Broadband Watch logo
最新ニュース
【 2009/12/25 】
【 2009/12/24 】
「ブログ自体が人格化する風潮が」Movable Typeのビジネス活用セミナー

 シックス・アパートは9日、同社のブログ構築システム「Movable Type」をビジネスの現場で活用するための事例を紹介する「Blog on Businessセミナー」を開催した。講師にはNECメディアプロダクツのWebプロデューサー 新野文健氏を迎え、経験を交えた具体的な事例解説が行なわれた。


実質2週間で「ヌーベルブログ」を立ち上げ

NECメディアプロダクツ Webプロデューサー 新野文健氏
 新野氏は、1999年12月からWeb制作に従事。企業CMの公式サイトや、2000年のインパクにおけるNECサイトなどを担当し、2003年にはカンヌ国際広告祭で受賞した経歴を持つ人物だ。

 今回の講演のテーマは「ウェブログを活用した企業コミュニケーション」。新野氏は「企業におけるブログの活用形態は、ある企業の社長や、サービスの開発担当者によるブログ、社内イントラネットで業務連絡的に使われるものなど何種類かある。今回はその中で、社外の人間とのコミュニケーションを目的にした場合の事例を紹介したい」とし、同氏が担当したNECの企業プロモーションサイト「ヌーベルブログ」の具体的運用例を紹介していった。

 新野氏はまずヌーベルブログを「“数字”をキーワードにITトピックを紹介するブログ」と説明。各記事の表題に必ずなんらかの数値を記述し、それに基づいた話題を展開していく。またIT分野に詳しい複数の執筆陣が月替わりで登場するのも特徴だ。

 このサイトの設立の目的は「NECという会社に、先進的なイメージを持ってもらうためのブランディングだ」と新野氏は語る。「開設当初の2004年4月は、広告にブログを利用している企業は少なかった」とし、ブログの開設自体が企業イメージの向上に大きく寄与するとの判断があったとしている。

 また、日々更新できるコンテンツが欲しかったこともあるという。「通常のコラムでは、取材や写真の掲載許可で大変な時間がかかってしまう。ブログであれば、日記的なものであっても許容されるのではと考えた」と新野氏は説明している。

 これらの経緯を経てヌーベルブログは完成。Movable Type 2.6をベースに若干のカスタマイズを施し、仕様策定の準備を除いた実質的な制作期間は約2週間と、一からページ制作した場合に比べて非常に短期間だったとしている。


ブログ自体に人格を感じるネット文化

 実際にヌーベルブログを運営していく中で、新野氏はある面白い特徴に気づいたという。「一般ユーザーのブログでヌーベルブログが話題になるとき、『ヌーベルブログさん』と、さん付けで紹介されることが多い」という点だ。

 新野氏はこれを「ブログは運営者がハッキリとしている。よって、ブログ自体に人格があるような、独特の感じ方がネット文化として根付いているのでは」と分析。企業という法人のサイトであるにもかかわらず、内容が面白ければ一般ブロガーからも好感やシンパシーを得やすい……というのが新野氏の考えだ。

 もちろんこれには厳しい側面もあるという。例えば、企業にとって都合の良いことばかりを書かせようと検閲的な行為を執筆者に課してしまうと、ユーザーはそれを感じ取り、激しく反発してしまう。親近感を覚えやすい一方で、嫌悪感を生む可能性も等しくあるというわけだ。新野氏も記事執筆者のパーソナリティを尊重したほうが良い、と振り返っている。

 さらに「PVがすべてではない」という傾向も顕著だという。従来型のWebサイトではサイト来訪者を増やすこと自体がPR効果を示すが、ブログでは「ブロガーの間でどれだけ話題になるか」が勝負になるためで、荒野氏も「一般ブロガーにリンクしてもらいやすい伝播力のある記事を作成することが重要」と話す。


RSSの正確な効果測定が課題

人気記事上位10位が、サイト全体のPVの1/3を占めたという
 ちなみにヌーベルブログでは、人気記事上位10位がPV全体の1/3を占めた。パワーポイントのTIPSなどを伝えるオトク感のある記事、心理テスト風のユーザー参加型アプリなどが特に人気だったという。またPVの多い記事は、総じてトラックバックも多かったとしている。

 今後の課題として新野氏が挙げたのは「RSSの効果測定」だ。「ヌーベルブログではRSSのヒット数が全体PVの約10倍もある。だからといって10倍相当のユーザーを呼び込んでいるわけではない」とし、RSS経由のアクセスを何らかの形で分析できるような方法の必要性を挙げた。またより多くのトラックバックを得るための手法として、ブログ内の画像や文章の引用・転載を一定の範囲内で認めるといった「クリエイティブ・コモンズ」の手法も効果的に働くだろうと展望している。

 講演の最後のまとめでは、セミナー参加者に「まずはブログのカルチャーを理解することが重要。ブログの導入を検討している企業担当者は、個人的なものでよいので是非ブログを試してほしい」とのメッセージを寄せた。


ブログのビジネス活用メリットは“短時間での構築”

シックス・アパートのプロダクト・マネージャーの柳下剛利氏
 セミナー後半には、シックス・アパートのプロダクト・マネージャーの柳下剛利氏が登壇。「日米のBlog on Business最新事例とプロダクトのご紹介」と題し、製品紹介などを行なった。

 柳下氏はまずビジネス現場でのブログ活用例を5種類に大別。「マーケティングプロモーション」「ショッピングサイトにおける、お客様との新しい接点」「企業広報・IR」「従来型メディアが補完的に利用」「イントラネットでの情報共有ツール」に集約されるという。

 特にマーケティングプロモーションの分野では、短時間で構築できるというブログのメリットを生かして、広告公開直前まで企画・コンテンツが練りこめることを強調する。国内でも日産自動車の「TIIDA BLOG」、海外でもGM(ゼネラルモーターズ)などがブログによるプロモーションを行なっている。

 一方、書籍通販サイトのbk1ではスタッフによる書評をブログ形式で公開。いわゆる「社長のブログ」も企業広報目的などに積極活用されている現状だ。ほかにも柳下氏によれば「具体名は明かせないが」としながらも、海外の大手通信社などがブログを使った何らかのサービスを検討しているという。

 これらを踏まえ柳下氏は「ブログをビジネスに活用することはいまや常識」とした上で、「自社でブログを構築したい方にはMovable Typeを、より短期間でブログを作成したい方には、ASP型サービス『TypePad』を」と、ビジネス分野であっても用途に応じてサービスを選んでほしいとまとめている。


関連情報

URL
  シックス・アパート
  http://www.sixapart.jp/
  ヌーベルブログ
  http://www.nouvelleblog.com/


(森田秀一)
2005/03/09 20:31
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.