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総務省と経済産業省講演「IT社会とデジタル時代のコンテンツ政策」
総務省 高原耕三情報通信政策局長
インターネット実利用の低迷を示すグラフ
NAB東京セッションの第1日目は、総務省の高原耕三情報通信政策局長が「日本発の新IT社会を目指して」と題し、経済産業省の松井哲夫情報政策課長が「デジタル時代におけるコンテンツ政策」と題してそれぞれ講演を行なった。
高原氏はまず「役人の話はつまらないかもしれないが」と前置きした上で、ブロードバンド時代に必要なインフラの構築について語った。総務省では2005年までに高速インターネットで常時接続できる環境を3000万世帯、超高速インターネット環境を1000万世帯にすることを目標としているが、インフラ面で見れば現時点で高速のDSL環境が3500万回線、超高速のFTTH回線が1500万回線構築されており、この目標はすでに達成されているという。また、料金面についても米国と比べて半分以下、ブロードバンドで先進する韓国と比較しても同等の水準であり、低廉な料金でサービスを提供できていると評価した。
しかしながら実利用においてはDSLが約464万人で利用率は約13%にとどまり、FTTHにおいては約13万回線と0.9%程度の利用率しかない事実を指摘。「高速道路は建設されつつあるが、走っている車がいない」と例えた上で「結果を出さなければ意味がない」とインフラの実利用を促進していく必要性を訴えた。
欧米の通信事業を見ると、過当競争と過剰投資により多くの通信業者が経営破たんし、業界そのものが存続の危機を経験しているという。ADSLやCATVの料金値上げなども行なわれ、インターネット関連企業の株価は2年半の間に92%も落ち込んでいる点を受け、「我が国の得意分野を活かすITの活用戦略が必要である」と語った。
高原氏によれば、利用促進を図る鍵となるのはテレビであるという。普及率でみればパソコンも約60%という高い普及率に達してはいるものの、テレビのほぼ100%近い普及率に比べればその差は歴然である。また、平成14年版の情報通信白書によれば、インターネット利用者のメディアごとの休日における時間配分は「テレビ」が3.52時間であるのに対し、「ホームページ」が0.06時間、「電子メール」が0.13時間とテレビの占めるウェイトは非常に大きい。また、インターネットをしない理由として「パソコンが使えない」「使う必要がない」という回答がそれぞれ約30%存在するというデータを示した上で、高原氏は「このようなデジタルデバイドを無くすためには端末の見直しも必要になる」と指摘。100%近い普及率とユーザーの利用率、多くても数十個程度のボタンで簡単な操作が可能なテレビを有効活用していくことがIT社会促進の決め手になるとした。
また、家計における通信支出の割合は長い間2%程度を保っていたが、1991年から増加が始まり、2001年では約4.0%を占めているというデータを紹介。ここでいう通信支出とは固定電話と携帯電話の費用を加算したものであるが、高原氏によれば、世帯あたりの年間支出自体は減少傾向にある中で通信支出の割合が高まっている点は注目に値するという。巷では2003年の電子政府、入札の電子化、デジタル放送開始という大きな変化から「2003年に日本のIT化がブレイクする」という流れがあるが、高原氏はこのデータから「すでにブレイクは始まっているのかもしれない」というコメントを残した。
経済産業省 松井哲夫情報政策課長
経済産業省の描くコンテンツのマルチユース化とその循環
続く経済産業省の松井氏は、コンテンツという側面からブロードバンド時代について講演。従来まで「遅い」「高い」とされていた日本の通信インフラも画期的な変化を遂げ、BS放送やCS放送はすでにデジタル化している流れを汲み、蓄積システムなどと結びついて新たなサービスを提供できると語った。
ブロードバンド時代の特徴としては映像など大容量コンテンツにおける流通ルートの拡大・多様化といった特徴と、双方向コンテンツやCGといったコンテンツ表現技術の進化に加え、ネットワークを介してコンテンツを国際展開する可能性があるという。松井氏はコンピュータやIT技術での国際競争は厳しいとした一方で、コンテンツについては「千と千尋の神隠し」など海外でも評価の高いアニメーションを例にとり、ゲームや音楽、テレビドラマなどについては日本は高い国際競争力を誇っていると評価した。
その一方で不正コピーや海賊盤など、コンテンツ流通には課題が多い点も指摘。また、コンテンツの制作側と流通側で未だ慣行を含んだ権利処理が行なわれているという事実も踏まえ、「取引自体は民間で行なわれるものだが、官としても権利処理や複製防止といった仕組み作り、独占禁止法体制の確実な執行を行なうといったサポートを行なう必要がある」と語った。
また、コンテンツそのものの価値を作り出す人材の活性化についても触れ、コンテンツの作り手が成果に応じた還元を得られる環境を作っていく、信託関連法の中での知的財産の取り扱いを見直すことで制作資金を調達するための金融手法を多様化させるといった働きかけが必要であるとコメント。人材そのものについてもクリエイターだけでなく、いかにコンテンツをビジネス化するプロデュース人材が重要であるとし、コンテンツ制作技術の基盤も踏まえ、側面からサポートしていく姿勢を改めて打ち出した。
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URL
総務省
http://www.soumu.go.jp/
経済産業省
http://www.meti.go.jp/
第5回 NAB東京セッション
http://www.nabtokyo.jp/
(甲斐祐樹)
2002/12/03 17:26
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