マイクロソフトは10日、Windows LiveやMSNなどのオンラインサービス事業戦略に関する説明会を開催した。会見では、動画共有サービス「Soapbox」を3月12日に開始、MSNトップページを4月にリニューアルすることが発表された。
■ 笹本氏「オンライン事業は大きな変革期に」。Yahoo!買収は双方にメリット
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マイクロソフトの笹本氏
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オンラインサービス事業部長に2007年2月に就任した笹本裕 執行役 常務は、「この1年でオンライン事業は大きな変革期に入ったと実感している」とコメント。それまでマイクロソフトが保有する資産・サービスを活用してユーザーを獲得する方針から、外に対してもWindows Liveサービスや広告配信プラットフォームの供給して獲得する姿勢が出てきたと紹介した。
そして、2008年に入って米Microsoftが米Yahoo!とノルウェーのFast Search&Transferに買収を提案。笹本氏はYahoo!に対する買収提案について「約4兆7,000億円という規模で提案を差し上げているのは、Yahoo!が持つユーザー資産が大きいからだと考えている」と語り、「広告配信などのソフトウェア資産も保有しており、両社の融合は双方にメリットが出る」とした。
Yahoo!の買収は現時点で決まったわけではないが、「我々の戦略はYahoo!と補完関係にあるものとして進めている」と発言。また、「仮に買収が失敗した場合でも、その投資をオンラインビジネスに投じていくのには変わらない」と説明した。なお、日本法人のヤフーはソフトバンクが41.1%の株式を持つ筆頭株主となるため、笹本氏は「(買収完了時には)日本独自戦略を策定する必要があるが、現時点では何も言えない」と語った。
■ 「Soapbox」の国内提供を12日に開始。MSNトップも4月にリニューアル
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MSNビデオを2月にリニューアル
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ポータルサイト「MSN」に関しては、「毎日使いたくなるサービスへ」をコンセプトにリニューアルを順次実施。オンラインサービス事業部 MSNメディアネットワーク エグゼクティブプロデューサーのショーン チュー(Sean Chu)氏は、2007年10月に開始したニュースサイト「MSN産経ニュース」が順調に推移している点を改めて説明した。
2008年2月5日には動画配信サービス「MSNビデオ」のリニューアルを実施し、画面サイズの拡張、Windows Live メッセンジャーと連携によるチャットなどのコミュニティ機能を強化。また、チュー氏は「MSNビデオとSoapbox、他社サービスの動画をシームレスに検索できる機能は目玉の1つ」と語った。このほか、視聴時に挿入する広告に関しては「冒頭15秒の形から、3分間に1回入る方法に変更になる」とした。
動画共有サービス「Soapbox」は3月12日に公開予定で、米国などと同様にMSNビデオ内で提供が行なわれる。ユーザー参加型企画も実施する考えで、短編映画祭「Short Shorts Film Festival」、お笑い芸人「くりぃむしちゅー」の有田哲平が監修するコンテンツを順次実施していく。なお、Soapboxは開始時点でFlashベースで提供が行なわれるが、今後はマイクロソフトの「Silverlight」も特別コンテンツなどで実装する予定という。
その上で、MSNトップページ自体のレイアウトを4月に刷新。Hotmailやメッセンジャー、ニュース、天気といったサービス・コンテンツを上部や中央に配置したほか、MSNユーザーで関心の高いというファイナンス情報も左バー上方に配置した。チュー氏は「リニューアルに向けてオフラインイベントも積極的に行ない、変化するMSNを消費者にアピールしていきたい」と抱負を語るとともに、「次世代に向けたポータルへと順次リニューアルする」と継続して改良を実施する考えも示した。
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Soapboxを3月12日に開始する
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4月にはMSNトップページのリニューアルも予定
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MSNビデオの動画検索機能も強化された
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■ 「Windows Live SkyDrive」が好調。米国に次ぐPV・UU数を獲得
「Windows Live」サービスについては、オンラインサービス事業部 プロダクトマネージメントグループ Windows Liveチーム ディレクターの小野田哲也氏が状況を説明。「普及拡大戦略として、OEMベンダーや教育、エンターテイメント分野、通信事業者とのパートナーシップ」を挙げ、「MSN以外からのWindows Liveユーザーの獲得を強化していく」という。通信事業者とのパートナーシップについては、「近々に包括的なパートナーシップを結ぶ予定だ」と予告した。
オンラインストレージ「Windows Live SkyDrive」は、「2月22日に正式サービスを38カ国で開始したが、日本でも予想以上の利用状況」だという。さらに「PVとUUは米国に次ぐ数値になっている」と付け加えた。
また、Windows Live メッセンジャーと連携して、メッセンジャーの利用方法を教えてくれるWindows Live Agents「まいこ」は、「10万人を超える登録がある」と好調さをアピール。1セッションにおけるメッセージ数は通常の7倍で、「人間同士の会話よりも長い」と述べた。なお、国内チャットトラフィックにおける「まいこ」の割合は0.4%だとした。
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Windows Liveサービスの戦略。MSNとの連携に加えて、パートナーシップも実施する
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分野ごとのパートナーシップ状況
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「まいこ」の利用状況。Agentsサービスは広告活用も検討する
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マイクロソフトにおける広告販売状況に関しては、2008年度 上半期の数値で前年同期から45%の増加。MSNビデオ向けの広告も28%増加したという。デジタル アドバタイジング ソリューションズ セールス&プラニング 業務執行役員の福徳俊弘氏は、「ナショナルクライアントによる出稿が拡大したのも特徴で、2007年度 上半期の34%から本上半期は60%へと拡大した」と述べた。
新商品については、「WindowsMedia.com」や「Office Live Small Business」向けの広告販売を順次開始。また、米Microsoftが2007年10月に株式を取得したSNS「Facebook」についても、「日本向けに広告販売を開始する予定である」とした。このほか、Windows VistaのサイドバーガジェットやWindows Live Agents、Silverlightを活用した広告ソリューションの展開も紹介された。
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広告分野の新商品群
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買収したaQuantiveの技術も活用していく
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今後のスケジュール。Xbox 360のほか、ゲーム関連への展開も予定されている
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■ 笹本氏「オンラインサービスで多数の提携を達成」。今後は投資も強化
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マイクロソフトにおけるオンライン戦略の状況
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笹本氏は、「就任1年目は、『基本に立ち戻ること』『次のステージに向けた事業開発』『長期戦略の策定』の3つを考え、行動してきた」と振り返る。1つ目に関しては「MSNを媒体メディアとして如何に感動して貰えるかを考え、基礎から作り直した。その結果、当初予算を達成し、ユーザー数も拡大した」と述べた。また、事業開発については「日本におけるオンラインサービスで多数の提携を達成しており、これほどまでの成果を出した年は今まで無かったのではないか」とした。
そして最後に長期戦略を挙げ、「2009年度、10年度での戦略実行で非常に重要な部分」と強調。「この実現には米国本社との信頼関係が重要になるが、この関係も強化できている」とした上で、「Microsoftにとって今後日本が重要なポジションになるだろう」と語り、下半期にかけて日本でも積極的に投資活動を行なう考えを示した。
■ URL
マイクロソフト
http://www.microsoft.com/ja/jp/default.aspx
MSN
http://jp.msn.com/
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(村松健至)
2008/03/10 16:55
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