株式会社野村総合研究所(NRI)は29日、2008年までのブロードバンド4市場、通信4市場、放送4市場の市場規模予測を発表した。これらは、同社が発表した情報通信主要32分野の市場分析・規模予測の第1弾として発表されたもの。同社では、報道向け記者会見を行ない、3分野の専門家が解説を行なった。
■ DSLは1,100万世帯で頭打ち、緩やかにFTTHへ移行
ブロードバンド市場は、情報・通信コンサルティング部副主任コンサルタントの寺田知太氏が説明を行なった。NRIは、DSL市場、FTTH市場、CATVインターネット市場、公衆無線LAN市場の4分野に分けて予測。ブロードバンド市場全体では、2002~2003年にかけてDSLが爆発的に普及したが、PC利用世帯が飽和状態にあるため、市場成長は鈍化するという。また、今後は先進ユーザーを中心に緩やかにFTTHへ移行し、他のインフラは加入者減もあり得ると予測している。
DSL市場は、2005年に1,098万世帯まで普及するものの2006年以降減少し、2008年には989万世帯になると予測。寺田氏は「DSLは新たなネット利用者を開拓しているわけではなく、ナローバンドユーザーを刈り取っているだけだ。今後はDSLの先進ユーザーからFTTHに移行する」としている。また、事業者別にみると、Yahoo! BBは「ARPU(Average Revenue Per User:顧客単価)の高いユーザーを満足させ続けることができるか」、NTT東西は「フレッツADSLからBフレッツへの移行キャンペーン」が今後のDSL市場の“カギ”になると分析した。
FTTH市場は着実に成長し、2008年には589万世帯まで増加すると予測。その牽引要因は、集合住宅まで光ファイバを引き、そこから分割する“FTTB(Fiber to the Building)+α”だという。「戸建住宅向けのFTTHは工事が大変なため、契約数の大きな増加には繋がりにくい。一度引いたら後は楽なFTTBを中心として、緩やかだが確実に増加していくだろう(同氏)」と説明した。
CATVインターネット市場は、2005年の248万世帯から減少していき、2008年には237万世帯になると予測。通信サービスで利益を上げ続けるためには規模が必要であり、本業回帰や新たな収益源の確保も検討すべきだとしている。
公衆無線LAN市場は、2008年に430億円まで拡大するものの、加入者数は伸び悩むという。「コンシューマにノートPCやPDAを持ち歩かせることは困難。ビジネスユーザーに企業ネットワークの一環として採用を促すことが重要(同氏)」と語った。
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株式会社野村総合研究所情報・通信コンサルティング部副主任コンサルタントの寺田知太氏
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ブロードバンド市場全体の規模予測グラフ
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DSLユーザー数予測。2005年をピークに減少していく
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■ 2008年の移動体通信契約数は9,210万、3G比率は84%に達する
ブロードバンド以外の通信市場は、情報・通信コンサルティング部上席コンサルタントの桑津浩太郎氏が解説。移動体通信市場、専用線市場、IP-VPN市場、VoIP市場の4分野に分けて予測した。
移動体通信市場は、2002年度末の7,566万契約から、2008年度末には9,210万契約に拡大し、インターネット対応率も57%から93%へ拡大すると予測。方式別では、3G比率が2002年度末の9%から、2006年度中に50%を超え、2008年度末には84%に達するという。市場規模では2008年に7~8兆円に達すると予想、「今後2~3年はARPUが5%程度下落し、3~5年には3%の下落に落ち着くのではないか(桑津氏)」と語った。
専用線市場は、ダークファイバから広域イーサネット市場へ移行するものの、全体的には横這いだと予測。2006年度には、従来型サービスが6,300億円、広域イーサネットが4,700億円になるという。また、IP-VPN市場では、フレームリレー/セルリレー市場を既に上回り、2006年度には3,980億円まで拡大すると予測している。
VoIP市場は、コンシューマ向けVoIPユーザーが2003年度末に約440万人であり、2008年度末には約1,090万人まで拡大、法人向けも導入機運が高まりつつあるものの、中小企業では二の足を踏む企業が多いだろうと予測している。中規模以上の法人は、トータルコストの削減や、付加サービスの点から設備変更時にVoIP化する事業者が多いという。
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情報・通信コンサルティング部上席コンサルタントの桑津浩太郎氏
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移動体通信の契約者数推移。増加数は減るものの、全体では着実に増えていくと予測
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移動体通信の方式別推移。NTTドコモのW-CDMA方式も2003年度末から増え始め、2008年にはシェアの半数以上を占めている。また、PDCは2010年に終了すると予測
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■ 地上波デジタル放送は、視聴可能エリアの拡大に伴い2008年には2,488万世帯へ
放送市場は、情報・通信コンサルティング部上級コンサルタントの中山裕香子氏が解説。BSデジタル放送、CSデジタル放送、CATV、地上波デジタル放送の4分野に分けて解説した。まず、同氏は「日本の潜在有料世帯は約3割であり、これをCSデジタルやBSデジタル、CATVが取り合っているのが現状だ」と前置きした。
BSデジタル放送は、2006年に1,000万世帯を突破し、2008年には1,438万世帯まで拡大すると予測。1,000万世帯を超えることによって広告収入も増加し、市場規模は2008年に3,500万世帯に達するとしている。CS110度放送は梃入れが必要なものの、CSデジタルとBSデジタル、地上波デジタルの3種類を受信できる“3波チューナー”の登場次第では、普及が進む可能性があるとしている。しかし、「2008年度には全世帯にCS110度デジタル放送チューナーが普及するが、アンテナ設置と加入契約という2つのハードルによって、加入率は1割程度だろう(同氏)」と語っている。
CATV市場は全体的に成長が鈍化し、2008年で556万世帯と予測。中山氏は「今後は有料放送市場やブロードバンド市場のいずれの市場にも後塵を拝する可能性が高く、強みを活かしたサービスの開拓が必要だ」と説明した。
地上波デジタル放送では、視聴エリアの広がりがそのまま普及スピードに影響し、2006年に874万世帯、2008年に2,488万世帯になるという。当初は、CATVやFTTHなどの他インフラ経由での放送が牽引するだろうと予測、2008年のCATV経由での視聴は約半数強の1,385万世帯になるという。一方、市場規模では、「地上波デジタル放送は、あくまで既存地上波の代替メディアのため、放送市場が拡大するわけではない(同氏)」と締めくくった。
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情報・通信コンサルティング部上級コンサルタントの中山裕香子氏
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地上波デジタル放送の加入者推移
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■ URL
ニュースリリース
http://www.nri.co.jp/news/2003/031029.html
(大津 心)
2003/10/29 19:00
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