ドワンゴとニワンゴは10日、動画共有サービス「ニコニコ動画(RC)」を機能強化したRC2版を10日18時に開始すると発表した。合わせて、吉本興業グループやエイベックス・エンタテインメントら8社が、ニコニコ動画に対して権利を許諾して動画を提供するパートナー企業となることを発表した。
■ ニコニコ動画専用スクリプトの実装やインターフェイス改善を実施
|
「ニコニコ動画(RC2)」トップ画面
|
ニワンゴによれば、ニコニコ動画の本格的なバージョンアップは今回の「ニコニコ動画(RC2)」が初めて。これにより、従来のニコニコ動画、それ以前にドワンゴが開発していた「パケラジ2」からの構想である「ネット上で第二の人生を送る」ことが実現できると説明し、この構想を「ニコンドライフ構想」と呼んだ。
新機能は、10月10日以降に順次実装を予定。ニコニコ動画専用スクリプト「NICOScript(ニコスクリプト)」を新たに開発、RC2版より導入した。このNICOScriptを利用した投稿者専用のコメント機能をはじめ、動画視聴時にコメント削除や特定ワードを非表示にできる「NG関係機能」を追加。また、カテゴリ別トップページの新設やマイリストの改善、動画視聴画面の上部に時報や緊急ニュースなどをリアルタイム通知する「ニコニコニュース」を実装する。このほか、ある時刻にニコニコ動画で動画を視聴する全ユーザーにリアルタイム情報を同時通知する「ニコ割(ニコニコ割り込み)」も用意するという。
加えて、ヴィジュアリストの手塚眞氏を審査委員長に迎えた「国際ニコニコ映画祭」を開催。同映画祭では、ニコニコ動画をクリエイター活躍の場として提供し、ニコニコ動画上で制作した動画をユーザーを交えて審査することで、新たな映像文化の創出、発展を目指すとしている。
また、海外からのアクセスも増加していることから、第1弾としてニコニコ動画の台湾版を10月18日に開始する。台湾版では、説明文やカテゴリタグを繁体字で表示するほか、日本と台湾のコメントは別個のスレッドに表示するという。
|
|
|
投稿者専用コメントでは表示期間などが設定できる
|
NICOScriptで窓や投票、異なる動画への切替が可能になる
|
カテゴリ別のトップページも追加
|
|
|
|
NGワード設定や投稿者が特定IDの書き込みを禁止できるように
|
時報や緊急ニュースなどをリアルタイム通知する「ニコニコニュース」。広告エリアには活用しない方針
|
ニコ割では、再生中の動画をいったん停止してメッセージ配信を行なう
|
■ 登録会員数は342万人。公式動画配信など権利者との取り組み強化も
|
ニワンゴの杉本氏
|
ニワンゴによれば、10月9日時点の登録会員数は342万人で、月額525円の有料会員サービス「ニコニコプレミアム会員」は10万3,000人を突破したという。また、1日の平均利用状況は、PVが約5,500万PV、ユニークユーザー数が120万人で、動画再生回数は2,200万回、コメント回数は320万回、平均滞在時間は約1時間だとした(2007年9月時点)。
ニワンゴの杉本誠司 代表取締役副社長は、YouTubeと比較してニコニコ動画の平均利用時間が3倍近くなっている点やブログの引用でも上回っている点を紹介。その上で「ランキング上位にアクセスが集中するYouTubeとは利用のされ方が異なるようだ」と述べた。
ビジネスモデルとしては、有料課金サービスによる課金、「ニコニコ市場」によるEC、バナー広告掲載などによる広告売上の3つが収益の柱となる。このうち、広告モデルは7月の開始から3カ月目で累計1,800万円の売上げを達成したという。なお、事業収支は現時点で赤字で、ドワンゴとニワンゴでは来期に単月で黒字化を目指すとしている。
ニワンゴではまた、ニコニコ動画と動画投稿サービス「SMILEVIDEO」における権利保護の取り組みを10月1日に発表済み。同取り組みでは、監視・削除体制や権利侵害プログラム、利用者に向けた啓蒙活動の強化を今後の方針として掲げている。
会見では加えて、権利者(コンテンツホルダー)との取り組みを強化するため、権利者から提供を受けた映像を視聴できる公式動画配信企画を実施し、新たなビジネスモデルの検討を進めるとした。現時点の提携パートナーは、吉本興業グループやエイベックス・エンタテインメント、ランティス、ティーエフエム・インタラクティブなど8社で、サービス開始時期や内容は順次発表を行なっていく。
|
|
|
YouTubeとの動画再生ランキングの比較
|
権利者と協力した公式動画配信も企画。2次利用を前提にした映像配信も検討する
|
提携パートナー8社以外の企業とも話し合いを進めているという
|
■ 西村氏「ユーザーも権利者もニコニコできるサービスにしたい」
|
ニワンゴの西村氏
|
|
手塚眞氏。「審査委員を引き受けるのは今回が初めて」だという
|
ニコニコ動画(RC2)の新機能を紹介したニワンゴの西村博之 取締役は、「ニコニコ動画はYouTubeに対抗するためのサービスではなく、新しい“生活の場”を創るサービスにしたい」とコメント。「ネットを使うことで楽しい、そこにいたいという思いを重視する」と述べ、エンターテイメント要素を内包したサービス群を「ニコニコシリーズ」として展開していく考えを示した。
また、2007年12月をめどに「ニコニコ動画(RC2) サービス・パック1」を提供する考えだという。その際には新たに実装した機能の強化に加え、株式会社インターネットと共同開発中の動画編集ソフトを提供するとした。
なお、違法に投稿された著作物の削除対応は、現時点では原則公開後に行なわれている。杉山氏は「当社単独でも目視などの対応をしているが、権利者と協議して問題点をリストアップを行なっている」と説明。「利用者に対して問題意識を提起するための場も必要だと考えている。今後、サービス拡張を今後進める面で見ても、これらの対応をルール化して楽しめるサービスにする必要がある」と述べた。
西村氏は、「ニコニコ動画では、前提として動画の権利は投稿者が持っていると考えている」と発言。「ニコニコ動画はユーザーの存在によって成り立っているサービスで、この考え方は今後も継続していきたい」と説明した。そして、「現状のニコニコ動画はユーザーがニコニコしていて、資金を出しているドワンゴもニコニコしているようだ」と語り、「権利者もニコニコできるようになれば、それで良いんじゃないかと個人的に思っている」と付け加えた。
|
|
|
ニコニコ動画を軸にシリーズ展開を図る。図内には「ニコニコ音楽」という名称も
|
サービス・パック1で提供予定の機能。下部にあるのは動画編集ソフトの開発画面
|
発表会には抽選で招待されたプレミアム会員が多数詰めかけ、最終的には立ち見がでるほどだった
|
■ URL
ニコニコ動画
http://www.nicovideo.jp/
ニワンゴ
http://niwango.jp/
ドワンゴ
http://dwango.jp/
ニュースリリース(PDF)
http://info.dwango.co.jp/pdf/news/group/071010.pdf
■ 関連記事
・ ニコニコ動画が権利保護の取り組みを発表。「権利者との対話」を強化
・ 「ニコニコ動画(RC)」スタート。プレミアム会員の登録も開始
(村松健至)
2007/10/10 18:31
|