写真63)ので、技術的にどうこうというよりも、単にそういうHTMLの書き方をしているだけの話で、できれば直していただけると嬉しいというのが率直な感想だ。
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画面60 シンプルなコレガのWeb表示画面 |
画面61 機能はプラネックスと全く同じ |
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画面62 Opera6でトップを表示すると、この通り |
画面63 Javaのページを直接指定してリンクを張っておけば良いので、実害はあまりないともいえる |
■総評
1週間ほど手元に置いて試用した感想をまとめてみると、以下のようになる。
・無線LANモデルはちょっと難しい
フレームレートや画質の点もさることながら、安定度にイマイチ欠けるというのが両社の無線LANモデル。有線で繋いでいる限り全く問題ないのだが、無線LANでは大体48時間に1回は完全にリンクが切れてしまい、接続できなくなる。この場合、一度電源を落とすなり、リセットするなりすれば良いわけだが、そのためには人間の手が必要であり、筆者のように「一度設置したら数カ月の単位で触らない」なんて用途で使用するには多少無理がある感じだ。
また、無線LANモデルでは発熱も気になるところ。両社の製品とも、明らかに有線LANモデルよりも発熱が多く、これも気になった。無線LANとはいえ、電源供給は必要だから完全にワイヤレスというわけにはいかず、そうなればコレガのようにPoE電源供給キットを使ってLANケーブルだけで接続するという形態が1番ベターだろう。
・感度に過度の期待はできない
1万を超える価格にちょっと期待をしていたのだが、ことカメラユニットに関しては3千円以下で売られているUSBカメラと同等であった。やはり、30万画素CMOSということもあり、カメラユニットはこれらのものと全く同一なのだろう。筆者のようなケースでは、ナイトビューモードを持った製品(例えば、松下電器産業の「BL-C10」など)を探すべきなのかもしれない。もっとも、こうしたカメラは更に値段が跳ね上がってしまうわけで、これはこれで悩ましいのだが。
・使い勝手はプラネックスがわずかに上
機能的にはほぼ互角といって良い両社の製品だが、ユーティリティの出来具合はプラネックスが僅差ながら上回る感じである。それは機能ボタンが少し多いとか、ユーティリティの画面サイズが少し小さいとか、Opera 6で使えるとか、ほんのわずかの差でしかないのだが、そのわずかの差が使い勝手に直結するという良い例であった。ただ、これはソフトウェアの更新で済む問題なだけに、将来このあたりを修整したアップデートが登場することを期待したいところだ。
・設置はコレガの方が楽
設置に関していえば、やはりコレガの方が取り扱いが楽だった。ネジ穴の周囲がフラットになっているだけで、締め付け具合がだいぶ変わる。またプラネックスの製品はレンズの位置とネジ穴の位置が離れているから、ちょっとしたブレでアングルが大きく変わってしまい、調整に結構苦労した。このあたりはコレガのデザインの方が優秀に思える。
といったところで、いずれにせよ感度の点でどちらの製品も「今使っているカメラを置き換える」ほどの魅力がないあたりが、ちょっと残念であった。ただ、明るいところならそれなりに使えることがわかったのは収穫だった。
実は筆者の周りには、この手の製品を真剣に狙っている人が少なくない。いずれも猫監視がメイン(笑)だったりするのだが、全国1,000万(筆者推定)の猫馬鹿の皆様は、この手のカメラの利用を考えているのは間違いないといっても過言ではない(*1)わけで、メーカーには更なる魅力的な製品の開発を期待したいところだ。特に、感度向上はぜひともお願いしたいと思う。
*1:過言かもしれない
■注意
・Broadband Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。
□コレガ CG-NCMN 製品情報
http://www.corega.co.jp/product/list/others/ncmn.htm
□コレガ CG-WLNC11MN 製品情報
http://www.corega.co.jp/product/list/others/wlnc11mn.htm
□コレガ CG-POEADP 製品情報
http://www.corega.co.jp/product/list/others/poeadp.htm
□プラネックスコミュニケーションズ CS-TX01F 製品情報
http://www.planex.co.jp/product/con_acce/cstx01f.shtml
□プラネックスコミュニケーションズ CS-W01B 製品情報
http://www.planex.co.jp/product/con_acce/csw01b.shtml
■関連記事:ネットワークカメラを試してみる(前編)
http://bb.watch.impress.co.jp/column/review/2004/04/08/
(2004/04/09)
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