So-netを運営するソニーコミュニケーションネットワーク(SCN)は29日、PSP向け動画配信「Portable TV」をリニューアル、有料動画コンテンツの配信を開始した。Portable TVのコンセプトや今後の展開について、Portable TVプロデューサーを務めるSCNの宅島欣男氏に伺った。
■ 音楽配信との連携でコンテンツ数は数十万単位まで拡大
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SCNのテレビポータル事業部門 ポータルサービスディビジョンの宅島欣男氏
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Portable TVは、SCNが7月27日にサービスを開始したPSP向けの動画配信サービス。11月29日に公開されたPSPの新ファームウェア「2.60」と同時にサービスもリニューアル、ファームウェアが最新バージョンであれば、PSPから有料コンテンツのダウンロード購入が可能になった。
動画のエンコードはサービス開始当初と同様MPEG-4 AVC(H,264)を採用するが、無料で配信していた頃よりもリニューアル後のコンテンツは画質が向上しているという。ビットレートは768kbpsと1Mbpsの2種類で、ほとんどのコンテンツは1Mbpsで配信されている。
サービス開始時には、映画やアニメ、音楽などさまざまなジャンルのコンテンツを約400タイトル用意。「1,000タイトルまでの拡充はすでに見込みが付いている(宅島氏)」ほか、コンテンツホルダーもPortable TVへのコンテンツ提供には積極的な姿勢を見せているという。
宅島氏は「PSPの保護技術に加え、PSPという存在そのものが魅力的ではないか」とコメント。「PCで映像が見られるサービスというだけでは差別化や新しさを出しにくく、コンテンツもなかなか出てこないが、PSPはまったく新しいマーケットのためにコンテンツホルダーとも話がしやすい」のだという。
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マドンナのビデオクリップはすでに配信を開始
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コンテンツ拡充の施策の1つが音楽アーティストのビデオクリップ。すでにPortable TVではマドンナのビデオクリップを配信しているが、「音楽は1曲単位で考えれば非常に数が多い」と宅島氏は指摘。「SMEや(レーベルゲートが運営する音楽配信サービスの)Moraともうまく連携し、コンテンツ数もMoraと同レベルの数十万程度まで拡充していきたい。」との姿勢を示した。
Portable TVでは、期間限定ながらもストリーミングではなくダウンロード型の配信方式を採用するが「権利関係に関してはすでにJASRACの仮承認は下りている」状態という。あくまで仮承認であり、利用料率などは最終合意を待つ必要がある状態ではあるものの、宅島氏は「権利者の皆様とはきちんと話をした上でサービスの準備を進めている」と強調した。
むしろコンテンツの拡充の課題は、権利処理よりもH.264のオーサリング環境にあるという。宅島氏は「H.264のエンコードは非常に処理が重く、環境もまだ整っていない。今はソニーPCLやソリッド・エクスチェンジなどの外部でオーサリング作業をまかなっている状態」と説明。「今後はエンコード環境も整備されていくが、今の時点では権利許諾以上に動画をオーサリングする作業に時間がかかっている」とした。
■ 動画対応iPodとは「マーケットもアプローチも異なる製品」
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購入した「機動戦士Zガンダム」を再生したところ。動きの速いシーンでも画面が乱れることはなく、映像のクオリティは極めて高い
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アップルコンピュータの動画再生に対応した第5世代iPodを発売し、iTunes Music Storeでも動画コンテンツの販売を開始したが、宅島氏は「iPodとPSPでは狙うマーケットやアプローチが異なる」と語る。「PSPは電車の中などモバイルでの利用を想定されがち。もちろんそういう使い方もあるが、家庭の中で利用しても十分に魅力のある製品だ」。
その一例として宅島氏が挙げたのが、PSPのロケーションフリープレーヤー機能。専用のベースステーションと家庭のDVDレコーダを接続することで、家庭内の無線LAN環境や公衆無線LANサービスなどを経由してPSPでテレビや録画した番組を楽しめる。宅島氏は「PSPの液晶や大きさは、外出先だけでなく家庭でも十分に楽しめるクオリティ。外出先で楽しむためのiPodとは重なっている部分もあるが、コンセプトの違う商品だ」とした。
コンテンツの配信方式も違いの1つ。iPodではダウンロードしたコンテンツを半永久的に楽しめるが、PSPではダウンロード視聴はできるものの、一定期間で再生できなくなる「レンタルダウンロード」方式を採用する。こうした一定期間の視聴に限る方式も、コンテンツホルダーからは受け入れられやすい仕組みと宅島氏は指摘。「105円から購入できるという価格設定も、レンタル方式だからこそ実現できた」とした。
Portable TVはあくまでPSP向けのサービスであり、有料コンテンツのPC再生については対応する予定はない。宅島氏は「Portable TVはあくまでPSPのためのサービスであり、PSPもH.264のビューワーとして完成されたデバイス」とコメント。「他との連携よりもPSPの可能性を広げることで、結果として我々のサービスも利用が進むという形で考えていきたい」。
コンテンツの定額課金、Podcastingなどの対応も視野に入れている。「このままのサービスが完成系とは思っていない。ユーザーの声を聞きながら、レンタル以外の方式も考えていきたい」。「コンテンツホルダーも積極的で、すでに契約待ちのコンテンツホルダーも多い」との状況を示し、「今の規模には留まらない段階までサービスを拡充していく」との意欲を見せた。
■ URL
Portable TV
http://www.p-tv.jp/
ニュースリリース
http://www.so-net.ne.jp/corporation/release/2005/051129.html
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(甲斐祐樹)
2005/11/29 20:15
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