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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
TVバンク、オーバーレイマルチキャスト活用の動画配信システムを開発

「BBブロードキャスト」の視聴までのプロセス
 ソフトバンクグループのTVバンクと中国Roxbeam Media Network Corporationは、オーバーレイマルチキャスト技術を利用し、多人数に動画を同時配信可能なシステム「BBブロードキャスト」を共同開発したと発表した。

 「オーバーレイマルチキャスト(Overlay Multicast、以下OLM)」を基本技術に採用するBBブロードキャストでは、専用アプリケーションをインストールしたユーザーPC同士を接続して、配信サーバーから送信されたデータを相互に転送しながら特定多数のユーザーに同時配信を行なっていく。TVバンクによれば、マルチキャストと比較して、ネットワークへの負荷を抑えられるほか、異なるISPのネットワークを経由した配信が容易に行なえるという。

 同システムではまた、他PCとの接続が確立するまで配信支援サーバーから配信することによる再生開始時間の短縮化、複数PCとの接続や接続先リストの受け渡しによる動画配信の安定化、ADSLなどで上下速度が異なる場合における配信支援サーバーからのデータ補完などの安定化対策を実施。加えて、Windows Media DRM(WM DRM)で保護された動画コンテンツを、さらに細分化、暗号化して送信するコンテンツ保護技術も施した。細分化・暗号化されたコンテンツは公開鍵を用いて復号化されるため、改竄されたデータがネットワーク上に配信された場合でも影響はなく、改竄データはそのまま破棄される。

 TVバンクでは、1つのPCにデータを配信するユニキャストを利用した場合、ISPや事業者間相互接続ポイント(IX)を結ぶ「トランジット」、ISP内の接続拠点を結ぶ「バックボーン」、接続拠点からユーザー宅を結ぶ「アクセス網」を経由する必要があるが、BBブロードキャストでのユーザーPC同士でデータのやり取りを行なうため、トランジットやバックボーンにおけるトラフィック急増を抑えられると説明。これによって、トラフィック量に応じた設備増強、トランジットの費用支払いにおけるISP側の配信コスト削減が可能になるとしている。


視聴開始時間までは最長で約30秒程度になるという BBブロードキャスト利用時のコンテンツ保護について

EXILEのライブ配信では78%のトラフィック抑制を確認

赤枠で括った部分が経済的に動画配信が難しくなる領域だという
 TVバンクの川原洋 システム統括部 統括部長は、「インターネットの動画配信コストは、同時視聴者数とビットレートの乗算に比例する」と説明する。例えば、1万人が100kbpsの動画コンテンツを同時視聴した際には1Gbpsの送信トラフィックが発生し、1GBあたりの通信費を500円とした場合、2時間で45万円のコストがかかると例を示した上で、「地上波放送の視聴率2%に相当する100万人が1.5Mbpsのコンテンツを同時視聴するには1.5TB、6.75億円の費用が必要になり、ビジネスとして成り立たなくなってしまう」とした。

 川原氏は「今回開発したBBブロードキャストは、数万から10万人規模に向けた動画配信を実現している」と語るとともに、同システムの概要を説明。また、BitTorrentとWarner Bros.、KontikiとBBCといった海外におけるP2P技術を使用した配信動向を紹介し、「経済効果を考えた際には、P2Pやそれに近い技術を使うことが重要になる」と考えを述べた。

 BBブロードキャストの具体的な事例としては、9月22日に「Yahoo!動画」でライブ配信を行なった「EXILE VOCAL BATTLE AUDITION 2006 ~ASIAN DREAM~」を取り上げる。ライブ配信では768kbpsのビットレートで9分割マルチスクリーンによる動画配信が同システムで行なわれ、同時視聴者数は最大25,302人、総視聴者数は46,904人に上った。

 川原氏によれば、「同時視聴者数をビットレートで乗算した全体トラフィックは19.4Gbpsになるが、実際の送信トラフィックは4.2Gbpsと78%抑制できた」という。また、ソフトバンクホークスの野球中継でも実験が行なわれており、「全体トラフィック9.21Gbpsに対して、実際は1.01Gbpsと89%の抑制が確認できた」と発言した。なお、抑制比率に関しては、個々の事例ごとに調整が行なわれるため、必ずしも一定にはならないという。

 TVバンクでは、ライブコンサートやスポーツイベントで実証実験を重ね、今後は24時間のチャネル型配信やVODコンテンツにもBBブロードキャストを適用していきたい考え。その上で川原氏は、数十から数百人規模をユニキャスト、100万を超える規模をブロードキャストやCATVや地上波放送で担うと位置付け、「その中間の数千から数十万規模の配信をBBブロードキャストが行なうことで、今後の超多チャネル時代に向けた対応が可能になる」と発言。「特定の視聴者グループ向けに安価なチャネル配信やコンテンツのロングテール化に貢献できるのではいか」と抱負を語った。


EXILEのライブでは78%のトラフィック抑制を確認 野球中継では89%の抑制を確認したという

TVバンク中川氏「Yahoo!動画のユニークブラウザ数は8月単月で800万に」

(左から)TVバンクの中川氏と川原氏
 TVバンクの中川具隆取締役COOは「BBブロードキャストは、当社が設立される2005年12月以前から実験を行なっていた」と語る。「今回、ビジネス的に成り立つことと、TVバンクやYahoo!動画での取り組みが認知されてきたことから、正式に発表させていただいた」と述べた。

 中川氏はまた、「Yahoo!動画のユニークブラウザ数は、8月単月で800万を超えた」と述べ、「ネットレイティングスさんが公表しているホームパネル値と比較して倍の開きがある」と指摘した。「26日付けの新聞でGyaOの視聴者数を抜いたと報じられているが、TVバンク経由を含めた数値では以前から抜いている」と説明するとともに、「近日中にはYahoo! JAPANから、TVバンク経由での動画配信数を含めたYahoo! JAPAN全体の広告挿入型動画配信コンテンツにおける数値が公表される予定だ」とした。

 その上で、「コンテンツ量や視聴者数を他社と競うだけではなく、技術的な分野の優位性も意識してサービスを展開していく」考えを示した。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.tv-bank.com/jp/20060926.html
  Yahoo!動画
  http://streaming.yahoo.co.jp/

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(村松健至)
2006/09/26 15:47
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