10月7日に開催された「NINTENDO DS PREVIEW」では、任天堂代表取締役社長の岩田聡氏がニンテンドーDS(以下DS)のコンセプトや今後の展開を説明。ネットワーク機能を利用した新たな試みなどが紹介されたほか、スクウェア・エニックスはオンラインゲームのDS展開も興味を示しているという。
■ タッチスクリーンによる直感操作が大きな特徴
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任天堂取締役社長の岩田聡氏
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岩田社長は、宇多田ヒカルが出演するニンテンドーDSのテレビCM映像で構成したプロモーションビデオを上映したのち、「宇多田さんの素の反応をCMに反映したいとの意向で、当日はじめてDSにさわってもらったが、前提知識がなくても楽しんでいただいた」とコメント。「当初の開発意図をDSで実現できたという手応えをはっきり感じた」と語った。
岩田社長は続けて、「ファミコンが世に出て21年、初代ゲームボーイから14年が経ち、ビデオゲームは進歩した一方で複雑でわかりにくくなっており、ゲーム離れという市場の縮小を招いている」と指摘。「このように進歩したゲームがあふれる時代にただシンプルなゲームを出しても熟練者には価値のない遊びになってしまうので、シンプルなだけでは答えにならない点が難しい」と続けた。
この状況を打開するためには「新しい構造の遊びを発明し、遊び手にいい意味で驚きを与え、楽しんでいただくためには今までにない構造のゲーム機が必要」であり、その最初の答えがDSだという。岩田社長は「重要なのはDSでどんなことが実現できるかであり、本日はその一端をお話しする」と語った。
「DSのわかりやすい特徴の1つ」として岩田社長はまず「タッチスクリーンによる直感的な操作」を挙げた。岩田社長は「十字キーとボタンというファミコン以来の操作は20年以上の歴史を重ねており、熟練者と未経験者の間にコントローラ捌きで大きな差が生まれている」とコメント。「タッチスクリーンは形を変えたコントローラでもあるほか、わかりやすい2次元画面と演出の3次元画面を同時に表示、遊び手が画面を選ぶなど2画面ならではのことが実現できる」とし、タッチスクリーンと2画面の組み合わせに自信を見せた。
■ ワイヤレス通信を使った新たな試み
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ニンテンドーDS
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もう1つの特徴として、ワイヤレス通信が紹介された。岩田社長は「ゲームボーイの通信ケーブルをワイヤレスにしただけではない」と前置いた上で、DSのワイヤレスダウンロード機能を紹介。ワイヤレス経由でプログラムを受け取り実行することで、1つのゲームソフトを多人数で共用することが可能になるという。
さらに店頭でのゲーム試遊にもこのワイヤレスダウンロード機能を採用する方針。具体的にはプレイ制限を設けたゲームのプログラムを店頭からDSにダウンロードして体験できるようになる。岩田社長は「食わず嫌いで本来のポテンシャルを発揮できず終わっていたゲームを減らすと同時に、続編中心で保守的なゲームのヒットチャートにたくさんの新作を送り込む流れを作りたい」との意気込みを見せた。
先日一部報道で、任天堂の山内溥取締役相談役が「劇場用アニメを作る事業を提案したい」と発言した件については、「前向きに検討しているが現在お話できることはなく、2004年内に結論が出しだいあらためてご報告したい」とした上で、DSを使った劇場用映画の取り組みを紹介。2005年夏公開のポケモン映画では、ポケモンのゲームソフトへの配信を劇場内でストーリーに同期して行なうという。対応ソフトはゲームボーイアドバンス用のポケットモンスターシリーズ「ルビー」「エメラルド」など5作品で、岩田社長は「詳しいサービス内容は後日紹介するが、できるだけ多くの映画館で実現できるよう調整している」と語った。
DSと同時に発売するソフトは、任天堂の「スーパーマリオ64DS」「さわるメイドインワリオ」「大合奏!バンドブラザーズ」「ポケモンダッシュ」が4,800円で、「直感ヒトフデ」が3,800円。また、ソフトメーカーからは本体と同時に7タイトルが発売され、年末までに合計14タイトルが用意される。現時点での対応タイトルは46社124タイトルに上るという。
岩田社長は最後に「任天堂はDS以外にも力を入れていく。ゲームボーイアドバンス SPも価格改定以降好調でさらなる市場拡大が期待できるほか、ゲームキューブでも新しい操作感をテーマとしたタイトルを年末に予定している。ここに新たなハードのDSを加えることで、任天堂は今後も革新的な遊びに取り組んでいく」と語った。
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「スーパーマリオ64DS」はヨッシーなどでプレイできるほか、ミニゲームも追加される
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最大8人で合奏できる「大合奏!バンドブラザーズ」
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一筆書きのパズルゲーム「直感ヒトフデ」
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ミニゲームが詰まった「さわるメイドインワリオ」
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タッチペンで操作するレースゲーム「ポケモンダッシュ」
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■ 宇多田ヒカルが心を奪われた「Nintendogs」
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任天堂 専務取締役情報開発本部長の宮本茂氏
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続いて任天堂 専務取締役情報開発本部長の宮本茂氏が自社タイトルについてプレゼン。「CMで宇多田さんが遊んでいたのはこのソフト」と、「Nintendogs(仮称)」が紹介された。宮本氏は画面の中の犬をタッチペンでなでたり、声で「おすわり!」「ごろーん」と喋って操作するデモを行ない、「今までのゲームのように攻略がどうとか、何ステージとかいう考えがいらないので、作っている方も新鮮」とコメント。「春までにはしっかり調教して市場に出したい」と会場の笑いを誘った。
本体と同時発売の「スーパーマリオ64DS」は、NINTENDO 64の同名タイトルをそのまま移植しただけではなく、新たにヨッシーやワリオ、ルイージといったキャラクターでもプレイできるほか、タッチペンだけで操作できるミニゲームが30ほど追加されている。宮本氏は「大合奏!バンドブラザーズのような合奏ゲームやさわるメイドインワリオなど、そうとう準備しているので、実際にさわってその良さを体験してください」と語った。
セガのR&Dクリエーティブオフィサーを務める中裕司氏は、「きみのためなら死ねる」を紹介。宮本氏の「大胆な名前ですねえ」との質問に「新しいハードで新しいソフトを作る時に今までと違った名前が欲しかったのと、ストーリーを感じてもらえるドラマ性のある名前を付けたかった」と回答。宮本氏が「音楽も評判になってますね」と続けると、「ゲーム音楽がこれほど話題になるとは思っていなかった」と喜びながら語った。
DSについて中氏は「一番良いなと思ったのは片手でプレイできること。タッチペンだけで操作できるので『ゲームが難しい』と思っている人もぜひ触っていただきたい」とコメント。「きみのためなら死ねる」では音声入力にも対応しており「下の画面に息を吹きかけてロウソクを消せるという場面をぜひ体験してほしい」と語った。
「きみのためなら死ねる」はワイヤレス通信に非対応だが、12月24日発売の「ぷよぷよフィーバー」は最大8人対戦に対応するという。「音声も8人分出力されるのでDSは能力が高い」とのコメントに、宮本氏も「マリオもNINTENDO 64よりよく動いています」と付け加えた。
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宇多田ヒカルも夢中になった「Nintendogs(仮称)」
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「ラヴィ!」のかけ声が印象的な音楽も話題の「きみのためなら死ねる」
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ワイヤレスで最大8人対戦が可能な「ぷよぷよフィーバー」
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ワイヤレス対戦対応の「メトロイドプライム ハンターズトーナメント(仮称)」
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■ ニンテンドーDS用のオンラインゲームも視野に
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左から任天堂の宮本茂氏、セガの中裕司氏、スクウェア・エニックスの河津秋敏氏、ポケモンの石原恒和氏
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ファイナルファンタジーIIIはオープニング映像が公開された
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スクウェア・エニックス 取締役開発担当執行役員の河津秋敏氏は、今回が初めての発表となる「ファイナルファンタジーIII」を紹介。ファミリーコンピュータ向けソフトのリメイクとなる本作だが、河津氏は古いゲームがどう生まれ変わるのかご期待ください」と語った。
「スクウェア・エニックスといえばインターネットですよね?」という宮本氏に対して河津氏は「さすがに現在提供中のものをDSに載せるのは難しいですが」と前置いた上で、モバイルで展開しているものをDSでやっていけば、『ネットワークゲームの敷居が高い』と思っているユーザーの敷居を下げられるのではないか」との見通しを語った。
ポケモン代表取締役社長の石原恒和氏は、タッチスクリーンを使ってポケモンのレースゲーム「ポケモンダッシュ」を紹介。GBAカートリッジとの連動も考えられており、レースコースをGBA版のポケモンで集めたモンスターのデザインに変更できるという。また、DS用ソフトとして「究極決定版のポケモン」という位置付けの「ダイヤモンド」「パール」の開発に着手していることも明らかにされた。
ソフトメーカーの紹介が終わったのち宮本氏は「内蔵なのでソフトとして数えられないが」として「ピクトチャット」を紹介。「インターネットや携帯電話が面白いというのは人とのコミュニケーションであって、その道具として(ピクトチャットを)作っているだけなので非常に面白い」とコメント。「仕事場で開発チェックをしていたら、いつの間にか同じ部屋の人が入ってきて仕事の相談になってしまった。仕事にも使えるのでオフィスにもぜひ」と笑いを誘ったのち、「これからも任天堂は面白いこと、新しいこと、エンターテインメントを求めて新しいことにチャレンジしていきます」と説明会を締めくくった。
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会場では「メトロイドプライム ハンターズトーナメント(仮称)」のワイヤレス対戦やピクトチャットが体験できた
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ニンテンドーDSのパッケージ
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DS対応ソフトとパッケージ
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72台の試遊台が用意された体験会場は大盛況。開発中のタイトルも多く出展された
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■ URL
ニンテンドーDS 公式サイト
http://www.nintendo.co.jp/ds/
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(甲斐祐樹)
2004/10/07 20:28
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