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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
VoIP推進協議会「IP電話の将来展望」

VoIP推進協議会の濱野勲会長
 NET&COM2003の「新世代通信サービス&IPテレフォニ・セミナー」では、VoIP推進協議会の会長を務める三菱電機情報ネットワーク代表取締役社長の濱野勲氏が「IP電話の将来展望」と題して講演を行なった。

 濱野氏はまずVoIP推進協議会の概要から講演を始めた。同協議会は総務省およびテレコムサービス協会の支援により、2001年4月23日に設立。年に4回の全体会合、月に1回の企画会議のほか、具体的な内容については個別にワーキンググループを設置、活動を進めている。2001年第1期にはHATS推進会議(Harmonization of Advanced Telecommunication Systems)と共同でIP電話の相互接続実証実験を実施。2002年第2期にはIP電話普及のためのビジョン策定やVoIPの品質に係る課題などの検討などを進め、9月には050取得のためのガイドラインを策定した。HATSとの相互接続実験も継続して実施しており、そのほかにもIP電話の品質測定と品質表示の在り方、第一種事業者ネットワークとの相互接続、IP電話機器の相互接続性などの課題について検討を進めているという。


IP電話の普及要件はすでに整いつつある

 IP電話について濱野氏は「インターネットの中で自然的に発生したため、多種多様なサービスが存在している」と前置き、IP電話について説明を行なった。総務省の定義によればIP電話は「ネットワークの一部または全部においてIP技術を用いて提供する音声サービス」とされている。このうちWWWといったインターネットと同じネットワークを利用する音声サービスは「インターネット電話」と呼ばれ、濱野氏はIP電話とインターネット電話は別区分で扱う必要があるとした。また、総務省が交付する「050」番号の交付条件としては「品質保持義務」「基幹のバックボーン整備」「既存固定電話との通話は呼び出し可能であること」が挙げられた。

 IP電話の普及に必要な条件としては、「IPネットワークのバックボーンが整備されること」「アクセス回線が余裕のある状態で整備されること」の2点が大きく挙げられるという。濱野氏はADSLの急速な普及なども手伝い、ブロードバンド環境が整いつつある現状では、「これらの条件はすでに整いつつあると理解してよい」とコメントした。

 IP電話と固定電話を比較した場合、IP電話は従来のデータ機器と統合が可能なため、機器の運用費用、通信費用といったコスト削減を図ることができる。また、IPプロトコルを用いたシステム、サービスとの親和性が高いため、さまざまな形で発展していくことが期待されるという。さらには「050」番号の付与により、場所を選ばずアクセスすることが原理的には可能になるため、電話のポータビリティや利便性は飛躍的に高まるとした。


IP電話普及への課題

 一方、IP電話の課題として濱野氏は、「(IP電話サービスにおいて)品質や接続形態が多種多様な形で存在することが問題だ」 と指摘。従来の交換機網では独立したネットワークによって音声品質を保持できていたが、IP電話については様々なシステムやプロトコル、第一種事業者との相互接続といった問題のほか、セキュリティや料金設定などの問題も生じるという。またR値といった一定の基準による品質保持・品質表示の在り方や、通信方法、関連機器の標準化といった問題も残されているとした。

 これら課題について濱野氏は「品質保持義務という点については、IP電話事業者間で協議しながら、ユーザーに対して保証を行なっていくことが前提である」とコメント。110や119といった緊急通話が現状では提供できない点については総務省や関連機関で検討が進んでおり、セキュリティといったサービス面でも「技術の進歩によって解決できると思う」という展望を示した。協議会でもこういった問題を解決するためのガイドライン作成や協議体制を整えるといった活動によって、IP電話サービスの普及を促進していく方向だという。また、「ここでは取り上げる問題ではないかもしれないが」という前置きの上で、IP電話サービスのビジネスモデルについても「ビジョンの策定や環境整備といった活動を行なって行きたい」とした。


IP電話はユビキタス時代の基幹サービスに

 IP電話の将来展望については、前述の通りブロードバンド環境の急速な普及によって、IP電話普及の条件も整っているとコメント。協議会の会員向けに行なったアンケートの調査結果を引用し、IP電話分野の全売上高も2002年度の2000億円程度から2004年度には280%の伸びを示すだろうと予測した。また、ITU-Tでも国際間の音声トラフィックが2004年にはIP電話が40%を占めるだろうという調査結果が発表されており、国際的なIP電話の普及が期待されているという。

 IP電話の具体的な普及予測としては、コスト削減といったメリットから企業内通信網が先行すると濱野氏は見る。事業者間の相互接続、IP電話の環境整備などが進めばユーザー環境でもIP電話は急速に普及するが、緊急通話や様々な付加サービスの面から見ても、ユニバーサルサービスとしての固定電話の重要性は継続するであろうという予測を示し、「固定電話からIP電話へは穏やかな移行になるだろう」と語った。今後はモバイル環境での電話サービスも発生するが、固定電話、IP電話も含め「個々の特質からの役割分担による並存が自然の流れだろう」という考えを披露した。

 総括として濱野氏は「家庭や自動車、ゲームのネットワーク化や無線LANの発展など、いわゆるユビキタス時代の中で、IP電話はその基幹サービスとして位置づけられると確信している」とコメント。協議会ではIP電話の持つ社会的な役割を背負いつつ、新たなコミュニケーションメディアとしてのVoIP発展に貢献していきたいと意気込みを語った。


関連情報

URL
  NET&COM2003
  http://expo.nikkeibp.co.jp/netcom/
  □VoIP推進協議会
  http://www.telesa.or.jp/voip/
  関連記事:VoIP推進協議会、IP電話の申請などに関するガイドラインを策定
  http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/09/11/voip.htm


(甲斐祐樹)
2003/02/05 16:22
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