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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
アッカ、新潟県魚沼市でのモバイルWiMAX実証実験を公開

 アッカ・ネットワークスは28日、新潟県魚沼市福山新田地区で実施しているIEEE 802.16e(モバイルWiMAX)の実証実験を関係者向けに公開した。


実験では下り3.6Mbpsのスループットを確認

WiMAX基地局が設置されている小学校跡地
 今回の実験は、ルーラルエリア(郊外地域)におけるデジタルディバイドの解消を目的に、固定回線の代替手段として2.5GHz帯のWiMAXをFWA的に運用するための各種検証を行なう計画。実験にあたっては新潟県や魚沼市と協力し、3月上旬より具体的な作業を開始している。

 実験エリアの福山新田地区は、JR浦佐駅から車で1時間ほどかかる山間部の町。携帯電話も電波方式によっては通信エリア外となっているほか、一般世帯からのインターネット接続は、ほぼダイアルアップのみに限定されている地域だという。


 実験では現在は休校となっている小学校の屋上に基地局を設置。そこから直線距離にして280m程度離れた公民館との間をWiMAXで無線接続している。また個人宅での運用も想定し、500mほどの距離にある地元自治会関係者らの2世帯にも指向性アンテナを設置して無線接続を行なっている。


ネットワーク構成図。魚沼市役所のイントラネットとWiMAX基地局は光ファイバーで結ばれている

 バックボーン回線は魚沼市役所のイントラネット網で、WiMAX基地局から同イントラネットへの接続は光ファイバーを用いている。くわえて衛星通信会社「JSAT」の衛星回線もバックアップとして用意している。


校舎屋上に設置されたWiMAX基地局用アンテナ
280mほど離れた公民館とWiMAXで接続

こちらがWiMAX基地局。アルカテル・ルーセント製のものが実験では利用されている
バックアップとして衛星回線の利用も想定している

 公民館の1室にはWiMAXで接続されたクライアントPCが設置されており、実験環境下の数値ながら上り1.2Mbps、下り3.6Mbps前後のスループットを確認しているという。公開実験では450kbpsの映像ストリーミング配信も行なわれたが、コマ落ちや音声のとぎれもなく、スムーズに視聴できる印象を受けた。

 このほかSkypeを用いたVoIP通信や防災無線の放送など、音声系のコンテンツをWiMAX経由で行なうデモンストレーションも実施。一般的なブロードバンド回線と遜色ない品質であることを伺わせた。


デモンストレーションの模様 実験で使われたクライアント向けのWiMAX装置。ザイセル製

公民館の屋外壁面に設置された指向性アンテナ。基地局との通信を担う 映像ストリーミング配信の利用例も紹介された

インフラ面では自治体助成も必要か

新潟県総務管理部情報企画監の松下邦彦氏
 実験公開に先立って、関係者による挨拶も行なわれた。新潟県総務管理部情報企画監の松下邦彦氏は「インターネットは、生活の質を高めるためのインフラとして欠かせないものになっている。しかし新潟県の普及度は全国平均に追いついていない状態だ」と現状を分析。ラスト1マイル問題を解決するための手段として、WiMAXに大きな期待を寄せているという。

 松下氏は「今回の実験で得られたデータを反映させて、無線ブロードバンドの“新潟モデル”とでもいうべき枠組みを作り、新潟県だけでなく全国津々浦々でブロードバンドが利用できるようになれば」と将来を展望している。

 魚沼市広報広聴課課長の井口博氏は、魚沼市長と地域住民の間で定期的に行なわれている対話集会の事例を紹介。「福山新田地区では、直面する問題として第1に雪対策、第2に携帯電話やインターネットをめぐる不都合があげられた。情報通信基盤を整備しないことには若者の地元定着が難しく、都心部との格差も開く一方。ぜひ関係者のご理解・ご協力を」とブロードバンド回線の早期実用化を訴えた。

 アッカ・ネットワークス WiMAX推進室副室長の高津智仁氏は「事業免許獲得の暁には、都心部だけではなく、デジタルディバイド解消のためのインフラとしてもWiMAXを提供していく所存だ。ただし単にインターネット接続だけを提供するだけでは利用してもらえないと思う。防災無線など、生活に密着したものと結びつけていく必要がある」と運用の方向性を示した。

 質疑応答の場面では、WiMAXのサービス開始時期について高津氏が「総務省からの免許付与がおそらく夏頃。アッカとしては年内にどこかの地域から先行的にスタートできれば」と分析。また、サービス開始時にはバンド幅10MHzでの提供が1つの目安になるという。「将来的にはより高速な20MHz幅でのサービス提供も検討したいが、具体的には免許条件しだい」ともしている。

 ただし、山間部におけるWiMAXの実現にはコスト面での課題も多い。高津氏も「今回の実験エリアで、アッカが単独で商用サービスを開始するのは現実的に難しい。地元自治体の助成金などのフォローが必要かもしれない」と明かす。新潟県の松下氏も「民間でインフラを作り、民間で運営する“民設民営”が理想ではある。しかし自治体がインフラ面で助成する“民設民営”という方向性もあるので、今後検討していきたい」と補足した。

【お詫びと訂正】
 初出時、「10Mbpsが目標」と記述しておりましたが、正しくは速度ではなく利用する帯域幅の10MHzが目標です。お詫びして訂正いたします。


魚沼市広報広聴課課長の井口博氏
アッカ・ネットワークス WiMAX推進室副室長の高津智仁氏

関連情報

URL
  アッカ・ネットワークス
  http://www.acca.ne.jp/

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(森田秀一)
2007/03/28 22:19
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