アドビ システムズは4日、Flashコンテンツを配信するためのソフトウェア「Adobe Flash Media Server 3」正式版に関する説明会を開催した。合わせて、「Adobe Flash Player 9 Update 3」正式版の提供を4日に開始すると発表した。
■ H.264対応に加え、保護機能やパフォーマンス向上。低価格化も実施
|
H.264とHE-AACコーデックに新たに対応
|
「Adobe Flash Media Server 3(FMS3)」は、ビデオコーデックとしてH.264を、オーディオコーデックとしてHE-AACを新たにサポートした同社コンテンツ配信ソフトの最新版。これにより、各フォーマットで作成したコンテンツの直接配信が可能になった。また、1080pのHD画質での配信も可能。いずれも再生には、同時発表のプレーヤー「Adobe Flash Player 9 Update 3」を利用する。
コンテンツ保護機能では、現行版でサポートする独自プロトコルに暗号化を追加した「RTMP(Real Time Messaging Protocol Enhanced)」を採用。同社では、より安全にコンテンツをストリーミング配信できるとしている。また、SWFファイルを検証する機能も用意し、オリジナル素材から改竄された映像、ハッシュが正規版と1bitでも異なる場合には映像の再生ができないという。
また、前バージョンと比較して同時接続ストリーム数が200%増加するなどのパフォーマンス向上施策も実施。同時ストリーム数の増加によって、コストパフォーマンスの向上が期待できるほか、従来差があったWindows版とLinux版の双方でパフォーマンス改善が実現できたとしている。
このほか、携帯電話向けプレーヤー「Adobe Flash Lite 3」とも連携。FMS3が配信するコンテンツのダウンロード再生に加え、ストリーミング再生にも対応。アドビでは特に、ストリーミング再生に対応することで、携帯電話側のメモリ領域を消費せずにスムーズな再生が可能になると説明している。
なお、NTTドコモの「905iシリーズ」はAdobe Flash Lite 3を実装しているが、ドコモが独自に改良を加えているため、Flash Videoの再生には対応しないという。アドビでは、再生可能端末の登場時期について、国内キャリアから2008年内に登場する見込みだと述べた。
|
|
著作権保護施策も実施
|
Flash Lite 3でFlash Videoのストリーミング再生デモも行なわれた
|
FMS3の製品構成は、従来の1モデル複数エディションから、2モデルのシンプルな構成へと刷新。一方向のストリーミングサーバーに特化した「Adobe Flash Media Streaming Sever 3」と、双方向を持たせオリジン/エッジサーバーの構築が可能な「Adobe Flash Media Interactive Sever 3」を用意し、どちらの場合でも最大同時接続数や帯域制限に上限はない。
製品価格は、「Streaming Sever 3」が13万5,870円、「Interactive Sever 3」が61万4,200円。現行モデル「Flash Media Sever 2(FMS2)」有償版の価格54万6,000円~546万円と比較して、低価格が図られた。また、アップグレードパッケージも用意している。
|
|
「Adobe Flash Media Streaming Sever 3」概要
|
「Adobe Flash Media Interactive Sever 3」は、Streaming Sever 3を機能強化したバージョン
|
■ 「Flash Player 9」最新版を4日に公開。プレーヤーソフトは来年公開
|
Flash Player 9 Update 3の機能強化点
|
「Adobe Flash Player 9 Update 3(コードネーム:Moviestar)」は、Windows版とMac版、Linux版を同時に公開。今後はSolaris版のリリースも予定するという。
同バージョンでは、コーデックとしてH.264とHE-AACに対応。また、IPv6による通信にも対応した。パフォーマンス向上も図られ、最大4つのマルチコアプロセッサへのサポート、フルスクリーンモード時のハードウェアアクセラレーション対応、On2 VP6コーデックの改善なども実施された。
OS別では、Mac OS X Leopardへ対応するほか、Linuxでのフルスクリーンモードをサポート。加えて、アクセシビリティ施策として、マイクロソフトの「Microsoft Active Accessibility」APIにも対応した。
|
|
H.264コンテンツの再生例
|
12月後半には「TOKYO VIDEO MAGAZINE」正式版が公開される
|
|
Adobe Media Player
|
|
アドビ システムズのイルグ社長
|
説明会ではこのほか、現在開発を進めているFlashコンテンツのプレーヤーソフト「Adobe Media Player」も紹介された。同ソフトは「Adobe Air」ベースで開発中の無償ソフトウェアで、RSSやSMILを使った映像配信などが可能になっている。
配信形式はダウンロード、P2P、ストリーミングをサポート。説明会では詳細は明かされなかったが、Windows Media DRMに相当するコンテンツ保護機能も盛り込む考えだという。
同ソフトは現在、パブリックベータが提供されている。2007年12月にバージョン2が登場する予定で、同バージョンでH.264への対応が実施される。正式バージョンは2008年2月に英語版がリリース予定で、日本版は2カ月から3カ月後に投入する考えだという。
アドビ システムズのギャレット イルグ代表取締役社長は、「現在、ビデオコンテンツがインターネットのキラーアプリケーションと目されている」とコメント。Flashの特徴として、ユビキタス性やクロスプラットフォーム性、高解像度対応、著作権保護機能を挙げ、「特に日本市場では著作権保護に対するニーズが高く、当社では保護対策にも力を入れている」とした。
今回発表したサーバーソフト2製品について、「当社ソリューションに新しい付加価値を提供するもの」と発言。「日本ではブロードバンド環境が進んでおり、当社が起こそうとしている動画に対する革新が、よりスピーディーにインパクトをもって実現できるのではないか」と抱負を語った。
|
|
説明会では米国市場のFlash動向も紹介。画面はプライムタイムのテレビ番組をFlash配信している例
|
Flash Video Streaming Serviceのパートナー企業。日本はJストリーム、アカマイ、IIJの3社
|
■ URL
アドビ システムズ
http://www.adobe.com/jp/
関連記事:Adobe、Flash PlayerでH.264をサポート[INTERNET Watch]
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/08/21/16653.html
関連記事:アドビの「Flash Lite 3」、ドコモとノキアで採用[ケータイ Watch]
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/36977.html
■ 関連記事
・ アドビ、Flashサーバーソフトの新機能や新Flashプレーヤー仕様を公開
(村松健至)
2007/12/04 18:30
|