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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
JEITA、無線LANの利用促進技術に関する技術説明会を開催

 社団法人電子情報技術産業協会(JEITA) モバイル・ホームシステム協議会は2日、無線LANスポットにおける利用者端末の利用促進技術に関する技術説明会を開催した。説明会ではNEC、富士通、日立製作所が無線LANのシームレス認証技術やハンドオーバ技術などについて解説した。

 はじめに富士通の折田聡氏から、現状の無線サービスにおける課題と今回の技術の位置付けが説明された。現状の公衆無線LANサービスなどでは無線LANが利用できるスポットからインターネット接続までを垂直統合的にサービス提供しているが、折田氏は「約束された組み合わせ以外の接続が難しく、オープンなサービス発展が阻害されている」と指摘。今回発表する技術によって、垂直統合型ではない独立したビジネスを実現するとした。

 今回発表された無線LANの利用促進技術は、NEC、富士通、日立の3社で分担して開発されている。NECはどの公衆無線LANスポットからもユーザーが簡単にインターネットへアクセスできる「シームレス認証技術」、富士通はユーザーが使いたいサービスを端末やネットワークに応じて提供する「プラグ&プレイ技術」、日立製作所が異なるネットワークを切断することなく移動できる「シームレスハンドオーバ技術」を担当、各社から技術説明が行なわれた。


複数のネットワークへ自動でログインできるシームレス認証

NECの藤原隆平氏
 NECの藤原隆平氏はシームレス認証技術の説明に入る前に「今回のプロジェクトは、最終的な結果をビジネスとして確立するという条件付きの実践的な技術で、世の中をひっくり返すというよりは、現状のものを利用しつつ不足しているものを開発していこうという観点」とコメント。「インフラから来る発想ではなく、端末側からの発想」とした上で、シームレス認証技術の説明を始めた。

 シームレス認証技術は、端末側にユーザー情報を格納するメモリ領域を複数用意し、それぞれにサービスの利用情報を設定しておくことで、異なる複数の公衆無線LANサービスでも設定などを変更することなく利用できるというもの。端末保存された無線LANのESS-IDやWEP、ユーザーIDといった情報の中から、ユーザーの付近で利用できるネットワークやサービスを検出し、自動的にサービスまでログインする。

 説明会では企業内で本社、支社と異なるネットワークを移動する場面を想定したデモが行なわれた。あらかじめ端末に社員情報を設定、本社と支社それぞれのエリアに入るとサーバーへアクセスするだけで自動的に無線LANに接続する。また、社員情報を参照することで本社ではIP電話を使えるが支社では使えないといった柔軟な設定も自動で適用できる。デモはIrDAによる赤外通信で行なわれたが、技術の構造はICカードと同様であり、電子チケットのようにネットワーク経由でも認証が可能とした。

 公衆無線LANサービスなどでは、店舗にシームレス認証技術を搭載したPOSレジスターなどを設置、必要な情報だけを端末に送信するといった利用形態を想定している。本技術は公衆無線LAN事業者へそれぞれ納入を図るというよりも、FeliCaのような標準技術としての実現を目指す方針。


シームレス認証技術の概要 デモ環境。左が支社、右が本社のサーバー

サーバーと赤外線で認証を行なう。赤外線以外での認証も可能 社員証が自動で配布される

ユーザーに最適な情報を動的に送信するプラグ&サービス技術

富士通の折田聡氏
 富士通のプラグ&サービス技術は、ユーザーの個人情報に応じたコンテンツを自動で配信する技術。折田氏は「従来も個人情報に応じてコンテンツを絞り込む技術はあったが、それらはサーバー側で保有するプロファイルに応じた結果を端末に送信するといった方法が大半」と説明。この方法では、ユーザーの位置情報やプレゼンス情報といった動的に変化する情報が把握できないという。

 このため富士通の技術では、サーバー側には絞り込み候補のコンテンツと絞り込みのためのロジックを設置し、ユーザー側の端末が保有する個人情報とロジックを組み合わせることで、ユーザーに適した動的な情報を配信する。会場ではレストラン街を移動中に、あらかじめ設定しておいた自分の好きなジャンルの飲食店の近くを通ると店舗情報が自動で配信されるデモが行なわれ、折田氏は「プッシュ型配信とプル型配信の長所を兼ね備えた技術」との自信を示した。

 現在はPDAにPHSを組み合わせて技術の検証を行なっているが、将来的には携帯電話などへの搭載を見込んでいるという。その際の位置情報取得などはGPSといったハードウェア側の機能がなくともソフトウェアで実現可能であり、ネットワークに接続できる端末であれば利用可能とした。


プラグ&サービス技術の概要 デモ環境の概要

あらかじめ設定しておいたジャンルのレストラン情報が自動で送信される

ネットワークを切り替えても動画が途切れないハンドオーバ技術

日立の山口宗明氏
 日立では異なるネットワーク間を移動する際のシームレスハンドオーバ技術を紹介。ストリーミング映像を再生中に無線LANと3Gのネットワークを自動で切り替えるデモが行なわれた。はじめに接続している無線LANネットワークでバッファを蓄積しておき、ネットワークが切り替わった場合はその蓄積したバッファを利用しながら次のネットワークへ自動で切り替えを行なうことで、映像や音楽のストリーミングを途切れることなく提供できるという。

 デモでは無線LANを強制的に切断して3Gネットワークへの切り替えを行なったが、通常であれば無線LANの電波が弱くなっていくのを感知しながら、バッファの蓄積など徐々に切り替えの準備を進めていく。異なる2つのネットワークのセッションを同時に張っているため、無線LANの切り替えであれば現状は無線LANインターフェイスが2つ必要になってしまうが、「無線LANと無線LANとの間を3Gで補完する」といった利用形態を想定しているという。

 異なるネットワークの移動技術としてはモバイルIPも存在するが、日立の山口宗明氏は「サービスの継続は可能だが瞬断が発生してしまうほか、同一のパケットではない異なるサービスとの切り替えなどは難しい」とコメント、シームレスハンドオーバ技術の重要性を示した。

 モバイル・ホームシステム協議会では2005年1月に本技術による実証実験を実施、ビジネスとしての展開を検討していく。実証実験の規模や場所といった詳細は現在検討中とした。


シームレスハンドーバ技術の概要 デモ環境。左のサーバーからストリーミング配信される動画を右のクライアントで再生する

動画を無線LANで再生 無線LANを強制的に切断すると動画が止まることなく3Gに自動で切り替わる。デモ用に3G接続では画面のサイズを小さくしている

関連情報

URL
  モバイル・ホームシステム協議会
  http://mhsf.jeita.or.jp/

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(甲斐祐樹)
2004/09/02 18:57
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