任天堂は、12月2日に発売する家庭用ゲーム機「Wii」の説明会「Wii Preview」を9月14日に開催した。説明会では取締役社長の岩田聡氏がWiiのコンセプトや今後の展開を説明。また、専務取締役の宮本茂氏は開発中のWiiタイトルを紹介した。なお、社長のプレゼンテーションは任天堂の特設ページで動画配信されている。
■ ニンテンドーDSで世帯数ごとのユーザー数を拡大
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プレゼンを行なった岩田聡社長
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岩田氏は初めに携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」の現状を説明。本体の普及台数は20カ月で1,000万台を突破し、据え置き型を含むこれまでのゲーム機で最速の達成スピードという。また、2006年のゲーム市場におけるソフト販売台数ではニンテンドーDSが全体の51.2%と過半数を占めているデータを示し、ニンテンドーDSの好調ぶりをアピールした。
欧米でもDSは好調で、「BRAIN AGE」「BRAIN TRAINING」というタイトルで発売された「脳を鍛える 大人のDSトレーニング」は、北米では日本と並ぶ水準で売上を伸ばしたほか、欧州では日本を超える勢いで売上が伸びていると指摘。日本国内においても「データで示すまでもなくゲーム売り場を見てもらえればわかるように、男性が中心だったゲーム市場に女性のユーザーも参加をしている」とコメント、老若男女を問わすニンテンドーDSが受け入れられているとした。
「ゲーム人口を拡大する」という任天堂の取り組みの成果を示す数値として、岩田社長は「世帯あたりのユーザー数」というデータを紹介。任天堂独自の調査によれば、世帯あたりのユーザー数は据え置きゲームの場合で通常2.1~2.8程度、携帯型ゲーム機では2.0前後であることが多いが、ニンテンドーDSでは同社の調査史上初の3.0という数値を達成。「1人暮らしの人が遊んでいることを考えると、1家族におけるユーザー数はもっと多いのではないか」との考えを示した上で、「世帯数のユーザー数が多いことは、任天堂の目指すゲーム人口拡大が達成されている有効な指標だ」と語った。
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20カ月で1,000万台普及の達成はこれまでの家庭用ゲーム機で最速という
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ゲームソフト販売シェアの過半数をニンテンドーDSが占めるヒット状況
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「脳トレ」は海外でも人気
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世帯あたりのユーザー数でニンテンドーDSは初の3.0を達成
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■ 持ち運べないWiiはDSとは異なるコンセプトが重要
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Wiiのコンセプト
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年末に発売を控える据え置き型のゲーム機「Wii」も、こうしたゲーム人口拡大のコンセプトに基づいて展開していくが、岩田社長は「細切れの時間で楽しめる携帯型に比べ、テレビの前で楽しむ据え置き型の場合、ゲーム人口の拡大はDS以上に困難だ」と指摘。「今現在ゲームを遊んでいない人に対して、通常の宣伝だけでゲームに注意を持ってもらうことも難しいだろう」と付け加えた。
また、DSヒットの理由として岩田氏は、「持ち運べるDSの場合、友達が楽しんでいる姿を通じてDSの魅力が伝わり、それが普及を後押しした。ゲームに興味がなくても、友達が感動した話なら聞いてもらえる」と分析。一方で、据え置き型のWiiではそのような魅力の伝わり方は期待できない」とし、DSとも異なる新たなコンセプトが必要と指摘。「家族の誰にも敵視されない」「年齢や性別、ゲーム経験の有無を問わない」「家族全員にとって自分の関係のある存在になる」「毎日電源を入れてもらう」という4つのコンセプトを掲げた。
このコンセプトを実現するためにWiiに搭載されたのが「Wii Channel」という機能だ。Wiiには512MBのメモリが搭載されているが、このメモリ上に複数のプログラムを搭載し、テレビのチャンネル感覚で自分の好きなプログラムを選択して動作させられる。プログラムはそれぞれ「チャンネル」と呼ばれ、1つの画面には最大12個のチャンネルを表示。画面を切り替えることで最大48のチャンネルを登録できる。
Wiiやゲームキューブのソフトをプレイするための「ディスクチャンネル」のほか、写真を表示・閲覧できるチャンネル、ニュースチャンネル、お天気チャンネル、似顔絵チャンネルなどを用意。ゲームソフトをダウンロード購入できる「バーチャルコンソール」、オプション提供されるOperaブラウザなどもチャンネルとして登録される。
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Wii普及のためにゲームを改めて定義
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Wiiのコンセプトを実現するためのインターフェイス「Wii Channel」
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■ ゲームをプレイしなくてもWiiに触れてもらうための試み
お天気チャンネルやニュースチャンネルは「ゲームをプレイしなくてもWiiの電源を入れてもらう」ことを目的とした機能。インターネットに接続することで地域の天気情報をリアルタイムで表示するほか、自分の好きな地域の天気を閲覧することも可能。ニュースについても文字拡大といった機能のほか、ニュースの発信地を地図で表示する機能なども備えた。
デジカメ画像などを編集できるチャンネルでは、インターネットを介して画像を他の友達へ送ることも可能。Wiiリモコンによるポインティング操作で画像の回転やモザイク処理といった編集を行なうこともできる。伝言版チャンネルも用意され、インターネットを通じて家族だけでなく友達やPC、携帯電話ともメッセージ交換が可能。写真を送って相手の掲示板に貼り付けるといったコミュニケーションも可能なほか、ゲームソフトとの連動機能も用意。「どうぶつの森」のキャラクターから伝言が送られるデモを披露した。
似顔絵を作成できるチャンネルでは、「Mii」と呼ばれるキャラクターが作成可能。作成したMiiは「Wii Sports」などゲーム中で操作するキャラクターとして使用できるほか、作成したMiiを自分のWiiリモコンに保存し、友達の家で自分のMiiを使ってプレイするといったことも可能だという。
オプション提供されるOperaを使ったインターネットブラウジングでは、「リビングでインターネットすることで、家族全員で旅行の計画が立てられる」といった利用スタイルを紹介。Flash表示に対応するほか、Ajaxといった技術にも対応。会場ではGoogleの地図サービス「Google Maps」をWiiリモコンで操作するデモも行なわれ、「インターネットを閲覧するための機能も充実させている」とした。
Wiiリモコンで画像の編集が可能。マウスのドラッグ操作感覚で画像の回転やモザイク処理といった操作ができる
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天気情報や地図や地球儀のような画面で世界の情報も確認できる
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オプション提供されるOperaブラウザ。AjaxやFlashコンテンツなども表示できる
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伝言板機能。インターネット経由で友達やPCともやり取りできるほか、ゲーム内から伝言が送られてくることも
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「Mii」と呼ばれるキャラクターを作成できる機能。「ピクミンのように号令をかけて並ばせることもできる」(岩田氏)
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■ 在庫不要のバーチャルコンソールでロングテールを顕在化
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バーチャルコンソールの特徴
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ファミリーコンピュータ、スーパーファミコン、ニンテンドウ64といった任天堂のゲーム機に加えて、メガドライブやPCエンジンいったゲーム機のソフトをダウンロードしてWiiでプレイできる「バーチャルコンソール」については新たにMSXもラインナップに追加。今後も他のプラットフォームに対応する予定のほか、サイズに制限はあるものの、Wii専用のコンパクトなダウンロードコンテンツも準備を進めているという。
岩田氏はバーチャルコンソールの仕組みについて、「物理的在庫を持たないため、どんなに売れても品切れにはならず、逆に需要が少なくても在庫が無いことはない」と指摘。「いわゆるロングテールを顕在化させる仕組み」とバーチャルコンソールを評した上で、「バーチャルコンソールを利用するためにはインターネット接続が必要であり、ブロードバンドが普及している日本でもまだまだ全員がすぐに利用できる仕組みではない」との注意も示した。
岩田氏は「Wiiにおけるゲーム人口拡大のアプローチは、これまでのどの据え置き型ゲーム機のアプローチとも異なる」とした上で、先に挙げたゲーム人口拡大のための4つのコンセプトを実現するために「私たちなりに考えてきたのがこのチャンネルのコンセプト」だとコメント。「天気やインターネットだけでゲーム人口は増えないが、毎日のようにWiiリモコンに触り、使いこなしてもらうことで、ゆくゆくは隣に表示されるバーチャルコンソールのチャンネルに触れて頂ける機会も必ずあるはず」との展望を語り、「なぜならば、それはテレビが普及してチャンネルが増えていった時にも乗り越えてきたハードルだからだ」と補足した。
バーチャルコンソールを体験することで、その先にはパッケージソフトにも興味を持ってもらうことを期待。パッケージソフトも「大人のDSトレーニング」のような「タッチジェネレーション」ブランドの生活浸透型ゲームから始まり、「いずれはマリオやゼルダのような王道ゲームにも興味を持って楽しんでもらいたい」との期待を語った。
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バーチャルコンソールの参入メーカー
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バーチャルコンソールの価格帯
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「Wiiポイント」と呼ばれる決済を採用。クレジットカードやプリペイドカードで購入できる
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今後の展開
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■ 宮本茂氏が開発中のWiiタイトルを紹介
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Wiiリモコンを手にする宮本茂氏
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岩田氏の後には、宮本茂専務取締役が登壇し、本体と同時発売予定の「Wii Sports」、開発中の「Wii やわらかあたま塾(仮題)」のプレゼンテーションを行なった。
Wii Sportsには複数のスポーツゲームが収録されているが、今回はその中からテニスをピックアップ。ゲストにプロテニスプレーヤーの杉山愛を迎え、宮本氏とシングルで対戦するデモンストレーションが行なわれた。対戦は2回のデュースを重ねたのちに宮本氏が勝利。さらに第11回全国国民的美少女コンテストのグランプリに選ばれた林丹丹、司会を務めた中井美穂も参加したダブルスのデモも披露された。
現在開発中の「Wiiやわらかあたま塾」は、ニンテンドーDS版がすでに発売されているが、「DSは4人で楽しむのに4台必要だが、Wiiは1台あればみんなで遊べる」と宮本氏は説明。2人ずつ2チームを作り、指定されたゲーム数でプレーヤーを交代。先に設問をすべて解いたほうが勝ちというルールでゲームのデモが行なわれた。
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杉山愛と「Wii Sports」のテニスでシングルス対戦。デュースにもつれ込みながらも宮本氏が勝利
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宮本・中井ペアと杉山・林ペアでダブルス対戦
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開発中の「Wii やわらかあたま塾」の対戦デモ
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ゲストと中井美穂にはWiiタオルをプレゼント。「ヤクルトの試合やウィンブルドンで使って下さい」と宮本氏
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「負けると悔しい」と言いながらもWii Sportsを楽しんでいた杉山愛
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日中ハーフの林丹丹は中国語で挨拶
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■ 「DSは頭を、Wiiでは体を鍛える」がコンセプトの「ヘルスパック」
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「健康に関する話題で家族がつながっていくイメージ」の新タイトル「ヘルスパック」を開発中
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2つのゲームのデモンストレーションののち、「他にも『おどる メイド イン ワリオ』など、初めてでも家族全員でも遊べるゲームをたくさん開発しています」と開発の進捗状況を紹介。「家族全員がWiiを触るのはなかなか難しいが、チャンネルで写真や伝言版を見るなどでWiiリモコンを触ってもらえれば、それで任天堂ユーザーが増えたということ。少しずつでいいからユーザーを広げていきたい」との期待を示した。
初心者や家族をターゲットとしたゲームだけでなく、「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」も「Wiiを使って感情移入できる仕上がり」と評価。また、2007年発売予定の「スーパーマリオギャラクシー」も紹介し、「幅広いジャンルでさまざまなボリュームのソフトを品揃えすることが目的。楽しみにしていて下さい」と語った。
また、「任天堂は脳を鍛えるソフトでハードをヒットさせたから、Wiiでも作るだろうとよく言われるが、これはもちろん作ります」とした上で、「同じことを繰り返しても面白くない。DSでは頭を鍛えたが、Wiiでは体を鍛えたい」とコメントし、現在開発中の「ヘルスパック(仮題)」というタイトルを口頭で紹介。「リビングで楽しみながら健康管理ができるというテーマで、毎日ゲームの電源を入れて運動したり体重を量ったり、健康に関する話題で家族全員がつながっていくイメージ」とコンセプトを説明。「任天堂が目指す家族内ユーザーを増やすという方針にピッタリなソフトを準備しています」とした。
■ URL
ニュースリリース
http://www.nintendo.co.jp/n10/news/060914.html
Wii Preview特設ページ
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/wii_preview/index.html
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(甲斐祐樹)
2006/09/14 20:24
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