日本テレコムは16日、列車内におけるブロードバンドインターネット接続実験に成功したと発表した。時速120kmの高速移動中に最高15Mbpsでの通信を実現したほか、現在は時速500kmで実効15Mbps以上のシステム開発に取り組んでいるという。
■ 最低でも8Mbpsの通信速度を確保。ハンドオーバー結果も良好
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実験の概要
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この実験は、JR北海道の協力を受けて2004年7月から10月末にかけて行なわれたもの。実験はJR北海道のJR千歳線区間のうち新千歳空港寄りの「島松~南千歳」の約10km区間で行なわれ、このうち「恵庭~長都」区間では日本テレコムが運営するODNを経由してインターネットに接続している。
実証実験では2つの無線ゾーンが構築され、無線ゾーンは列車沿線に平均1.7km間隔で設置された無線LANアクセスポイントで中継することで試験エリア全体をカバーする。アクセスポイントの設置位置は見通し距離に応じて異なり、都市部では0.5~1kmごと、郊外には1~2kmごと、見通しの良い直線区間には2~4kmごとに設置。無線の通信方式は2.4GHz帯を利用したIEEE 802.11gが採用された。
実験にはJR千歳線の「快速エアポート」1編成が用いられ、走行回数は1日に実験区間を3往復、1回の通過時間は7~8分程度だという。車内には後方運転席に無線機器とWebカメラ、IP電話機器を設置し、実験エリアと同様に無線の中継で車両間を接続。試験期間中は乗客向けのモニターテストも行なわれた。
7月と8月には基礎伝搬試験が2回行なわれ、この結果を踏まえて9月末にアプリケーション試験が行なわれた。基礎伝搬試験では、アクセスポイントの設置は高低差よりも見通し確保の影響が大きいという結果が確認できたほか、全線に渡ってほぼ15Mbpsに近い実行速度を確認。環境の悪い場所でも8Mbpsの通信速度を確保したほか、湾曲した約2kmのトンネル区間やアクセスポイントのハンドオーバー動作確認も良好な結果が得られたという。アプリケーション試験では、実際のインターネット接続やWebカメラを使った動画モニター、列車内からJR北海道および携帯電話へのIP電話発信といった試験が行なわれた。
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実験のネットワーク構成
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後方運転席の実験風景
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■ 快適なブロードバンドサービスを列車内で実現
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日本テレコム プロダクト統括本部 研究開発本部 情報通信研究所の山崎吉晴部長
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日本テレコム プロダクト統括本部 研究開発本部 情報通信研究所の山崎吉晴部長は今回の実証実験について「JRの駅や喫茶店などで展開しているモバイルポイントと同様のサービスを列車内でも実現できないか」との考えから開始したと説明。「現在列車の中でのインターネット接続はPHSや携帯電話が主流だが、それは快適とは言えないだろう。会社や家庭のようにできるだけ快適なブロードバンドサービスを列車内で実現したい」との意気込みを示した。
ハンドオーバーにモバイルIPを利用しているのかという点については「今回の試験ではモバイルIPとは異なる方式を採用している」と説明。「モバイルIPは処理が重いため、移動通信が高速かつ一定期間内の処理が必要である今回の実験では、モバイルIPとは異なる方式が適しているだろう」と補足した。
無線アクセスポイントの設置コストは「おそらく投資額が一番かかるところだろう」との考えを示した上で、「沿線に敷設されている光ファイバを利用する方法もあるが、それができない事業者もいれば、すべてのエリアで光ファイバが利用できるわけでもない。今回の実験方式は、有線の媒体がなくてもできる方式であるため、一般化できれば投資額を下げられるのではないか」との考えを示した。
商用化のスケジュールは現時点では未定だが、「乗客のためでも鉄道事業者のためでもあるサービスであり、ビジネスモデルなどについて鉄道事業者と相談していく必要があるだろう。見通しや建築物の構造などをパターン化してフィールド実験を行ない、実績を重ねて商用化に持って行きたい」とコメント。「今回の実験で技術的なハードルや基本的な部分は確認が取れたが、今後は振動や温度、車載設備の耐久性なども開発の課題になる」とした上で、「個人的な気持ちとしては、1年もすれば(商用化が)見えてくるのではないか」との展望が示された。
ボーイングが採用している通信衛星を用いたインターネット接続サービスについては「列車でも実現は実現は可能だが、アンテナがかなりの大きさと聞いており、そういうものを搭載するのは車両を作る上での制約があるのではないか」との考えを示したのち、「我々の実験は無線機のサイズも小さい」と自信を見せた。
なお、日本テレコムが京浜東北線で実施している無線LANを使った広告配信実験は、今回の実証実験とは異なるものの、現在も行なわれているという。山崎氏は「今回のような列車内のインターネット接続サービスが一般的になれば、停車駅以外の中間地点でも広告配信が可能になるため、サービスとしてはより良いものになるのではないか」と語った。
■ URL
ニュースリリース
http://www.japan-telecom.co.jp/newsrelease/2004/nov/nr041116/nr_fs.html
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(甲斐祐樹)
2004/11/16 17:21
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