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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
トラフィック増加コストのユーザー負担は「根拠はあるが検討事項」

 総務省は20日、「ネットワークの中立性に関する懇談会」第7回を開催した。懇談会ではブロードバンド市場の健全な競争をテーマとし、ネットワークのコスト負担といった問題について議論が行なわれた。


ネットワークのコスト負担や利用の面から公平性を検討

 この懇談会は、ブロードバンド市場全体の競争ルール整備を目的として開催されたもの。ブロードバンド市場の発展や変化に対して柔軟に対応できる競争ルールの基本的枠組みを構築、市場の透明性や競争ルールの予見可能性を高めることで、ブロードバンド市場の設備投資インセンティブ向上やサービス多様化を実現するとしている。

 懇談会では、従来のネットワークは通信事業者が一元的に管理していたが、現在のブロードバンド市場では各レイヤーごとに多数の事業が展開されていることから、通信事業者間だけでなく各レイヤーでの公正競争も実現すべきと指摘。消費者がネットワークおよび端末を柔軟かつ自由に利用でき、その対価も適正かつ公平であることを競争ルールの原則として定めている。

 ネットワーク公平性の検討は「ネットワークのコスト負担の公平性」「ネットワークの利用の公平性」という2つの観点から検討。コスト面では設備事業者やISP、コンテンツプロバイダーなど関係事業者間の清算の仕組みについて検討を行ない、利用面ではボトルネック性を有する通信事業者の市場支配力濫用防止の在り方に焦点を当てている。


P2Pの積極活用で効率の良いネットワーク構築が重要

 コスト負担に関しては、日本のトラフィックが2年で2倍というペースで増加を続けており、2006年11月に636.6Gbpsに達したダウンロードトラフィック総量は、2008年頃には1Tbpsを超える可能性もあると説明。この理由としては海外の動画サイト視聴増加に加え、ある時間帯では帯域占有率が8割から9割にも達するほどネットワークの混雑が発生。このうち約半分以上がP2Pソフトのトラフィックであり、動画のストリーミング配信は比率にして数%程度だという。また、1%の利用者がバックボーン帯域の約60%を消費するという調査結果も踏まえ、一部のヘビーユーザーによる帯域消費が大きな問題になっているとした。

 ブロードバンド化によるアップロードコンテンツのリッチ化、CGCを組み込んだビジネスモデルによりユーザー発のコンテンツ配信も大きな理由として挙げられた。さらにM2MやSaaSといった企業システムのネットワーク利用も、今後トラフィックを加速的に増加させる可能性があるとした。

 一方でP2Pは、ネットワーク上でコンテンツ配信などを効率的に行なうには必要不可欠な技術でもあり、P2Pはトラフィック増加という側面もあるが、P2Pが本来持っているコンテンツ配信効率化というプラス面に着目すべきと指摘。ファイル交換ソフトによる個人情報漏洩でP2Pそのものへの信頼性が損なわれている面があるが、Skypeに代表される高品質の音声サービス、著作権保護に配意した配信システムのBittorrentなども登場していることから、P2Pを積極的に活用しつつ、多様な配信技術を柔軟に組み合わせたネットワーク構築が適当とした。


ヘビーユーザーのコスト負担は「合理的根拠はある」が要検討

 コスト負担の対象に関しては、それぞれの事業者間やユーザーと事業者などのプレーヤーごとに分析。コンテンツプロバイダーと通信事業者では、コンテンツプロバイダーがリッチコンテンツを配信することで通信事業者の設備増強が必要になることから、コンテンツプロバイダーからの追加料金徴収に関する議論があるとした。

 また、上位ISPと下位ISPについても、大量のトラフィックが発生した場合に上位ISPは追加料金をコンテンツプロバイダーや下位ISPから徴収できるが、下位ISPはコンテンツプロバイダーに対して直接料金を徴収できず、定額料金の普及やISP間の料金競争激化によって値上げも困難な面があると説明。基本的には競争原理を尊重しつつ、競争原理を補完する措置の在り方も検討が必要だとした。

 ユーザーへの追加課金も議論の対象となった。帯域を占有している一部のヘビーユーザーに関しては、その他のライトユーザーよりも受益度が高く設備も利用していることで、利用者間の不公平性が拡大する可能性があると指摘。ヘビーユーザーか追加料金を徴収すること自体には合理的な根拠があるとした。

 一方で、ヘビーユーザーに対してのみ設備増強を行なうことでライトユーザーのサービス品質が低下する可能性も考えられると指摘。追加課金の是非に関して当面は利用者保護の観点から個別判断を適当とした上で、最終的な意見の整理を図る必要があるとした。


帯域制御の運用に関するガイドラインの策定が必要

 また、ヘビーユーザーに対する帯域制御の導入に関しては、一部ヘビーユーザーによって発生する全体の通信速度低下を防止することは社会的に許容されるものの、事業者が設備増強で対応すべきトラフィックを帯域制御で対処してしまう可能性もあると指摘。帯域制御の対象となるユーザーやアプリケーションの客観的基準が必要とした。

 これを踏まえ、帯域制御の運用基準について関係者との検討の場を設け、速やかに帯域制御に関するガイドラインを取りまとめた上で適用することが望ましいとコメント。帯域制御の運用方針をISPが契約約款等に記載する際に求められる情報の範囲、運用に際しての基本的要件、法制的な整理などの明確化が重要としつつ、個別のトラフィックをチェックするという帯域制御と「通信の秘密」との関係も慎重に検討すべきとした。

 ネットワーク利用の観点からは、NTTグループの「NGN」に代表される、通信事業者が帯域制御などを統合的に管理する次世代ネットワークと、さまざまな事業者が連携するインターネットという2つのIPネットワークが相互補完的に発展すべきであると説明。一方でボトルネック設備を有する独占的事業者が市場支配力を濫用すると健全なブロードバンド市場の発展が阻害される可能性もあるため、ボトルネック設備を持つ事業者はネットワークのオープン化を図るとともに、指定電気通信設備制度そのものの具体的な見直しに着手すべきとした。


関連情報

URL
  ネットワークの中立性に関する懇談会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/network_churitsu/index.html


(甲斐祐樹)
2007/06/21 13:42
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