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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
NTT-AT、「電磁波による情報漏えいとその対策」など技術説明会を実施

 NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)は5日、無線や電磁波に関する同社の技術説明会を実施した。会場では電磁波による情報漏えい問題やその対策ソリューション、公衆無線LAN接続支援サービスなどについて説明が行なわれた。


テレビや携帯電話などの電磁波ノイズ対策

アクセスネットワーク事業本部 ワイヤレスシステム事業部 EMCセンタの雨宮不二雄所長
 アクセスネットワーク事業本部 ワイヤレスシステム事業部 EMCセンタの雨宮不二雄所長は、EMC(ElectroMagnetic Compatibility、電磁環境両立性)について説明。電磁波を利用して外部から不正に情報が入手される危険性などを説明した。

 雨宮氏によれば、現在は建物の周りにテレビやラジオ放送、送電線や携帯電話などさまざまな電磁波が漂っており、これらが時に電磁ノイズとして悪影響を及ぼす場合があるという。雨宮氏は駅の地下街を例に挙げ、「昼食時に飲食店が一斉に電子レンジを使うことで、無線LANが使えなくなる場合もある」と説明、電磁波を管理するEMCの必要性を訴えた。

 電磁ノイズは雷や静電気といった自然ノイズと、放送波や機器類から発生する人工ノイズの2種類があるという。人工ノイズはさらにラジオやテレビ放送、携帯電話といった特定の目的に使われるものと、電子機器や自動車などから意図せず発生するものの2種類があると雨宮氏は説明。「電磁ノイズとしては後者のほうが重要な問題」と補足した。

 データセンターやNTT交換設備などは、さまざまな事業者のサーバーや設備が入り交じるため、EMCソリューションが重要になると雨宮氏はコメント。「電磁波によるサーバーへの攻撃といった場面まで想定する時代になっている」と語った。


電気・電子機器を取り巻く電磁環境 電磁ノイズの分類

電磁波は情報漏えいの原因にもなりうる

電磁波による情報漏えい問題
 また、雨宮氏によれば、電磁波はノイズとしてだけではなく、セキュリティ面でも大きな問題を抱えているという。雨宮氏はその一例として「TEMPEST(電磁波傍受)」を紹介。パソコンやサーバーといった電子機器から発生する電磁波を傍受することで、画像情報やパスワードなどを不正に入手できてしまうという。雨宮氏はパソコン情報やパスワードなどを実際に傍受した画面を交えながら、「今の技術では100m離れた場所からWindowsデスクトップ右下の時計が読める」と説明した。

 電磁波は機器そのものから発生しているが、LANなどのケーブルがアンテナ代わりとなることで電磁波を傍受しやすくなるという。雨宮氏は傍受を防ぐためソリューション一例としてノイズフィルタを紹介。ケーブルにフィルタをセットすることで、傍受先で画面が読めない程度まで漏えいを防ぐことができるという。ノイズフィルタはケーブルの種類によって数種類用意されており、「2,000円程度で購入できる(雨宮氏)」。

 また、窓ガラスにフィルタを装着するといった建物向けのソリューションも展開している。ただしこちらは「携帯電話は通したいが無線LANは通したくない」といったニーズもあるため、周波数帯など電磁環境を測定、電磁対策の目標値を明確にする必要があると付け加えた。

 なお、TEMPESTによる被害については「正確に公表されていないため実態がわからない」のが現状だという。雨宮氏は「いまはビジネスというよりも啓蒙の段階」として、EMC対策の依頼があればすぐに対応できる体制を整えていると説明した。

 雨宮氏は医療分野に関するEMCの問題についても説明。患者や医師から、無線LANや携帯電話を利用したいという要望があるものの、ペースメーカーや医療機器に電磁波が与える影響が問題になる現状を説明した。また、病院ではこういった電磁波の対策も講じている一方で、「今後進むと見られる在宅医療の場合、より電磁波の問題が大きくなってくる」と指摘した。


漏えいのターゲットとなる電磁波 実際の画像再生例。デスクトップが白黒ながら表示できてしまう

漏えい電磁波の強度。最新機器であれば-35dBμV/mまで測定できるという ノイズフィルタの例。認識できない程度まで電磁波を防げるという

無線LAN支援ビジネスも展開

無線LAN支援システムの一例。IEEE 802.1xにも対応する
 続けてワイヤレスシステム事業部 無線システム技術部の中里光弘担当課長が、同社の公衆無線LAN支援ビジネスについて説明した。

 同社では19GHz帯の無線LANシステムを皮切りとして、5年前から無線LAN支援ビジネスを展開、現在は無線LANスポットの構築や基地局設置といったサービスも提供しているという。

 中里氏は無線LAN構築の流れを「導入フェーズ」「運用フェーズ」の2つに分けて説明、NTT-ATでは導入フェーズを中心にサービスを提供していると語った。無線LANのシステム構築やコンサルティングのほか、サービスのポータル画面やアプリケーションの作成まで幅広くサービス提供するほか、予算やユーザーの利用頻度に最適な基地局設置を行なうための利用者ニーズ調査にも対応。無線LAN構築のきめ細かいニーズに対応できるとした。

 アクセスネットワーク事業本部 ワイヤレス事業部 電波設計事業部の古川誠部長は、電波シミュレーションソフトウェア「RadioArea Viewer」シリーズを紹介。これはさまざまな環境での電波表示をシミュレート、基地局設置の最適な場所をエリア図で表示するソフトウェアだという。

 RadioArea Viewerには屋内向けの「QualityMeister3D」、屋外向けの「LOSFinder」という2種類を用意。QualityMeister3Dでは、無線電波の壁反射や透過、他無線LANとの干渉といった要因をふまえて通信品質を測定できる。無線はPHSや2.4GHz帯、5.2GHz帯に対応するほか、無線LAN製品の名前で選ぶこともできるという。

 LOSFinderは、FWAなど屋外の無線基地局と加入者間の受信レベルや見通し率などを計算・表示できるソフトウェア。建物のデータは市販の地図データを取り込んで利用でき、無線LANの見通し率を色別に表示できる。

 中里氏は「すでに公衆無線LANスポットを展開している事業者とは手を組みづらく、サービスの対象は主に自治体など」と説明、「通信事業を自ら行なっていないという点で、NTT-ATをうまく利用してほしい」と語った。


QualityMeister3Dの画面 LOSFinderの画面

関連情報

URL
  NTT-AT
  http://www.ntt-at.co.jp/

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(甲斐祐樹)
2003/12/05 17:15
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