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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
So-net、PlaceEngineなどソニーの要素技術を用いた新会社の説明会

 ソネットエンタテインメント(So-net)は10日、ソニーの要素技術を用いた新規事業会社である「クウジット株式会社」「モーションポートレート株式会社」に関する事業説明会を開催した。

 クウジットとモーションポートレートは、どちらも7月3日に設立されたSo-netの子会社。クウジットでは無線LANを利用して現在位置を検索する「PlaceEngine」技術を、モーションポートレートでは静止画からアニメーションを作成できる「MotionPortrait」技術を活用し、それぞれビジネスを展開する。

 クウジットの資本金は2,500万円で、代表取締役にはCSLの末吉隆彦氏が就任するほか、CSLインタラクションラボラトリ室長と東京大学大学院情報学環教授を兼任する暦本純一氏が特別顧問を務める。モーションポートレートの資本金は1億円で、代表取締役には藤田純一氏が就任する。


GPSの届かない屋内でも位置検出が可能。約1秒で位置を検出

クウジット特別顧問の暦本純一氏
 暦本氏は、クウジットの中心技術であるPlaceEngine(PE)の技術概要を説明。無線での位置検索技術としては衛星を利用したGPSが代表的だが、屋外での利用に限られるGPSに対し、無線LANを利用するPEではビルの階数まで推定できるとのメリットを示した。位置の認識速度も、衛星補足に10秒程度を要するGPSに比べて、Wi-Fiであれば1秒程度で終了するなど速度面でも優位であり、無線LAN搭載機器であれば原理的にはどんな製品にでも搭載できる点も大きな特徴とした。

 具体的な位置の検出は、周囲にある無線LANアクセスポイントのIDとその電波強度から場所を割り出す仕組み。無線LANアクセスポイントが1つでもあれば基本的には位置が検出できるが、アクセスポイントの数が増えるほど位置検索の精度を高められるという。

 すでに国内17の政令指定都市部でPEのデータベースが構築されているほか、データベースにないアクセスポイント情報も、ユーザーが任意にアップロード可能。暦本氏はGPSとPEの比較データを示し、「非常に良い性能のGPSに比べれば精度は落ちるが、ショッピングモールなどの屋内でも位置を検索できる点で総合的な精度は高い」とした。

 PEを搭載した製品事例としては、インターネット接続を前提としたWindows/Mac OS/Windows Mobile向けクライアントソフトに加え、ローカルデータベースを内蔵したインターネット接続が不要な専用機器OEMの2種類を紹介。専用機器向けにはPSPの地図ソフト「みんなの地図2」に搭載されているほか、無線LANを搭載したソニー製デジタルカメラ「DSC-G1」で、撮影した画像に位置情報を埋め込むといった実験も行なっているという。なお、DSC-G1向けのPE機能は現時点で一般公開されていない。


PlaceEngineの概要 PlaceEngineで推定した17政令指定都市のアクセスポイント位置

GPSとPlaceEngineの精度比較。屋内ではPlaceEngineが優位 PSP向け地図ソフトでPlaceEngineを採用

PC版で位置情報を取得 Skypeのコンタクトリスト間で距離を計測

DSC-G1で位置情報を取得できる

「あらゆる無線LAN製品に対応したい」。ニンテンドーDSも動作確認済み

クウジット代表取締役の末吉隆彦氏
 クウジット代表取締役の末吉氏は、同社のビジネス展開について説明。「位置情報取得という技術はさまざまな会社とマッシュアップできる」とし、ゲームやモバイル機器、Wi-Fi搭載機器など幅広いデバイスを対象にビジネスを展開していくとした。

 Webサービスでの連携では、駅前探険倶楽部の「駅探ラボ」がPEを用いた駅探路線図を提供しているほか、7月10日からはNTTレゾナントの「gooラボ」でもPEを用いたサービスを開始。デバイスではPSP向けに「みんなの地図2」が発売済みなほか、8月には「みんなの地図2 地域版」、エディアの「プロアトラス トラベルガイド」が発売される。

 今後はソニー製品だけでなく幅広い機器へPEを展開していく方針。DSC-G1で実験中のデジタルカメラに加え、音楽プレーヤーやコミュニケーションサービスとの組み合わせも検討を進めており、すでにSkypeではコンタクト同士の距離を測定するサービスが提供されている。

 機器だけでなく駅構内や複合施設、ビル建物など「GPSが届かないような場所でもフロアごと細かいナビゲーションやイベント企画が可能になる」(末吉氏)。比較的安価である無線LANのアクセスポイントを細かく設置することで適切なガイドが実現でき、特定の店舗の前でのみ広告を配信する、といった位置特定型の広告配信も提供できるとした。

 クウジットはソニーグループのSo-net子会社ではあるが、提供する製品はソニーに限らないという。現時点ではソニーCSLのプロジェクトとして進めていた部分が多いためにソニー製品の対応が先行するが、暦本氏は、「ソニー以外の製品でもPEを搭載するためのスピンアウト」と説明。すでにニンテンドーDSでもPEの動作を確認するなど、「無線LANを搭載している製品であれば幅広く対応したい」(末吉氏)方針とした。


機器搭載の想定事例 ショッピングセンターなど屋内施設での想定事例

1枚の顔写真からアニメーションを作成する「MotionPortrait」

MortionPortraitの仕組み
 モーションポートレートの技術「MotionPortrait」は、正面からの顔写真1枚から自動的に顔を認識して3次元モデルを生成、顔の表情をアニメーション表示できるというもの。まばたきや笑顔、視線の変化なども自動で作成されるほか、メガネを装着する、背景や衣装を変更する、髪型を変更するといったカスタマイズも可能だという。

 対象となる静止画は人物だけでなく、イラストや動物でもアニメーション化が可能。説明会では実際にMotionPortraitを利用したアニメーション作成のデモが披露されていた。

 モーションポートレートでは、同技術を利用したアバターメール、携帯電話の待受画面に表示する「着顔」、壁紙といったサービスを展開。また、MotionPortraitで作成したキャラクターによるブログパーツやブログのRSS読み上げ機能、MotionPortraitを利用したキャラクター開発といったビジネスも展開例として挙げられた。


ソリューションの想定例 モバイル向けの販売例

左の静止画から表情のアニメーションを作成 動物やイラストでもアニメーションを作成できる

関連情報

URL
  ニュースリリース(クウジット、6/20)
  http://ir.eol.co.jp/EIR/3789?task=download&download_category=tanshin&id=468664&a=b.pdf
  ニュースリリース(モーションポートレート、6/20)
  http://ir.eol.co.jp/EIR/3789?task=download&download_category=tanshin&id=468661&a

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(甲斐祐樹)
2007/07/10 15:15
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