東京都内で27日、アフィリエイトマーケティング協会主催による「第4回 アフィリエイト・カンファレンス」が開催された。はてなの伊藤直也氏による講演をはじめ、ブログやアフィリエイト業界で著名な人物によるパネルディスカッションが行なわれた。
アフィリエイトマーケティング協会は、アフィリエイト関連サイトに携わる有志によって設立された組織。協賛企業の協力を得ながら、2003年4月から継続的にカンファレンスを実施しており、今回が4回目の開催となった。
■ 整理整頓されたコンテンツがアフィリエイト収入につながる
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はてなの伊藤直也氏
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ブログとアフィリエイトの親和性として挙げた4つのポイント
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カンファレンスは、「Blog Hacks」の著者であり、現在は株式会社はてなに在籍する伊藤直也氏による「Blog Hacks for アフィリエイト」と題した講演からスタート。ブログとアフィリエイトの組み合わせが注目されるポイトなどを説明しながら、即効性のあるアフィリエイトのTIPSなどに触れた。
伊藤氏ははじめに、アフィリエイトに関するブログの特徴4点を説明。1点目として、Webブラウザだけで記事を更新できるという「誰でも簡単に更新できる」というポイントを挙げた。
続く2点目は「自己表現の場としてのブログ」。伊藤氏は「アフィリエイトを始める時、単純にお金が欲しいというだけでなく、自分が使ってみて面白かったものや読んで良かった本を人に紹介したいというきっかけを持つ人が多い」とのアンケート結果を示した上で、「(人間には)いいものを人に勧めたいという本能がある」とコメント。Amazon.co.jpにおける商品レビューが、その好例だとした。
特に重要なポイントとして伊藤氏が強調した3点目は「整理整頓されたコンテンツ」だ。ブログは自動的に記事単位のページを出力するCMS(コンテンツ管理システム)機能を持っており、この機能によって、過去ログの準備といったサイトの整理を煩雑な操作を意識する事なく実現できる。また、話題ごとにページを作成する「1ページ1記事の法則」によって、Yahoo! JAPANやGoogleといった検索エンジンに検索されやすいという4点目のポイント「高いSEO効果」を結果的に呼び込むという。
さらに伊藤氏は、検索エンジンはリンクが多数張られているページを優良なページであると判断するため、ブログ運営者の間に根づく「リンクを張る文化」がSEO効果の高い理由と解説。「ブログにはトラックバックをはじめとしたリンクを張るためのツールが用意されており、記事自体にもどんどんリンクを張っていこうという風潮がある」点も大きいと補足した。
伊藤氏は「ブログの登場でインターネットが変わってきた」とも発言。その上で「とくにコンテンツを、ブログというCMSで管理するという方法論が出てきた事が大事だ」と強調し、初心者でも整理されたわかりやすいWebサイトを作れるようになったという事実の重要性を説いた。そして「あくまでもブログはインフラであり、そのインフラをどのように使うかという中でアフィリエイトがある」とまとめた。
■ アフィリエイトはレポートを分析しながらの試行錯誤が重要
講演の後半は、タイトルにも掲げたアフィリエイトのTIPSを伊藤氏が解説。はじめにアフィリエイト用ツールの積極利用を勧めた。Amazon.co.jpでアフィリエイト用広告リンクを作成するには、サイトへのログインや商品番号を前もって調べておくといった手順が必要だが、これの解決策として伊藤氏は自ら開発したブックマークレット「amazlet」を紹介。「通常5~6ステップある広告作成アクションを、2つ程度に減らせる」という。
これに類するツールとして、同じく伊藤氏が開発したはてなダイアリー用の「はまぞう」に加えて、「G-Tools」といったツールも紹介。そのほかにもアフィリエイトレポートを毎日メール配信してくれる「asamasid」やSEO解析ソフト「ぐ~まに」、アクセス解析ツール「dopvSTAR*」などをオススメツールとしてピックアップした。
そしてもう1つのTIPSはGoogle AdSenseの最適化術。AdSenseはページの記述内容に応じた広告を自動挿入する仕組みだが、伊藤氏は「バナー広告と同じだと思っては駄目」と注意を喚起。伊藤氏のブログで、一般的なバナー設置部分であるページ上部では数%だったクリックレートが、本文直後に掲載するようにしたことで10倍程度に跳ね上がったという事例を紹介した。
ただし、これはあくまでも一例であり、ブログによって最適な広告の設置場所は異なるため、正解を求めるためには丹念にレポートを分析しながらの試行錯誤が肝要だという。伊藤氏は「まずはAdSenseの表示位置を検討し、枠線の有無やリンクの色、1ページに配置する広告数、表示レイアウトなどを検討してほしい」と語った。
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「amazletツール」などの外部ツールを積極的に活用
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Google AdSenseは設置場所などを十分検討する必要がある
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■ パネルディスカッションではアフィリエイトの秘策が乱れ飛ぶ
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司会のインターネットマガジン編集長 西田隆一氏
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続く第2部はパネルディスカッション「ブログ活用アフィリエイトの『ここが知りたい!』」。パネリストに「絵文録ことのは」運営者の松永英明氏、「アフィリエイト・ポータルネット」運営者のあびるやすみつ氏、健康・美容のトータルショップ「はなまる屋」運営者の川村みゆき氏、「[N]ネタフル」運営者のコグレマサト氏を迎え、さらに講演を終えたばかりの伊藤氏も列席した。司会はインターネットマガジン編集長の西田隆一氏。
ディスカッション冒頭では、各パネリストがブログを使う理由について大きく取り上げた。松永氏は「ブログのSEOの高さ、更新の手間がかからない事が理由だ」と語る。
「ページの追加作業は、サイト運営のモチベーションにも関わる問題。普通のWebサイトでは1ページを単に追加しただけでは終わらず、目次ページなどそのほかのページのリンクも修正しないと……。これを回避できるからブログを使っている(松永氏)」。
健康食品などの通販サイトを運営する川村氏は、その通販サイトとは別途にブログを利用している。「本サイトはマメに更新しているものの、変更された部分がわかりづらい。それを気付いてもらえるように、アピールするつもりで(補助的に)ブログを使っている」と、主目的は更新情報の告知にあると説明。実際、売上にも効果が見られたという。
コグレ氏も、子育てに忙しく、少しでも時間を節約したいとの理由から、更新性の高さをブログ利用の一因に挙げる1人。また友人の話として、画像の処理もできないような主婦が育児日記ブログをはじめたところ、AdSenseをはじめとした各種アフィリエイトで毎月1~2万円の収入を得ている実例も紹介した。
■ 記事の記述スタイルでアフィリエイト手法は異なる
アフィリエイト収益を上げるための考え方は、パネリストごとに大きく意見が分かれた。松永氏は自身の経験を例に「突発的にページビューが増大したからといって、必ずしも広告クリック数がページビューと同じ比率で増えるわけではない」と指摘。「ブログのSEOの高さにに寄りかかるだけではなく、テーマを絞って、あくまでもアフィリエイトを意識しながら記事を書かないといけないのではないか」という所感を述べた。
一方、コグレ氏はSEOの必要性を特に高く掲げる。「まずSEOありき。SEOはもはや常識で、SEOを意識していなくては母数となる訪問者数も少なく、そもそもWebサイトとして成り立たない」と強調した。ただし、ブログの内容については「あくまでも自分の興味があるもの全般として、特に絞らない方が精神衛生上も良いだろう」と語った。
あびる氏の発言はさらに端的で、「ページを増やせば収益が上がるというのは理屈としてある。ただ、(自らが運営する)アフィリエイトポータルネットでは、アフィリエイト収益の7割を稼ぎ出すのは、たった2ページに集約される」と説明しており、それぞれのブログ構成、ないし運営者の事情によって、収益の上げ方がまったく異なる傾向が浮き彫りとなった。
これらの事象に対し松永氏は「記事の記述スタイルが異なっているからだろう」とコメント。松永氏がメインで運営するブログは長文記事を旨としているが、この状況では文末にAdSenseを配置しても非常に効果が薄いのだという。このような長文記事にはむしろAmazon.co.jpを活用した関連商品広告が適し、短文の記事にこそAdSenseがうってつけではないか、と分析している。
コグレ氏もこれを補足する形で「長文記事では、それを読む事でユーザーは満足してしまうのかも。もちろんそういうスタイルのブログがあってもいいので、状況に応じて広告を選んだ方が良さそう」と続けた。
■ ブログでアフィリエイトは「儲かる!」で全員が一致
ディスカッションでは、1日平均6.5個の記事をエントリーするというコグレ氏がブログ更新のコツを紹介。同氏のブログは、報道記事などに短めのコメントを付加するスタイルだが、その情報源としてはRSSではなく、ニュースサイトのメールマガジンを活用しているという。これをWebメールで受信し、自宅・仕事場・外出先ではPDAで閲覧し、環境に依存することなく記事を更新。またニュースの見落としを減らすためのテクニックとして、Googleニュースの検索結果表示ページをブックマークしておく方法を披露した。
コグレ氏が秘策中の秘策として挙げたのは、「早起き」。会社からの帰宅後は子供と過ごし、現在は朝6時に起床。8時までの2時間をブログ更新作業に費やしているという。加えてモチベーション維持のために、1記事あたりの収入単価を計算したり、ブログ更新に専念した時間を時給に置き換え、グラフにしておくのも効果があるとした。
ディスカッション最後には、西田氏が全パネリストに対して「ブログを使ったアフィリエイトは儲かるか?」という質問を投げかけた。この質問には全員が「儲かる」と答えた上で、「テーマを絞るのはやはりアリ(松永氏)」、「普通のWebサイトと比較しても更新の手間が少ない分、ブログは有利(あびる氏)」と独自の哲学を披露した。
伊藤氏は「ブログをアフィリエイトとだけ結びつけるのはもったいない。例えば私がここに(講演者として登壇して)いるのはブログに関わっていたからで、雑誌の原稿を依頼されたりというケースもある。アフィリエイトはブログで得られるメリットのごく一部であって、ブログで自己を高めることができるというメリットもあるだろう」と発言。西田氏もこれに続く形で「ブログを日々更新していく楽しみや、お小遣いを得るなど、色々な面白みを皆さんが見つけ出して欲しい」と語って、ディスカッションを締めくくった。
パネルディスカッションの後、第3部では聴講客と登壇者による質疑応答、さらにその後は登壇者と聴講客を交えての懇親会が実施された。
■ URL
アフィリエイトマーケティング協会
http://affiliate-marketing.jp/
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(森田秀一)
2004/11/29 11:47
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