KDDIは28日、FTTHサービス「ひかりone」の戸建て向けサービス「ひかりoneホーム」で、高速PLCモデムの提供を12月9日に、同軸ケーブルモデムの提供を2007年初旬に開始すると発表した。
■ 高速PLCモデムはアイ・オー製の機器を採用。先着500名に優待価格で販売
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提供機器の大きさ比較。(左から)ホームゲートウェイ、同軸ケーブルモデム、高速PLCモデム
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「ひかりoneホーム」向けに提供を行なう高速PLCモデムは、アイ・オー・データ機器が12月下旬に発売を予定する親機と子機をセットにした「PLC-ET/M-S」。松下電器産業が提唱する「HD-PLC」技術に沿った製品で、周波数帯域は4~28MHz。電源コンセントを介して親機、子機アダプタ間での通信が可能で、伝送速度は最大190Mbps、実効速度は最大約80Mbpsを公称する。
通信方式には、アマチュア無線などで使用されている信号をカットするという「Wavelet OFDM」を採用し、アダプタ間の通信は128bitのAESで暗号化されている。有線LANインターフェイスには10BASE-T/100BASE-T×1ポートを搭載。本体サイズは約121×40×70mm(幅×奥行×高)で、重量は約240g。
KDDIでは、ひかりoneホームの既存および新規ユーザーを対象に、先着500名限定で13,800円のキャンペーン価格で取り次ぎ販売を実施する。販売は、12月9日にひかりoneホームのWebサイト内に宅内LANサービス専用ホームページを通じて行なう。
台数を絞って販売する点に関してKDDIは、西日本地域の電力系通信事業者6社が11月14日に発表した高速PLCトライアルに近い位置付けだと説明。限定台数に達したのちは、アイ・オーの高速PLC製品を紹介する形になる予定だが、ユーザーからの反応によっては追加施策も検討するとしている。
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アイ・オー製の高速PLCモデム
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本体背面
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■ テレビ配線利用の同軸ケーブルモデム。実効速度は約90Mbps
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同軸ケーブルモデム
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本体背面。同軸端子、LAN端子ともに2ポートずつ備える
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同軸ケーブルモデムは、テレビ配線用の同軸ケーブルを使用して通信を行なうというもの。KDDIとKDDI研究所が、2年間の歳月をかけて共同研究・開発した製品で、2007年1月下旬をめどにレンタル形式で提供を予定するという。レンタル料金は親機と子機のセットが月額840円で、子機は追加1台ごと月額420円。
伝送速度は最大128Mbpsで、実効速度は最大約90Mbpsを公称。周波数帯域は2~21MHz。高速PLCモデムと一部周波数帯が重複するが、同社では使用する線が電力線、同軸ケーブルと物理的に異なるため、併用時の相互干渉はないとしている。
同軸ケーブルモデムでは、マルチキャストおよび優先制御(QoS)機能を装備し、STBを利用した動画配信サービス「ひかりone TVサービス(MOVIE SPLASH)」に対応しているのが特徴。また設定面では、ユーザー固有のIDを付与して出荷するため、設定作業の必要なく通信が可能だという。なお、通信時には暗号化処理は施されていないが、ユーザー固有IDにより他ユーザーのモデムでデータが受信される可能性はないとした。
有線LANインターフェイスには10BASE-T/100BASE-T×2ポートを搭載し、パソコンやSTBなど複数のネットワーク対応機器の接続が可能。同軸ケーブル端子は入力と出力端子を各1系統ずつ備え、テレビなどへのケーブル接続も行なえる。本体サイズは約135×90×35mm(幅×奥行×高)で、重量は約170g。
なお、宅内に敷設した同軸ケーブルがケーブルテレビ網に接続されている場合には、上位ネットワークに流合雑音が発生する可能性があることから利用の対象外になる。
■ 今後は「ひかりoneホーム」以外での提供も検討
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KDDIの牧執行役員
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KDDIの牧俊夫 執行役員 ブロードバンド・コンシューマー事業本部長は28日に開催した発表会で、「従来からレンタル提供していた無線LAN機器に加えて、高速PLCモデム、同軸ケーブルモデムを提供することで、誰でもブロードバンドを気軽に利用できる“ブロードバンドバリアフリー”環境を実現したい」と発言。「ひかりoneサービスに、これら3点の宅内ソリューションを組み合わせてユーザーに提供していきたい」と語った。
野坂章雄 執行役員 ブロードバンド・コンシューマー商品企画本部長によれば、「ユーザー環境に応じて最適な宅内LANサービスを提供する」考えだという。具体的には無線LAN機器はマンション向けに、高速PLCモデムおよび同軸ケーブルモデムは戸建てでの利用を想定するとした。
機能面の違いとしては、IPマルチキャスト機能を高速PLCモデムと同軸ケーブルモデムが、QoS機能を同軸ケーブルモデムのみサポートしている。野坂氏は「無線LANと高速PLCモデムで不足している機能を今後実装させていきたい」と語り、同軸ケーブルモデム以外でも「ひかりone TVサービス」を利用できる環境を目指す考えだいう。
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各機器の特徴比較
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メリットと使用推奨環境
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KDDIの野坂執行役員
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高速PLCモデムと同軸ケーブルモデムは、ひかりoneホーム向けに当初提供が行なわれるが、将来的には集合住宅向けの「ひかりoneマンション」での提供も検討していくという。また、ひかりoneでの状況を踏まえた上で、直収固定電話サービス「KDDIメタルプラス」向けにも提供を考えるとした。
野坂氏はこのほか、ひかりoneにおける加入相談を無料で受け付ける「おまかせアドバイザー」や機器接続や設定サポートを行なう「かけつけ設定サポート」など、ユーザーに対するサポート施策を紹介。同氏によれば、おまかせアドバイザーは関東地区で50~60名前後の専任スタッフがいるという。
また、「東京電力との提携が完了し、2007年1月には光ネットワーク・カンパニーをKDDIに統合する」と野坂氏は語る。FTTHサービスの加入者数はKDDIが20万、東京電力が35万と統合後は55万件になるといい、「このうち60~70%が戸建てサービスの利用者で、より多くの方に高速PLCモデムや同軸ケーブルモデムを利用して貰いたい」と述べた。
発表会では実機を用いたデモンストレーションも実施。KDDIではドライヤーや掃除機など高速PLCモデムに影響を及ぼす製品併用時でも、通信が可能な点をアピールしていた
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■ URL
ニュースリリース
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2006/1128a/index.html
ひかりone
http://www.hikari-one.com/
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(村松健至)
2006/11/28 13:30
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