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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
ニコニコ大会議2008、元ドコモ夏野氏やひろゆき氏がプレゼン

 ニワンゴは4日、東京・後楽園のJCBホールで「ニコニコ大会議2008」を開催した。イベントには一般ユーザーを抽選で招き、「ニコニコ動画(夏)」(サマー)にて提供される新機能を紹介。プレゼンにはニコニコ動画の管理人として知られるひろゆき(西村博之)氏とともに、ニワンゴの親会社であるドワンゴへ顧問として同日付で就任したばかりの夏野剛氏が登壇。新機能の魅力をアピールした。


「MADは文化」とドワンゴ小林社長

ニコニコ大会議の模様
 会場には抽選で招待された約2.000名の一般ユーザーが詰めかけた。平日の夕方からのイベントではあったが、開場1時間ほど前からは入場を待つ列もできる盛況ぶり。おもに20~30代のユーザーが大多数を占めていたようだが、女性の姿が比較的多かったのも印象的だった。

 イベントの模様は「ニコニコ生放送」としてインターネット向けにもライブ配信され、ニコニコ動画同様、リアルタイムにコメントをつけることが可能だった。なお、今回からは1万人規模での同時配信が可能となったことから「ニコ道館」とも呼称されている。

 ニコニコ大会議ではまず、ドワンゴ代表取締役社長の小林宏氏が挨拶を行った。会場の巨大スクリーンには「ニコ道館」の様子も随時表示されており、小林氏に寄せられる辛辣なコメントもそのまま見られてしまうため、聴衆からは笑いも巻き起こっていた。

 小林氏は苦笑いを浮かべつつも気を取り直すように「ユーザーの皆さん、有り難うございます!」と大きな声で挨拶。会場からの拍手を受けた後、「7月1日付でユーザー登録者数が790万人、モバイル登録者数191万人、有料会員数20万4000人を達成。月間ベースの広告販売実績も4000万円に及んだ」と報告。「急成長を続けられているのはユーザーの皆さんのおかげ。本当に有り難うございました」と重ねて感謝の意を表した。


ドワンゴ代表取締役社長の小林宏氏が、ユーザーへの感謝の意を表明
 小林氏からは今後の施策として、物販サイトのテーマ曲「ニコニコ市場のテーマ」を制作し、着うたとして配信することなどが発表。また7月9日発売の「CDで聞いてみて。~ニコニコ動画せれくちょん~」はニコニコ動画で聞ける人気曲を集めたCDだが、その中の1曲「思い出はおっくせんまん」を歌うゴム氏がサプライズゲストとしてステージに招かれた。ゴム氏は生歌こそ披露しなかったものの、曲の最高潮である「おっくせんまん! おっくせんまん!」のかけ声を会場の参加者とともに挙げるパフォーマンスを見せ、会場の熱気を高めていた。

 一方、小林氏は著作権問題にも着実に対応しているとし、各権利者団体との交渉を進めていることを紹介。ニコニコ動画の中で高い人気を誇る“MAD”についても削除していく方針を示した。

 MADは、プロのアーティストらによる商業作品を加工して制作させることがほとんどのため、著作者の権利を侵害している可能性が高い。しかし、小林氏は「MADは権利者にとってマイナスばかりではなく、むしろプラスにもなりうる」と、ユーザー認知度向上といった効果もあるとの考えを示した。さらに小林氏は「MADは日本が誇る新しい文化だと考えている。権利者として話を進めつつ、公認のMAD素材として提供してもらえるような形を目指したい」との展望を示した。

 ただし、「ドワンゴやニワンゴ単体では交渉にも限界がある」とも小林氏。ユーザー、消費者らの声という後押しが欠かせないと聴衆に訴えていた。


ゴム氏(右)とともに小林社長も「おっくせんまん!」
ニコニコ動画のビジネス展開例として示された「ニコニコアニメチャンネル」

元ドコモ夏野氏がひろゆき氏とともにプレゼン

(左から)小林社長、ドワンゴ顧問の夏野剛氏、ひろゆき氏
 続いて登場したのはニコニコ動画の管理人を務めるひろゆき氏。さらに「iモードを作った男」として知られる夏野氏が、ニコニコ動画のビジネス展開に携わっていくことが発表された。

 登場前のビデオ映像で「救世主、降臨」とまで持ち上げられた夏野氏は、顧問就任初日にプレゼンをするという事態となり、「(就任を)ちょっと後悔しています」といったジョークを披露。NTTドコモを退社してまもない境遇も逆手にとって「(ソフトバンク社長の)孫さん、iPhoneの日本1号機ください。iPhoneカッコいい!」といった発言も交えつつも、ニコニコ動画(夏)で実装されるさまざまな新機能について、ひろゆき氏とともに具体的に紹介していった。

 プレゼンではまず8月中旬以降提供予定の「ニコニ・コモンズ」について言及。ひろゆき氏は「ニコニコ動画で使えるものを集めた素材庫」と表現。ニコニコ動画で問題なく利用できる、権利問題がクリア済みの映像・音楽・画像などを公開していくという。

 同様の取り組みとしてはすでにクリエイティブ・コモンズが知られているが、ニコニ・コモンズでは異なるポイントもあるという。「クリエイティブコモンズではどこでどのように登録素材が使われているかわからないが、ニコニ・コモンズでは実際に使われた用途の把握が可能」(ひろゆき氏) のため、一般ユーザーがニコニ・コモンズに自作素材を登録した場合でも、どんな応用のされ方をしているか把握できるという。

 また、ひろゆき氏は「クリエイティブコモンズやGPLでは下手をすると素材を公開した人自身が、素材を自由にできなくなってしまうこともある。これでは敷居が高いので『やっぱりやめた』ができないと」と説明。後からライセンス条件を変更できるように配慮した。場合によっては無料から有料への移行も可能という。夏野氏も「ようするにこれは『公式黙認』のためのシステム」と補足した。


“公式黙認”を得るためのシステムが「ニコニ・コモンズ」という
ニコニ・コモンズの概要。ライセンス条件を後から変更できるのが特徴

ニコニコ動画(夏)の提供スケジュール
 新機能の1つ「ニコ割アンケート」は、時報などのタイミングで実施されるアンケートのシステム。ひろゆき氏は「Webのアンケートは理論上、『組織票』がどうしてもできてしまう。一方のニコ割アンケートはある特定のタイミングでニコニコ動画を見ている人だけが参加できる。それだけにこれまでとはちょっと変わった意見が集まるかも」と期待を寄せた。夏野氏も「回答の誘導などを行なわないような仕組みをしっかり考えた上で、アンケート結果を社会に向けて積極的に発信していきたい」とコメント。サービスは7月下旬スタート予定という。

 7月5日に提供スタートする「ニコニコミュニティ」は、プレミアム会員が作成したコミュニティ内部でのみ動画を投稿・共有できるサービス。ひろゆき氏は「例えば仲間内のカラオケを撮影した。仮にこれをアップロードしたくてもYouTubeやニコニコ動画では全世界に見られてしまう。身内だけで動画を共有できるサービスはなかなかない」と利点をアピールした。

 ただし、ニコニコミュニティをフル活用するには、有料のプレミアム会員登録が欠かせない。コミュニティの開設はもちろん、コミュニティを構成するメンバーにプレミアム会員がどの程度いるかで動画の投稿可能数などが決定されるためだ。この仕様には会場からブーイングが漏れたが、ひろゆき氏も「ごめん! ごめん! 会社だから!」と理解を求めつつも、「これまでプレミアム会員にほとんど興味なかったけど、これがあるなら旅行先の動画などをアップロードできて便利そうなので入ってみたい」と、管理人とは思えない本音の発言を披露。一方の夏野氏は「プレミアム会員のメリットが薄くなってきていたので、ここで一気に恩返ししたい」と冷静にフォローした。


プレゼン中の夏野氏
ひろゆき氏も補足的な説明を行なっていた

 無償の動画作成ソフト「ニコニコムービーメーカー」についてもバージョンアップを行い、swfファイルの投稿などに対応する。また「ニコニコスピーチ機能」を使うことでナレーション音声なども容易に収録できるという。なお、今回からは有償版の提供も開始。紙芝居風動画しか作成できなかった無料版に対して、有償版ではH.264、AACなどを利用した動画取り込みを可能にした。ニコニコスピーチもフル機能版が利用できる。

 このほかニコニコ動画の海外展開に向けて、ドイツ語・スペイン語版サービスの提供も開始。また美少女キャラクターが登場する3Dコミュニティサービス「ai sp@ce(アイスペース)」内でニコニコ動画が閲覧できる機能などを改めて告知した。夏野氏は「ますます機能アップしていくので、ユーザーの皆さんがどうぞ盛り上げてくれれば」と期待を寄せた。


松嶋初音らゲストが登場~「ニコニコ動画ββ」も予告

トークショーの模様
 ニコニコ大会議後半では、ゲストを招いてのトークショーも行なわれた。アイドルとして活躍中の松嶋初音は「初めて見たニコニコ動画の映像が全裸シリーズだった」というエピソードを披露。最近のお気に入りは「ヤンデレと某ネズミが会話している作品」だとか。トークのテーマはゲームなどの話題におよびつつも、夏野氏から最後に「芸能人を代表としてニコニコ動画を応援してくれれば」と提案され、「本当にいいんですか……ニコ厨と言われないか心配ですけど」とやや不安げに返答していた。

 もう1人のゲストである日本技芸リサーチャーの濱野智史氏は、ニコニコ動画を研究・分析している人物。同時に「ニコニコ動画しか見ていない」とまでいうほどの熱心なユーザーで、「ちょww」と書かれたTシャツ姿で登場。新機能であるニコニ・コモンズを「人同士ではなく、コンテンツ同士のSNSでは」「バーチャル芸能事務所のようなもの」との見解を示した。

 さらに濱野氏は「社会的にはびっくりするほどニコニコ動画が知られていない」と自身の熱気と一般社会の乖離を感じているとコメント。夏野氏は「アカデミックな視点からニコニコ動画を世間に広めてほしい」と要望していた。


赤裸々(?)なニコニコ動画体験を披露していた松嶋初音
Tシャツのプリントがまぶしい、日本技芸リサーチャーの濱野智史氏

会場ロビーでは物販コーナーを展開。“ひろゆきブロマイド”なども販売していたという
 夏野氏は最後に「既存の大企業のおじさんたちに、いかに多く“ニコ厨”になってもらうかが最大のミッションだ。ニコ厨になってさえもらえればこっちのもの。黒字化を達成し、社長に安心してもらえるように、がんばるので応援してほしい」と語り、ニコニコ大会議を締めくくった。

 会場ではその後「次回予告」なる映像が上映。「2008年秋。ニコニコ動画は今一度ベータバージョンに回帰する」というナレーションとともに、「ニコニコ動画ββ(ダブルベータ)」の登場が予告されていた。

 なお、一般観客や報道関係者向けに行なった質疑応答ではMADの削除方針や取扱に関する質問が上った。基本的には権利者の意向で削除が行なわれるとし、ユーザー自身が手書きしたMADを削除対象にするかといった点も、あくまでも権利者の判断に委ねられているという。ただ、ひろゆき氏は「MADが作れなくなるからといって心配はしていない。そういう状況であっても問題ない素材を使って作ってくれる人はいるはずだし、ニコニ・コモンズなどの仕組みも用意していく」という楽観的な姿勢を見せた。


ファッションブランドとコラボレーション企画「2525 bySuicommi Underground」の臨時ショップも。ひろゆき氏らニコニコ動画運営スタッフらがモデルを務めていた
会場入り口に飾られていた花。さまざまなジャンルの人物から贈られていた

関連情報

URL
  ニコニコ動画(夏)新機能をご紹介します(ニコニコニュース)
  http://blog.nicovideo.jp/niconews/2008/07/001364.html
  ニコニコ動画(夏)
  http://www.nicovideo.jp/

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(森田秀一)
2008/07/07 12:08


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