NTTは8日、光ファイバ配線工事の“スキルレス化”に向けて、「曲げ」「折り」「結び」といった自由な配線ができる光ファイバコード(以下、曲げフリー光ファイバコード)と、戸建住宅内の配線工事を簡略化する「FTTH対応先行光配線キット」を開発したと発表した。「2010年までに3,000万ユーザーに光アクセスと次世代ネットワークサービスを提供する」との経営目標を掲げるNTTだが、光ファイバ配線工事の作業効率向上が課題になっていた。
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従来の光ファイバコード。コードに余りが出た場合などは、半径15~30mm以上の輪を作って長さを調整していた
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こちらが新開発の曲げフリー光ファイバコード。結んでも光損失が発生しない
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■ ホーリーファイバと特殊素材の被覆部によって“曲げフリー”を実現
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6つの空孔が光信号の閉じこめ効果を強めている
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光ファイバを包むコード被覆部には、しなやかに曲がる柔軟性、椅子で踏みつけても光ファイバに影響がない側圧特性、「折り」「結び」後に癖がつかない、といった特性の素材を使用
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開発された曲げフリー光ファイバコードは、NTTが開発した「ホーリーファイバ」の1種である「空孔アシスト型光ファイバ」を心線(直径125μm)に採用している。空孔アシスト型光ファイバとは、高屈折率ガラスをコア部に採用し、その周りのクラッド部(石英ガラス製)に6つの穴を配したものだ。
NTTアクセスサービスシステム研究所主幹研究員の鎌光男氏(第二推進プロジェクトディレクタ)によれば「石英ガラスのみのクラッド部では光ファイバを曲げたときに角度によっては光が外に漏れてしまうことがあった。クラッド部に中空の穴を開けることで、空気が、漏れそうになった光の反射材としての働きをする」とし、6つの空孔が光信号の閉じこめ効果を強めていると説明した。
光ファイバを包むコード被覆部(直径4mm)の素材については明らかにされなかったが、「しなやかに曲がる柔軟性」「椅子で踏みつけても光ファイバに影響がない側圧特性」「『折り』『結び』後に癖がつかない」といった特性のある素材を使用している。こうしたホーリーファイバとコード被覆部の工夫により、従来15~30mm程度が限界だった曲げ半径を2mm程度まで小さくすることに成功したという。
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従来の光ファイバでは曲げると光損失が発生
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曲げフリー光ファイバコードでは、たとえ結んだとしても光損失はほとんど発生しないという
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フリー光ファイバコードの両端に装備した光コネクタには、光ファイバの防塵と清掃のための機能が
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曲げフリー光ファイバコードの両端にはSCコネクタ互換のコネクタ部を装備。このコネクタ部には、光ファイバの防塵と清掃のための機能を備えている。通常はシャッタが閉まった状態で光ファイバに汚れが付着するの防ぐ。シャッタを開ける際には、シャッタ裏側の清掃部によって光ファイバの先端が清掃される仕組みだ。NTTでは、この光コネクタの差し込み口として「光コネクタローゼット」も開発。すでに光回線が敷設されたローゼットであれば、曲げフリー光ファイバコードの両端をローゼットとONU(光終端装置)に接続するだけで宅内工事を完了できるという。
価格については現在のところ未定だが、「従来の光ファイバコードよりも安価になる」(鎌氏)。2005年内に開発を完了し、2006年以降まずは法人向けの光LANシステムに提供。続いて一般向けにも提供を開始する方針だという。なお、コード自体はNTTエレクトロニクスが、コネクタ部はNTTアドバンストテクノロジがそれぞれ生産している。
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光コネクタ部。光ファイバを保護するシャッタが閉まっている
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シャッタを開けると光ファイバが露出。この際、シャッタが光ファイバの汚れを拭き取る仕組みになっている
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■ 1mで20mまで伸びる「光カールコード」
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「光カールコード」
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簡単に伸びる
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FTTH対応先行光配線キットは、ユーザーやNTTから委託を受けた工事業者がNTTの開通工事前に先行して宅内工事を行なうためのセット。光ファイバをカールさせて伸縮する「光カールコード」、光カールコードを配管に通線した時に縮んで戻ってしまうのを防止する部材、引き込み用牽引端のほか、松下電工が開発を担当した「埋込型宅内光アウトレット」や屋外に設置する「ユーザ設置光キャビネット」、光カールコードを通す配管(市販品)も同梱されている。
光カールコードは、長さ1mのカールコードで20mまで伸張し、6曲がり配管でも1kgf(9.8N)以下の比較的弱い牽引張力で通線できる光ファイバコードだ。通常の光ファイバコードの場合、敷設する際の長さによって専用の光ファイバカッターで切断したり、メカニカルスプライスで光ファイバ同士を結合し、長さを調節する必要があった。光カールコードであれば、ONUまでの宅内配線に余りが出ても配管内で吸収できるほか、長さが異なる配管であっても同じ仕様の光カールコードで対応することが可能だ。
光カールコードの両端には、従来のブーツ(30mm)を短尺化(7mm)した「短ブーツ光コネクタ」を装備。コネクタ部を小型化したことで、光アウトレットなどの周辺設備も小型化できるようになったという。なお、この光コネクタに引き込み用牽引端を接続して、配管に通す。
NTTアクセスサービスシステム研究所主幹研究員で工学博士のを倉嶋利雄氏(アクセスメディアプロジェクト媒体応用グループ)によれば、「光カールコードには、曲げフリー光ファイバコードと同様のホーリーファイバを使用しているが、被覆部が2mmと薄いため、曲げフリー光ファイバコードと同じように曲げてしまうと折れてしまうこともある」という。
FTTH対応先行光配線キットの事業化や提供価格については現在のところ未定。倉嶋氏は「戸建用ソリューションの1つとして開発した。集合住宅は屋外施設が異なるため検討中だ」と述べた。
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FTTH対応先行光配線キット
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光カールコードを配管に通してみた。左の黒い部分は光カールコードを配管に通した時に縮んで戻ってしまうのを防止する部材
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曲がりくねった配管も簡単に通すことができる
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「戸建用ソリューションの1つとして開発した」と倉嶋氏
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■ ユーザーだけではなく、工事業者にもメリット
宅内工事のDIY化を進める方向性を示したNTTだが、現在のところユーザー宅内に設置するONUを含めて局舎設備まではNTTの所有物とされており、電話回線を利用するADSLのようにユーザーが自由に工事できないのが現状だ。
「必ずしもユーザーだけがメリットを受けるものではなく、工事業者にとっても工事のスキルレス化や期間短縮化のメリットがある」と倉嶋氏。また、NTTアクセスサービスシステム研究所の山内修氏(第二推進プロジェクト担当部長プロジェクトマネージャ)によれば、「光コネクタローゼットなどが光ファイバの工事で一般化すれば、サービス廃止時の撤去作業が光コネクタローゼットからONUまでになり、光コネクタローゼットから外部配線の撤去は不要になる」とコメント。新開発の光ファイバコードだけでなく、光コネクタローゼットなどの設備が一般化することで、総体的な光ファイバ敷設コストが低減する可能性があると示唆した。
なお、ユーザーによる宅内工事に向けては「関連する法規を調べている」(鎌氏)とした上で、「NTTのサービス利用約款などを変更することで、NTT内の設備をユーザーが工事できるようになるのではないか」(山内氏)との見解を示した。
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ユーザーによる宅内工事については「関連する法規を調べている」と鎌氏
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山内氏は「NTTのサービス利用約款などを変更することで対応できるのではないか」と見解を示した
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■ URL
「曲げフリー光ファイバコード」のニュースリリース
http://www.ntt.co.jp/news/news05/0511/051108a.html
「FTTH対応先行光配線キット」のニュースリリース
http://www.ntt.co.jp/news/news05/0511/051108b.html
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(鷹木 創)
2005/11/08 18:51
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