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【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
総務省講演「ブロードバンド時代のサイバービジネス」

総務省 情報通信政策局コンテンツ流通促進室の安藤英作室長
 東京・千代田区のホテル・グランドパレスで2月21日、「ブロードバンド時代のサイバービジネス ~キラーコンテンツを探せ」と題した「最新情報戦略フォーラムPART2」が開催された。基調講演では総務省 情報通信政策局コンテンツ流通促進室の安藤英作室長が「ブロードバンド時代のサイバービジネス」について講演を行なった。

 安藤氏はまず2001年1月に策定されたe-Japan戦略について説明。2005年までの高速インターネット環境を3,000万世帯、超高速インターネット環境1,000万世帯という目標についてはインフラ面では早くも到達しているとしたものの、実利用率はDSLが16.1%、FTTHに至っては1.3%でしかない点を指摘。「コンテンツ流通ビジネスを活性化させるための政策を展開していきたい」と展望を語った。

 安藤氏によれば、コンテンツ配信ビジネスを発展させていくために必要な要素とは、コンテンツの保護や品質はもちろん、コンテンツの売り手と買い手が誰であるか正しく把握することが大事だという。この良い例として安藤氏は2002年に2,650億円市場となったモバイルコンテンツ市場について説明。利用者の端末や利用IDがきちんと管理されていることに加え、課金代行や端末の機能などもキャリアが一元管理している点が成功の秘訣であるとした。

 これに対し、インターネットのコンテンツ市場では端末共通のIDなどがなく、スペックも端末によって異なる。また、決済方法の多くがクレジットカードのため、小額課金にクレジットカードを使いたがらないというユーザー意識も影響しているという。この結果10年前から大きな期待を寄せられていたインターネット市場は、現段階では680億円と小さな規模に留まっており、安藤氏は「モバイルコンテンツ市場に組み込まれている機能をインターネットコンテンツ市場にも取り込んでいく必要がある」と語った。

 しかしながら、モバイルコンテンツ市場の機能が完璧という訳でもないという。安藤氏は「モバイルコンテンツの面白い話」として、NTTドコモの立川敬二社長が「出会い系サイト規制策として、iモード公式サイト以外の閲覧を制限する機能を検討」と発言、コンテンツ団体の中で大きな議論になっているという話題を紹介した。モバイルはキャリアが一元管理を行なっている点がメリットである反面、キャリアの意志によって市場が大きく左右される不安定さも併せ持っているという。安藤氏は「ブロードバンドの世界では放送事業者、通信事業者、端末メーカーなどが寄り集まって自主的な管理を行なっていく市場が望ましい」とコメント。また、利用者特定に強いモバイル機能をブロードバンド市場で有効活用していくという方向性も考えられ、行政はこういった連携を後押しする活動を進めていくとした。


 今後のインターネットコンテンツ市場については、「FTTHによってデジタル放送を補完していく」と、デジタル放送中心のビジネスモデルを予測した。ブロードバンドのメリットは高品質や高画質というよりも放映が終わったコンテンツをインターネットで配信、ユーザーが自由に視聴、加工できるといった放送との親和性にあるという。なお、現在急速に普及しているDSLについては「民間の競争の中で発達しているビジネス」であり、行政として取り組む余地が少ないとした。

 総務省の具体的施策としては、コンテンツ利用の過程をトータルに把握するための仕組みとして、コンテンツのID管理を統一するための実証実験を実施。既存のコンテンツ管理用メタデータを生かしつつ、共通のフォーマットを策定していくとした。そのため民間と総務省で協議会を形成、コンテンツ権利者から配信事業者、配信事業者からユーザーまでのメタデータ交換フレームワークを、放送との親和性を視野に入れつつ実験を進めているという。

 ただし、メタデータさえ統一されればコンテンツビジネスが発展する訳ではなく、品質の保証や利用料金、コンテンツ保護といった問題も解決する必要があるという。安藤氏は「国が規制するという方法もあるが、できるだけ事業者が共同で自主規制を行なっていくことが望ましい」と、規制ありきという考え方を否定した。

 そのほか、教育コンテンツなどの公的コンテンツ市場の形成にも行政として取り組んでいる。総務省では「Edumart」という実証実験を行なっており、公的コンテンツの市場を2005年を目標として作り上げ、これを民間がビジネスとして継続していくような環境を構築していくとした。また、美術館や博物館といったコンテンツについても、館内でのコンテンツ化はされているものの、インターネットで利用できるよう2次使用といった利用緩和政策を進めていく姿勢を示した。

 最後に安藤氏は「コンテンツ制作側と配信側との取引関係を公明正大にしていきたい」とコメント。独占禁止法のような事後的措置ではなく、事業者により取引の自主基準が望ましいと語った。また、音楽業界における不正コピーなどの問題を指摘し、「権利処理のルールを早期に確立する必要がある」として、「2年以内にブロードバンドコンテンツ市場を確立させたい」と意気込みを語った。


関連情報

URL
  最新情報戦略フォーラム
  http://itforum.cra.co.jp/
  関連記事:総務省と経済産業省講演「IT社会とデジタル時代のコンテンツ政策」
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/234.html
  【ドコモ定例記者会見】今夏には出会い系サイトの閲覧制限も[ケータイWatch]
  http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/12724.html


(甲斐祐樹)
2003/02/21 18:48
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