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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
日本国内での「OpenID」普及・促進を目指す組織が正式発足

 ユーザー認証技術「OpenID」の日本国内での普及および国際化を支援するための組織「有限責任中間法人OpenIDファウンデーション・ジャパン」が、10月1日に設立された。30日には、同組織設立に伴う説明会が開催された。


共通IDで複数サービスを利用できる「OpenID」。当初は32社が参加

OIDF-Jに参加する各企業の関係者らも出席した
 OpenIDは、米Six Apartが2005年に開発したユーザー認証技術。共通のユーザーIDを使って複数企業のWebサービスが利用できるもので、世界で2万2000以上のWebサイトがOpenIDに対応し、OpenIDに対応するID数は5億件を超えるという。

 新仕様の技術策定や普及・啓蒙活動を行う組織としては、2007年6月に非営利法人「OpenID Foundation(OIDF)」が設立済み。また、欧州地域でも非営利団体「OpenID Europe」がOIDFの下部組織として設立されている。

 日本で10月1日に発足した「OpenIDファウンデーション・ジャパン(OIDF-J)」は、OpenID Europeと同様にOIDFの下部組織という位置付け。発起人企業であるシックス・アパート、日本ベリサイン、野村総合研究所の3社と、2008年2月の設立準備発表会で参加を表明したミクシィやヤフーなどに加え、国内企業32社が第1期会員としてOIDF-Jに参加した。

 OIDF-Jでは、技術面やビジネス面、PR面での活動を会員企業と協議の上で推進を進める考え。技術面では、技術セミナー「OpenID TechNight」の実施や実装ガイドラインの策定、各種ドキュメントの日本語訳、ワーキングループなどの活動を行う。

 ビジネス面では、国内外のケーススタディ、統計情報や独自調査によるアンケート、法務面での研究会・勉強会に加え、参加企業から要望があったビジネスセミナー「OpenID BizDay」の第1回を12月12日に開催するとしている。


当初の参加企業 OpenIDの利用イメージ

 OIDF-J設立にあたっては、代表理事に野村総合研究所の八木晃二氏、理事に日本ベリサインの柴田斉氏、監事にシックス・アパートの安田俊彦氏が就任。また、東京大学大学院情報学環・学際情報学府の須藤修教授、慶應義塾大学総合政策学部の國領二郎教授、中央大学大学院戦略経営研究科の杉浦宣彦教授の3氏がアドバイザーとして招聘された。

 このほか、アイデンティティ管理コミュニティ「リバティ・アライアンス」の日本SIG(分科会)とのパートナーシップを締結。両者の規格との連携や相互運用を双方で検討し、アイデンティティ関連規格・システムの協調に取り組むとしている。

 なお、当初は2008年4月の発足を目指していたが、OIDFの下部組織となるための手続きに時間を要したほか、時間をかけた情報交換を実施していたため、発足が10月1日に遅れたという。


組織概要 活動骨子案

オープンな相互連携で活動。1年後には会員3桁台を目指す

OIDF-J代表理事の八木氏

発起人代表を務める崎村氏
 OIDF-J代表理事の八木氏は、「2月のキックオフ以降、技術者セミナーを複数開催しており、累計で156名に参加いただいた」という。また、OpenIDへの認知度・利用率に関しては、「2月の段階で認知度12%、利用率1.2%(CNET Japan調査)だったのに対し、10月には認知度が28.1%、利用率が15.2%(japan.internet.com調査)に上昇している」とコメント。調査元が異なるため一概には比較できないが、八木氏はOpenIDへの関心が国内でも広がりを見せている点を紹介した。

 OIDF-Jの会員組織に関しては、「OpenIDのポリシーと同様に中央集約的ではない、オープンな相互連携を目指す」と発言。10月1日の設立から約1カ月で32社が加入した形になるが、「社内手続き等で間に合わなかった企業もあり、加入を希望する企業は相当の規模が期待できる」とし、「1年後には桁が変わるのではないか」と100社超に会員数が増加する見通しを示した。

 発起人代表である野村総合研究所の崎村夏彦氏は、OpenIDのような共通IDによる複数サービスの利用対応によって、「個人ではIDと個人情報の管理が容易に、企業側にはユーザーの獲得・維持が容易になる」とメリットを語った。その上で、「従来のベンダーセントリックから、『私』を情報ハブとしたユーザーセントリックへとパラダイムシフトが起こる」と述べた。

 OpenIDの現況に関しては、10月27日に米Microsoftが「Windows Live ID」での対応を正式表明。また、29日には米Googleが「Google アカウント」をOpenIDとして利用するためのAPIの限定公開を開始した。

 日本国内では、OIDF-Jの設立に合わせてエキサイトが対応を表明。加えて、ミクシィやヤフー、BIGLOBEでも対応を開始している。このほか、OIDF-Jには加入していないクレディセゾンが、オンラインサービス「Netアンサー」でYahoo! JAPAN IDによるOpenID対応を23日より開始している。

 崎村氏はこのほか、楽天が開始した「楽天あんしん支払いサービス」を挙げ、「決済でOpenIDに対応しているのは世界的にも新しい事例である」と紹介。「OpenIDの世界では、日本が世界的に注目を浴びるようになっている」とした。

 OpenIDのセキュリティ面に関しては「IDを発行する企業・サービスと、IDを利用する企業・サービスの間では、ユーザーID・パスワードが利用企業側に渡らない」として安全である点を紹介。一方、OpenID普及に従ってフィッシング詐欺サイトなどの懸念も今後予想されるが、「利用者に対する啓蒙活動に加え、会員企業と協力した注意喚起も行っていきたい」と述べた。


OpenID誕生の背景 他の標準化団体とも協力関係の構築を目指す

関連情報

URL
  OpenID ファウンデーション・ジャパン
  http://www.openid.or.jp/
  ニュースリリース
  http://www.openid.or.jp/081030_press-release.html

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(村松健至)
2008/10/30 17:34


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