ジュピターテレコム(J:COM)は12日、同社の技術説明会を開催した。説明会では最大160Mbpsのインターネット接続サービスを含む今後の展開について説明が行なわれた。
■ 最大160Mbpsの「J:COM NET ウルトラ」は4月から本格展開
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J:COMの田口和博技術本部長
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J:COMの田口和博技術本部長は始めに「テレビCMなどでは光が盛んに宣伝されているが、実際に光で何ができるのか、という点についてはいささかはっきりしないのではないか」とコメント。J:COMも光に負けないメリットを持っているとし、同社のHFCネットワークについて説明した。
HFCとは「Hybrid Fiber Coax」の略で、光ファイバと同軸を組み合わせたネットワーク構成を指す。田口氏は「通信事業者は光のサービスと言うが、確かに局舎は光ネットワークで構成しているものの、家の中まで光ネットワークで接続しているケースは限られている」と指摘。大規模集合住宅を例に取り、「HFCであれば既存の同軸ケーブルを利用して分岐すればいいが、通信事業者のIPネットワークでは単なる分岐はできず、ハブやVDSLなどを敷設しなければならない」とし、設備の面でメリットがあるとした。
また、戸建の導入事例においても、「既存の同軸を利用でき、1サービスに対して1機器で構成できるため設置位置のバリエーションが多彩」とCATVのメリットを強調。光の場合は「ルータと電話アダプタの接続が必要、サービスごと複数の機器を経由するなど、設置位置に融通が効きにくい」とした。
通信速度の面でも、米ケーブルラボのCATVインターネット標準規格であるDOCSIS 3.0に準拠し、40Mbpsのチャネルを4つ束ねる(ボンディング)ことで最大160Mbpsを実現した「J:COM NET ウルトラ」をアピール。すでに一部地域では試験的にサービスを提供しているが、4月末からは関東と九州、北海道からサービス提供を開始。夏までには全国での展開を予定するという。
田口氏は「DOCSIS 3.0では最大32チャンネルまでのボンディングが規定されており、規格としては1,280Mbpsまで実現できる」と説明。CATVが利用する70~770MHzの帯域をフルに活用することで、「単純計算では4Gbpsもの伝送容量を持つことになる」とCATVインターネットの技術的優位性を説いた。
ネットワーク構成も「映像のみを同軸で分岐し、インターネットは光ファイバで提供するFTTP(Fiber To The Premises)、集合住宅の各部屋までを光ファイバで分配するFTTR(Fiber To The Roomも提供できる」とコメント。「J:COMはユーザーのニーズに合わせたサービス提供が可能な会社」とした。
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大規模集合住宅では同軸で分配できるCATVが有利と説明
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戸建導入時の比較
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最大160Mbpsの「J:COM NET ウルトラ」は4月から本格スタート
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ニーズに合わせたネットワーク構成が可能
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■ VODのさらなる普及が課題。DLNAを含むホームネットワークも視野に
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商品戦略本部の吉原辰也副本部長
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商品戦略本部の吉原辰也副本部長は、J:COM TVの今後の展開について説明。デジタル放送サービス「J:COM TV デジタル」の加入世帯数は2007年12月末の数字で152.3万世帯となり、デジタル化率は67%と6割を突破。デジタル化が新規加入促進やARPU向上、解約防止につながったほか、ユーザーにとっても高画質化や多チャンネル化、高音質化といったメリットが享受できるとした。
VODコンテンツに関しても「2年半前に開始した時点ではVOD自体が認知されていない状況だったが、今ではタイトル数が13,000を超え、コンテンツサプライヤーからの協力も得られるようになってきた」と説明。有料コンテンツだけでなくドラマの第1話を無料とする、地域のお祭りやスポーツの試合などを無料で配信することで「VODをまずは体験してもらうことで認知度を高めていく」とした。
VODコンテンツの利用率は「平均して月に1回購入されている計算だが、実際にはヘビーユーザーが月に約5本近く購入している」と説明。有料コンテンツの購入者がVOD視聴可能社の約10%に留まり、主な世代が30~40代男性であるとした上で、「今後は女性や子ども、年配層にも広げていきたい」との意欲を示し、「今後も伸びる余地のあるビジネスであり、力を入れていきたい」とした。
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VODコンテンツのラインナップ
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VODのユーザー層
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夏にはユーザービリティ向上の施策としてVODコンテンツのインターフェイスを改善。従来はディレクトリ型検索のみだったが、「コンテンツ数が13,000を超えるとディレクトリ型だけでは厳しい」との考えから、冊子と連動したタイトル番号検索、五十音検索などを導入する。
さらに一度番組を購入したユーザーに対し、同じ出演者の別番組や同じ番組を購入した他のユーザーが購入した番組を携帯電話向けにメールで通知するレコメンド機能、携帯電話からメールで投稿できる番組の評価機能なども実装予定。番組の評価を行なったユーザーにはポイントを配布するなど、マイレージ感覚のポイントシステムを盛り込んでいくという。
HDD録画によるタイムシフトの流れを踏まえた放送連動型サービスも検討。吉原氏は「すでに海外では番組が始まった数分後には過去にさかのぼって視聴できるサービスが提供されている」との事例を紹介し、「日本は著作権問題などさまざまな課題があるが、我々の持つノウハウで対応できると考えている」とした。
ホームネットワークを取り入れたサービス展開も視野にあり、DLNAなどのホームネットワーク規格を検討。ただし、具体的な施策は現在のところは無く、「家電の業界でもホームネットワークの技術はどれが本命になるかわからない。我々は家電で多く搭載される技術を判断基準とし、業界の標準に従って実装を進めていく」とした。
吉原氏は「最新の技術を盛り込んでも、ユーザーに理解されないのでは意味がない」と指摘。「2年前に導入したHDD内蔵STBや2008年初めの緊急地震速報、そして160MbpsのJ:COM NET ウルトラはユーザーのニーズを的確に捉えている」と自信を見せた上で、「最新技術を採用しながらもユーザーにわかりやすいサービスを導入し、顧客度満足度向上を目指す」との考えを示した。
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携帯電話とした番組のレコメンド
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ユーザー参加型の番組評価機能
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北米でTime Warnerが展開するVOD事例
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DLNAを含むホームネットワークも視野に
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■ URL
J:COM
http://www.jcom.co.jp/
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(甲斐祐樹)
2008/03/12 19:08
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