マイクロソフトは、メールやWebページ、ワークスペース、連絡先といったサービスを統合した「Microsoft Office Live Small Business」日本語版を3月6日に開始した。小規模事業所が対象だが、個人ユーザーもWindows Live IDを取得すれば無料で利用できる。
■ メールやワークスペース、連絡帳などを統合して無料で提供
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ベータプログラムからの改定ポイント
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Office Live Small Businessは、2006年12月からベータプログラムとして提供していた「Office Live」の名称を変更して正式サービス化したもの。ベータプログラムは日本国内で約24,000社が参加したほか、日本に先行して正式版を提供している米国や英国など全世界で約50万の企業から寄せられたフィードバックを反映し、機能強化や登録プロセスの見直し、パフォーマンス向上などが図られている。
ベータプログラムでは無料で利用できる「Basics」のほか、今後有料化を予定する拡張機能として「Essential」「Premium」という3つのラインナップを用意していたが、Office Live Small Businessではこのラインナップを1つに統合し、当初有料化予定だったサービスを無料で提供。ドメイン登録やディスク容量の拡張、ユーザー追加を希望する場合に追加料金が必要となる仕組みに改められた。
ユーザーには「xxx.yyy.officelive.com(xxxは任意の文字列、yyyは複数候補から選択)」などといったドメインのほか、容量5GBのメールアカウント100個、容量500MBのホームページスペース、50MBの専用ワークスペースを提供。ワークスペースを利用するユーザーアカウントも無料で5名分提供するほか、Webサイトデザインツール、ドキュメント管理機能、Outlook連携機能、顧客管理機能なども提供する。
管理画面に広告枠を設置することで、これら基本機能の無料化を実現。広告の配信はマイクロソフト デジタル アドバタイジング ソリューションズが担当し、個人事業主に向けたターゲティング広告も実施。メールサービスもHotmail準拠のために広告が挿入される。
独自ドメインにも対応しており、初年度は無料、2年目以降は年額2,020円で利用できるこのほか、有償オプションとしてストレージ容量の追加やユーザーアカウント追加も可能。料金は容量追加がホームページ、ワークスペースともに1GBで月額670円、2GBで1,210円、5GBで2,020円。メールは広告非表示オプションが月額2,690円で、ユーザーアカウントは10名分が月額2,020円、25名分が月額6,740円、50名分が月額12,140円、75名分が月額17,540円。
対応OSはWindows Vista/XP/Server 2003で、Windows MobileはOffice Live Mail機能のみサポート。ブラウザはInternet Explorer 6以降に加え、Firefox 2.0も対応する。登録ユーザーには30日間の無料電話サポートに加え、24時間以内に回答する無料メールサポート、オンラインヘルプも提供。紙での情報が欲しいというニーズに応えるために、Webサイトから申し込んだユーザーに対して無償でスターターキットを送付する試みも行なう。
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ベータユーザーのフィードバックを反映
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機能一覧
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無料のユーザーサポートも
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スターターキットも無償配布
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■ HTMLの知識無しで使えるホームページ作成機能
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マイクロソフト 業務執行役員 インフォメーションワーカービジネス本部の横井伸好本部長
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マイクロソフト 業務執行役員 インフォメーションワーカービジネス本部の横井伸好本部長は、マイクロソフトが掲げる「ソフトウェア+サービス」戦略を「ソフトの利便性とサービスの良さを組み合わせることでさらなる利便性と柔軟性を生むのがソフトウェア+サービスの概念」と説明。一方で、「単にブラウザとサービスを組み合わせるだけではなく、クライアントとソフトウェアとサービスが三位一体となることで、ユーザーに満足いただけるコンピューティングの世界が提供できる」とした。
マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部の鍵山仁一シニアプロダクトマネージャは、Office Live Small Businessの機能をデモを交えながら紹介。社外向けの機能としてホームページとメール、社内向けの機能としてワークスペースとビジネスツール各種と2つに分類した上で説明を進めた。
鍵山氏は、「今回の機能追加は我々の推測ではなく、すべてユーザーからのフィードバックを受けて改善したもの」とコメント。その一例として独自ドメインを挙げ、「ユーザーからはドメイン管理が煩雑、個人情報が世界中に知られるとの理由で、独自ドメインを好まない意見が多かった」ことからマイクロソフトとしてのドメイン提供を実施したと説明。「必要であればマイクロソフトのドメインから独自ドメインへ移行できる」と補足した。
ログイン後のホーム画面も「シンプルすぎて何をしていいかわからない」との声を受け、目的ベースで作業を開始できるようメニューを充実。ホームページ作成ツールも「Wordの経験があればタグの知識が無くても使える」とし、文字の編集や画像の追加、スライドショーの作成などをデモ。Windows Live スペースのブログ情報を取り込む機能、メールフォーム作成機能なども紹介した。
メールサービスの仕様はHotmailに準じるが、Outlookと連携する「Outlook Connector」を無償で提供。Office Live MailのメッセージをPCのOutlookで管理できる。ただし、OutlookのメールをHotmail側で管理するといった同期機能は備えていない。
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Office Live Small Businessのサービス領域
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ホームページとメールの機能概要
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ワークスペースとビジネスツールの機能概要
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Office Live Small Businessのホーム画面
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Word感覚で利用できるホームページ作成機能
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メールフォームも作成可能
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Windows Live Hotmailベースのメール機能
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ホームページ作成機能のフォームと連携できる
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相手先とのやり取りを表示するCRM機能も搭載
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■ 日本の文化を考慮して設計したグループウェアを提供
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マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部の鍵山仁一シニアプロダクトマネージャ
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社内向けの機能では連絡先機能「コンタクトマネージャ」を始めに紹介。コンタクトマネージャでは相手とのやり取りを時系列で表示する機能を持ち、「単なる名簿ではなくCRMの基本的な要素も盛り込んでいる」。また、「社内で共有化したいデータとしては顧客情報が最も高いニーズだが、日本で顧客情報を共有しているのはわずか2.6%というデータもある」とし、コンタクトマネージャの活用で業務改善が図れるとした。
また、ベータ機能として「E-mail マーケティング」も提供。これはコンタクトマネージャのデータを用いてダイレクトメールを送信できる機能で、ダイレクトメールはWebサイトのデザインツールを利用できる。このサービスは一定の送信数を超えると1通ごと課金する仕組みになるという。
ワークスペースはデータの保存機能だけでなく、日本の企業文化を考慮して設計したというグループウェア「GroupBoard WorkSpace 3.0」を搭載。行き先や掲示板や電話メモ、回覧板、タイムカードといった機能を備える。プロジェクトごとにワークスペースを作成することも可能で、社外のユーザーに対してWindows Live IDを指定してワークスペースの内容を公開することもできる。
今後の展開としては、6月中旬にもフィードバックを踏まえた機能のブラッシュアップやバグフィクスをリリース予定。また、ベータプログラムのユーザーは5月31日で無料期間を終了し、6月1日より有料部分に該当する機能への課金を開始するが、独自ドメインについてはサービスを継続し続ける限り、マイクロソフトが更新料を永久に負担するという。
「Small Business」というサービス名称ではあるが個人ユーザーも利用対象で、「個人事業主だけでなく趣味のために利用していただいても構わない」。また、違法な利用に関しては「Webサイトは転送データをランダムにスキャンし、悪質な情報を発見した場合にはセキュリティチームが該当ユーザーのサイトを確認して対応する」と説明。一方、メールに関してはHotmailの仕様に準じており、「世界中で10万近く存在するダミーアカウントを使ってスパムのメールをチェック」しており、メールデータの検閲は行なわないとした。
米国でベータテストを開始したオンラインでのオフィス文書共有サービス「Office Live Workspace」についても言及。「こちらは個人向けのサービスで、日本語版に関しては現在のところ未定だが、2008年中には何らかの案内ができるのではないか」とした。
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ワークスペース。予定表や掲示板、ドキュメント共有などが可能
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スケジュールや設備管理が可能
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プロジェクトごとワークスペースを管理できる
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■ URL
ニュースリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3377
関連記事:MS、Office文書をネットで共有できる「Office Live Workspace」ベータ版[INTERNET Watch]
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/03/05/18681.html
■ 関連記事
・ MS、Office連携が可能な「Office Live」ベータ版。個人利用にも対応
(甲斐祐樹)
2008/03/06 15:08
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