北海道旅客鉄道(JR北海道)は、ICカード乗車券「Kitaca」を10月25日に開始した。サービス初日にはJR北海道社長や北海道副知事らが参加したオープニングセレモニーが札幌駅で開催されたほか、サービス開始を記念した限定Kitacaが発売された。
■ Suica相互利用や電子マネーは2009年春。限定Kitacaは即完売
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イメージキャラクターのエゾモモンガ
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Kitacaは、JR東日本の「Suica」やJR西日本の「ICOCA」、JR東海の「TOICA」などと同様、切符を購入することなくICカードで乗車できるサービス。サービス名称は「JR北(キタ)海道のICカード」から取られており、イメージキャラクターには北海道にのみ生息するというエゾモモンガが採用されている。
カードは個人情報の登録が必要ない無記名Kitaca、個人情報を登録することで小児の利用や紛失時の再発行が可能になる記名Kitaca、記名Kitacaの機能に加えて定期券としても利用できるKitaca定期券の3種類。価格は無記名Kitacaと記名Kitacaがデポジット(預かり保証金)の500円を含み2000円で、Kitaca定期券がデポジット500円と定期代金。チャージ上限はいずれも2万円まで。
サービス提供エリアは函館本線の小樽~札幌~岩見沢間、千歳線の札幌~新千歳空港~苫小牧間、学園都市線 札幌~北海道医療大学間の55駅相互間。2009年春にはSuicaとの相互利用や、電子マネーサービスの提供が予定されている。
サービス開始を記念して、イメージキャラクターのエゾモモンガと「祝デビュー」と書かれたくす玉のイラストをデザインした記念Kitacaを10月25日7時より限定1万枚で発売。札幌、小樽、手稲、桑園、江別、岩見沢、新札幌、千歳、苫小牧の9駅で発売されたが、札幌以外の駅では発売と同時にほぼ完売し、札幌駅でも午前中には完売。札幌駅前は前日夜から列ができており、最終的には1000人が並んだという。
また、10月20日から10月31日までは、10時から18時までの時間限定でKitacaのプロモーションコーナー「Kitacaステーション」を設置。プロモーションビデオの放映やKitacaのサービス紹介に加えてアンケートも実施しており、アンケートに答えるとKitacaオリジナルグッズがプレゼントされる。
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無記名Kitaca
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改札機にタッチして通過
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Kitaca対応券売機にはエゾモモンガのマーク
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券売機のKitaca対応メニュー
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札幌駅前は記念Kitacaを求めて長蛇の列ができあがった
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記念Kitaca
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改札前にはプロモーションコーナー「Kitaca ステーション」を設置
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アンケートに回答するとステッカーとクリップがプレゼントされる
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■ 2006年からKitacaのサービス導入を検討
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JR北海道の中島尚俊代表取締役社長
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サービス開始日に行われたオープニングセレモニーでは、JR北海道の中島尚俊代表取締役社長がKitaca導入についてコメント。また、国土交通省 北海道運輸局の尾澤克之局長、北海道庁の嵐田昇副知事が祝いのコメントを寄せた。
中島氏は、「ICカード乗車券は2001年11月にJR東日本がSuicaを開始し、切符を買わずに改札機へタッチするだけで利用できるという利便性の高さに加え、電子マネーやセキュリティでの利用などの機能を搭載し、首都圏では2600万人が利用するなど生活必需品の一部になっている」とコメント。「我々もできるだけ早く札幌圏で提供したいと考え、JR東日本の協力を得て2006年から準備を進めてきた」とし、「10月1日からモニターを開始していたが、システムが順調に推移したため、本日から皆様に使っていただけるようになった」と説明した。
2008年春には電子マネーサービスとSuica相互利用を予定しており、「今後もさまざまな機能を充実させていく」とコメント。「みなさまに重宝されるカードとなるよう努力していきたい」とした。
北海道運輸局の尾澤氏は、「ICカード乗車券が全国的な普及を見せる中、我々も2003年12月に札幌圏公共交通ICカード促進協議会を設置し、札幌圏におけるJRや私鉄、地下鉄、バスのICカード利用や共通化について協議してきた」とコメント。「Kitacaのサービス開始は誠に喜ばしい」とした上で、「春にはSuicaとの相互利用や電子マネーが可能になると聞いている。今後も利便性の高いICカードとして発展することを期待している」と述べた。
嵐田副知事は、「Kitacaの開始は多くの時間と多くの人材の努力によるもので、関係者の努力に心より敬意を表したい」と述べたのち、「首都圏ではSuicaやPASMOが急速に広がっているとのことだが、Kitacaも電子マネーや首都圏との相互利用で道民にとっても利便性が向上するだろう。運賃を見る必要もなくなり、混雑もスムーズになるなど道民にとってもメリットがあり、JR北海道にとっても券売機数の低減や環境対策といったメリットがある」とし、「JR北海道が地域の足として道民によりいっそう愛され、Kitacaが普及することを期待している」と語った。
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国土交通省 北海道運輸局の尾澤克之局長
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北海道庁の嵐田昇副知事
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オープニングセレモニーのテープカット
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くす玉割り
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主催と来賓によるKitacaの乗り初め
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■ 「SAPICA」との相互利用も検討。モバイル対応は「現段階で計画なし」
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囲み取材に答えるJR北海道 鉄道事業本部 企画部 Kitaca事業室長の一条雅弘氏
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オープニングセレモニーの後は、JR北海道 鉄道事業本部 企画部 Kitaca事業室長の一条雅弘氏が、Kicataの今後の展開について説明を行った。
JR北海道では、Kitacaの発行枚数目標として期限を定めずに9万5000万枚という数値を明らかにしており、これについて一条氏は「2009年春には電子マネーやSuica相互利用が始まり、サービスを拡充することでお客様の数も増えていくだろう。9万5000万枚は当面の目標だが、その数にこだわることなく成長させていきたい」とした。
2009年1月には札幌市交通局もICカード乗車券「SAPICA」を開始するが、「現状はJR北海道を利用する方はKitaca、地下鉄はSAPICAと使い分けていただくことになる」。ただし、「お互いに相互利用したいという共通の認識は持っている」とし、「時期は未定だが、近い将来にはKitacaとSAPICAの相互利用を実現したい」との方針を示した。
電子マネーやSuica相互利用がサービス開始と同時では無い点については「大規模なシステムのためまずはICカード乗車券の単独導入から始めて、安定稼働を確認してから次のサービスへと段階的に拡充していく」と説明。今後の機能拡充の方向性として、モバイル対応については「新たな設備投資が必要なため、現段階では計画を立てていない」と述べたほか、クレジットカード一体型やオートチャージ機能については「電子マネーを使う人には必要不可欠な機能だと考えている」としたものの、「現段階では導入時期などは未定」とした。
■ URL
Kitaca
http://www.jrhokkaido.co.jp/kitaca/
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(甲斐祐樹)
2008/10/25 14:19
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