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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
IP電話サービス「@niftyフォン」をテスト

 昨年の秋から盛んにサービスの発表が行なわれたIP電話サービス。中でも試験サービスの開始、プロバイダー間の相互接続など、具体的なサービス内容を打ち出してきたのがOCN、So-net、@niftyのプロバイダー3社によるIP電話サービスだ。今回はその中で申し込み時期のもっとも早かった「@niftyフォン」を使ってIP電話サービスを試用してみた。


フレッツ・ADSL モアでサービスを申し込み

 @niftyフォンの試験サービスは12月20日より開始、モニターの応募は12月2日より受け付けていた。サービス開始時期こそOCNの12月20日、So-netの12月24日と大差ないが、モニター受け付けはOCNの12月20日、So-netの12月18日よりも早く、結果として12月20日から試験サービスを利用できるユーザーも多かったのではないかと推測できる。試験サービスは正式サービス開始予定となる3月まで行なわれ、期間中は一般加入電話へも無料で通話できる。対象ユーザーはフレッツ・ADSL、アッカ・ネットワークス、イー・アクセスの8Mまたは12Mタイプで電話を共用するタイプ1のADSL回線を利用しているユーザーで、今回はフレッツ・ADSL モアで申し込みを行なった。

 @niftyフォンの利用にはVoIP機能を内蔵したADSLモデムまたはTAといった機器と、それとは別に送付される@niftyフォン用のIDやパスワードなどの情報が記された書類が必要だ。これはプロバイダーのIDやパスワードとはまったく異なるもので、両方が揃わなければ試験サービスは利用できない。

 @niftyから送られてきた機器はモデムに外付けするタイプの「IV-110SN」。IP電話サービスのニュースリリースなどでは「TA」という名称で呼ばれているが、実際にはWAN側に10BASE-T×1ポート、LAN側に10BASE-T/100BASE-TX×1ポートを搭載したVoIP機能内蔵ルータと考えたほうがわかりやすい。なお、TAかモデムかという機器の種別は回線事業者によって決定され、フレッツ・ADSLとイー・アクセスはTAタイプ、アッカ・ネットワークスはモデムタイプが送付される。本体のほかにはACアダプタ、電話回線用のRJ-11ケーブル(約3m)とインターネット用のRJ-45ケーブル(約1.8m)がそれぞれ1本ずつ同梱。マニュアルは白黒のスタートアップマニュアルとユーザーズマニュアル、カラー図解で導入手順を説明している「かんたん接続ガイド」が用意されていた。


IV-110SNのセット一式。マニュアルのほかに注意事項やVoIPセンター窓口などを記載した紙も同梱されている IV-110SN本体 IV-110SN背面

既存ルータとの併用はサポート外

 本体の接続は一見するとややこしい印象を受けるが、電話回線ではスプリッタと電話機の間、インターネットではモデムとパソコンの間にIV-110SNを差し込むイメージで、同梱の「かんたん接続ガイド」を見ながら作業をきちんと進めていけばそれほど迷うこともない。しかし問題となるのはすでにルータを導入している環境での設定だ。IV-110SNはルータ機能を内蔵しており、IP電話機能を利用するためにはグローバルIPアドレスをIV-110SNに割り当てる必要があるため、基本的には両者を並存させることはできない。今回の試験サービスでVoIP対応機器の専用窓口として用意されているVoIPセンターでも「ユーザーには従来のルータの代わりにIV-110SNを利用するよう勧めている」といい、IV-110SNとは別のルータを導入した場合は動作保証の対象外になるとしている。


接続イメージ。IP電話は太線部分のみを接続すれば利用できる

 筆者の環境もご多分に漏れずルータを導入しており、パソコンのほかにもオンラインゲームなどのためにインターネット回線を複数利用しているため、今さら1ポートに戻したくはない。スイッチングハブを別途購入する手段もあるが、PPTPパススルーなどの機能面でも現在のルータのほうがメリットが大きい。しかしここで運がよかったのが、筆者のルータがNEC製の「Aterm BR1500H」だったことだ。NEC製ルータの一部では「PPPoEブリッジ」という機能をサポートしており、これを使ってBR1500Hに接続された端末1台にグローバルIPアドレスを割り当てることができる。このPPPoEブリッジ機能は正式にサポートはされていないが2セッション同時接続が可能であり、@niftyとは別にコンテンツ視聴用として別途用意していたBB.exciteを使うことで、BR1500HとIV-110SNを並存させることができた。このあたりは別途清水理史氏のコラム「イニシャルB第29回 PPPoE 2セッション同時接続可能になったフレッツ・ADSLを検証」を参照されたい。なお、上記でも述べたとおり、このような利用形態はサポート対象外となるためあくまで自己責任での利用ということになる。

 また、今回の試用では回線にフレッツ・ADSL モア、モデムはブリッジタイプの「MNII」を利用しているが、イー・アクセスで提供するルータタイプのモデムを利用するユーザーは、モデムをブリッジモードに切り替えるという手間がさらに発生する。アッカ・ネットワークスのユーザーであればVoIP機能内蔵のモデムが送付されているが、こちらであれば従来のモデムと置き換えるだけで利用できると思われるし、余計なケーブルやACアダプタも少なくなるため、利便性は高いだろう。

 機器の接続が済んだあとはIDやパスワードの設定を行なう。設定に必要な情報は「050」から始まる専用番号、VoIPサーバ名、サービスドメイン名、VoIPサービス専用のユーザーIDとパスワードの5つ。もちろん現在利用しているADSL回線の認証IDやパスワードも必要だ。設定の際には専用ユーティリティなどは使用せずにWebブラウザから行なう。こちらも「かんたん接続ガイド」通りにすすめていけばさほど問題はない。インターネットが問題なく利用でき、IV-110SNの「Status/Alarm」ランプが緑に点灯すれば成功だ。


インターネット機能の設定。PPPoE認証用のIDとパスワードを入力 IP電話機能の設定。それぞれプロバイダーから送られた情報をそのまま入力すればよい

通話品質は極めて高いと実感

 利用に際してはIP電話を特に意識する必要はない。初期設定では一般の電話番号や「050」の専用番号に発信する場合はIP電話で、携帯電話・PHSや110、119といった特別番号へ発信する場合は通常の電話回線(以下PSTN)へ自動で切り替わる。IP電話で通話する場合はダイヤル後の「プッ」という音が、PSTNで通話する場合は「ププッ」という音が鳴るが、この音がした時点で相手側の着信音が鳴り始めるので、IP電話のつもりがPSTNで発信していたことに音で気づき、その場で回線を切った場合はいわゆる「ワン切り」状態になってしまうので注意が必要だ。また、IV-110SNでのランプ表示による確認もこの「プッ」という音が鳴ったタイミングで表示されるため、サーバーの不具合などでIP電話が利用できない事態をあらかじめ判断するのは難しい。

 通話品質は非常に高く、遅延や寸断は筆者にはほとんど感じられなかった。モデムとTAの間を無線LAN化するという実験も行なってみたが、通話に支障はなかった。この点はIV-110SNがQoS(Quality of Service)をサポートしており、データよりも音声を優先させる仕様になっている点も大きく影響していると思われる。なお、IV-110SNでは音声圧縮方式として「G.711u-law」「G.729a」の2方式をサポート。VoIPセンターによれば、IP電話利用時には初期設定として「G.711u-law」を選択、「G.711u-law」に対応しない場合には「G.729a」に切り替わる仕組みだという。この対応しない場合とは例を挙げればFAX送受信の場合で、この点からも@niftyフォンではFAX送受信をサポートしていることがわかる。

 ナンバーディスプレイはユーザーが加入しており、IV-110SNで設定を済ませれば通常通り表示させることが可能。ただし、発信側からの番号通知はIP電話経由では利用できず、PSTNを選択して発信する必要がある。また、IP電話同士であれば、ナンバーディスプレイに加入していなくても番号の発着信が可能だ。細かい点では、IV-110SNの電源を切ってみてもPSTNでの通話は可能だった。IV-110SNを導入していても停電時は問題なく通話できることがわかる。


ナンバーディスプレイの設定画面

 電話機能のあとはルータの機能としてスループットも測定してみた。CPUにPentium 4 1.4GHzを搭載したパソコンを利用し、フレッツ・スクウェア内で測定したところ、約3.7Mbpsという速度が出た。従来から利用しているBR1500Hでは5Mbps近い速度が出ているので、スループットの面ではやや物足りないが、まだ試験サービス中の機器である点と、対象がADSLユーザーのみである点を考慮すればまずまずといったところ。ちなみにBフレッツのベーシックタイプを用いて測定した場合は6.5Mbps程度の速度を記録した。フレッツ・ADSL モアとBフレッツでは測定した時間もパソコンも異なるので一概に比較はできないが、あくまで参考として捉えて欲しい。


IV-110SNでの測定結果 同一環境でBR1500Hを用いて測定した結果

Bフレッツ ベーシックタイプでの測定結果

  @nifty広報によれば、試験サービスのモニターは年末までに8000人近い申し込みがあったという。また、TAやモデムといった機器の送付状況は1月7日現在でモニターの約3割程度に対して機器をすでに発送しており、今後も順次機器を発送していく予定だとしている。

 サービスを一通り利用して感じたことは、IP電話サービスのクオリティの高さだ。「相互通話は無料」「通話料が安くなる」という謳い文句だけではなかなか実感しにくいが、実際に導入してみると品質の高さや使いやすさは実用サービスレベルにあると思えた。もちろん障害時や携帯電話・PHS、特別番号への通話など課題は多いが、PSTNとの併用という現状の方式であれば不便は感じない。現在は試験サービス中ということで機器レンタル、通話料などがすべて無料だが、正式サービス時の料金体系が気になるところだ。

 ただしサービスに必要な機器の面ではまだ課題も多いと感じられた。今回試用したTAタイプのIV-110SNでは前述の通りルータと並存させることが難しい。無線LANルータで家庭内LANを無線化していたり、VPNパススルーを利用して会社に接続しているといったユーザーには導入の障害となるだろう。このあたりは市販のルータがVoIP機能を搭載するといった対応など、IP電話サービスの普及いかんにかかっていると思われる。

 2003年1月からはOCN、So-net、@niftyによる相互接続も予定されており、DreamNetやPanasonic hi-hoも試験サービスをスタートする。メガコンソーシアムを中心としたIP電話サービスはまだ実態が見えてこないものの、着実にIP電話普及への土台は固まっているという印象だ。VoIP基盤ネットワーク事業者間での相互接続など課題はあるが、夏にはNTTの交換設備が「050」での着信に対応する予定であることも踏まえれば、2003年はIP電話サービスが本格化することが期待される。


関連情報

URL
  関連記事:OCN、So-net、@niftyがIP電話サービスで提携
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/103.html
  関連記事:@nifty、IP電話「@niftyフォン」の試験サービス
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/220.html
  関連記事:清水理史の「イニシャルB」 ~PPPoE 2セッション同時接続可能になったフレッツ・ADSLを検証~
  http://bb.watch.impress.co.jp/column/shimizu/2002/10/08/


(甲斐祐樹)
2003/01/07 18:02
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